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第12研究 京都のコミュニティに関する総合的研究―都市における「つながり」の実証研究―研究代表者:奥田 以在(経済学部)
本研究会は、京都を主な研究対象として、都市内に存在する多様なコミュニティに着目し、経済史学、歴史学、社会学、人文地理学などの分野からコミュニティ内部の実証分析を行うものである。特に、地縁・職縁・文化・マイノリティといった結集原理によるコミュニティを対象とする。また、近代から現代に至るまでの長い期間を研究対象とすることで、時代を超えたコミュニティの実像に迫りたいと考えている。そして、多様な「つながり」のあり方を実証的に描き出すことで、京都という都市における「都市的な関係性」を出来うる限り明らかにしたいと考えている。
2021年度
開催日時 | 第4回研究会・2022年3月12日(土) 14:30~18:00 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス光塩館地下会議室およびZoom |
テーマ |
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発表者 |
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研究会内容 | 2021年度第4回研究会では、歴史研究から京都を捉えるという視点に立ち、高久氏と秋元氏から研究報告を頂いた。 高久氏からは、近代京都において重要な役割を果たした第3代京都府知事の北垣国道について、彼の幕末維新期の動向について報告があった。北垣の動向を丹念に追いかけた研究によって、彼の思想的な揺れの存在が明らかになるとともに、彼を取り巻く人間関係にも言及が及んだ。 秋元氏の報告では、近世京都における女性の位置付けに関する議論が提示された。特に家屋敷所持や相続における女性に位置づけについて、一次史料をもとに報告された。従来の京都の町の分析においては、女性に関する言及は乏しく、新しい視点から町や不動産所有の問題を捉えた研究報告であった。 以上の2報告を受け、闊達な議論も行われた。 |
開催日時 | 第3回研究会・2021年12月18日(土) 14:30~17:30 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス徳照館会議室 |
テーマ | モビリティをめぐる観光空間と生きられる空間のはざまで ―北野白梅町駅改修および京都市バス路線変更にかかわって |
発表者 | 麻生 将 氏 |
研究会内容 | 第3回研究会では、麻生将氏による研究報告会を行った。報告では、京都市バスの北野白梅町駅舎改修と路線変更を巡る諸問題に関する指摘がなされた。 特に、路線変更による住民生活への影響、駅舎改修における観光的意味の地理学的考察、住民運動の様子について報告があった。北野白梅町は、京都の観光地を結ぶ重要なターミナルのため、駅舎改修や路線変更は観光の利便性向上に寄与する可能性がある。一方、細い道をバスが通行するなど地域住民の生活には悪影響となる可能性がある。報告では、この実態について詳細な説明があった。 また、報告に対して闊達な議論が行われた。 |
開催日時 | 第2回研究会・2021年9月25日(土) 14:30~17:30 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス至誠館会議室 |
テーマ | 【書評会】広原盛明『観光立国政策と観光都市京都』文理閣、2020 |
発表者 | 広原 盛明 氏 河野 健男 氏 |
研究会内容 |
第2回研究会では、広原盛明氏の著書『観光立国政策と観光都市京都』をもとに書評会を開催した。広原氏は、「成熟都市京都における〝持続可能な観光〟とは~『ねっとわーく京都』の連載を通して感じたこと~」と題し、著書の内容と共に京都の都市の在り方について報告された。特に、京都の観光政策と居住する都市としての持続可能性との相克について言及がなされた。特に、京都市の一部地域の合計特殊出生率は全国的に見ても極めて低く、改善の必要性が指摘された。 河野健男氏は、広原氏の著書と報告に対するコメンテーターとして報告された。報告では、著書の内容が丁寧に精査されるとともに、京都市が行ってきた様々な施策を具体的に挙げながら、その評価について改めて議論する必要性が示された。 また、報告に対して闊達な質疑応答も行われた。 |
開催日時 | 第1回研究会・2021年6月26日(土) 14:30~17:30 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス光塩館地下会議室 |
テーマ | 同志社大学人文科学研究所の部落問題関係資料から考える |
発表者 | 本岡 拓哉 氏 河野 健男 氏 高野 昭雄 氏 |
研究会内容 | 2021年度第1回研究会では、“同志社大学人文科学研究所の部落問題関係資料から考える”というテーマで、本岡拓哉氏・河野健男氏・高野昭雄氏による研究報告が行われた。 本岡氏からは、同志社大学の人文科学研究所に部落問題資料が含まれる理由について、目録から分析された内容の報告があった。この報告から同志社が意識的に部落問題関係資料を収集した経緯が部分的に明らかになった。 河野氏の報告では、部落問題研究者全国集会の成り立ちと、それに対する同志社のかかわり方について報告があった。全国集会各回の報告内容や報告者、会場校の動向を分析することで、特に初期段階において同志社が積極的な役割を担ったことが明らかにされた。 高野氏の報告では、人文研保有の調査記録から、これまで実態解明があまり進んでいなかった時期における京都の被差別部落の状況について報告が行われた。 以上の3報告を受け、闊達な議論も行われた。 |
2020年度
開催日時 | 第4回研究会・2021年3月12日(月) 14:30~18:30 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス徳照館会議室 |
テーマ | 新型コロナウィルス感染症影響下における祇園祭とその運営 |
発表者 | 中村 圭 氏 得能 司 氏 |
研究会内容 | 第4回研究会では、中村圭氏と得能司氏による研究報告を受け、闊達な議論が行われた。両氏からは、新型コロナウィルス感染症の影響下における祇園祭のあり方について、参与観察をベースとした研究報告が行われた。 両報告からは、従来の通りの祇園祭運営が行えないなかでも、町内の人々を対象として、出来る範囲のことを万全の感染予防を施しながら行っている様子が示された。 具体的には、観光としての祇園祭の側面が除外される中で、本来の神事としての儀式の重要な部分が取り上げられる形で営まれたのである。 祇園祭は様々な危機を乗り越えて存続してきた祭である。その背景には、今回の非常事態における対応のように、必要最低限の形で存続させてきた可能性がある。 また、報告に対して闊達な質疑応答も行われた。 |
開催日時 | 第3回研究会・2021年1月29日(金) 13:30〜16:00 |
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開催場所 | 部落問題研究所(京都市左京区高野西開町) |
テーマ | 部落問題研究所における京都部落問題関連資料について |
研究会内容 |
第3回研究会では、部落問題研究所に訪問し、同研究所の歴史と現状、所蔵資料について、理事の奥山峰夫氏と西尾泰広氏からレクチャーを受けた後、資料室の見学も行った。同研究所資料室には、一次 資料を含む、京都内外の部落問題資料が大量に保存されており、その資料的価値が確認された。 資料を踏まえたディスカッションでは、同志社大学との関係がテーマとなった。1963年に部落問題研究所と同志社大学人文科学研究所の共催で実施された第1回部落問題研究者全国集会のほか、部落問題に関わる学生サークル活動について、さらには1962年に本学で起こった部落差別事件をきっかけに人権教育が大きく進展したことに関して、意見交換がなされた。 本年度第1回研究会で確認した、同志社大学人文科学研究所が所蔵する部落問題関係資料の活用のためにも、部落問題研究所とのさらなる交流が必要なことが認識され、今後の研究可能性も提示されることとなった。 |
開催日時 | 第2回研究会・2020年9月21日(月) 15:00~18:00 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス至誠館会議室 |
テーマ | 加藤政洋『酒場の京都学』(ミネルヴァ書房、2019)書評会 |
発表者 | 加藤 政洋 氏 永澄 憲史 氏 鯵坂 学 氏 |
研究会内容 |
第2回研究会では、立命館大学文学部教授の加藤政洋の著書『酒場の京都学』について、書評会を行った。書評会では、著者である加藤政洋氏による報告と、同志社大学名教授の鯵坂学氏、元京都新聞社の永澄憲史氏によるコメントを受け、闊達な議論が行われた。 加藤氏の報告では、本書の視点に関する要約に加え、食文化を通じた京都とその他地域の繋がりに関する興味深い視点が提示された。つまり、京都という大都市には、各地の郷土食が多数存在するので、それを丹念に追いかけることによって、食事を足がかりとした近現代京都と人や文化の移動・定着過程を描き出せるという指摘であった。本報告では、特に京都と長崎の関係について言及がなされた。 コメントは、第三空間論に絡めた議論のほか、両氏の学生時代の話もなされ、ある部分ヒアリング調査の意味も込められた内容となり、本書の内容がより分厚く理解された。また、青木正児に関する議論も深く行われ、“酒”や“酒場”を通した都市認識、時代認識についても充実した議論が行われた。 |
開催日時 | 第1回研究会・2020年8月25日(火) 14:00~16:30 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス光塩館地下1階会議室 |
テーマ | 人文研所蔵資料を用いた共同研究の可能性について |
発表者 | 本岡 拓哉 氏 |
研究会内容 | 第1回研究会として、同志社大学人文科学研究所が所有する資料を確認し、その活用、共同研究の可能性についてディスカッションを行った。 人文科学研究所所蔵の近現代京都の史料は多数あるが、今回の研究会では、本岡氏による事前調査によるリストを参考に現物の内容確認まで行った。 その結果、商家文書や町文書のほか、学区関係の資料などにも興味深い史料が散見した。 また、部落問題関係の史料もあり、今後これらの史料をもとに共同研究へと発展させることが可能かどうか、議論がなされた。その結果、いくつかの分野では、史料の読解から始める共同研究の方向性が確認された。 |
2019年度
開催日時 | 第3回研究会・2020年2月21日(金) 15:00~18:00 |
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開催場所 | 同志社大学新町キャンパス渓水館1F会議室 |
テーマ | 民族学校と銀閣寺 ―京都朝鮮中高級学校と地域社会との関係をめぐって
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発表者 |
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研究会内容 |
第3回報告者はゲスト講師の板垣竜太氏(同志社大学社会学部教授)・キムヨギョン氏(同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程)であった(出席者17名)。「民族学校と銀閣寺―京都朝鮮中高級学校と地域社会との関係をめぐって」をテーマに、2018年度から2019年度にかけての2年間にわたって板垣氏と同ゼミ生により行われた社会調査実習の報告が行われた。 まず、板垣氏から「1950~60年代における朝鮮学校・韓国学園の銀閣寺地域への移転をめぐって」と題して、銀閣寺地域への朝鮮学校移転直後の韓国学園移転計画とそれに対する反対運動「地区に38度線をひくな」についての報告がなされた。その構造には(1)北朝鮮政府に対抗する韓国政府の脈略(2)京都市政に対する不満を持つ地元の脈略(3)革新府政から保守市政に対する批判という地方政治と革新系の「民主勢力」が持つ冷戦イデオロギーの脈略の3つが重なっていた。「38度線」はむしろ日本人の側に内面化されていたのであり、朝鮮学校か韓国学園かという単純な二分法ではなく、朝鮮人を差別する日本社会の問題であった。 次に、キム氏から「朝鮮学校と地域社会の日常的関係と相互認識」と題して、朝鮮学校の生徒は日常生活において地域社会をいかに経験しているのか、地域住民は朝鮮学校の生徒をいかに認識しているのか、それぞれの語りを中心に報告がなされた。朝鮮学校は周辺環境からあえて空間的に切り離すことによって民族教育を可能にしているが、地域社会の中にある以上、生徒はチマチョゴリの制服を着ながら、地域の道を歩き、地域の店で食事をするなど、生活の場として地域社会を経験していた。それは生徒たちと接する頻度の高い地域住民にとっても同様であり、それぞれの日常生活の中で関係性が蓄積されていたのであった。 |
開催日時 | 第2回研究会・2019年10月27日(日) 15:00~18:00 |
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開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス啓明館2階共同研究室A |
テーマ | 中村圭,2019,『なぜ中国企業は人材の流出をプラスに変えられるのか』勁草書房.の書評会 後継者育成に悩む京都の老舗企業やコミュニティの人材育成論との対比で中国社会から学ぶ
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発表者 |
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研究会内容 | 第2回報告者は嘱託研究員(社外)の中村圭氏(成城大学経済研究所
研究員)とゲスト講師の逄军氏(びわこ学院大学教育福祉学部教授)であった。「後継者育成に悩む京都の老舗企業やコミュニティの人材育成論との対比で中国社会から学ぶ」ことをテーマに書評会を行った。 中村氏からは、「モビリティからみたチャイニーズネス」と題して、「なぜ中国企業は有能な人材の流出をプラスに変えられているのか」について、長年のフィールドワークに基づいて得られた一次資料をもとに解説がなされた。それは、流動人材が蓄積してきた社会関係資本と経験知が企業側にとっても経営資源になるという合理的なものであり、社会主義導入以前の中国社会において見られた「包」(=請負)構造への回帰であるという結論であった。 逄氏からは、「中国における富裕層の形成」と題して、中村氏の研究対象である有能な流動人材=富裕層が生まれるに至った経緯が説明された。それは、計画経済が改革され始めた1980年代初期に末端従業員から始まり、80年代後半には国家エリート層にまで拡大し、市場開放へと向かっていった90年代には流動人材を受け入れる私有企業が国有企業の保護を受けるようになり、2000年代の地域間異動や人事ファイル制度の緩和によって有能な流動人材=富裕層が形成されるようになったというものであった。 全体討論では、個人・組織にとって流動性が持つ合理性や、一方で一定数存在する流動しない層・流動できない層=貧困層との格差拡大について指摘がなされ、活発な議論が交わされた。その中で、京都の観光行政や伝統産業の可能性、都市コミュニティの在り方も議論され、学際的な視点から京都を捉える貴重な機会となった。 |
開催日時 | 第1回研究会・2019年7月28日(日) 14:30~18:00 |
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開催場所 | 同志社大学新町キャンパス渓水館1階会議室 |
テーマ | 鯵坂学・西村雄郎・丸山真央・徳田剛編,2019,『さまよえる大都市・大阪―「都心回帰」とコミュニティー』東信堂.の書評会 「大阪本のねらいと構成―21世紀になって大阪都心はどう変わったか」「大阪都市圏の構造変動と『維新』政治」を京都との比較で考える |
発表者 |
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研究会内容 |
第1回報告者は嘱託研究員(社外)の鯵坂学氏(同志社大学名誉教授)とゲスト講師の丸山真央氏(滋賀県立大学人間文化学部教授)であった。鯵坂学・西村雄郎・丸山真央・徳田剛編,2019,『さまよえる大都市・大阪―「都心回帰」とコミュニティー』東信堂.の書評会を行い、京都との比較で議論を行った。 鰺坂氏からは、「大阪本のねらいと構成―21世紀になって大阪都心はどう変わったか」と題して、2000年以降に「都心回帰」してきた人々は、専門技術職層が多いが、近隣関係に関心を持たず、新自由主義的な政策を支持する傾向にあり、ジェントリフィケーションによって階層的な分化・対立が進むという「報復都市論」仮説が提示された。 丸山氏からは、「大阪都市圏の構造変動と『維新』政治」と題して、都心区の「維新」支持層が「都心回帰」という「再都市化」の中で都心エリア内を流動する層であることが示された。そして、「維新」の政策が、そういった流動層の「大阪の衰退」への危機感をあおり、東京への対抗心を焚きつけて、変動著しいグローバルな都市間競争に照準し、かつてのような東京に並ぶ大都市としての経済的復活を目指すという「なりたがり世界都市」戦略の延長にあることが指摘された。 鯵坂氏・丸山氏ともに、東京と同じような都市を目指すのではなく、文化庁を移転させた京都のように、東京との違いを強調していく「第二都市」としての政策の必要性が提案された。 全体討論では、「維新」を支持する大阪人の心理が京都人の心理との比較で活発に議論され、「反東京」心の強い大阪人は東京に追いつくための政策をどれだけ実践できたかという実績によってのみ「維新」を支持しているのではないかという仮説が導かれた。 |