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第6研究 近世から近代に至る日本伝統文化の分野横断的研究とデータサイエンス教材への活用研究代表者:福田 智子(文化情報学部)

 本研究は、近世から近代にかけて製作された同志社大学所蔵の歌留多や図絵、伝書等の史料を中心に、文学・語学・歴史・雅楽・儀礼・美術・芸道といった多角的な視点から研究することにより、各分野相互の関連性の中に、日本における伝統文化享受のあり方を再構築することを目的とする。
 そこで、テキストや図柄を比較・分類し、周辺史料との類似点や影響関係の発見を容易にするため、それらの情報を集積したデータセットを整備する。これは、文系学生を対象とするデータサイエンス教材にも活用可能である。
 史料調査は、同志社大学宮廷文化研究センターと連携して随時行う。また、分野ごとの研究会を隔月開催し、全体集会を年4回程度開催する。研究会の一部は録画し、YouTubeにて一般公開する。

2023年度

開催日時 第2回研究会・2023年9月5日 10時30分~17時
開催場所 同志社大学今出川校地 光塩館地下1階会議室
テーマ 夏の研究集会 第2日
発表者 中安 真理 他
研究会内容 高野山「明神講式」伝本について
中安 真理(同志社大学文化情報学部准教授)
 科研費による高野山「明神講式」伝本調査の中間報告を行う。国内に現存する伝本を対象に比較研究を続けており、これまでに得た知見を述べる。たとえば、伝本の系統は書写本、版本ともに複数認められること。その祖型を求めるに、現行の「明神講式」とは文言の異同があること。同じく高野山の地主神を讃える「山王講式」は断片的にしか知られないが、「明神講式」とは異なるものであったと考えられることなどである。

即位式絵図をめぐる諸問題―紫宸殿上の後見をめぐって―
末松 剛(九州産業大学地域共創学部教授)
 江戸時代に作成された即位式絵図や装束指図を通覧すると、天皇を補佐・後見する摂政・関白の配置には3つのパターンが存在する。絵図・指図にその歴史的意味までは記されないが、それらは平安中後期あるいは室町時代に当該期の政治状況を反映して成立した配置であった。そのことを確認しつつ本報告ではさらに、紫宸殿上の後見者の配置を創り出した藤原兼家・道長に注目し、平安中期の記録にも踏み込んで解釈を及ぼしてみたい。

歌仙絵の装束―『中古歌仙』を中心に―
福田 智子(同志社大学文化情報学部教授)
 同志社大学蔵『中古歌仙』は、歌仙絵に和歌1首を添えた巻子本2巻全36図である。神田道伴の寛保四年(1744)の極めでは、狩野洞雲(1625-1694)画で、上巻は柳原資廉(1644-1712)筆、下巻は花山院定誠(1640-1704)筆とされる。
 内容は、寛文元年(1661)版本「中古歌仙」に重なる。同志社大学文化情報学部蔵「新三十六歌仙絵短冊」もこれと同じである。そこで、これら3本の和歌本文を確認し、歌仙絵をその系譜に位置づける。

吉井勇『京洛史蹟歌』はどのような歌集か : 戦後における収録歌のゆくえ
南里 一郎(立命館大学情報理工学部非常勤講師)
 吉井勇の歌集『京洛史蹟歌』(昭和19年2月)の再評価を試みる。作者自身が歌集『玄冬』の後記で「傍系」の歌集と述べ、全集でも「尽忠報国の精神を歴史的人物の顕彰のなかにこめた」集として収録されていない。だが、500首超とまとまった歌数があり、そこから戦後の歌集に多数再録されるなど、軽視しがたい面もある。全体の構成と歌の検討によって、戦中から戦後にかけての作者の歌集作りに対する意識を探る。

吉井勇の芝居歌―南座戦後編―
田坂 憲二(慶應義塾大学文学部元教授)
 『吉井勇全集』未収の芝居歌を取り上げる。戦前に『鸚鵡石』『悪の華』などの芝居歌集があり、戦後は東京歌舞伎座再開から長逝までの十年間筋書に歌を求められ、晩年も芝居歌だけで単独の歌集の編纂を意図していたほど、この歌人にとって重要な部分を占めるものである。ただ全集編者の編集方針で戦後の芝居歌のほとんどすべてが割愛された。発表者は、手つかずの戦後の芝居歌の集成を試みているが、今回は、特に南座の芝居歌を、筋書・雑誌・新聞・原稿等から収集して報告する。京都に所縁ある会員諸氏の御批正をお願いするものである。
開催日時 第1回研究会・2023年9月4日 10時30分~17時
開催場所 同志社大学今出川校地 光塩館地下1階会議室
テーマ 夏の研究集会 第1日
発表者 森 あかね 他
研究会内容 高等専門学校における古典教育 ―高専生による『源氏物語』映像制作
森 あかね(香川高等専門学校一般教育科講師)
 2022年度に高等学校の学習指導要領が改訂となり、古典学習における必要性の是非が問われている。高等専門学校は高等学校とは異なるカリキュラムでの授業実施ではあるものの、実践的なスキル習得に紐づけた新たな古典学習を目指す動きが各校で起きている。その一環として、香川高等専門学校での新たな実践である、レゴ® マインドストーム® EVを用いた『源氏物語』の映像作品の制作について紹介する。

江戸時代にみる花結びの伝承―ジェンダーの視点から―
矢島 由佳(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程・日本学術振興会特別研究員)
 花結びは、日本の伝統文化の一つとして認識されているが、その文化の伝承過程は明らかにされていない。とりわけ、これまでジェンダーに焦点を当てた当該研究は十分になされていない。それゆえ、本研究は、伝統工芸史研究で看過されることが多いジェンダーの視点に注目し、江戸時代に花結びがどの様に伝承され、その文化が醸成されたのかを史料考察を通じて明らかにすることを目指す。

前近代宮廷における先祖祭祀―近世史料にリストアップされた陵墓と位牌―
石野 浩司(同志社大学宮廷文化研究センター研究員)
 黒船来航から和親条約締結に到る宸翰において、孝明天皇は皇統意識「神宮を始め奉る御代々」を繰り返し表明する。この「御代々」を『長橋局記』が「泉涌寺御代々様」と換言しているように、天照大神から神武天皇以下連綿とつづく皇統意識というよりも、この時点における近世皇室の先祖観はいまだ限定的な範囲にとどまる。本発表は、近世史料から朝廷・幕府・泉涌寺の三者が共有する「前近代宮廷の先祖祭祀リスト」の抽出を目的とする。

『為頼集』哀傷贈答歌にみられる「喪失」表現について―第82・83番歌の贈答歌を視点として―
古瀨 雅義(安田女子大学文学部教授)
 『為頼集』第82・83番歌の贈答歌は、一条の大殿(藤原伊尹)が逝去したのち、藤原為頼と桃園殿(源保光)が故人との思い出を、桃園殿という場所と絡めながら偲んで詠んだ哀傷歌である。
 『為頼集』に収められた歌の特徴のひとつに「喪失」を詠んだものが多いことが指摘できるが、この贈答歌について、伝本の校異を比較しながら用いられている歌語の表現を考察すると、故人を偲ぶ哀傷歌の典型的な詠み方を指摘できる。今回の発表では、為頼が関わる文化圏における歌の表現について考察する。

三条西様と源氏物語関連の組香―公正様、堯水様、和草会―
矢野 環(同志社大学名誉教授)
 戦後御家流宗家に推戴された三条西公正氏は、実践女子大学の香道部も含めて、様々な活動をされた。『源氏物語新組香 上』もその成果の一つではあるが、設定が複雑な組香も多く、結局『同 下』は発行されなかった。三条西様の御考えを振り返ると共に、最近にまた「源氏物語新組香」を作成・実行しておられる「和草会(にこぐさかい)」(大谷香代子代表)の成果も含めて紹介したい。録画はYouTubeにて公開https://youtu.be/7s1WSNyiVLY

2022年度

開催日時 第4回研究会・2023年3月17日 13時~17時
開催場所 同志社大学京田辺校地 夢告館212教室、Zoomによるリモート併用
テーマ 春の研究集会 第2日
発表者 南里 一郎 他
研究会内容  今回の研究会では、春の研究集会第2日として、以下のとおり、研究発表と講演を行った。
《研究発表》
吉井勇の歌集『天彦』の改訂について
南里 一郎 (立命館大学情報理工学部非常勤講師)
〈要旨〉
吉井勇の歌集『天彦』は、昭和14年に甲鳥書林から初版(939首)が、昭和22年に創元社から改訂版(928首)が刊行された。両者の本文の異同には、歌の有無、歌順、歌句の違い、漢字・仮名・振り仮名の違いなど多様なものがある。このうち、作者が行ったとみられる改変については、従来、占領軍の検閲を警戒したという理解がなされていたが、それだけでは不十分に思われる。異同の大きい箇所を検討し、作者の意図を探る。

『新島襄全集』を資料としたTEIガイドラインによるテキスト構造化試案
入江 さやか(岐阜女子大学文化創造学部)
〈要旨〉
『新島襄全集』のうち、まず、第3巻「書簡編Ⅰ」をTEIガイドラインに準拠してテキスト構造化し、語学的な観点からだけでなく、歴史や文化などの観点から多角的に利用できるようにWEBで公開することを目指す。同志社大学リポジトリで公開されている『新島襄全集』のPDFや、新島遺品庫に収録されている画像とリンクさせ、差出人、宛先、執筆日時、人名、地名、語種(特に漢語・外来語)などのタグをつける。

《講演》
文系学生向けのデータサイエンス講義の実践
原 尚幸
(京都大学国際高等教育院附属データ科学イノベーション教育研究センター)
〈要旨〉
近年、話題となっているデータサイエンスの教育は、古典的なデータ分析だけでなく、AI・機械学習の基本の習得も着地点となっている上に、文系学部を含むあらゆる学部を対象としていることから、従来の統計教育とは区別して設計する必要があると感じている。今年度、京都大学と同志社大学において、全学共通科目の文系学生向けデータサイエンス・統計学の講義を担当する機会を得た。本講演では、講義のシラバス、教材開発をする上での考え方、実践してみて考えたこと、今後の課題など整理する。

多変量解析の教育での幾つかの試み
矢野 環(同志社大学名誉教授、元 文化情報学部教授)
〈要旨〉
文化情報学部での定量的分析の授業・演習は、当初 Excel のマクロで行った。だが、日本における R の開拓者である金明哲氏も居られ、早々に R に変更し、さらに RStudio を早くに導入した。これらの整備には当時の、大森崇、原尚幸両氏(共に現在 京都大学)に、一方ならぬお世話になった。そこで、多変量解析(因子分析でのbifactor, 線形化した対応分析、Cramer's 利用など)と、効果量、有意症などにも触れたい。

※なお、矢野環氏の講演については、講演者の許可を得た上で、YouTubeに録画をアップしている。URLは次のとおりである。
https://youtu.be/IWX2UTxCtqY
開催日時 第3回研究会・2023年3月13日 14時~16時30分
開催場所 Zoomによるリモート
テーマ 春の研究集会 第1日
発表者 津田 大輔 他
研究会内容  今回の研究会では、春の研究集会第1日として、はじめに、2022年度の活動内容と2023年度の活動計画を、岩坪健(同志社大学宮廷文化研究センター長)、福田智子(第6研究会代表)より報告・説明した。
 次に、以下のとおり、研究発表と講演を行った。
《研究発表》
香雪美術館所蔵 伊勢物語図色紙の服飾表現
津田 大輔(滝川高等学校教諭)
〈要旨〉
鎌倉時代には、裳唐衣の「正装」や「小袿」など、古くからの伝統の装束に加え、重ねの枚数の少ない袿である略礼装の「三衣」「二衣」「薄衣」が使用された。これらの装束は、『とはずがたり』『竹むきが記』をはじめとする鎌倉時代の王朝文学にもしばしば登場し、注釈の必要上研究がおこなわれてきた。しかし、薄衣を描いた絵画はしばしばあるものの、二衣を描くものは少なく、三衣に至っては信頼できる絵画資料が僅少である。加えて三衣にはしばしば薄衣が重ねられたが、三衣と薄衣のいずれを上に重ねるかがわかる資料は管見に入らない。ところが香雪美術館所蔵の『伊勢物語図色紙』の「春日の里」の図には、三衣の下に薄衣を重ねる描写が見られる。また、「盥のかげ」に描かれる鱗形文様は古い染織品に例があり、桜扇文様は北山殿行幸での使用例が見られるなど、細部の描写も中世の様式を示しており、風俗史資料としての高い価値が認められる。
《講演》
源氏絵の調査紀行 
岩坪 健(同志社大学文学部教授)
〈要旨〉
一年ほど前、世に知られていない源氏物語絵、しかも住吉具慶の真筆という代物に遭遇し、それを紹介するため、具慶とその父(住吉如慶)の作品を調査することになった。多くの名品を拝見して、実りのある一年だった。とはいえ、初心者にとっては険しい道のりの連続でもあった。その苦労話や、国文学界とは異なる研究分野における、源氏絵研究のありかたを述べる。
開催日時 第2回研究会・2022年9月12日 14時~17時30分
開催場所 Zoomによるリモート
テーマ 夏の研究集会 第2日
発表者 内田 康 他
研究会内容  今回の研究会は、夏の研究集会第2日として、下記のとおり、1名の講演と2名の研究発表を行った。
《講演》
台湾を例にした海外における競技かるたの拡がり
―外国文学・文化としての日本古典とその教学に触れつつ―
内田 康(京都府立大学 文学部 共同研究員・ゲスト講師)
〈要旨〉
 かつて淡江大学にて競技かるたを指導した経験から、まず、台湾における競技かるた人口の広がりを述べる。そして、視野をアジア、ヨーロッパに広げ、さらにロシアの事例を取り上げる。いずれの場合も、アニメ「ちはやふる」の影響が大きいのは言うまでもない。また、台湾の教育現場において、『百人一首』を「外国文学」として取り上げた経験を具体例とともに紹介する。

《研究発表》
『源氏物語』の古筆切研究の方法と課題と
―国文学研究資料館蔵 新収伝冷泉為相筆「夕顔」巻断簡の紹介もかねて―
瀧山 嵐(総合研究大学院大学 文化科学研究科 日本文学研究専攻 博士後期課程・ゲスト)
〈要旨〉
 奈良時代から室町時代末頃までに筆写された書物を、主に筆蹟の鑑賞を目的として切断・分割した「古筆切」という資料がある。本発表は、三条公敦(1439-1507)と冷泉為相(1263-1328)とを筆者として伝える『源氏物語』の古筆切や関連資料を含む調査・分析を通して、既知の伝本研究や本文研究との関連に言及したうえで、古筆切の研究資料としての価値について述べる。

夕顔の「形代」としての玉鬘考―篝火に対する光源氏の指示に着目して―
古瀬 雅義(安田女子大学 文学部 教授・人文研嘱託研究員〈社外〉)
〈要旨〉
 玉鬘の研究は、玉鬘物語を構成する方法の考察が主流だが、本研究では篝火巻で光源氏が明かりの暗さに過剰反応し「右近大夫」に明るい状態を保つよう厳命する言動に注目し、夕顔巻で夕顔がなにがしの院の暗闇の中で物の気により気を失い絶命する場面の描写と、篝火巻の明かりを巡る描写との密接な関わりの検証から、玉鬘が光源氏にとって未だに忘れられない青春の幻影である夕顔の「形代」として描かれている有り様を考察する。
開催日時 第1回研究会・2022年9月6日 14時~17時30分
開催場所 Zoomによるリモート
テーマ 夏の研究集会 第1日
発表者 南里 一郎 他
研究会内容  今回の研究会は、夏の研究集会第1日として、下記のとおり、2名の研究発表と1名の講演を行った。
《研究発表》
吉井勇の歌集『玄冬』の改訂は何を意味するか
南里 一郎(立命館大学 非常勤講師・人文研嘱託研究員〈社外〉)
〈要旨〉
 吉井勇の歌集『玄冬』(昭和19年3月)は、日本の敗戦を挟んで、2年後の昭和21年6月に改訂版が上梓された。この改訂では、全歌の4分の1以上を削除し差し替える、大幅な変更が行われている。木俣修は「吉井勇全集」の解説で、昭和16年以降の戦時時局詠を中心に削除や変更が行われている点から、連合国軍総司令部(GHQ)による検閲を恐れての改変結果とみたようであるが、本発表では、検閲逃れというだけではない吉井自身の改訂の意図を探った。

光源氏元服式の挿画 ―物語と史実との間―
福田 智子(同志社大学 文化情報学部 教授・人文研兼担研究員)
〈要旨〉
 『源氏物語』の特定の場面を絵画化するにあたり、物語本文に語られていない内容が描かれることはしばしばある。本発表では、桐壺巻の光源氏元服の場面に着目して、桐壺帝の前に跪く公卿が捧げ持つもの(乱箱や祝詞、冠等)と史実との関わりを再確認し、さらに、光源氏の鬟結、桐壺帝の表袴の霰紋のシンボル性を通して、光源氏元服式の絵画化の要素と図柄のパターンについて考察した。

《講演》
香道の盤物について ―『香式』と『香道籬之菊』―
矢野 環(埼玉大学 名誉教授・同志社大学 名誉教授・人文研嘱託研究員〈社外〉)
〈要旨〉
 18世紀の香道伝書について、とくに盤物を取り上げ、その継承関係を具体的に考察した。その結果、『香道賤家梅』が、それまでに成立した伝書からの利用、引き写しであるのに対し、『香道籬之菊』は、基本的には既存の盤物からの引用を避けていることがわかった。そして、『香道籬之菊』所載の盤物は、後の伝書に受け継がれていくという様相を呈している。
※なお、本講演については、講演者の許可を得た上で、YouTubeに録画をアップしている。URLは次のとおりである。
https://youtu.be/BOgNX_W11GE