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研究会の活動報告一覧

第16研究 カルチャー・ミックス ―アメリカ文化研究への呼びかけと「妙」のEco美学的考察
研究代表者:岡林 洋(文学部)


開催日時2016年10月9日 15時~16時40分
開催場所寒梅館ハーディーホール
テーマテロリズム時代のアートと美学の役割(第二部)
発表者高田珠樹、山口和子、香川檀、石田圭子
研究会内容 第67回美学会全国大会の一環として、「テロリズム時代のアートと美学の役割」を考えるシンポジウムを開催した。前日につづく第二部は、ゲスト講師を招いてドイツの哲学者ペーター・スローターダイクの暴力表象諸論についての発表ならびに議論が行われた。
 冒頭、高田氏より「暴力に関するスローターダイクの発言をめぐって」と題して、スローターダイクのこれまでの思想の展開の紹介が行われた。とりわけ1990年代より、人間社会を包み込むものとしての「球体」をめぐる思考がその思想の核を形成していることが報告された。山口氏は「テロリズムと芸術」と題して、シュリンゲンジーフの作品にも触れつつ、テロと芸術との関わりが示された。特に「戦慄の美学」との議論を踏まえた近代におけるテロと芸術の親近性の問題、また現実と芸術とを分かつ「枠」の問題についての指摘が行われた。香川氏は「〈ダダの美学〉の今日的意義」と題して、歴史的アヴァンギャルドの嚆矢と見なされるダダが、戦後ドイツにおいていかに受容されてきたのかについての報告を行った。そこでは戦前のダダ運動と戦後のダダ受容との間には断絶があることが指摘され、ダダは戦後において再発見されたものであるという見解が示された。石田氏は「テロリズムの「大気」支配に対抗するために――神話を中断させる「ものがたり」について」と題された発表において、シュリンゲンジーフの著書『空震』における議論を村上春樹の小説『1Q84』における「空気さなぎ」の描写と比較し、それによってテロリズムの大気支配に対抗するものとしての「ものがたり」の重要性を指摘した。
 以上の発表に対して、司会の樋笠氏より、それぞれの発表は(前日の議論とは異なり)現実と虚構の間の境界をはっきりと見定めることに重点が置かれているとの指摘があった。また会場より、テロリズムに対抗するために芸術が果たすべき役割の問題についての指摘があり、登壇者との間で議論が行われた。


開催日時2016年10月8日 10時~12時
開催場所寒梅館ハーディーホール
テーマテロリズム時代のアートと美学の役割(第一部)
発表者岡林洋、村上真樹、前田茂
研究会内容 第67回美学会全国大会の一環として、「テロリズム時代のアートと美学の役割」を考えるシンポジウムを開催した。第一部は、ドイツの現代芸術家クリストフ・シュリンゲンジーフの舞台作品『ATTA ATTA アートが脱獄している』(2003年)を中心に、9.11以降のアートの表現についての発表ならびに議論が行われた。
 冒頭、岡林氏より『ATTA ATTA』の作品紹介が行われ、そこではシュリンゲンジーフの舞台作品と、20世紀後半のドイツを代表する芸術家ヨーゼフ・ボイスのアクションとの間のつながりが指摘された。その後、7月に行われた川俣正氏の講演映像が上映された。村上氏は「非現実への帰還――シュリンゲンジーフのアッタイズムとアタヴィズム」と題した発表で、舞台上でのシュリンゲンジーフが直接性の希求とその挫折、そしてその結果としてのテロリストへの転生を表現していることを指摘した。しかしそのような転生はあくまでも「演技」としてのものであり、ここに嘘をその支柱とする芸術の領域を現実世界にまで拡大しようとする作家の意図を読み取った。前田氏は「シュリンゲンジーフとサスペンス・マネジメントのサスペンス」と題した発表で、映像論の観点から、シュリンゲンジーフ作品における現実とフィクションの境界のゆらぎを指摘した。このようなゆらぎは、インターネット上に現れるテロリストの画像に表れているように、現実の虚構化という方向性へとつながるものである。
 以上の発表に対して、司会の樋笠勝士氏(岡山県立大学)より、村上氏と前田氏の発表は虚構の現実化と現実の虚構化という正反対のプロセスをとらえているが、ともに両者の間の垣根のゆらぎを強調している点は共通するという指摘が成された。また会場からも、シュリンゲンジーフのような現実世界に働きかける芸術を受容する際のリテラシーの問題、ドイツにおける民族的多様性の問題についての質問が寄せられ、幅広い議論が行われた。


開催日時2016年9月10日 15時~18時
開催場所徳照館二階第一共同利用室
テーマ「文化交換」の事例研究 ①
発表者岡林 洋、 前田 茂
研究会内容 本研究会が提起する「文化交換」の立場に基づき、その事例研究として現代日本の大衆文化について(前田氏)と、現代思想と映画について(岡林氏)の発表が行われた。
 現代日本の大衆文化に関しては、前田氏が「《ツンデレ》は属性なのか――ツンデレ・キャラクターの文学的機能――」という題目で発表を行った。アニメ、マンガ、ゲーム、ライトノベルなど現代日本の大衆文化において頻繁に出現する「ツンデレ」キャラクターは、従来の研究においては既存の「属性」(架空のキャラクーを具体化する上で付加される諸々の特徴)の累積として、同一の(あるいは類似する)文化現象内部の文脈で理解されてきた。それに対して、前田氏は、文学的な側面、特に一人称叙述のレトリックから「文化交換」的検討を加える。それにより、「属性」の累積ではなく、むしろ「語り手としての主人公」の分裂(=主体の分裂)を無限に引き起こす「ツンデレ」の文学的機能が提示された。この「文化交換」の事例研究を通じて、現代日本の大衆文化に特徴的な「ツンデレ」が、「大きな物語」を失った今日、主体を分裂させ「小さな物語」を無限に紡ぎ出す極めて現代的な現象であることが確認された。
 次に、現代思想と映画に関して、岡林氏が「「暴力」映画 VS.「リアルのそそのかし」美学 ―シュリンゲンジーフとスローターダイクの文化交換とその媒介項ボイス―」という題目で発表を行った。現代ドイツの劇作家・メディアアーティストであるクリストフ・シュリンゲンジーフの「暴力」映画を、ペーター・スローターダイクにおける「リアルのそそのかし」という概念と「文化交換」するという試みである。具体的には、シュリンゲンジーフの「暴力」映画を、その制作背景(制作年代、他作品との連関など)と作品内容(「暴力」)とに分割し、後者を「リアルのそそのかし」概念と入れ替える(「文化交換」する)作業が行われた。この作業を通じて示されたのは、「暴力」と「リアルのそそのかし」とが共にヨーゼフ・ボイスの思想を介して越境可能だということである。その越境の効用に関しては、継続課題として今後検討されていく予定である。


開催日時2016年7月23日 9時30分~11時
開催場所良心館302教室
テーマ川俣正は語るⅡ(「テロリズム時代のart(ist)の役割」)
発表者岡林洋、川俣正
研究会内容 美術家でパリ国立高等美術学校教授の川俣正氏をゲスト講師に招き、テロリズム時代のアートの役割についてのレクチャー・討議を行った。この企画は、2015年3月に、同じくテロリズムと芸術の関係についての報告が行われた「川俣正は語るⅠ」の続編にあたる。前回はドイツの現代芸術家クリストフ・シュリンゲンジーフの「ウィーン・コンテナ・アクション」を議論の土台としていたが、今回は同じくシュリンゲンジーフの舞台アクション『ATTA ATTA アートが脱獄している』(2003年)を中心に、9.11以後の芸術の展開を中心に議論が行われた。
 冒頭、岡林氏より、『ATTA ATTA』の作品解説、およびそこに認められるヨーゼフ・ボイスの影響についての報告があった。同作品は9.11の世界貿易センタービル襲撃の実行犯の一人モハメド・アタを題材に、芸術とテロとの親近性を議論の俎上に乗せるものである。その解説を受けて、川俣氏より、シュリンゲンジーフ作品の解釈ならびに同時多発テロ後のパリの状況報告が行われた。川俣氏からは、シュリンゲンジーフの表現には芸術の社会との関わりを強く意識したものが多く、その意味で彼はボイスが成し遂げられなかったことを達成しようとしているのではないかという見解が示された。また、テロ後パリ・リパブリック広場で起こったNuit Debout運動を例に、一般市民も含めての「語り続けること」の重要性が提示された。川俣氏は芸術というものが自らの境界をあえてはっきりさせようとしているという近年の傾向を指摘し、その上でアートは(イベントやエンターテインメントとは異なり)「裏切り」と「批評性」を持つべきであることを主張した。その上で、テロのような直接的な表現ではなく、間接的なアートの表現を模索することの必要性が語られた。
 なお、今回の川俣氏の講演については、10月8日に第67回美学会全国大会の一環として行われるシンポジウム「テロリズム時代のアートと美学の役割」において、中心的な問題提起のためにその記録映像を上映する予定である。


開催日時2016年5月28日 17時~19時
開催場所徳照館二階第一共同利用室
テーマ今後3年間の研究テーマ及び今年度の事業計画の説明
発表者岡林 洋
研究会内容 第19期の研究会のテーマを説明すると共に、今後(特に今年度)の予定事業と予算の使用について会合を行った。その中で、各研究員が現在の研究内容を簡潔に発表し、研究会全体の方針を確認した。
 まず、研究テーマについて。今期(第19期)本研究会では、前期(第18期)研究で提起した独自の「文化交換」の立場に基づいて、その交換事例を増やすことが目指される。5月例会では、当初二つの研究部門細目(I.「妙」のエコ美学研究、II.テロリズム時代の芸術と美学の役割)に即して研究を進め、各研究員の研究進捗状況に合わせ「文化交換」の事例研究に応じた新たな細目を立てるという方針が決定された。より包括的な、広範な「文化交換」の領野を明らかにすることがその狙いである。
 次に、この方針に合わせ、2016年度の特別事業として、第67回美学会全国大会において人文研主催のシンポジウム(「9・11以後の芸術(家)と美学――スローターダイクとシュリンゲンジーフ」)、公開講演会(「「妙」と「je ne sais quoi」の文化交換」(仮題)/「「妙」の京都と香りのパリ 」)を行うことが確認された。特に、今回の月例会では、それらの内容の吟味を行っている。シンポジウムに関しては、2012年12月(於ベルリン国民劇場)における哲学者スローターダイクや美学者ヴァイベルなどの講演、そして、劇作家・メディアアーティストであるシュリンゲンジーフが翌2013年1月に公演した舞台作品《Atta Atta》を扱うことになった。それら一連の反応を読み解くことで、9・11以後の芸術(家)と美学の在り方を問う試みとなる予定である。また、公開講演会では、岡林第16研究代表が五山の送り火の「妙法(曰く言いがたい/法)とフランス美学における、「je ne sais quoi」(曰く言いがたいもの)との「文化交換」 について、そして、パリ第一大学ソルボンヌのシャンタル・ジャケ(Chantal Jaquet)教授が謂わば香りの美学における京都とパリの「文化交換」について講演することが確認された。