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第7研究 『商品史文献解題』編集に関する研究 研究代表者:川満 直樹(商学部)

 これまで商品学、社会史、生活史、経済史や経営史などその他多くの研究分野で、商品や商品史に関する研究が行われてきた。しかし、現在それらの研究を総覧できる「文献解題」が存在しない。本研究会では『商品史文献解題』を作成することによって、これまでの研究を整理すると共に将来の商品史研究の課題を発見することを目的とする。
 本研究会は、定例研究会を年間7回(原則として4月・5月・6月・7月・10月・11月・12月)開催する予定である。参加者は年1回の研究報告を行い、相互に議論し『社会科学』やその他への投稿原稿を作成する。また、商品および商品史に関係する資料(史料)を収集するために調査出張等も行う予定である。

2021年度

開催日時 第7回研究会・2021年12月19日 13時00分~14時45分
開催場所 オンライン(zoomを使用して研究会を開催)
テーマ 産業別にみる東京一極集中
発表者 森美枝氏
研究会内容  12月研究会は、森美枝氏が「産業別にみる東京一極集中」をテーマに研究報告を行った。以下、森氏の研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 近年、政治、経済面のみならずあらゆる面で東京への一極集中が取り上げられ議論されている。森氏は、東京への一極集中状態が進む中で、特にテレビ局に焦点をあて、テレビ局の東京への一極集中がどのようにして行われたのかを検討した。本報告で、氏は「テレビ草創期、大阪は明らかにメディアの中心地であり、東京を凌駕していた。また、それはテレビ局のもつ技術力からもうかがえ、東京のテレビ局が黎明期であった1958年ごろ、大阪テレビ放送株式会社は、富士山頂からの生中継を行っていた」と述べた。なぜ、その後、大阪のテレビ局は東京のテレビ局に後れを取ったのか。その点を明らかにすることが本報告の目的であった。
 紙幅の関係上、詳細を述べることはできないが、森氏は大阪のテレビ局がその勢力を弱めていく要因を次の2点に求めた。ひとつ目が、東京の広告代理店、特に電通の旺盛な活動である。例えば、テレビ局に対し経営基盤であるCMの提供、番組制作面への支援など。ふたつ目が、第二次世界大戦中に公布された国家総動員法の企業整備令によって、東京にあった大阪の広告代理店の支店が合同させられたことである。それにより、それぞれの東京支店は業務を休止せざるを得なくなり活動自体が困難になった。
 森氏の研究報告終了後の質疑応答では、これまでの研究会同様に、参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第6回研究会・2021年11月14日 13時00分~15時00分
開催場所 扶桑館4階413教室およびオンライン(Zoom)
テーマ 航空規制開始期の全日空国内線経営―データベースによる分析―
発表者 鶴田雅昭氏
研究会内容  11月研究会は、鶴田雅昭氏が「航空規制開始期の全日空国内線経営―データベースによる分析―」をテーマに研究報告を行った。以下、研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 鶴田氏の報告の目的は、航空事業に対する本格的な規制の開始時期として位置づけられている昭和40年代後半期を対象に、航空会社(本報告では全日空が分析対象)が自らどのような企業努力を行ってきたのかを明らかにすることである。具体的には、上記目的を検討するにあたり、鶴田氏は全日空を取り上げ、同社の路線運賃の設定と内部補助についてその特徴を検討した。
 鶴田氏は、昭和40年代後半期の航空事業について次の点を指摘している。(1) 昭和45年の運輸大臣示達にもとづき、昭和47年に航空会社の再編が実施された。(2) 騒音等の公害対策として、羽田と伊丹の両空港における利用時間制限が始まった。(3) 羽田と伊丹にかわる新しい第一種空港の建設と地方空港の整備拡張計画や地方空港の整備拡充が開始された。(4) ニクソンショックや第一次オイルショックの影響を受け、航空燃料費の高騰、旅客需要の低迷などにより航空会社の経営が悪化した。
 氏は、全日空が公表した「有価証券報告書」や同社社史(30年史資料編、50年史CD)などから得た膨大なデータを用いて、全日空のほとんどすべての路線運賃の設定について詳細な検討を行った。鶴田氏の報告から、規制産業と言われている航空事業でも企業努力(各路線の運賃設定)なしに存続することは困難であることが明らかとなった。
 研究報告終了後の質疑応答では、参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第5回研究会・2021年10月17日 13時00分~15時00分
開催場所 オンライン(Zoom)
テーマ パチンコの市場動向・影響・文献―『商品史文献解題』編集に向けた基礎作業として―
発表者 鍛冶博之氏
研究会内容  10月研究会は、鍛冶博之氏による研究報告が行われた。以下、研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 鍛冶氏は、「パチンコの市場動向・影響・文献-『商品史文献解題』編集に向けた基礎作業として-」をテーマに研究報告を行った。同報告の目的は、近年のパチンコ産業の動向分析とパチンコに関する文献解題を行うことである。
 近年のパチンコ産業の動向分析について。パチンコの市場規模は2005年の約34兆8000億円をピークに縮小傾向が続き、2019年のそれは約20兆円となっている。鍛冶氏は、市場規模縮小傾向の要因として「パチンコ参加人口の減少」をあげた。氏は、パチンコ参加人口の減少について以下の点をあげ分析を行った。
  1. パチンコ自体の要因。遊技機の面白さの低減によるプレーヤーの関心の低下、遊戯金額の高額化、高い換金率を期待できなくなったこと、また遊技機の使用方法やルールの複雑化などをあげた。
  2. プレーヤーの要因。プレーヤーが日常生活を通してパチンコを楽しむだけの時間的・資金的余裕を確保しにくくなったこと、そしてパチンコに対するネガティブなイメージなどをあげた。
  3. 日本社会の変容(特に2000年代以降の若者層の意識と行動の変容)。社会に貢献できる商品の利用を求める、安価だけを理由にした購買行動には消極的であること、そして生活防衛意識の高さなどをあげた。
 パチンコに関する文献解題では、パチンコに関する文献を「総論」「文化・社会」「経営(総論)」「経営(各論)」「歴史(通史)」「歴史(企業史・企業者史)」「歴史(技術史)」に分け、各項目で主要な文献数冊を取り上げ詳細な内容紹介を行った。
 研究報告終了後の質疑応答では、参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第4回研究会・2021年7月11日 13時00分~15時30分
開催場所 オンライン(Zoom)
テーマ ランドマーク商品と観光
発表者 近藤祐二氏
研究会内容  7月研究会は、近藤祐二氏による研究報告が行われた。以下、研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 近藤氏は、ご自身の研究テーマである観光の観点から「ランドマーク商品と観光」をテーマに研究報告を行った。本報告では、次の2点を中心に報告が行われた。一つがコロナ禍での観光を取り巻く状況。二つ目がテキストマイニングを使用した分析についてである。
 一つ目のコロナ禍での観光を取り巻く状況について。近藤氏は、最新の『観光白書』とご自身の調査結果を踏まえて報告を行った。ニュース等でも報道されているように、コロナへの感染を防ぐために人流が抑制されている。観光業にとって大切なことは、人々にその土地に来てもらい、その土地でいろいろ体験・経験をしてもらうことである。そのため現在、観光業を取り巻く状況は良いとは言えない。しかし、そのような状況の中で感染対策を実施し、「三密回避・個室食事・貸切風呂」を提供している宿泊施設などに多くの人が訪れているとのことなどが紹介された。
 二つ目のテキストマイニングを使用した分析について。テキストマイニングとは、自由に書かれた大量の文章を定量的に分析する手法である。近藤氏は、日経新聞を用いて、「観光」と第7研究でこれまで取り上げ研究を行ってきた商品名を検索ワードに検索を行った。本報告では、検索の結果のみを示し、分析は行はかなかった。しかし、氏が行ったテキストマイニングの手法は、商品史研究に応用できる可能性を示した。
 研究報告終了後の質疑応答では、参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第3回研究会・2021年6月13日 13時00分~15時30分
開催場所 オンライン(Zoom)
テーマ 次世代自動車・CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)のもたらす社会変革―ランドマーク商品の観点から―
発表者 天野了一氏
研究会内容  6月研究会は、天野了一氏による研究報告が行われた。以下、研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 天野氏は、「次世代自動車・CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)のもたらす社会変革-ランドマーク商品の観点から-」をテーマに研究報告を行った。自動車は、現代社会では欠かすことのできない商品であり、我々のライフスタイルにも大きな影響を与えている商品である。本研究報告で、天野氏は自動車産業(自動車の製造)が、今後、次の2点で大きく変わろうとしていると述べた。1つが電気自動車の開発であり、2つ目が自動車の完全自動運転に向けた技術開発である。
 電気自動車の開発について。天野氏は、最初にこれまでの自動車製造開発の概略を述べ、その後電気自動車の開発について、特にイーロン・マスクの企業家精神と彼の電気自動車開発に対する思い、そして日本、アメリカ、中国などでの電気自動車の開発状況などについて詳細に紹介をした。
 自動車の完全自動運転について。天野氏は、現在ならびに今後の自動車産業を表すキーワード「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)」と「MaaS(Mobility as a Service)」を中心に、既存の自動車メーカーの動向、新規参入企業の動向ならびに日本を含む諸外国の対応および動向などについて報告を行った。
 研究報告終了後の質疑応答では、参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第2回研究会・2021年5月9日 13時00分~16時30分
開催場所 オンライン(Zoom)
テーマ
  1. テレビは何を変えてきたのか―テレビジョンの発展による日本社会の変遷と日本のテレビジョン研究史―
  2. 『商品史文献解題』編集作業の試行―テーマパーク(東京ディズニーリゾート)を例に―
発表者
  1. 森美枝氏
  2. 鍛冶博之氏
研究会内容  5月研究会は、森美枝氏と鍛冶博之氏による研究報告が行われた。以下、各研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 森美枝氏は、「テレビは何を変えてきたのか-テレビジョンの発展による日本社会の変遷と日本のテレビジョン研究史-」をテーマに研究報告を行った。森氏は、日本のテレビ研究史を検討するにあたり、キャロリン・マーヴィン(2003)『古いメディアが新しかった時:19世紀末社会と電気テクノロジー』、松山秀明(2017)「放送史への新たなアプローチ(2)日本のテレビ研究史・再考:これからのアーカイブ研究に向けて」『放送研究と調査』67(2)などいくつかの研究書を取り上げ報告を行った。テレビは20世紀後半のマスメディアの主役であり、その不完全さを逆手にとって新しい世界を作り上げたのがテレビであった。それが意味するところは、完成された映像よりも未完成のものの提示こそがテレビの魅力であったと言うことである。森氏の報告から、テレビが日本社会に与えた影響を検討する際に重要なことは、テレビ(番組を提供する側、受信する側)以外の側面(文化など)なども含めて検討することが重要であることを再確認した。
 鍛冶博之氏は、「『商品史文献解題』編集作業の試行-テーマパーク(東京ディズニーリゾート)を例に-」をテーマに研究報告を行った。報告の目的は、ランドマーク商品である「テーマパーク」の文献解題作業を実践し、『商品史文献解題』編集作業を試行することである。
 鍛冶氏は、「テーマパーク(特に東京ディズニーランド(TDL))」に関する文献解題作業から次のような傾向を確認した。①TDL関連の文献の露出頻度は、テーマパークに関連する文献の中でも圧倒的に高いこと。②TDLの経営戦略・サービス・人材育成をテーマにした本(文献)が多かった。③TDL関連の文献は「プラス面」を論じたものが多かった、などであった。
 各研究報告終了後の質疑応答では、参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第1回研究会・2021年4月11日 14時00分~16時30分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階402教室およびオンライン(zoom)
テーマ 文献解題:ペットボトル
発表者 川満直樹氏
研究会内容  2021年度の最初の研究会(4月)は、川満直樹氏による研究報告が行われた。以下、川満氏の研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 川満氏は、「文献解題:ペットボトル」をテーマに研究報告を行った。氏は、CiNiiを利用し、ランドマーク商品としてのペットボトルに関する文献を検索および収集を行った。それらの結果ならびに川満「ペットボトル」石川健次郎編著『ランドマーク商品の研究③』で触れなかった点について報告を行った。
 ペットボトルを検索ワードにCiNiiで検索を行った結果、以下の傾向を確認した(報告ではいくつかの文献を取り上げ内容紹介も行った)。
  • ペットボトルの歴史に関する文献は、技術の変遷や法規制に関する文献が多い。
  • 研究に関連する文献は、「技術」「リサイクル」「包装容器の一つとしてのペットボトル」などに関するものが多い。
  • ペットボトルを含む容器に関するリサイクル関係の文献が多い。
 文献検索および収集から、川満「ペットボトル」石川編著『ランドマーク商品の研究③』で触れなかったが、ランドマーク商品としてのペットボトルを研究する上で重要と思われる視点を得た。それがペットボトルと「法律」の関係である。
 ペットボトルが清涼飲料水(清涼飲料水中心に報告を行った)の容器として使用可能となったのは、1982年に「食品衛生法」が改正(昭和57年厚生省告示第20号)されたことによる。その後、1996年に全国清涼飲料工業会が小型ペットボトル(1ℓ以下のボトル)の発売の自主規制を廃止したことにより、さらに利用されることになった。
 川満氏は、報告のまとめとして「企業は自由に商品を製造し販売しているように思われがちだが、実は法律で定められた範囲内のみで商品の製造および販売は可能」である。「ランドマーク商品と言われている商品も当然、法律の影響を受けそれが定める範囲内で製造および販売を行っている」と述べた。
 川満氏の研究報告終了後の質疑応答では、教室での参加者およびオンライン(zoom)での参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。

2020年度

開催日時 第3回研究会・2020年12月20日 13時00分~15時30分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室およびオンライン(Zoom)
テーマ 『商品史文献解題』編集に向けた基礎作業
発表者 鍛冶博之氏
研究会内容  12月研究会は、鍛冶博之氏による研究報告が行われた。以下、鍛冶氏の報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 鍛冶氏は、「『商品史文献解題』編集に向けた基礎作業」をテーマに研究報告を行った。
 第7研究では、これまで人文研部門研究において1995年から現在に至るまで商品史・ランドマーク商品に関する研究を行ってきた。その間、研究会の研究成果として6冊の研究書(石川健次郎編著『ランドマーク商品の研究』①~⑤、川満直樹編著『商品と社会』、いずれも同文舘出版より出版)を刊行してきた。また、『社会科学』(同志社大学人文科学研究所)でも「特集」を組み成果を発表してきた。それら以外にも論文も多数発表されている。このように、これまで商品史・ランドマーク商品研究に関する多くの成果が発表されてきたにもかかわらず、それらを総覧できる「文献解題」が存在しない。
 上記した商品史・ランドマーク商品研究の状況から、鍛冶氏は本報告において『商品史文献解題』の編集および刊行にむけて、文献解題の意味や作業方法を整理し、『商品史文献解題』の目次案を提示した。本報告書において鍛冶氏が提示した目次案を詳細に紹介することはしないが、同氏の報告は2021年度以降の第7研究の研究の方向性を示すものであった。
 鍛冶氏の研究報告終了後の質疑応答では、教室での参加者およびオンライン(zoom)での参加者から文献解題の進め方、分類方法等について質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第2回研究会・2020年11月9日 13時00分~16時00分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室およびオンライン(Zoom)
テーマ
  1. 「井田泰人編著『鉄道と商業』(晃洋書房、2019年)の刊行-鉄道史と商業史の融合的研究を目指して-」
  2. 「平成時代の生活と商品システム-コンビニエンスストアのフランチャイズシステムの生成-」
発表者
  1. 井田泰人氏
  2. 大原悟務氏
研究会内容  11月研究会は、井田泰人氏と大原悟務氏による研究報告が行われた。以下、各研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 井田氏は、同氏が2019年に編者となり出版した『鉄道と商業』(晃洋書房)について報告を行った。同書は、タイトルの通り鉄道と商業の関係を多角的に検討するものである。具体的には、同書がどのような経緯で出版にいたったのか。また同書で何を明らかにしたかったのか、などについて報告を行った。
 2015年に開催された鉄道史学会第33回大会は「鉄道と商業」をテーマに開催された。井田氏が同大会でテーマを「鉄道と商業」とした理由は以下の点である。第一は、近世以降、商業の中心地であった大坂を取り上げること。第二は、商法・販売方法、商業従事者と鉄道の関係について取り上げること。第三は、立地、場所、空間という点から鉄道と商業の関係を検証すること、であった。井田氏は、上記の点を中心に同書について詳細に報告を行った。
 大原氏は、「平成時代の生活と商品システム-コンビニエンスストアのフランチャイズ・システムの生成-」をテーマに報告を行った。具体的には、平成期にわれわれの生活に影響を与えた商品あるいはシステムとして「コンビニ」を取り上げ、なぜコンビニがわれわれの生活に影響を与えるまでのシステムを構築することができたのかについて報告を行った。
 特に、本報告で取り上げ議論をしたのはコンビニの「フランチャイズ」である。フランチャイズ・システムは、「中間組織」であり本部は限られた資源で多数の出店を実現した。紙幅の関係上多くの議論を省略するが、大原氏はフランチャイズ・システムが採用された経緯、それを採用するメリット・デメリットなどを検討し、「フランチャイズ・システムを採用した企業が成長し、直営方式をとった企業は生き残らなかった」と述べた。
 各研究報告終了後の質疑応答では、教室での参加者およびオンラインでの参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第1回研究会・2020年10月11日 14時30分~17時30分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室およびオンライン(Zoom)
テーマ
  1. 「テレビメディア史から見る戦後日本社会の「中央」の変容-広告代理店「萬年社」におけるテレビ番組制作の例をもとに-」
  2. 「日本の工業化初期における兼営織布企業の生産性比較」
発表者
  1. 森美枝氏
  2. 亀井大樹氏
研究会内容  10月研究会は、亀井大樹氏と森美枝氏による研究報告が行われた。以下、各研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 森氏は、「テレビメディア史から見る戦後日本社会の「中央」の変容」をテーマに研究報告を行った。本研究は、日本の広告業の勃興期から広告業界を支えた老舗の広告代理店「萬年社」の動きを通して、1960年代~1970年代後半までの戦後日本社会の変化を考察した。萬年社は、高木貞衛と林孫七ほかにより1890年に組合事業として設立され、その後高木貞衛の個人経営となった会社である。同社は、電通よりも長い歴史を持ち「東の電通、西の萬年社」と呼ばれていた。森氏は、本報告で萬年社のテレビ番組(スポンサー)へのかかわり、また萬年社の東京での活動ならびに電通との関係などの分析を通じ、なぜ萬年社が倒産したのかを検討した。
 亀井氏は、「日本の工業化初期における兼営織布企業の生産性比較」をテーマに研究報告を行った。明治20年代に、大阪を中心として1万錘規模の紡績企業が全国規模に続々と設立された。各社(金巾製織、天満織物、他4社)の競争は、生産技術と生産性向上の試みであったと言える。本報告では、そのような問題意識のもと兼営織布企業の生産性について比較検討を行った。
 亀井氏は、本報告では兼営織布企業の紡績部門の生産性の比較分析を中心に行った。今後の課題として、織布部門の生産性の指標を組み込み紡績部門と織布部門がどのような連関をもっていたのかなどを合わせて検討したい、と述べた。
 各研究報告終了後の質疑応答では、教室での参加者およびオンラインでの参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。

2019年度

開催日時 第6回研究会・2019年12月15日 14時30分~17時40分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室
テーマ
  1. 「離島のランドマーク商品-伊豆大島の水道水を例に-」
  2. 「沖縄企業家研究-具志堅宗精を事例に-」
発表者
  1. 鍛冶博之氏
  2. 川満直樹氏
研究会内容  12月研究会は、鍛冶博之氏と川満直樹氏による研究報告が行われた。以下に、それぞれの研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 鍛冶博之氏は、「離島のランドマーク商品-伊豆大島の水道水を例に-」をテーマに研究報告を行った。鍛冶氏は、同研究報告の意義を「先行研究における離島研究の不十分性」と述べ、伊豆大島を取り上げ、伊豆大島でランドマーク商品となりえる商品(本報告では「水道水」)の特徴について検討した。
 伊豆大島だけではないが、蛇口の開閉のみで自由に水が使用できることは、我々の生活を大きく変えた。伊豆大島の場合、島内での水道普及率が98%に達したのは1978年とのこと。それにより伊豆大島に住む人々の生活は大きく変化した。鍛冶氏は、伊豆大島で水道が普及しプラスとなった面を①人力で水を確保するという肉体労働が不要になったこと。②天候や水の残量を意識することなく、水を使用することができるようになったこと。③家庭での水確保のための貯蔵作業が不要になったこと、などをあげた。
 川満直樹氏は、「沖縄企業家研究-具志堅宗精を事例に-」をテーマに研究報告を行った。本研究報告の目的は、沖縄でオリオンビール株式会社を設立した具志堅宗精の企業者活動を明らかにすることと同時に、具志堅の活動を通して第二次世界大戦後の沖縄経済(アメリカ統治下、日本復帰後)の状況を検討することである。
 川満氏は、具志堅の企業者活動ならびに彼の考え方(思想)から「具志堅は自身が設立した企業だけの発展を願い活動を行ってはいなかった。具志堅が目指していたことは、沖縄に住む人々の生活の安定と向上であり、沖縄経済の発展であった」と述べた。
 各研究報告終了後の質疑応答では、フロアからも質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第5回研究会・2019年11月10日 14時30分~17時40分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室
テーマ
  1. 「ピックアップ・トラックを中心に形成されたタイの自動車産業集積」
  2. 「サーバント・リーダーシップの形成プロセスにおけるリーダー・フォロワー間の動態的相互作用に関する探索的事例研究―水産加工会社パプア・ニューギニア海産の事例―」
発表者
  1. 宮城達也氏
  2. 鈴木智気氏
研究会内容  11月研究会は、宮城達也氏と鈴木智気氏による研究報告が行われた。以下に、それぞれの研究報告の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 宮城達也氏は、「ピックアップ・トラックを中心に形成されたタイの自動車産業集積」をテーマに研究報告を行った。宮城氏の問題関心は「新興国の自動車産業の集積が形成されるには、どのような要素が関連するのか。そのような要素が機能するメカニズムは何か」などである。宮城氏は、タイの自動車産業を中心に問題関心の解明を行った。タイの自動車産業は「ピックアップ・トラック」の製造・販売(国内販売・外国への輸出)を中心に発展してきた。
 タイでピックアップ・トラックが普及した要因を、宮城氏は以下の点に求めている。第一に汎用性の高さ(乗合バス・小口配送・乗用車など多目的に使用可能)。第二に経済性の高さ(税制優遇などによる)。第三に自然環境への適応の高さ(道路の未整備・雨季の洪水など)。第四に農業用地のフロンティアの急速な拡大および商品作物の生産拡大なのである。第一から第三の普及要因は先行研究にて明らかにされている点であり、第四の要因は、宮城氏が提示した仮説である。氏は、研究報告の中でタイの農地の拡大、それに伴う農業生産物の増加等について詳細に検討した。
 鈴木智気氏は、「サーバント・リーダーシップの形成プロセスにおけるリーダー・フォロワー間の動態的相互作用に関する探索的事例研究」をテーマに研究報告を行った。鈴木氏は、本報告で「サーバント・リーダーシップ」という概念をもちい、P海産(本報告でそのように呼んだ)を事例に同社の内部資料、新聞・雑誌記事、経営者へのインタビューを通じて「リーダーの意識と態度の変化」を検討した。
 サーバント・リーダーシップとは、「リーダーがフォロワーへの奉仕という倫理的・利他的な信念をもち、リーダーによるフォロワー優先的なリーダーシップ行動の選択を通じて、フォロワーに向組織性を発揮させるリーダーシップ」(鈴木氏の報告で用いた定義)のことである。
 鈴木氏は、本報告でP海産の経営者の従業員(ほとんどがアルバイト)に対する意識変化、会社組織に対する意識変化などを丹念に検討し、P海産の経営者のサーバント・リーダーシップを発揮するまでの過程を明らかにした。
 各研究報告終了後の質疑応答では、フロアからも質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第4回研究会・2019年10月13日 14時00分~16時40分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室
テーマ
  1. 「コミュニケーション学の観点から見る「展示会」-あまがさき産業フェア2019を視察して-」
  2. 「物流発展と生産性―戦後日本トラック輸送の発展から―」
発表者
  1. 森美枝氏
  2. 関谷次博氏
研究会内容  10月研究会は、森美枝氏とゲスト講師の関谷次博氏の2名による報告が行われた。以下に、それぞれの報告の概要を記し研究会活動報告とする。
 森美枝氏は、「コミュニケーション学の観点から見る『展示会』-あまがさき産業フェア2019を視察して-」と題して報告を行った。同報告は、7月に行った「あまがさき産業フェア2019」の視察に関するものである。森氏は、同展示会について、写真などを紹介しながら展示されていた技術・商品の紹介、会場の雰囲気などを詳細に報告した。
 第二報告では、関谷次博氏をゲスト講師に招き「物流発展と生産性―戦後日本トラック輸送の発展から―」をテーマに研究報告を行っていただいた。
 関谷氏は、「ロジスティクスにおけるイノベーションの変遷」を中心に戦後日本のトラック輸送と物流の発展を考察した。ロジスティクスにおけるイノベーションの変遷には、「ロジスティクス1.0(20世紀~)」であり輸送の機械化、「ロジスティクス2.0(1950-60年代~)」の荷役の自動化、「ロジスティクス3.0(1980-90年代~)」の管理・処理のシステム化、「ロジスティクス4.0(現代~)」の物流の装置産業化の四つの段階がある、とのこと。
 現在の日本は「ロジスティクス3.0」の状態であり、関谷氏はなぜ日本は「ロジスティクス4.0」へ移行することができないのかを説明した。その理由は、「ロジスティクス3.0」までの成功が足枷となっており、具体的には各運輸会社が「ロジスティクス1.0~3.0」までに築き上げた「閉鎖的な自社プラットフォーム」、「単独での荷主ニーズへの対応と囲い込み」、「(各社のもつ)競争優位の確立」などが要因だと述べた。
 各報告終了後の質疑応答では、フロアからも質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第3回研究会・2019年6月8日 14時50分~16時50分
開催場所 同志社大学今出川校地 至誠館1階S2教室
テーマ 統一テーマ:商品と商店-ショップとストア-(日本商品学会第70回全国大会共催(全国大会シンポジウムを共催))
 1. 趣旨説明
 2. ショップとストアの異同
 3. ネットショップ
 4. 100円ショップ
 5. パパママストア
 6. コンビニエンスストア
発表者
 1. 川満直樹氏
 2. 小西浩太氏
 3. 天野了一氏
 4. 水原紹氏
 5. 亀井大樹氏
 6. 鍛冶博之氏
研究会内容  6月研究会は、同志社大学で開催された日本商品学会第70回全国大会と共催で開催した(全国大会シンポジウムを共催)。シンポジウムの統一テーマは、「商品と商店-ショップとストア-」である。発表者は上記の6人、コメントを廣田誠氏(大阪大学、(人文研 嘱託(社外)))からいただいた。すべての研究報告終了後の質疑応答では、フロアからも質問があり活発な議論がなされた。
 シンポジウムでのそれぞれの研究報告内容をこの場に書くのは、紙幅の関係上難しいため『日本商品学会第70回全国大会発表要旨集』に記したシンポジウムの内容を転載し、研究会活動報告とする。

 同志社大学人文科学研究所(以下、人文研)にて、1995年から現在までの20年以上にわたり、商品と社会の関係について研究を行ってきた。その間研究成果として6冊の研究成果(石川健次郎編著『ランドマーク商品の研究』①~⑤(同文舘出版)、川満直樹編著『商品と社会』(同文舘出版))を刊行した。
 これまでの人文研での研究は、上記した研究成果からも明らかなように、商品に焦点をあて商品が社会に与える影響を考察してきた。今回のシンポジウムでは、商品が売られる場所・消費者に商品が渡される場所(商店)について検討したい。
 商店という言葉は、英語で「ショップ(shop)」あるいは「ストア(store)」と表現することができる。例えば、「ショップ」では100円ショップ、ネットショップ、ペットショップ、他。「ストア」ではパママストア、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、ドラッグストア、他。
 『ジーニアス英和大辞典』(電子辞書)によると、「ショップ(shop)」には小売店や商店の意味もあるが、複合語で「(物を作ったり修理したりする)仕事場、作業場」(workshop)という意味もあるとのこと。ニュアンス的には、「ショップ」には商品を売るだけではなく、モノを作ったり加工なども行っている小売店を指していると思われる。また、『ジーニアス英和大辞典』によると「ストア(store)」には、アメリカではいろいろな種類の商品を売る店のことを指し、イギリスでは大型店を指すことが多いとのこと。また、蓄えるや貯蔵、備蓄などの意味もなく、ショップと異なり「作業する場所」などの意味もない。
 今回のシンポジウムでは、商品と消費者を結ぶ場所としての商店の関係を「ショップ(shop)」と「ストア(store)」の違いを踏まえ、①「売られる場所(商店:ショップ・ストア)」の誕生、②商店がどのように運営されているのか、③商店の現状(店舗展開、市場規模、売上高、利益額など)はどのようになっているのか、④商店が社会変容に対しどのように対応しているのか、などを中心に検討する。
開催日時 第2回 研究会・2019年5月12日 13時30分~17時00分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室
テーマ
  1. 「パパママストア」 
  2. 「コンビニエンスストア」
  3. 「100円ショップ」
発表者
  1. 亀井大樹氏 
  2. 鍛冶博之氏 
  3. 水原紹氏
研究会内容  5月研究会は、亀井大樹氏、鍛冶博之氏と水原紹氏の3名による研究報告が行われた。以下に、それぞれの研究報告の概要を記し研究会活動報告とする。
 亀井大樹氏は、「パパママストア」をテーマに研究報告を行った。亀井氏は、先行研究をもとに「パパママストア」という言葉が、日本でいつごろから使われ始めたのかを明らかにした。亀井氏は、1962年ごろに林周二、田島義博らがスーパーとの対義語として使用したのが初めてであったことを明らかにした。氏は、パパママストアの優位性および弱点を検討した。パパママストアの優位性は、人件費の圧縮、地域密着性、不況期の強靭性などをあげた。また弱点は、計数管理の甘さ、金融機関や問屋との交渉力の弱さ、組織の脆弱性や上昇志向の欠如などをあげた。
 鍛冶博之氏は、「コンビニエンスストア」をテーマに研究報告を行った。鍛冶氏に報告によれば、コンビニエンスストアが社会に与えた影響は三つに分けることができる。一つが消費者への影響。消費者に消費局面での利便性を究極に高め、それを常態化させたこと、など。二つ目が小売業界・加盟店への影響。単品管理による店舗運営が一般化し、それが小売業界全体に影響を与えたこと、など。三つ目が地域社会への影響。消費者の生活空間に非日常的で非地域的なコンビニエンスストアが存在する景観を生み出した。地域社会の防犯や生活支援の拠点としての機能を有することで、「社会インフラ」としてコンビニエンスストアが認識されるようになった。
 水原紹氏は、「100円ショップ」をテーマに研究報告が行った。紙幅の関係上、詳細は省くが、水原氏は報告において「100円ショップ」が登場したことにより、消費者の社会生活に与えた影響についていくつかの点を指摘した。①スーパーや商店街への集客効果がある。②同業の小売店が閉店に追い込まれる。③商品が安価なため本来の用途と異なった用途に利用さることがある。④安価なため余分に買うことがある、などである。
 各研究報告終了後の質疑応答では、フロアからも質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。
開催日時 第1回研究会・2019年4月14日 13時30分~17時00分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館4階413教室
テーマ
  1. 「ショップとストアの異同」
  2. 「ネットショップ」
発表者
  1. 小西浩太氏
  2. 天野了一氏
研究会内容  4月研究会は、小西浩太氏と天野了一氏による研究報告が行われた。以下に、それぞれの研究報告の概要を記し研究会活動概要報告とする。
 小西浩太氏は、「ショップとストアの異同」をテーマに研究報告を行った。本研究会は、これまで20年以上にわたり商品が社会に与える影響について研究を行ってきた。その研究の中心は「商品」である。小西氏の研究報告は、商品が生活者に提供される場所(お店)に焦点をあてたものである。具体的には、ショップ(shop)とストア(store)という語を中心に、それらが「店」としての形態としてどのように異なるのかを検討した。英語辞典や語源辞典を参考に、ショップとストアのニュアンス的な違いは「店で作業をするかどうか」と述べ、また、日本で使用されてきた「屋(●屋)」と「店(●店)」とショップとストアの関連性についても言及した。小西氏によれば、「屋」はどちらかと言えばショップ、「店」はどちらかと言えばストアに近いと思われると述べた。
 天野了一氏は、「ネットショップ」をテーマに研究報告を行った。近年、ネットでのショッピングは、生活者にとり身近なものとなってきている。本研究報告では、日本社会での通販の注文手段の歴史的変遷を確認するとともに、ネットショッピングの現状を検討した。現在のようにインターネットでショッピングを行えるようになる以前にも同様の購入形態があった。それがハガキ、電話、ファックスなどを利用したショッピングである。インターネットでのショッピングもそれらに類すると思われる。
 天野氏は、インターネットでは生活者が売り手になる場合もあり、またこれまで商品とは見なされなかったモノまでもが商品となる可能性があることを指摘した。
 各研究報告終了後の質疑応答では、フロアからも質問や意見等が多数あり活発な議論がなされた。