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第8研究 転換期のデモクラシー ―「戦後民主主義」に関する歴史的・理論的研究― 研究代表者 出原 政雄(法学部)<2016, 2017年度>、望月 詩史(法学部)<2018年度>

本研究会は「戦後民主主義」を理論的及び歴史的に検討することを目的にして、以下の3つの課題を視野において共同研究に取り組むことにしている。第1に、戦後知識人たちの「戦後民主主義」論に焦点を合わせながら、「戦後民主主義」の類型化を考えたい。第2に、「戦後民主主義」を維新以来の近代日本の民主主義の展開の中に位置づけ、その歴史的特質を明らかにしたい。第3に、現在の種々の民主主義理論が「戦後民主主義」の解明にどの程度有効かどうかを検討したい。毎月(8月を除く)原則として第4金曜日に研究会を開催する予定にしている。

2018年度

開催日時 2018年5月25日16時40分~19時
開催場所 啓明館2階共同研究室A
テーマ 成果論文集の編集方針について
発表者 出原政雄
研究会内容  今月の例会では、前回から引き続いて、成果論文集について議論した。
 前回課題とされた成果論文集の基軸について、編集責任者より、具体的な編集方針が提示された。その内容は、「戦後民主主義」の歴史的研究を主題とする本研究会の成果論文集であることを鑑みて、まず、戦後日本の民主主義の諸側面として、以下のテーマを設定した上、執筆予定者が成果をまとめるというものである。
①「憲法民主主義」:国民主権、議会制民主主義、地方自治、恒久平和主義
②民主主義と天皇制:「天皇制民主主義」、南原繁「共同体民主主義」
③大衆社会論と大衆民主主義(マス・デモクラシー)
④社会運動と民主主義
⑤民主主義と平和主義の結合
⑥政治制度と民主主義:「保守」と「革新」の政党対立、選挙制度、国家の民主的運営
 また、戦後民主主義を近代日本の民主主義と関連付けて考えることも、本研究会が発足した当初から重視しているため、この点に関しても次のテーマが提示された。
①民主主義の系譜:自由民権運動―大正デモクラシー
②「社会民主主義」の系譜
③戦時下の民主主義
④「ナショナル・デモクラシー」から「インペリアル・デモクラシー」へ
⑤ナショナリズムとデモクラシー
⑥民主主義と立憲主義
 以上の提案を踏まえた上で、各自が担当テーマを再検討することになった。なお、執筆予定者は既に昨年度までの例会で研究成果を発表しているが、今回の提案を踏まえて内容を修正する必要が生じる場合も想定されることから、夏季休暇中に研究合宿を開催することが決定した。
開催日時 2018年4月27日16時40分~19時
開催場所 啓明館2階共同研究室A
テーマ 2018年度の研究会運営について
発表者 望月詩史
研究会内容  2018年度初回となる今月の例会では、成果論文集の刊行及び次期研究会テーマについて議論した。
 まず、成果論文集について、研究会発足時に各自が提出した執筆テーマを基に、おおまかな目次を作成の上、内容面で過不足がないか、テーマ変更の必要性の有無などについて議論した。そして、戦後を取り上げる第一章と近代に焦点を当てる第二章の二部構成で進めていくことを確認した。
 ただし、個別テーマに関しては、「まとまりに欠ける」「テーマに偏りがある」などの意見が出された。また、「成果論文集としての機軸をもう少し明確にする必要がある」という意見に対して、同調する参加者が多かったことから、編集責任者が改めて全体構想を検討した上で、各自の執筆テーマを決定することが確認された。
 次期研究会テーマについて、現時点で公募要領が発表されていないことから、第19期研究会公募スケジュールを参照しながら、いつまでにテーマを決定する必要があるのか、また、どのようなテーマを設定するのかなどについて、研究代表者よりアナウンスした。6月もしくは7月の例会で、この議題を取り上げることとなった。

2017年度

開催日時 2017年9月9日 10時~17時
開催場所 光塩館地下会議室
テーマ 「戦後民主主義」とは何か?
発表者 出原政雄ほか
研究会内容 成果論文集の作成に向けて、各自が「戦後民主主義」に関する問題関心や認識を共有することを目的にし、異なる視点からみた関連文献を取り上げ、報告することにした。
(1)
まず「戦後民主主義」に関する基礎的研究として、宇野重規「解説」宇野重規編『リーディングス戦後日本の思想水脈 3 民主主義と市民社会』(岩波書店、2016年)、および中村政則他編『戦後民主主義』(岩波書店、1995年)を取り上げ、「戦後民主主義」を考える際の論点整理を行った。
(2)
「戦後民主主義」を戦前のデモクラシーの歴史的文脈で考えるために、家永三郎「解説 日本の民主主義」家永三郎編『民主主義』現代日本思想大系3(筑摩書房、1965年)、千葉眞『デモクラシー』(岩波書店、2000年)、および三谷太一郎『近代日本の戦争と政治』(岩波書店、1997年)を取り上げ、議論を深めた。
(3)
戦中と戦後の連続を主張する「総力戦体制」論の観点から考えるために、伊豫谷登志翁・成田龍一・岩崎稔編『山之内靖 総力戦体制』(ちくま学芸文庫、2015年)を取り上げた。
(4)
「戦後民主主義」を批判する論調を理解するために、一方で保守の側から、大熊信行『日本の虚妄 [増補版]―戦後民主主義批判』(論創社 2009年)を取り上げ、他方で新左翼の側から、谷川雁・吉本隆明・埴谷雄高・森本和夫・梅本克己・黒田寛一『民主主義の神話』(現代思潮社、1966年、新版は2010年)を取り上げ、検討した。
(5)
アメリカの日本研究の中から、日本の民主主義について、「インペリアル・デモクラシー」(A・ゴードン)や「天皇制民主主義」(ジョン・ダワー)と概念化される問題提起を検討するために、ジョン・ダワー『敗北を抱きしめて』(岩波書店、2001年)、アンドリュー・ゴードン(岡本公一訳)「日本近代史におけるインペリアル・デモクラシー」『年報日本現代史』第2号<現代史と民主主義>(東出版、1996年)を取り上げた。

2016年度

開催日時 2016年5月27日 16時40分 ~ 19時
開催場所 啓明館2階 共同研究室A
テーマ 鶴見俊輔のアナキズム研究序説――ハンセン病へのかかわりに着目して
発表者 宮下祥子氏
研究会内容  5月度の定例研究会は、5月27日(金)16時40分~19時、啓明館二階共同研究室Aにおいて行われた。発表者は立命館大学社会学研究科博士課程に所属する宮下祥子氏である。テーマは、「鶴見俊輔のアナキズム研究序説――ハンセン病へのかかわりに着目して」であり、同氏が執筆した修士論文の一部を報告する形式で行われた。
 報告ではまず、鶴見俊輔に関する先行研究に対して、以下のような問題提起がなされた。鶴見は、エスタブリッシュメントに出自を持つ戦中派世代であり、当初はファシズムの担い手たる「民衆」に強い恐怖と侮蔑を抱いていた。にもかかわらず、後に「民衆」の知性を称揚するに至った因果関係は明らかにされていない、というものである。それに対して、同氏は、鶴見のハンセン病者へのコミットメントに着目することで、鶴見が「民衆」こそが真に思想をもつという信念を抱くようになった経緯を突き止めようとしている。
 報告の結論と今後の課題として、主に以下の3点が提示された。第一に、鶴見のハンセン病へのコミットメントは、特権を持たない「民衆」こそが真に思想をもつという、1950年代はじめに鶴見が抱き始めていた信念を強化した。第二に、ハンセン病者へのまなざしには、「閉ざされた者」に対する憧憬と、願望を投影した読み替え(フィクション)があった。「閉ざされた者」が「自らの言葉で語る」ことを触発し支援する姿勢を導いた点が注目される。第三に、今後の課題として「交流の家」建設運動とベ平連での活動のリンクや鶴見の在日朝鮮人への姿勢を見る必要性が挙げられた。
 報告に対して、参加者からは質問や意見が多数提起された。鶴見俊輔研究とどまらず、政治思想における「民衆」概念などに関する活発な議論がなされた。