こちらに共通ヘッダが追加されます。
  1. 人文科学研究所ホーム
  2.  > 部門研究会の活動
  3.  > 研究会の活動報告
  4.  > 研究会の活動報告一覧

研究会の活動報告一覧

第1研究 キリスト教と日米地域社会の形成
研究代表者:吉田 亮(社会学部)


開催日時2017年3月18日 午後3時半~6時
開催場所寒梅館6B
テーマ松本亨と日系人の転住・再転住政策
―Beyond Prejudice: A Story of the Church and Japanese Americanを中心に―
発表者松盛美紀子
研究会内容松本亨が戦時下日系人の強制収容及び再定住政策に及ぼした影響に関する研究発表である。まず、当該テーマに関する先行研究を批判総括し、一次資料に基づく本格的な研究が無いことを提示したうえで、松本の個人史を、アメリカ留学時代、戦前期北米日本人キリスト教学生同盟主事時代、戦時下日系人再転住委員時代の順に整理して説明した。その後、松本の著書Beyond Prejudiceの内容を分析し、本書が反ファシズム、民主主義擁護の一環として日系人への支援活動をしていたアメリカリベラルプロテスタントを讃えるプロパガンダとして出版されたことを明らかにした。さらに彼の著書A Brother is a Stranger (1946)についてもその内容を紹介したうえで、日本の家父長制を批判することで、戦後日本の民主化の主体となりえる日本人の可能性を描くというプロパガンダ性をもっていたことも明らかにした。 


開催日時2017年1月21日 午後3時半~6時
開催場所寒梅館6B
テーマMilitary Report から見た非常時奉仕委員会の活動
発表者物部 ひろみ
研究会内容 非常時奉仕委員会の活動に関して、ハワイ大学所蔵Military Reportを基に、その特徴を明らかにする発表であった。先ず、ESCの組織図から、本組織が銃後協力の一貫として、日系とホスト社会の橋渡し役を担い、日系人の士気高揚を推進し、戦争に対する不安を解消し、日系諸団体の整理解体を進め、日系人の就活をも担うものであったことを説明した。次に、本組織でリーダーシップを発揮した2名の二世を手がかりとして、その特徴を掘り下げた。坂巻駿三は戦前のHJCLの目標をESCにおいて実現することを目指したのに対し、吉田繁雄はホスト社会との協調を重視する立場を取り、両者は衝突の末、前者が退会したのである。こうしたリーダーシップの変化に本組織のもつプロアメリカ的特質をみることができると指摘した。


開催日時2016年12月18日 15時30分~18時
開催場所寒梅館6B
テーマ1940年代のアメリカプロテスタントと再定住問題(3) ―1945年以前を中心に―
発表者吉田亮、根川幸男、松盛美紀子、志賀恭子
研究会内容 吉田氏の発表は、1940年代を通じて展開された現地プロテスタントによる再定住支援活動とそれに連携する日系プロテスタントの対応について、特にアメリカプロテスタント国内伝道協議会傘下にあって同問題を専門的に扱った日系アメリカ人再定住委員会(Committee on Resettlement of Japanese Americans)の活動を中心に検討するものであった。本発表では、以下の点を実証するものであった。
 先ず、戦時下アメリカ社会の反ファシズム化、民主化の牽引者を自認するプロテスタント諸派は、強制収容された日系人の再定住をWRAと連携して強力に推進することによって、「民主」国家の体面を保とうとしていた。それは、すでに着手していた収容所内の日系人への教化・救済活動と同様、いやそれ以上に価値があると考えられた。そのために、プロテスタントは全米に広がるネットワークとその組織力・連携力を生かし、転住センターに居る日系人に再定住を宣伝し、さらに再定住を円滑に薦めるための住居、就職、教会、娯楽、コミュニティ組織の斡旋・整備を進めた。その際には、残留日本人、日系二世、元日本宣教師を積極的に仲介者として活用することで、転住センターに居る日系人とのコミュニケーションを取る努力をしたことによって、スムーズに活動を進めることが可能となった。
 次に、戦時中アメリカに残留した日本人プロテスタントの役割に関する事例研究として、湯浅八郎(元同志社大学総長)の場合、アメリカプロテスタントリベラルの提唱する反ファシズム(民主化)のアイコンに仕立て上げられるだけの経験を既に持っていたが故に、戦時中は自身のロールモデルとしての活躍が期待できたし、湯浅はそうした期待に応えるべく転住宣伝の活動に参加していた。湯浅は十字架の苦難を日系人と共有し、彼(女)ら自身が「自由」「民主主義」を実現するよう援助したいと、活動の意味合いを説明している。
 最後に、日系プロテスタントの役割として、転住センターに滞在する、または転住する日系人に対して人道的支援をきめ細やかに進めていけるようにアメリカプロテスタントを誘導することによって、日系人による戦後アメリカ社会への円滑な適応を推進したり、日系・ホスト社会間の意識のズレを緩和する活動を担当した。
 発表後の質疑応答では、プロテスタントの定住推進活動における日系女性の役割や、湯浅と他の日系一世キリスト教指導者によるキリスト教理解の類似性、松本亨の役割等について討論がなされた。


開催日時2016年11月19日 15時半~18時
開催場所寒梅館6B
テーマ1940年代ハワイの神道系教団の変容における二世信者の役割についての検討
発表者高橋典史
研究会内容 本発表は、1940年代ハワイにおける神道系(天理教、金光教)教団による活動を二世に着目して明らかにしようとするものである高橋氏の研究テーマの一部をなすものである。高橋氏は先ず、先行研究の特徴を分析し、米本土中心の傾向が強く、ハワイの事例は等閑視されてきたため、本研究の意義は大きいと指摘した。次に研究対象である天理教、金光教教団を紹介し、病気治癒など現世利益の重視、西日本を基盤とすること、海外布教に熱心であることなどの共通点があると述べる。第三に、ハワイの天理教、金光教史を概観し、既存の宗教教団(キリスト教、仏教、神道)より布教が遅く、1920年代を出発点とすること、病気治癒等現世利益が信徒の入信動機となっていること、山口・香川・熊本・福岡などに信徒の出身地が偏っていること、ハワイ布教が日本に於ける海外布教への意欲の高まりに呼応していること、本山からのてこ入れがハワイ布教の拡大に影響があること、おやこ型組織を継承していること、第二次大戦中は国家神道と同一視されて活動規制の対象とされたこと、戦後は復興を遂げていくことなど両者に多くの共通点があるという分析をされた。最後に今後の研究課題として、天理教と金光教両者の共通点と差異の析出を更に進めること、二教団と既存宗教教団(仏教、神社神道、キリスト教)との関係性の把握、第二次大戦前期における二教団への日本ナショナリズムの影響、二教団の戦後復興における二世の役割の解明を挙げ、発表を終えられた。
 発表後の質疑応答では、二教団における「二世」の位置づけ、日本留学・見学の有無、既存宗教教団の二教団観、二教団一次史料の所在、出身地の特徴他に関して活発な討論が行われた。

開催日時2016年8月8~9日 12時~13時
開催場所京都ガーデンパレス
テーマ1940年代アメリカ日系宗教とアメリカ化
発表者吉田亮、東栄一郎、竹本英代、物部ひろみ、本多彩、根川幸男、松盛美紀子、志賀恭子
研究会内容1,1940年代の日系プロテスタントとアメリカ社会(2)
発表者:吉田亮(同志社大学)
 発表者は、1940年代における日系プロテスタントとアメリカのアングロリベラルプロテスタント社会との関係に焦点を当てている。これについて研究する背景には、日系人が強制収容所から再定住するプロセスを追った研究や、さらには収容されなかった人たちが多いニューヨークの日系人の歴史を記した研究が未だ少ないことにある。発表で、吉田は日系キリスト教徒、ニューヨークの日本人・日系人、収容所のキリスト教の活動について研究された各文献について紹介した後、当時の時代背景やニューヨークの状況を戦前と戦後に分けて説明した。その時代状況と、一時史料である修道会『週報』(1942〜45年)(ニューヨーク日米合同教会所蔵)を照合しながら、日系プロテスタントの再定住過程、日系社会の再興、日系プロテスタントとアメリカによる日本復興政策について浮き出た研究成果を発表した。

2,太平洋戦争中の在日北米二世のアイデンティティの意味と活動
発表者:東栄一郎(ペンシルベニア大学)
 太平洋戦争中に日本兵として闘った日系二世が、日本帝国でいかに存在し生活したのか(生活できたのか)という点を考察した研究が未だないと、発表者は指摘した。その上で、発表者は日本人化を強いられた日本で、敵国アメリカで生まれ育った二世がいかに活動できたのかを検証している。注目したいのは、1930年代にはこうした二世が果たした役割は「架け橋」であったに対し、架け橋という概念が存在しない戦争時の1940年代にどのように変貌したのかという点である。発表者は、これらを明らかにする史料を見つけるのは難点であるようだが、戦争が始まってアメリカに帰れない人たちについての史料に目星を付けている。

3,敵国人拘留所における日系人に対する教育事情
  ―杉町八重充の拘留体験を中心に―
発表者:竹本英代(福岡教育大学)
 本研究は、日本語学園共同システムによって日本語学校を開設した杉町八重充(1898-1968)に注目し、第二次世界大戦中の敵性外国人拘留所の教育事情を明らかにしながら、杉町が拘留体験をいかに解釈し、日本語学園の理論に結びつけたのかを明らかにしようとしている。1950年代以降の日本語学校の実践理論が拘留体験のなかで生まれたことを、杉町八重充著『アメリカに於ける日本語教育』と他の資料と照合しながら実証しようとしている。
 発表者は、司法省管轄にあった敵性外国人拘留所の拘留者はジュネーブ条約で人権が守られていたために強制収容所とは異なる高待遇であった点と、杉町の指導は日本語教育というよりむしろ道徳教育であった点を強調した。また、クリスタール収容所内で日本人同士の衝突があったようで、現資料では妥当性が見出せないので客観的に日本語教育事情がわかる資料を見つけるという今後の課題を挙げた。

4,1940年代のハワイ日系二世と士気高揚・非常時奉仕委員会
発表者:物部ひろみ(同志社大学)
 ハワイには、戦前、キリスト教的な融和主義に共鳴する白人指導者たちの支援を受けた、日系、中国系など多民族的な委員で校正されたハワイ人種統合委員会があった。本研究は、太平洋戦争中、ハワイ人種統合委員会から派生した、日系二世によって組織・運営された「士気高揚・非常時奉仕委員会(ESC)」に焦点を当てて、その活動を明らかにする試みがある。発表者は、特に二世のESCメンバーであったシゲオ・ヨシダの戦前・戦中・戦後の活動に着目した。発表では、先行研究の説明をされた後、シゲオ・ヨシダを取り巻く時代背景が述べられた。

5,1940年代の日系仏教徒 収容所内外の動き
発表者:本多彩(兵庫大学)
 本多は、1940年代日系人が収容所に入る前後において、仏教徒がどのような活動を行っていたのかを発表した。たとえば、1942年までアメリカ政府に宗教活動が許可されていた収容所内集合センターでの活動や、司法省管轄の収容所内の活動の様子を詳しく説明した。また、フリーゾーンにあった仏教会、戦時中に活動を始めた地域の仏教会、戦時中に新しくできた仏教会の例も挙げ、収容所内仏教会の活動状況と対比することができた。今後の課題として、戦中の収容所外の仏教会、二世仏教徒の動き、開教使、1940年代仏教会・仏教徒の越境(地理的越境、宗派の越境、世代の越境)を挙げた。

6,1940年代ブラジル日系二世の教育と人材育成②
  ―Y・K日記をめぐって―
発表者:根川幸男(同志社大学)
 発表者の研究は、Y・Kによって綴られた22冊に及ぶ日記をもとに、1940年代のブラジル日系二世の生活、言語習得(日本語とポルトガル語)、職業選択、宗教生活の実態を明らかにすることを目的としている。今回の発表では、発表者が纏めたK一家のブラジル移住前史年表と共に、Y・Kを取り巻く人びとの家族構成、父親の手記、父親の信仰についての情報が3月の発表者による報告時より明らかになった報告がなされた。この信仰は「神生紀元」と呼ばれる新興宗教で、他の共同研究者が行っているキリスト教とも仏教徒も異なるため、その宗教差を浮き出すことが今後の課題の一つとなった。

7,松本亨と全米日系アメリカ学生転住審議会
 (National Japanese American Student Relocation Council, NJASRC)
発表者:松盛美紀子(関西外大)
 中山公威、板橋並治、田端利夫といった日米学生会議の創設メンバーは、外務省やその関連団体に活躍の場を得て日本政府を支援する立場になった。一方、同じく日米学生会議の創設メンバーである松本亨は、日米開戦後アメリカに留まり拘留生活を送る日系アメリカ人の救済事業に携わった。発表者の新プロジェクトは、敵性外国人である松本亨が日系アメリカ学生転住審議会(NJASRC)においてどのような役割を担っていたのか、そこでの活動を通して二世大学生や日系社会とどのように関わっていたのかを明らかにする。
     
研究の総括と課題
吉田亮、志賀恭子
 以下を新プロジェクトの主軸とする。
1)地域の多様性・地域差:北米、収容所内外、シカゴ、ニューヨーク、日本、ブラジル。但し、日本といっても状況によって日本人の多様性を浮き彫りにする。また、ブラジルは国民戦争を経験したことがないため、ブラジルのナショナリストは反米感情をもっており、倭魂が色濃くのこっている点が北米と違う。
2)世代:主軸は二世だが、一世の教育者、日本人といった関係性のなかから二世を見る。但し、北米もブラジルも、新来者(新しく移住した一世)と戦前に移住した者たちとの間、そして一世と二世との間で葛藤や衝突があった。
3)異人種間の関係:架け橋。但し、国民統合、白人と日本人というだけでなくその他の人種との架け橋も視野にいれる必要がある。このように、多人種・民族間関係もみることで新しい架け橋像を明らかにする。
4)宗教差:仏教、金光教、天理教、神生紀元。但し、仏教徒からキリスト教徒に改宗しキリスト教徒の数が増えていくなかで、なぜ仏教徒であり続けるのかを検討する。
 以下を今後の研究課題とする。
1)全体として、戦後の復興などの国際関係を踏まえて、戦前、戦時下、戦後と分けて研究する必要がある。
2)地域差という点において、北米と違って、ブラジルの場合1980年代まで一世世代が再生産されるため、アメリカと対比させながら見ることで本プロジェクトの独自性が現れるであろう。戦後のブラジル人が獲得していた立ち位置を見せることができるといい。単純に日本人になるという図なのかどうかを検討する必要がある。