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研究会の活動報告一覧

第11研究 ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究
研究代表者:松久 玲子(グローバル地域文化学部、グローバル・スタディーズ研究科)


開催日時2017年2月18日 13時00分~17時00分
開催場所志高館 SK203
テーマラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究
発表者中川正紀(フェリス女学院大学)、中川智彦(愛知県立大学)
研究会内容1.本回の研究会は、上記2名による発表が行われた。発表の概要は以下のとおり。
(1)中川正紀「本国生まれの在米エルサルバドル系二重国政者のトランスナショナルな行動の諸要因:政治意識・行動、米国籍取得の理由及び『永住帰国の夢』から男女差を中心に考察する」
移民による本国への送金や一時帰国は、トランスナショナリズムに基づいた行動と言われるが、本件発表は、本国生まれの在米エルサルバドル系移民(特に二重国籍者)がなぜそのような行動を取るのかに関し、2015年3月及び8月にアメリカ(ロサンゼルスとサンフランシスコ)で行われた調査データを基にその理由を分析したものである。
調査結果:選挙投票のために一時帰国をするという集団は、年1回は一時帰国をしているが、選挙投票目的以外を帰国理由とする集団と比べて、特段米国籍取得に政治的価値を見出してはおらず、また、選挙投票目的以外を帰国理由とする集団の中でも、女性の方がより米国籍取得に政治的価値を見出しており、現状変革的な意識が高いことが明らかとなった。また、投票目的で本国に帰国する集団は、帰国のタイミングを治安や政情の安定化という本国の状況の改善に求める傾向が強いということも示された。

(2)中川智彦「在米サルバドル系住民の渡米年代別のDUI取得状況と本国選挙への参加をめぐる課題-2015年米西海岸におけるアンケート調査結果から-」
本件調査は、在米エルサルバドル系住民の、社会経済的状況および政治・社会に関する考え方についてアンケート調査を行い、彼らの社会経済的地位と、米国社会および本国社会に関する見方との間の関係性を読み解くことを目的としたものである。(なお、本件在外調査費の一部は、本研究会の旅費支援を受けたものである。)
エルサルバドルの統一身分証(DUI)の年代別取得状況を調査した結果、DUI取得自体は、本国政治への参加意欲の高さに結びついていないことが分かった。また、アンケート調査の結果、在米エルサルバドル人が参加を認められるべきと考えている選挙は、大統領選挙であるという考え方が圧倒的であり、地元の国会議員ではなく国家の代表を選ぶことに参加したいと考えが趨勢であることが明らかとなった。

2.次回の研究会は、5月13日(土)に開催することで同意された。


開催日時2016年12月17日 11時00分~16時00分
開催場所志高館 SK203
テーマラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究
発表者北條ゆかり、佐藤夏樹、宇佐見耕一、山内熱人、浅倉寛子(CIESAS)
研究会内容1.本回の研究会は、2部構成で行われた。午前は、前回に引き続き読書会を行い、午後は、ラテン・アメリカ学会西日本部会と合同という形で報告者からの発表を行った。出席者は16名であった。
(1)第1部:読書会『国際移動と〈連鎖するジェンダー〉-再生産領域のグローバル化』
発表者:北條ゆかり(1節)、佐藤夏樹(2節)、宇佐見耕一(3節)、山内熱人(4節)
(2)第2部:発表
 発表者:浅倉寛子(CIESAS)
 テーマ:「暴力と感情の文化的力(ちから)の考察―中米移住女性の研究から―」
 発表者は、中米においてフィールド・ワークを行っている。今回の研究の問いは、「中米移住女性たちが、人生の様々な段階において、多くの暴力を受けてきたのにも関わらず、なぜその逆境から這い出して来られたのか。その際、感情というものが、逆境を乗り越えるにあたってとる行動とどのように結びつくのか?」というものである。
 インタビューを通じて判明したのは、17人の女性の多くが、人生を通して多くの暴力(構造的、直接的、象徴的暴力)を受けており、それが移動と大きくかかわっている事実である。例えば、出身地における構造的暴力(社会的・経済的格差)、象徴的暴力(権力的関係)、直接的暴力(DV)は、暴力女性の移動の主な排出要因となっていること、また、移動中・経由地においては、構造的暴力(労働市場や社会福祉へのアクセス困難)、直接的暴力(中でも性的暴力(ビザの見返りなど))を受けていること、さらに、移民先においては、労働の場やその他社会関係における差別や排斥(ステレオタイプ:特定の経済活動に閉じ込められる)を受けていること、などである。
 これらのインタビューを通じ、異なる状況で主体が経験する感情を考察することにより、ジェンダー規範に基づき、どのような行動がとられるか、また、なぜそのような行動がとられるのかが理解できる、と結論づけた。

2.なお、本日のラテン・アメリカ学会西日本部会では、他に以下のような発表が行われた。
(1)「植民地時代前半期におけるポトシの社会と銀鉱業運営の実態」
真鍋周三(兵庫県立大学名誉教授)
(2)「ブラジルの民主主義とテメル新政権の動向」
住田育法(京都外国語大学)
(3)「2016年ブラジル統一地方選挙全体評価と政治経済の現状・展望─」
舛方周一郎(神田外語大学)
(4)「ボリビア・モラレス政権の11年―何が政権を支えてきたのか―」
岡田勇(名古屋大学)
(5)「コロンビア─和平プロセスの現状と見通し─」
千代勇一(上智大学)
(6)「ペルーの大統領選挙とクチンスキー政権の現状」
村上勇介(京都大学)


開催日時2016年10月22日 13時00分~17時15分
開催場所志高館 SK203
テーマラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究
発表者松久玲子教授
山内熱人(京都大学非常勤講師)
柴田修子(同志社大学GR学部嘱託講師)
研究会内容報告発表
1.山内熱人 京都大学非常勤講師
テーマ:「移民理由は家族のため、とは具体的にどういうことか」

 本研究会の科研費を使用して2016年7月末から9月初にメキシコ・オアハカ州の村落で行われた現地調査(及び2010年から2014年までに行った計4回の調査含む)に基づく報告が行われた。
<発表要旨>
 メキシコ・オアハカ州にある村落では、90年代から主に米国への経済移民が増えている。移民経験のある44人にインタビューを行ったところ、移民と帰郷は家族状況の変化(結婚、子供の誕生など)を契機として行われることが多く、その動機は「家族のため」と語られる。移民経験者は、(1)実際どのような消費を行い、(2)それがどのような価値観に基づいているのだろうか。
 インタビューによると、「家族のため」のより具体的な内容としては、①不動産の購入、②雑貨店等の開店、③フィエスタの開催のため、に行われている。それらは自分のためというより、「下の世代に資本を相続させたい」という思いから行われていることが分かった。そしてそれは、子供たちの為に親がなすべきこと、という価値観に基づき行われていると考えられる。

2.柴田修子 同志社大学GR学部嘱託講師
テーマ:「メキシコの難民・移民政策」

 『世界福祉年鑑』に寄せた原稿を基に、「メキシコにおける難民・移民受け入れ状況を整理し、どのような法整備が行われたか」について報告が行われた。
<発表要旨>
 メキシコでは、1980年代に、グアテマラ難民が大量に流入してきたが、(政治難民ではない)一般難民を受け入れる法的規定がなかったため、UNHCRが一時的に難民認定作業を行っていた。2000年以降、メキシコ政府は難民地位条約を批准し、政府として難民問題に取り組む義務を負うことになり、UNHCRに代わり、COMAR(メキシコ難民支援委員会)が難民認定作業を行うようになった。2011年には、難民の権利を明記した「難民及び補完的保護に関する法」が制定され、迫害理由としてジェンダーが追加されたり、子供の庇護の必要性が明記された(難民申請者の出身国は、ホンジュラスとエルサルバドルが圧倒的に多い)。
 移民受け入れに関しては、1974年に制定された住民一般法により、外国人は移民と非移民に分けられ、非合法移民は厳しく罰せられていた。しかし1990年代から移民の通過国として移民流入が増えたことから、2011年に移民法が制定された。法律では、移民の様々な権利が保障されると同時に、保護された非合法移民は罰せられないことが定められたが、背景には、外国人の管理の強化と治安の回復を目指す政府の方針がある。

3.松久玲子教授より、ブックレビューの発表があった。この本は、グローバリゼーションの新たな局面としての「再生産領域のグローバル化」に関わる問題を提起したものである。本研究会の理論枠組みに使える本であり、またメンバー間での共通認識を形成するために必要であることから、この本が取り上げられた。

ブックレビュー:足立眞理子「再生産領域のグローバル化と世帯保持」伊藤るり、足立眞理子編著『国際移動と〈連鎖するジェンダー〉-再生産領域のグローバル化』作品社、2008年、224~262頁。

開催日時2016年7月23日 13時00分~17時00分
開催場所志高館 SK203
テーマラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究
発表者(1)戸田山 祐(東京大学非常勤講師)
(2)佐藤 夏樹(同志社大学GR学部嘱託講師)
(3)深澤 晴奈(東京大学大学院総合文化研究科)
研究会内容 今回の会合は2部構成で行われた。<第一部>研究会メンバー3名による論文発表が行われた。<第二部>松久より、科研費の使用および研究会の運営方法についての説明を行った。

1.<第一部> 研究会メンバーによる論文発表
(1)戸田山:「戦後期ブラセロ・プログラムの確立:1950年前半のテキサスへのメキシコ人短期移民労働者導入を中心に」
 本研究は、1940年代末から50年代半ばまでに米テキサス州で行われたブラセロ・プログラム(メキシコ人短期移民労働者導入政策)に関するものであり、具体的には、プログラムの実施が同州の雇用慣行やエスニック集団間の関係とどのように関連していたかについて論じている。米墨両政府は、テキサスの実情に合わせたプログラムの運用(短期移民の雇用拡大)の一方で、非合法移民の摘発の強化を行っていたが、非合法移民の選別的な合法化にあたっては、州政府と米連邦政府の間に一定の協力関係が存在したことを指摘した。
(2)佐藤:「1980年代におけるLULACと外交」
 本研究は、1980年代におけるLULAC(League of Latin American Citizens)の外交問題への積極的な発言が彼らにとってどのような意味を持っていたのかにつき論じた。LULACは、当時トランスナショナルな活動をしていたものの、実質的には明確に米国内の団体とその他地域とは明確な線引きがなされており、活動の内容にしても、普遍的な人権問題にまでコミットするような姿勢は見られなかったことを指摘した。
(3)深澤:「スペインの移民政策とラテンアメリカ出身移民-その実態と背景としての法的優遇」
 本論文は、スペインにおけるラテンアメリカ出身移民に関わる法的優遇措置に焦点を当てている。1980年代までは移民送り出し国であったスペインは、2000年代にはヨーロッパ有数の移民受け入れ国になったが、中でも移民の多くはラテンアメリカ出身であった。背景には、言語・文化の近似性に加え、合法的に入国した移民が一定程度スペインに滞在すれば、スペインの国籍も取得できるという法的優遇措置があったことに注目した。彼らの法的地位は、EU加盟国出身移民と特段の法的優遇を受けないアジア・アフリカ地域出身者との“狭間”に位置付けられるため、スペインにおける移民に対する三層構造の存在を指摘している。

2.<第二部> 科研費の使用と出版企画について
 松久教授より、科研費の配分と使用方法について説明を行った後、最終年度に計画されている出版企画の方向性について議論を行った。

開催日時2016年5月21日 13時30分~17時20分
開催場所志高館 SK214
テーマラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究
発表者Karine Tinat メキシコ大学院大学(El Colegio de Mexico)教授
研究会内容 今回はH28年度最初の会合であり、研究会は2部構成で行われた。<第一部>まず、松久教授より今後の研究会の活動方針等を説明した後、意見交換を行った。<第二部>その後、外部講師(Dr. Tinat)の講演会と質疑応答が行われた。

1.<第一部> 研究会の活動方針について
(1)今年度の研究会予算に関し、昨年度より緊縮された財政の中で、国内・海外出張支援、講演料、本の出版等について予算をどのように配分していくかにつき説明が行われた。
(2)本研究会の目的について説明がなされた後、研究会の発表の順や海外出張者の選定に関し話し合いが行われた。
(3)本の出版企画について、大枠の内容につき説明がなされた後、テーマの選定や追加等につき参加者による議論が行われた。

2.<第二部> Dr.Tinatの講演
(1)今回外部講師として招いたメキシコ大学教授のDr. Karina Tinat が、2009年から2012年にメキシコのパタンバンで行ったフィールドワークの調査結果をまとめた “Body, sex, and gender ethnography and male homosexuality in a village of Michoacan, Mexico”に関し報告を行った。これは、パタンバン在住のDiegoという、ホモセクシュアルである47歳の男性に対する600時間にも及ぶインタビューをもとに、ジェンダーが体に対する意識と実際の体現にどのように表れるか、その関係性につき分析した研究である。
(2)Diegoは、性的嗜好としては結婚した男性と性的関係を持つことを望んでいた。彼は自分の見られ方について特に気にしており、「若くありたい、美しくありたい、体のことを褒められたい」という意識が強い一方で、閉鎖的な村の中における女性の限定的な役割から「生まれ変わったとしても女性にはなりたくない」とも感じていた。
(3)Dr.Tinatは、インタビューの中で、Diegoが特に自らのセクシュアリティと性的関係について語ることが特に多かったことに注目した。彼自身の発言から、彼は男性と性的関係を持つことで自身が存在するというアイデンティティを実感しているのだ、ということを知り、体が自らのセクシュアリティの表現方法(ジェンダー意識を体現するもの)の一つであると捉えた。
(4)質疑応答では、Diegoと家族との関係性や仕事について、メキシコのレズビアンについて、そしてDr.Tinat自身の個人的な経験(白人女性がメキシコの小さな村でリサーチをするにあたっての経験)等に関する質問があった。