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第11研究 ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 研究代表者:松久 玲子(グローバル地域文化学部、グローバル・スタディーズ研究科)
本研究会は、ラテンアメリカ地域における国際労働移動を研究対象とし、ラテンアメリカ域外、域内における南→北、南→南の国際分業体制に関して比較研究する。周辺から中心(メキシコからアメリカ合衆国)、周辺から半周辺(南米からスペイン)、周辺から周辺(中米からメキシコ、ニカラグアからコスタリカ、南米からアルゼンチン)の国際労働移動に着目し、比較検討することにより、国際分業体制の側面からグローバリゼーションの構造と多様性を明らかにする。また、国際労働移動の女性化(女性の国際労働移動)に着目し、再生産領域におけるグローバリゼーションおよびジェンダー、階層、エスニシティによる国際分業における再配置を手がかりに、「複数のグローバリゼーション」の実態を明らかにする。
2018年度
開催日時 | 2019年3月23日(土) 13時15分~18時15分 |
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開催場所 | 志高館地下SK地下10ゼミ室 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | Natacha Borgeaud-Garciandía(FLACSO Argentina 教授) |
研究会内容 | 今回の研究会では、アルゼンチンより招聘中のBorgeaud-Garciandía氏が、2017年出版の著書Puertas adentro: trabajo de cuidado domiciliario a
adultos mayores y migración en la Ciudad de Buenos Airesにもとづく発表(邦訳タイトルは「アルゼンチンにおける家内労働:
移民・高齢者ケア労働に注目して」)を行った。発表では、同書の章立てにしたがって各章の内容が以下のとおり紹介された。 第一章では、同書のキーワードである「ケア」と「移民」に関するこれまでの研究動向や分析概念についての説明がなされ、発表者が女性労働者(移民を多く含む)の主体性に焦点を当てることで家内労働としてのケアの実態を明らかにしようとしていることが示された。またその事例研究として、アルゼンチンにおける家内労働に従事する移民女性労働者の概況も示された。 第二章では、発表者が聞き取り調査を行った高齢者ケアに従事する女性労働者について、便宜上移民前と後に分けて彼女たちのライフヒストリーが提示された。ペルー、ボリビア、パラグアイなど出身の彼女たちがアルゼンチンへ向かうまでの経済・政治・教育的背景や、アルゼンチン到着後、高齢者ケアに従事するようになるまでの経緯(ケア労働者のネットワークの存在)などが明らかにされた。 第三章では、彼女たちの具体的な語りが適宜引用され、高齢者ケアに従事する日々の暮らしの様子や、これまでは明らかにされてこなかった彼女たちの心情(ケアの受け手であり雇用主である高齢者との関係性など)の描写と分析がなされた。 そして第四章では、ペルー出身のケア労働者エストレージャの語りに焦点を絞り、移民労働者である彼女の視点を通してケアについての考察が深められた。ここではケアを3つの側面(①物質的、②関係的、③感情的)から解釈することの重要性などが指摘された。 出席者からは、ケア労働者の民族性(先住民族か否か)、高齢者ケア労働者とそれ以外の家内労働者(子守りや家政婦)との関係性、高齢者ケア労働者に移民が多い理由(それを誘発する法律の有無等)、発表者が今回の研究に着手した経緯などに関する質問が出た。 |
開催日時 | 2018年12月22日(土) 13時30分~17時30分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 深澤晴奈、浅倉寛子、マルタ・トーレス |
研究会内容 | 今回の研究会では、以下3名がそれぞれ発表を行った。 1.深澤晴奈「ラテンアメリカからスペインへ:複数のグローバル化と女性移民労働者」 本発表は、スペインにおいて家事労働部門に従事するラテンアメリカ出身女性に焦点を当て、移民流入が急増する2000年代前半以降の様相を整理するものであった。発表者は、ドミニカ、ペルー、コロンビア、エクアドルからスペインへ労働移動する女性移民労働者が多いことや、これらの女性移民労働者の雇用機会(就業率や転職の特徴など)と受入国側の経済状況や政策との相互の影響関係を考察した。 参加者からは家事労働者への労働組合の支援活動等についての質問が出た。 2.浅倉寛子「メキシコグアナファト州レオン市とメキシコシティにおける駐在員に同伴する日本人女性に関する研究プロジェクト」 本発表では、発表者が今後新たに着手する研究計画として、メキシコの二都市(レオンとメキシコシティ)に暮らす日本人駐在妻の移動の経験(移民先での社会適応・統合過程における感情的経験)を、感情人類学や感情地理学の視座より記述・分析するという新たな研究の方向性が提示された。 参加者からは、「日本人駐在妻」という身近ではあるものの研究のニッチとなっていた存在に着目することへの激励の声や、二都市を比較する意図について問う声が挙がった。 3.マルタ・トーレス「Entre dos fuegos: invisibilidad y naturalización de la violencia de género contra migrantes en México」 本発表は、2019年4月頃出版予定の書籍の内容にもとづき、中米諸国からアメリカ合衆国を目指して移動する女性たちが、経由地メキシコに辿り着く過程あるいは長期滞在を余儀なくされるメキシコ国内において経験する多種多様な暴力の現状を概観し、問題提起を行うものであった。 発表者は、メキシコ人移民がアメリカ合衆国内で経験してきたエスニシティや社会階級に起因する差別が、メキシコ国内においては中米移民に向けられていること、その差別が暴力と紙一重であること、そして女性移民が暴力(性的暴力など)と罪悪感との板挟みになっている状況を指摘した。 |
開催日時 | 2018年10月20日(土) 13時30分~17時30分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 田沼幸子、窪田暁 |
研究会内容 | 今回の研究会では、以下2名の発表および講演が行われた。 1.田沼幸子「「革命の子どもたち」が親になる時―バルセロナで生きるキューバ人の戸惑い―」 本報告は、1959年の革命を経て生まれ、「革命の子供たち」として育ったのちにスペインに渡ったキューバ人達がどのような理由で、どのようなやり方で移動し、どのように自己を現在の状況で認識しているのか、という問いかけへの応答を試みるものであった。 発表者は、これまでに実施したマルチサイテッド・エスノグラフィーの成果を踏まえながらも、新たに行ったバルセロナでの参与観察と聞き取り調査の結果にもとづき、30代後半から40代にかけてのキューバ人達のライフヒトーリーを紹介した。そして彼、彼女らのなかにあるキューバで育んだ社会主義的価値観と呼べそうなものが、バルセロナで子供をもつという経験をとおして、葛藤をはらんだものになりつつある現状を明らかにした。 2.窪田暁「「野球移民」からの問いかけ―ドミニカ共和国とアメリカにまたがる扶養義務のネットワーク―」 本報告は、ドミニカ共和国からアメリカに渡る野球選手を対象として、彼らの移住経験をとおして浮かびあがるドミニカの人びとの生活世界を、母親中心家族を起点とする扶養義務のネットワークの実態に着目して明らかにするものであった。 発表者は、研究対象であるドミニカの「野球移民」を、先行研究において定義されている「スポーツ移民」現象のひとつとして位置付けた上で、これまでの関連研究では見過ごされていた、移民を送り出す側の人びとの視点からの考察を試みた。そして結論として、「野球移民」という現象には送り出す側の社会つまりバリオ(共同体としての町)の「母親中心家族」の実態が強く関係していることを指摘した。また、この「母親中心家族」という女性が扶養義務システムを支える形態を、維持あるいはより一層強化する新たなパトロンとして、「野球移民」が富の分配に寄与している様を明らかにした。 |
開催日時 | 2018年7月21日(土) 13時30分~17時00分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 山内熱人、戸田山祐 |
研究会内容 | 1.松久教授より出版について以下のとおり説明があった。 仮題を『ラテンアメリカにおける国際労働移動とジェンダー・エスニシティ』とした。出版申請を9月中旬に行うため、原稿の提出締め切りを8月31日とする。研究会員は原稿の提出を前提とし、収録にふさわしいと判断された論文をまとめて単行本とする。本に収録されなかった論文については、『社会科学』に特集を組み、出版することとする。なお、次回研究会予定は10月20日(土)。 2.研究発表は以下の2つであった。 (1)山内熱人「メキシコ調査報告(性規範変化の言説など)」 本件報告は、研究会予算を用いて2018年2月17日から3月12日まで行った、メキシコ(オアハカ州サン・ライムンド・ハルパン)での調査報告であった。研究手法は、聞き取り調査と参与観察を行った。 報告では、複数の調査協力者による語りが紹介され、主に1.婚姻の形態(法律婚、教会婚、事実婚の3種類)と、調査協力者たちがそれをとることになった理由、2.女性が働くことと性別役割について(男性の稼ぎ手がいる状況下では歓迎されない事実)、3. 女性であることの抑圧と苦難の現状、に焦点があてられ、女性たちの語りが報告された。 (2)戸田山 祐「地域レヴェルでのメキシコ系住民政策-カリフォルニアの事例を中心に-」 本件報告は、1940年代末から50年代までの米国カリフォルニア州におけるメキシコ系住民・労働者に対する州政府の施策に注目したものである。国籍や法的地位の差によって地域住民・労働者を区別し、特に非合法移民を問題視する現行の体制が成立した背景を明らかにすることを目的とした。 1950年代の米国では、移動・農業労働者の権利保障を目指した動きがあったが、その一方で、非合法移民の排除や合法的な短期移民労働者の入国規制を求める動きもあった。包摂されるメキシコ系アメリカ人(および合法的に就労するメキシコ人)と、排除される存在としての外国人労働者を区別する論争は当時から存在し、現代アメリカの移民政策の議論への端緒となっている可能性があることを指摘した。 |
開催日時 | 2018年5月19日(土) 13時30分~17時00分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 黒田悦子、北條ゆかり |
研究会内容 | 以下2つの研究発表が行われた。 (1)黒田悦子「中米先住民のトランスナショナルな労働移動と故郷のローカルな共同体・地域の変革の可能性―メキシコ、オアハカ州の例を基点としての記述と論評」 今回の発表の目的は、以前本研究会にて報告された論文に添付する、概念図(越境先住民のアソシエーションと故郷の共同体・地域との関係)と地図(先住民族のメキシコにおける分布とアメリカ内の主たる居住地)に関する説明であった。主に、概念図に挿入する用語に関する質疑応答が行われた。 (2)北條ゆかり「メキシコ人ディアスポラによる出身地支援-ニューヨークシティ大都市圏からプエブラ・オアハカ州へ」 今回の発表は、2017年8月及び2018年2月の調査をもとにしたもの。メキシコ系移民が移住先であるアメリカでどのようにエンパワーメントを達成しているかを解明するために、(a)公的機関、(b)民間セクター、(c)女性アクティビスト、の活動に着目して、実態を詳細に調査した。質疑応答では、現在の分析視点である「共同体精神」ではなく、他の分析視点を使っても面白いのではないか、とのコメントがあった。 |
2017年度
開催日時 | 2018年3月3日(土) 13時30分~17時00分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 柴田修子、松久玲子 |
研究会内容 | まず、松久教授より、研究会の成果物となる書籍出版の今後の流れについての説明が行われた。その後、以下2つの研究発表が行われた。 (1)柴田修子「南米域内の国際労働移動-コロンビアからチリへ-」 コロンビアは世界第2位の移民輸出国であり、移民の理由としては経済的な理由が大多数である。しかし、統計には表れない現象を捉えるために、本研究ではコロンビアからチリへの移民の流れを取り上げる。 コロンビアからの移民が増加している背景には、コロンビア経済の不調と国内暴力事件の増加があるが、特にチリへの出稼ぎには、チリ経済が好調であることと、鉱山労働の需要があることが挙げられる。そこで、チリに出稼ぎにきたコロンビア人に対し、出稼ぎの理由に関するより詳細な調査を、インタビューから明らかにすることを試みた(本件科研費を使用してのチリ出張調査)。チリ太平洋岸南部のトゥマコにおける16名に対するインタビュー調査を行った結果、チリへの出稼ぎが増えた背景には、①社会的ネットワークが機能していること(先に移住した夫や知人を頼りに移住)、そして②コロンビア特有の問題としての国内暴力状況があるという傾向が明らかとなった。 質疑応答では、「社会的ネットワーク」や「暴力」の定義について、しっかり記述すること等が指摘された。 (2)書籍の序章にあたる部分について、松久教授より発表が行われた。なお、本研究会の研究成果である書籍の目指すところは以下のとおり。 (a)21世紀のラテンアメリカ地域からの国際労働移動を対象として、ラテンアメリカ域外・域内における南⇒北、南⇒南の移動に伴う国際分業体制とそれをめぐる事象の比較研究を行うこと。 (b)移民研究における世界システム論に依拠し、域内・域外の国際移動を比較検討することにより、労働力移動を軸とした国際分業体制の側面からグローバリゼーションの構造と多様性を明らかにすること。 発表は、最近の移民研究の理論的枠組み、ラテンアメリカにおける国際移民の人口統計的な特徴、ラテンアメリカにおける国際移民研究の動向について行われた。 また、松久教授より、近年では、エスニシティ、ジェンダー、人権レジームなどといった視点での研究が次第に増加している現状にある、書籍編纂の際に、個別の研究をどうマッピングさせていくかという問題が残っているため、自らの研究がどのような視点でどこに位置づけられるのかについて把握して欲しい、との発言があった。 |
開催日時 | 2017年12月16日(土) 13時00分~18時30分 |
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開催場所 | 志高館 SK103 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 柴田修子、Marta Torres Falcón |
研究会内容 | 今回の研究会は、日本ラテンアメリカ学会西日本部会、ラテンアメリカ政経学会との共催で研究会を行った。 1.13:00~15:00 座談会「学会を振り返る」 日本ラテンアメリカ学会の主催で、ラテンアメリカ地域研究のこれまでの歩みを座談会方式で振り返った。登壇者として松久が参加した。 2.研究発表 (1)Manuel Azuaje-Alamo(ハーバード大学比較文学学科博士課程後期)「21 世紀 のラテンアメリカ小説のなかの「日本像」- マリオ・ベジャティンとアドリーアナ・リスボアを中心に」 要旨:「本発表では、21 世紀のラテンアメリカ文学における「日本像」について、現代ラテンアメリカの若手文学者の作品で見られる最近の風潮を考察する。今世紀に入ってから、ポストモダン文学に近い形式で日本文学からのモチーフを取り入れる小説が多い。その傾向が見られる複数の文学作品から代表作として次の二作品を検討する。 メキシコ人のマリオ・ベジャティン(Mario Bellatin)の『村上夫人の荘園 El jardín de la señora Murakami』(2000)とブラジル人のアドリーアナ・リスボア(Adriana Lisboa) の『落柿舎 Rakushisha』(2007)である。 (2)岡田勇 (名古屋大学国際開発研究科)「グローバルとローカルの間で―ボリビアにおける日本からの中古車輸入と合法化についての考察-」 要旨:近年の日本‐ボリビア間の中古車貿易は、グローバル経済の非ヘゲモニックなつながりについて興味深い事例を提供している。2000年代後半に、ボリビアは世界でも有数の日本製中古車輸入国となったが、その後政府は輸入に制限をかけた。ところが2011年にボリビア政府は密輸中古車を合法的に登録させる法律を制定し、約7万台が登録された。本報告では、こうした中古車輸入動向と政策をグローバルとローカルの間の調整ととらえ議論した。 (3)柴田修子(同志社大学人文研嘱託研究員)「社会運動としてのサパティスタをめぐる研究動向」 要旨:発表では、社会運動論の立場からサパティスタ運動がどのように理解されてきたかを、研究動向を整理しながら紹介した。社会運動の要因や発展については資源動員論、フレーミング論、政治的機会構造論などのアプローチがあるが、特にフレーミング論に着目して運動の支持拡大を説明した論を取り上げ、運動のグローバル化とローカル性について考察した。 3. 講演 Dra. Marta W. Torres Falcón(メキシコ首都大学社会学部) 最近20年間のメキシコのフェミニズム運動の動向を分析した。メキシコでは、暴力、が中心テーマとなっていた。 |
開催日時 | 2017年10月21日(土) 13時30分~17時30分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 北条ゆかり、佐藤夏樹、宇佐見耕一(以上、輪読発表者) |
研究会内容 | 今回の研究会は、以下の2部構成にて開催された。 1.第一部:輪読会:サスキア・サッセン『グローバル空間の政治経済学』 前回に引き続き、サッセンの本の輪読が行われた。 〈報告者〉 北条ゆかり(第5章「移民とオフショア生産:第三世界女性の賃金労働への編入」) 佐藤夏樹(第6章「サービス雇用レジームと新たな不平等」、7章「インフォーマル経済:新たな発展と古い規制」) 宇佐見耕一(第8章「電子空間と権力」、第9章「国家とグローバル都市:場」) 2.第二部:書籍化についての議論 (1)本研究会活動によりまとめられた研究論文の書籍化に関する構想を議論するにあたり、今回は(株)晃洋書房の編集部担当者2名を招き、議論に参加して頂いた。 (2)現時点での仮題と論文構想について、研究会参加メンバーからそれぞれ説明があった。 |
開催日時 | 2017年7月22日(土) 10時30分~16時30分 |
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開催場所 | 至高館 SK213、214 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 戸田山祐、北条ゆかり、 Marta Torres Falcón、 Carmen Fernández、浅倉寛子 |
研究会内容 | 1.今回の研究会は、以下の2部構成にて開催した。 (1)第一部 10:30~13:30 輪読会:サスキア・サッセン『グローバル空間の政治経済学』第2章~第5章 〈報告者〉 第2章、第3章:戸田山祐 第4章、第5章:北条ゆかり (2)第二部 13:30~16:30 FGSSセンター・人文研第11研究会共催講演会『ジェンダー、移動、暴力-移民の送り出し・受け入れ・中継地であるメキシコの現状—』 講演会では、以下の3名の発表が行われた。 ○“Stigma, violence and dignity: a debate on sex work in Mexico” by Marta Torres Falcón (Universidad Autónoma Metropolitana-Azcapotzalco) 〔要旨〕Sex workは歴史上常に存在してきたが、現代社会ではさらに拡大し、利益を出すビジネスとなっている。sex workとは何か、法制化が必要なのか、女性を保護するために誰を罰するべきなのか、どんな保護が必要なのかという議論はつきない。その仕事は“見えない”からこそ自然化されてしまっているが、女性のみがそのような立場におかれている事実をどう理解するかは、ピューリタニズム、ラディカル・フェミニズム、リベラル・フェミニズムの立場によって違う。メキシコでは、売春を自由売春と強制された売春とに分けており、強制された売春は違法であるが、売春はそもそも他の職業とは違い、常に不平等で暴力的であるから、廃絶されるべき問題である。 ○“Intraregional and a north-bound Central American migrants at the Southern Mexican border: An increasing context of violence and the role of agency” by Carmen Fernández (Centro de Investigaciones y Estudios Superiores en Antropología Social-Sureste) 〔要旨〕メキシコ-グアテマラ国境を越えた移動については、ただ単に経済的な問題ということだけでなく、安全保障上の問題になってきていることから、その観点からの政策が形成されつつある、また、越境行為は様々な暴力と困難を伴うことから、結果的に国境付近での長期的な滞在につながっている。国境を超える活動はますます自明のものとなりつつあり、越境という行為自体が、構造の変化を示唆している。 ○「残酷な暴力―中米移動女性に対する継続的性暴力」 by 浅倉寛子 (Centro de Investigaciones y Estudios Superiores en Antropología Social-Noreste) 〔要旨〕メキシコでは、女性であることを理由に女性を殺害する(femicide)が増えている。その原因の1つとして、グローバリゼーションによる経済的再構築により、下位に位置付けられた男性の不満が女性への暴力へつながった事が挙げられる。その手口の残酷性が高まっていることから、これを個人間の関係からくる犯罪と解釈するのは誤りである。3人の女性への聞き取り内容をフェミニストの枠組みを融合させて分析すると、男性の女性に対する暴力は、女性が男性の領域へ侵入したことへの警告だけでなく、男性性の肯定化をメッセージとして使えるカンバスとして利用していることが見えてきた。性暴力を理解するには、構造的条件と各主体の個別の条件という両面から考察する必要性がある。 |
開催日時 | 2017年6月18日 15時30分~19時20分 |
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開催場所 | 志高館 SK地下6 およびSK104 |
テーマ | アメリカ農業を支える移民労働者 |
発表者 | 田中敬子氏(ケンタッキー大学) |
研究会内容 | 本回の研究会は、2部形式で行われた。 第一部 15:30~17:30(SK地下6) 「サスキア・サッセン 『グローバル空間の政治経済学』序章と第1章の輪読し、移民研究の理論枠組みに関する討論を行った。 第二部 17:30~19:20(SK104) アメリカ研究所第6部門研究会との合同研究会で、田中敬子氏の講演会を開催した。田中敬子氏は、はじめに米墨国境の壁に代表されるトランプ政権の移民政策を紹介した上で、在米外国人の人数やカテゴリー、出身国の内訳などの現状を分析した。特に、不法移民(illegal immigrants)と表象されることの多い人々について、移民法における「移民」の定義とはずれが生じるので、未登録外国人(undocumented foreigners)と呼ぶべきであると主張した。また、未登録外国人の入国数が2009年以降減少していること、平均滞在年数が長期化していることも併せて紹介した。 次に、現在のアメリカ農業が未登録外国人の労働力に依存している状況を、労働者数、雇用年数などの側面から分析したうえで、未登録外国人労働者に関する研究の不足、さらには、彼らを農場に斡旋している中間請負業者の研究の必要性を指摘した。同時に、未登録外国人労働者の立場の弱さ(組合不加入の問題、移民局への恐怖など)を解決すべき問題として提示した。 最後に、トランプ政権の移民政策が進行していく中で、未登録外国人が帰国せざるを得なくなることの影響として、農業の機械化が加速する一方、習得した技術を生かすために帰国する労働者が増えるのではないか、というフィリップ・マーティン教授の見解を紹介した。 フロアとの討論では、農業労働とそれ以外の職業(サービス業)などでは、滞在年数に違いが出るのではないか、収穫期以外の時期にどのような仕事が行われているのかという質問に対し、報告者は収穫の仕事を求めて各地を転々と移動する労働者や、数年農業労働を行った後、別の職業へ移行する労働者の状況を紹介した。また、メキシコで実際にかつてアメリカで働いた人々と接した経験から、農業技術の移転などあり得るのかという疑問も呈されたが、労働者の監督技術などは活かされることもあると述べた。 |
開催日時 | 2017年5月13日(土) 13時30分~17時30分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | Martha Irene Andrade Parra(同志社大学大学院GS研究科院生) 佐藤夏樹(同志社大学GR学部講師) 戸田山佑(東京大学講師) 柴田修子(同志社大学GR学部講師) 渡辺暁(山梨大学教授) |
研究会内容 | 以下の5名の発表が行われた。 (1)Martha Irene Andrade Parra 「Ambivalent Discourses; Identity Construction and Locality Production among Nikkei Peruvian Immigrants in Japan」 本研究は、関西圏に在住するペルー人及び日系ペルー人のコミュニティにおけるassociationの役割に焦点を当て、その集まりが民族アイデンティティの維持とローカル性の創出にどのように貢献しているかを参与観察とインタビューを通じて調査した(2016年にGSに提出した修論を基にした発表)。ペルー人及び日系ペルー人の集まりは、彼らが日本社会へ統合するための支援・情報提供を行う役割を果たしているが、同時にペルー人としての民族アイデンティティを基にした所属意識も作り出していることを明らかにした。 (2)佐藤夏樹「エルサルバドル問題とエルサルバドル人民連帯組織」 今回の発表は、エルサルバドルからの難民を受け入れるアメリカ社会の中で、どのような人々が彼らの支援に乗り出し、それに対しヒスパニック/ラティーノ・コミュニティがどのように反応したのかを、エルサルバドル支援を行う最大の組織の1つであるCISPESの史料をもとに考察した研究に基づくもの。今回の発表では、移民支援に関する先行研究の紹介とCISPESという組織の概要に関する説明があった。 (3)戸田山祐「地域レヴェルでのメキシコ系労働者政策-カリフォルニアとテキサスの事例を中心に」 本件発表は、研究会予算を使用してアメリカで行った調査(2017年3月6日~20日)を基に行われたもの。1940年代末から60年代半ばまでのアメリカ、特にテキサスとカリフォルニアにおけるメキシコ系労働者に対する施策について、同時期のメキシコ人短期移民労働者導入政策(ブラセロ・プログラム)との関連に焦点を当てて考察する研究である。今回の発表では、テキサスとカリフォルニアの州公文書館で行われた資料収集で明らかになったことに関する説明の後、今後は、1950年代のテキサス州・メキシコ州の政策資料から州政府の政策、あるいは下部の委員会の活動について論文をまとめる可能性につき言及があった。 (4)柴田修子「コロンビア出張報告」 本件発表は、研究会予算を使用してコロンビアの各地(ボゴタ、カリ、トゥマコ、アルタケル&マグイ)で行われた調査(2017年2月20日~3月15日)に基づき行われた。コロンビアでの調査では、出稼ぎに行ったことがある人、あるいは内戦の被害にあったことがある人に対するインタビューが行われた。今回は、撮影された写真に沿って調査調査報告がなされ、調査により関心が持たれたテーマ(例えばコロンビアからチリへの国際労働移動等)について言及があった。 (5)渡辺暁「メキシコからアメリカ合衆国へのさまざまな移民のかたち-2016年12月のユカタン調査および2017年3月のLA調査のご報告-」 本件発表は、研究会予算を使用した行われた調査(2016年12月22~29日(ユカタン州)、2017年3月9~15日(カリフォルニア州))を基に行われた。現地調査では、メキシコ(ユカタン半島)からLAに来ている移民に対し、入国の経緯、現在の職業など、移民事情について聞き取り調査を行ったことが報告され、また、今後の研究の方向性について言及があった。 |
2016年度
開催日時 | 2017年2月18日 13時00分~17時00分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 中川正紀(フェリス女学院大学)、中川智彦(愛知県立大学) |
研究会内容 | 1.本回の研究会は、上記2名による発表が行われた。発表の概要は以下のとおり。 (1)中川正紀「本国生まれの在米エルサルバドル系二重国政者のトランスナショナルな行動の諸要因:政治意識・行動、米国籍取得の理由及び『永住帰国の夢』から男女差を中心に考察する」 移民による本国への送金や一時帰国は、トランスナショナリズムに基づいた行動と言われるが、本件発表は、本国生まれの在米エルサルバドル系移民(特に二重国籍者)がなぜそのような行動を取るのかに関し、2015年3月及び8月にアメリカ(ロサンゼルスとサンフランシスコ)で行われた調査データを基にその理由を分析したものである。 調査結果:選挙投票のために一時帰国をするという集団は、年1回は一時帰国をしているが、選挙投票目的以外を帰国理由とする集団と比べて、特段米国籍取得に政治的価値を見出してはおらず、また、選挙投票目的以外を帰国理由とする集団の中でも、女性の方がより米国籍取得に政治的価値を見出しており、現状変革的な意識が高いことが明らかとなった。また、投票目的で本国に帰国する集団は、帰国のタイミングを治安や政情の安定化という本国の状況の改善に求める傾向が強いということも示された。 (2)中川智彦「在米サルバドル系住民の渡米年代別のDUI取得状況と本国選挙への参加をめぐる課題-2015年米西海岸におけるアンケート調査結果から-」 本件調査は、在米エルサルバドル系住民の、社会経済的状況および政治・社会に関する考え方についてアンケート調査を行い、彼らの社会経済的地位と、米国社会および本国社会に関する見方との間の関係性を読み解くことを目的としたものである。(なお、本件在外調査費の一部は、本研究会の旅費支援を受けたものである。) エルサルバドルの統一身分証(DUI)の年代別取得状況を調査した結果、DUI取得自体は、本国政治への参加意欲の高さに結びついていないことが分かった。また、アンケート調査の結果、在米エルサルバドル人が参加を認められるべきと考えている選挙は、大統領選挙であるという考え方が圧倒的であり、地元の国会議員ではなく国家の代表を選ぶことに参加したいと考えが趨勢であることが明らかとなった。 2.次回の研究会は、5月13日(土)に開催することで同意された。 |
開催日時 | 2016年12月17日 11時00分~16時00分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 北條ゆかり、佐藤夏樹、宇佐見耕一、山内熱人、浅倉寛子(CIESAS) |
研究会内容 | 1.本回の研究会は、2部構成で行われた。午前は、前回に引き続き読書会を行い、午後は、ラテン・アメリカ学会西日本部会と合同という形で報告者からの発表を行った。出席者は16名であった。 (1)第1部:読書会『国際移動と〈連鎖するジェンダー〉-再生産領域のグローバル化』 発表者:北條ゆかり(1節)、佐藤夏樹(2節)、宇佐見耕一(3節)、山内熱人(4節) (2)第2部:発表 発表者:浅倉寛子(CIESAS) テーマ:「暴力と感情の文化的力(ちから)の考察―中米移住女性の研究から―」 発表者は、中米においてフィールド・ワークを行っている。今回の研究の問いは、「中米移住女性たちが、人生の様々な段階において、多くの暴力を受けてきたのにも関わらず、なぜその逆境から這い出して来られたのか。その際、感情というものが、逆境を乗り越えるにあたってとる行動とどのように結びつくのか?」というものである。 インタビューを通じて判明したのは、17人の女性の多くが、人生を通して多くの暴力(構造的、直接的、象徴的暴力)を受けており、それが移動と大きくかかわっている事実である。例えば、出身地における構造的暴力(社会的・経済的格差)、象徴的暴力(権力的関係)、直接的暴力(DV)は、暴力女性の移動の主な排出要因となっていること、また、移動中・経由地においては、構造的暴力(労働市場や社会福祉へのアクセス困難)、直接的暴力(中でも性的暴力(ビザの見返りなど))を受けていること、さらに、移民先においては、労働の場やその他社会関係における差別や排斥(ステレオタイプ:特定の経済活動に閉じ込められる)を受けていること、などである。 これらのインタビューを通じ、異なる状況で主体が経験する感情を考察することにより、ジェンダー規範に基づき、どのような行動がとられるか、また、なぜそのような行動がとられるのかが理解できる、と結論づけた。 2.なお、本日のラテン・アメリカ学会西日本部会では、他に以下のような発表が行われた。 (1)「植民地時代前半期におけるポトシの社会と銀鉱業運営の実態」 真鍋周三(兵庫県立大学名誉教授) (2)「ブラジルの民主主義とテメル新政権の動向」 住田育法(京都外国語大学) (3)「2016年ブラジル統一地方選挙全体評価と政治経済の現状・展望─」 舛方周一郎(神田外語大学) (4)「ボリビア・モラレス政権の11年―何が政権を支えてきたのか―」 岡田勇(名古屋大学) (5)「コロンビア─和平プロセスの現状と見通し─」 千代勇一(上智大学) (6)「ペルーの大統領選挙とクチンスキー政権の現状」 村上勇介(京都大学) |
開催日時 | 2016年10月22日 13時00分~17時15分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | 松久玲子教授 山内熱人(京都大学非常勤講師) 柴田修子(同志社大学GR学部嘱託講師) |
研究会内容 | 報告発表 1.山内熱人 京都大学非常勤講師 テーマ:「移民理由は家族のため、とは具体的にどういうことか」 本研究会の科研費を使用して2016年7月末から9月初にメキシコ・オアハカ州の村落で行われた現地調査(及び2010年から2014年までに行った計4回の調査含む)に基づく報告が行われた。 <発表要旨> メキシコ・オアハカ州にある村落では、90年代から主に米国への経済移民が増えている。移民経験のある44人にインタビューを行ったところ、移民と帰郷は家族状況の変化(結婚、子供の誕生など)を契機として行われることが多く、その動機は「家族のため」と語られる。移民経験者は、(1)実際どのような消費を行い、(2)それがどのような価値観に基づいているのだろうか。 インタビューによると、「家族のため」のより具体的な内容としては、①不動産の購入、②雑貨店等の開店、③フィエスタの開催のため、に行われている。それらは自分のためというより、「下の世代に資本を相続させたい」という思いから行われていることが分かった。そしてそれは、子供たちの為に親がなすべきこと、という価値観に基づき行われていると考えられる。 2.柴田修子 同志社大学GR学部嘱託講師 テーマ:「メキシコの難民・移民政策」 『世界福祉年鑑』に寄せた原稿を基に、「メキシコにおける難民・移民受け入れ状況を整理し、どのような法整備が行われたか」について報告が行われた。 <発表要旨> メキシコでは、1980年代に、グアテマラ難民が大量に流入してきたが、(政治難民ではない)一般難民を受け入れる法的規定がなかったため、UNHCRが一時的に難民認定作業を行っていた。2000年以降、メキシコ政府は難民地位条約を批准し、政府として難民問題に取り組む義務を負うことになり、UNHCRに代わり、COMAR(メキシコ難民支援委員会)が難民認定作業を行うようになった。2011年には、難民の権利を明記した「難民及び補完的保護に関する法」が制定され、迫害理由としてジェンダーが追加されたり、子供の庇護の必要性が明記された(難民申請者の出身国は、ホンジュラスとエルサルバドルが圧倒的に多い)。 移民受け入れに関しては、1974年に制定された住民一般法により、外国人は移民と非移民に分けられ、非合法移民は厳しく罰せられていた。しかし1990年代から移民の通過国として移民流入が増えたことから、2011年に移民法が制定された。法律では、移民の様々な権利が保障されると同時に、保護された非合法移民は罰せられないことが定められたが、背景には、外国人の管理の強化と治安の回復を目指す政府の方針がある。 3.松久玲子教授より、ブックレビューの発表があった。この本は、グローバリゼーションの新たな局面としての「再生産領域のグローバル化」に関わる問題を提起したものである。本研究会の理論枠組みに使える本であり、またメンバー間での共通認識を形成するために必要であることから、この本が取り上げられた。 ブックレビュー:足立眞理子「再生産領域のグローバル化と世帯保持」伊藤るり、足立眞理子編著『国際移動と〈連鎖するジェンダー〉-再生産領域のグローバル化』作品社、2008年、224~262頁。 |
開催日時 | 2016年7月23日 13時00分~17時00分 |
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開催場所 | 志高館 SK203 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | (1)戸田山 祐(東京大学非常勤講師) (2)佐藤 夏樹(同志社大学GR学部嘱託講師) (3)深澤 晴奈(東京大学大学院総合文化研究科) |
研究会内容 | 今回の会合は2部構成で行われた。<第一部>研究会メンバー3名による論文発表が行われた。<第二部>松久より、科研費の使用および研究会の運営方法についての説明を行った。 1.<第一部> 研究会メンバーによる論文発表 (1)戸田山:「戦後期ブラセロ・プログラムの確立:1950年前半のテキサスへのメキシコ人短期移民労働者導入を中心に」 本研究は、1940年代末から50年代半ばまでに米テキサス州で行われたブラセロ・プログラム(メキシコ人短期移民労働者導入政策)に関するものであり、具体的には、プログラムの実施が同州の雇用慣行やエスニック集団間の関係とどのように関連していたかについて論じている。米墨両政府は、テキサスの実情に合わせたプログラムの運用(短期移民の雇用拡大)の一方で、非合法移民の摘発の強化を行っていたが、非合法移民の選別的な合法化にあたっては、州政府と米連邦政府の間に一定の協力関係が存在したことを指摘した。 (2)佐藤:「1980年代におけるLULACと外交」 本研究は、1980年代におけるLULAC(League of Latin American Citizens)の外交問題への積極的な発言が彼らにとってどのような意味を持っていたのかにつき論じた。LULACは、当時トランスナショナルな活動をしていたものの、実質的には明確に米国内の団体とその他地域とは明確な線引きがなされており、活動の内容にしても、普遍的な人権問題にまでコミットするような姿勢は見られなかったことを指摘した。 (3)深澤:「スペインの移民政策とラテンアメリカ出身移民-その実態と背景としての法的優遇」 本論文は、スペインにおけるラテンアメリカ出身移民に関わる法的優遇措置に焦点を当てている。1980年代までは移民送り出し国であったスペインは、2000年代にはヨーロッパ有数の移民受け入れ国になったが、中でも移民の多くはラテンアメリカ出身であった。背景には、言語・文化の近似性に加え、合法的に入国した移民が一定程度スペインに滞在すれば、スペインの国籍も取得できるという法的優遇措置があったことに注目した。彼らの法的地位は、EU加盟国出身移民と特段の法的優遇を受けないアジア・アフリカ地域出身者との“狭間”に位置付けられるため、スペインにおける移民に対する三層構造の存在を指摘している。 2.<第二部> 科研費の使用と出版企画について 松久教授より、科研費の配分と使用方法について説明を行った後、最終年度に計画されている出版企画の方向性について議論を行った。 |
開催日時 | 2016年5月21日 13時30分~17時20分 |
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開催場所 | 志高館 SK214 |
テーマ | ラテンアメリカにおける国際労働移動の比較研究 |
発表者 | Karine Tinat メキシコ大学院大学(El Colegio de Mexico)教授 |
研究会内容 | 今回はH28年度最初の会合であり、研究会は2部構成で行われた。<第一部>まず、松久教授より今後の研究会の活動方針等を説明した後、意見交換を行った。<第二部>その後、外部講師(Dr.
Tinat)の講演会と質疑応答が行われた。 1.<第一部> 研究会の活動方針について (1)今年度の研究会予算に関し、昨年度より緊縮された財政の中で、国内・海外出張支援、講演料、本の出版等について予算をどのように配分していくかにつき説明が行われた。 (2)本研究会の目的について説明がなされた後、研究会の発表の順や海外出張者の選定に関し話し合いが行われた。 (3)本の出版企画について、大枠の内容につき説明がなされた後、テーマの選定や追加等につき参加者による議論が行われた。 2.<第二部> Dr.Tinatの講演 (1)今回外部講師として招いたメキシコ大学教授のDr. Karina Tinat が、2009年から2012年にメキシコのパタンバンで行ったフィールドワークの調査結果をまとめた “Body, sex, and gender ethnography and male homosexuality in a village of Michoacan, Mexico”に関し報告を行った。これは、パタンバン在住のDiegoという、ホモセクシュアルである47歳の男性に対する600時間にも及ぶインタビューをもとに、ジェンダーが体に対する意識と実際の体現にどのように表れるか、その関係性につき分析した研究である。 (2)Diegoは、性的嗜好としては結婚した男性と性的関係を持つことを望んでいた。彼は自分の見られ方について特に気にしており、「若くありたい、美しくありたい、体のことを褒められたい」という意識が強い一方で、閉鎖的な村の中における女性の限定的な役割から「生まれ変わったとしても女性にはなりたくない」とも感じていた。 (3)Dr.Tinatは、インタビューの中で、Diegoが特に自らのセクシュアリティと性的関係について語ることが特に多かったことに注目した。彼自身の発言から、彼は男性と性的関係を持つことで自身が存在するというアイデンティティを実感しているのだ、ということを知り、体が自らのセクシュアリティの表現方法(ジェンダー意識を体現するもの)の一つであると捉えた。 (4)質疑応答では、Diegoと家族との関係性や仕事について、メキシコのレズビアンについて、そしてDr.Tinat自身の個人的な経験(白人女性がメキシコの小さな村でリサーチをするにあたっての経験)等に関する質問があった。 |