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第17研究 ポスト新自由主義時代におけるラテンアメリカの人権レジーム:地域統合と各国での実践研究代表者:宇佐見 耕一(グローバル地域文化学部)
21世紀に入りグローバル化の一層の進展、国際的な市場競争の激化、また移民の増大等が社会的問題をもたらすとの反グローバル化言説が表面化している。ラテンアメリカ諸国では、1990年代の新自由主義改革を経て経済面においてグローバル化が進展し、域内外での移民も引き続き増大している。このような状況の下で、本研究ではラテンアメリカ諸国の低所得層、移民労働者、先住民、女性等の権利を擁護する制度として、社会権を含む国際的な人権レジームの域内各国での影響に注目する。同地域において各種の国際人権レジームは、米州レベル、共同市場レベルあるいは各国のレベルで法制化されて定着している。しかし、そうした諸法制度も必ずしも安定的なものではなく、反グローバル化言説と、それに影響を受けて政策も変容している。本研究においては、ラテンアメリカ域内における国際人権レジームを反映して制定された諸制度が域内諸国でどのように定着し、それが近年の反グローバル化言説からどの様な影響を受けているのか、また各国の低所得層、移民労働者、先住民、女性等社会的弱者の権利の保障にどの程度貢献しているのかを明らかにすることを目的とする。
2021年度
開催日時 | 第6回研究会・2022年1月22日 15時30分~17時30分 |
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開催場所 | 同志社大学志高館 |
テーマ | ポスト新自由主義時代におけるラテンアメリカの人権レジーム:地域統合と各国での実戦 |
発表者 | 畑 惠子 |
研究会内容 | 今回の研究会の目的は、まずLGBT+の人々の人権が明示的に「世界人権宣言」に包含されてきたことを示し、LGBT+に関する国際人権レジームとラテンアメリカの関わりを明らかにすることである。 国際的なアクターによって認められた問題を規制するため、1948年の「世界人権宣言」以降、人々の人権を保護するために、宣言や条約、議定書などの制定がなされてきた。国際人権レジームはそれらの総体とされる。しかし、第二次世界大戦後の国際人権レジームにおいて、 LGBT+の人々の人権は、健康もしくは道徳的保護が必要と考えられたために、おきざりにされてきた。 とくに、同性愛はキリスト教やイスラム教において重罪とされ、道徳的・倫理的価値観から法的刑罰が科せられてきた。また同性愛は、病理的人格(人格障害)として扱われてきた過去があるが、1990年代にようやく、性的指向は障がいと考えるべきではない、との方針がとられるようになる。しかし今日においても、宗教観や男女二元論、家父長制といった既存の社会秩序を揺るがしかねない同性愛行為は、69ヵ国で犯罪となっている。 2011、2012年に国連では、同性愛や性的マイノリティではなく、万人のもつ属性としての「SOGI」を国際人権レジームに含める見解が形成された。しかし、伝統・宗教・家族観などの「文化的多様性」の尊重、そして国際的な関心の高まりが逆に危機感を高め、同性間での性行為の非合法化が行われるなど、その規範性や実効性は弱く、普遍的、定期的レビューにとどまっている。 SOGIに関する国際人権レジームでは、ラテンアメリカ諸国は議論を牽引する立ち位置に立つものの、その権利保障レベルは国ごとに大きく異なり、地域的人権レジームの実効性は弱い。またラテンアメリカ諸国は欧州、北米に次いでLGBT +の法的権利保障が進んだ地域ではあるが、社会の民主化や経済的・社会的発展とほぼ比例して、中小国においては法的権利保障が遅れている国も多い。また人びとの感情レベルにおいて、LGBT+への憎悪・反感が強い傾向があり、域内のLGBTフレンドリーと評価される国においてさえも、殺人といった暴力が他の地域を凌駕している。 こういった内容を踏まえ、ラテンアメリカの都市中間層と農村部や先住民といったバックグラウンドによる人々のLGBT+への寛容度についての議論がなされ、さらにパレードや礼拝における時間と空間の共有についても、話が及んだ。 |
開催日時 | 第5回研究会・2021年12月17日 15時30~17時30 |
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開催場所 | Zoom |
テーマ | アフリカにおける社会的保護:南部アフリカを中心として |
発表者 | 牧野久美子 |
研究会内容 |
本研究会では、南アフリカの社会保障制度の歴史を振り返り、近年フォーマルな社会的保護プログラムの導入が進むも課題が多いことや、外国出身者の訪れの増加に伴う外国出身者への社会的保護の必要性から、トランスナショナルな社会的保護の可能性について検討した。 南アフリカの社会手当制度の起源は、約100年前に遡る。ひとり親世帯(特にシングルマザー)を対象にした養育手当は白人貧困層を給付対象、アフリカ人家族を対象外として人種差別的な運用がなされていた。また1920年代に始まった社会年金も、当初アフリカ人は対象外とされるなど人種差別的であったが、40年代には居留地経済の疲弊という経済的背景からアフリカ人にも支給され始め、アパルトヘイト末期には受給者の大半がアフリカ人となった。民主化後は、制度上の人種差別の撤廃が急務となり、家族形態を問わず子供をケアする人に支給されるよう、養育手当が子供手当へ改革され、「包括的社会保障」の実現が目指された。また現在のコロナウイルス感染症の流行に伴って、失業者に対するCOVID-19手当が行われている。 二国間協定による出稼ぎ労働者、アパルトヘイト後の南アフリカと周辺国の問題が解決をみせたことによる自発的な来訪者の増加、さらに難民や庇護申請者の増加に伴い、外国出身者の社会的保護の必要性、ひいてはトランスナショナルな社会的保護の可能性の探求が投げかけられた。 現在の南アフリカの公的保障制度は、子ども・高齢者・障害者を対象とした社会手当が中心となっており、さらにフォーマルセクターと結びついた限定的なものが多く、インフォーマルな相互扶助には限界がある。移民や難民が増える南アフリカにおいて、国民の権利としての社会保護ではなく、憲法に書かれる「全ての人」の権利として社会保護の可能性はあるのか。社会的「保護」との用語を用いる理由として、社会的弱者になりやすい人々をより対象にすることへの期待を込めたものとするも、誰が社会的保護を与えるのか、その財源はどこからかといった具体的な疑問点も挙げられた。今後の研究が期待される。 |
開催日時 | 第4回研究会・2021年10月22日 15時30分~18時00分 |
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開催場所 | 同志社大学 志高館214教室 |
テーマ | <第三世界>発のフェミニズム ―『バルン・カナン』を中心に |
発表者 | 洲崎圭子 |
研究会内容 |
本研究会では、ラテンアメリカの女性作家ロサリオ・カステリャノスの長編小説『バルン・カナン』を中心に据え、そこに登場する複雑かつ抑圧された女性たちに焦点を当てることで、1950年代から差別が複合的なものであることを描き、しかも「第三世界」と評されたメキシコから女性にまつわる問題を発信し続けたフェミニスト作家として、カステリャノスを再評価するという発表が行われた。 『バルン・カナン』の作品評価は多くの場合、先住民族の抑圧された状況や抵抗に焦点が当てられ、先住民擁護としての文学作品であるとの評価を受けてきた。しかし、洲崎氏は『バルン・カナン』の女性たちに焦点を当て、作品の再評価を試みる。同じ女性の中でも階級による差別があり、未婚か既婚か、子供を産むか産まないかといった「ステイタス」によって、異なる扱いを受け、自分自身もその構造から抜け出すことができず、どのようなベクトルにおいても周縁化される女性たちの苦悩が描かれた作品になっているという。 彼女が活動したメキシコは、いわゆる発展途上国のイメージが付き纏う「第三世界」であり、そのような場所で、支配のマトリクスやインターセクショナリティ概念が提唱されるはるか以前から、差別が複合的なものであることを見抜き、描き出していたことは、特に先進国における「第三世界=発展途上国」のイメージに対し疑問を投げかけると洲崎氏は指摘する。 しかし、資本主義対共産主義という冷戦構造において、そのどちらのイデオロギーにも属さない勢力としての「第三世界」という言葉の本来の意味を考えれば、<>つきであったとしても、その使用への疑問が投げかけられた。また、カステリャノスと同時期に活躍した人々からの彼女自身への影響や、カステリャノスがなぜ成功した女性ではなく、悲惨な状況下において苦しむ女性たちばかりを描いたのかといった内容の質疑応答があり、今後の研究が期待される。 |
開催日時 | 第3回研究会・2021年9月25日 13時00分~15時00分 |
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開催場所 | Zoom |
テーマ | 国際人権レジームと社会保障 |
発表者 | 宇佐見耕一(GR学部) |
研究会内容 | 議題:国際人権レジームと社会保障 社会福祉・社会保障と関係する人権概念には、自然権と社会権があり、両者を合わせて人権ととらえる考えが主流となっている。そのことを反映して、国連においても国際人権A規約(社会権)とB規約(自然権)が採択されている。各国の社会福祉・社会保障制度を最終的に決定するのは各国の主権に属する。とはいえ、世界人権宣言以降、社会福祉・社会保障と関係した国際条約や制度が形成され、アクターも国家、国際機関、市民社会組織や民間企業等からなる国際人権レジームが存在していることも確かである。そして、その中心には国連人権レジーム・コンプレックスが存在する。社会福祉・社会保障に関した権利を、例えば高齢者の権利を考えた場合でも、医療、介護、年金、住宅や雇用等そこには山田が指摘するように多面的課題と多様なアクターは相互に関連している。 こうした国際人権レジームは、それ自体が直接援助や国際協力等をとおして各国の社会福祉・社会保障に関係する場合と、条約や勧告等を通して間接的に各国の社会福祉・社会保障の政策形成に関係する場合がある。後者の場合、その影響力はドネリーの国際規範等の決定手続きに関する6つの分類等多様である。そこでは、国際人権レジームが強制力をもつもの、政策協調や国際的勧告から国家主権の下での国家による政策・制度の形成などである。また、ジェソップ指摘したケインズ主義的福祉国家の変容の方向性では、国連人権レジーム・コンプレックスは、上方への拡大とみられる。これに対して地域人権レジームや国際市民社会組織の活動は、その平行方向への拡大とみられる。 |
開催日時 | 第2回研究会・2021年8月5日 13時00分~15時00分 |
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開催場所 | Zoom |
テーマ | 米州の人権レジーム:チリのケースに焦点を当てて |
発表者 | 杉山知子(愛知学院大学) |
研究会内容 | 議題:本年度の研究計画 今回は杉山知子氏(愛知学院大学)をゲスト講師に迎え、「米州の人権レジーム:チリのケースに焦点を当てて」についての以下の内容の発表が行われた。 ラテンアメリカにおける人権と世界の動き⇒1970年代初めに人権(拷問の禁止)に関するグローバルな動きが見られた(AIの活動、UNでの動き)。1970年代当時は、人権問題=生存にかかわる問題が一義的であり、その後、時代の経過・グローバル化がすすむ中で、人権をテーマにした研究についても、ジェンダー、先住民、移民、子ども等の視点からの調査が広がっていったのではないか。たとえばチリでは:2014年、2020年、委員会チリ訪問が行われている。そもそも人権をテーマにした政治学(比較政治・国際関係論)での研究は極めて限定的である。とは言え、21世紀になり、社会的弱者の視点から人権が研究されるようになってきた。 人権レジームに関心が集まったのは、新自由主義経済改革の影響、グローバル化との関係、地球規模/世界的な動き(グローバルスタンダードとローカルな現実)が考えられる。また、ラテンアメリカにおける市民社会・社会運動・組織化の変化も視野に入れるべきである。チリの事例としては:AIと平和委員会の連携があった。そこでは語られないものが語られるようになってきた。課題としては、他のラテンアメリカ諸国の事例・特徴も事例として取り上げるべきである。また、移行期正義の「先進国」チリ、アルゼンチンの特徴(いわゆる内戦下でない、人権侵害の被害者・家族が前政権関係者や社会的地位のある者、都市部)の事例もさらなる研究が必要である。 |
開催日時 | 第1回研究会・2021年6月25日 15時00分~16時30分 |
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開催場所 | Zoom |
テーマ | 本年度の研究計画 |
発表者 | 宇佐見耕一、柴田修子、松久玲子、坂口安紀、北條ゆかり、額田有美、村上勇介 |
研究会内容 |
本研究会では、国際人権レジームがラテンアメリカ各国に与えた影響、具体的にはそれによりもたらされた政治的・社会的変容を主として研究することを目的としている。これは比較政治経済学における第二イメージ論である。しかし、人権レジームに関する論点はそれにとどまらず、人権レジームが存在するにあたっての各国の国内的基盤に関する研究がある。他方、ラテンアメリカ各国政治・社会が国際人権レジームの形成・変容に影響を与えた可能性もある。もし逆第二イメージ論的現象が見られたら、そのことも掘り下げて分析する必要があろう。 また、国際人権レジームに関しては、社会権を保障する国際人権A規約と政治的権利を保障する国際人権B規約がある。本研究会で国際人権レジームという場合、両者を指し、社会的権利を擁護する人権レジームも分析の対象とする。先行研究では、政治的権利を保障するB規約に関するものが多く、社会権を保障するA規約と関連させて人権レジームと各国の国内政治・社会を論じた実証研究は極めて少ない。さらに近年の研究によると、国際人権レジームは単一の制度から形成されるものではなく、複数のレジームが複合して形成さるとするレジームコンプレックス論があり、こうした見方も人権レジーム分析の際参考とする。 今年度の予定としては、本研究会を含め研究会を6回開催する。新型コロナ感染症の状況に鑑み、当面ズームにより研究会を開催する。 人文研での研究双書申請期限が10月18日であり、各自の執筆計画を10月5日までに提出することとする。再来年度出版の可能性も探ってみる。 来年度ラテンアメリカ大会が同志社で開催される。本研究会もシンポジウムのテーマの候補とする。 参考文献 理論に関して:西山真規子・山田高敬編著『新時代のグローバル・ガバナンス論』ミネルヴァ書房、2021年。 人権レジームの制度的説明:渡部茂己編著『国際人権法』国際書院、2009年。 |
2020年度
開催日時 | 第6回研究会・2021年3月26日 15:00~18:00 |
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開催場所 | ズーム |
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発表者 |
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研究会内容 | 発表者1:村上勇介(京都大学) 議題:「国際人権レジームと先住民─ペルーの事例」
発表者2:北條ゆかり(摂南大学) 議題:「移民の人権レジーム ―米墨国境地帯を起点とする人道的移民政策―」 〈地球規模課題〉としての移民 対象地域とそこでの移民レジームの地域的枠組み →Inclusión e Integración de Migrantes⇒これは実現可能なのか?どのようにして? →対象地域:メキシコを中心としたT-MEC圏 →当該地域に関わる人権レジーム
→米国における非正規移民(1,100万人)の社会運動 →メキシコとの国境地帯におけるメキシコ・中米諸国からの大規模な移民の波
メキシコ労働社会保障省・雇用サービス局が職を斡旋→メキシコの永住権希望 →メキシコの移民政策
発表者3:坂口安紀(アジア経済研究所) 議題:「チャベス、マドゥロ両政権下の人権問題と国際人権レジーム」 チャベス、マドゥロ両政権下の人権問題 先住民、女性、労働者、性的マイノリティ、先住民など近隣ラ米諸国も抱える諸問題に加えて特筆すべき問題:
→国内の人権侵害が国際的な調査・監視・制裁(・介入も?)の対象となっている。 →国際社会の「保護する責任」、人権保護と主権の対立、人道的介入と政権交代の対立といった、国際人権レジームが克服を目指してきた根源的課題に立ち戻いるケース。 →人権侵害、汚職や麻薬取引などといった犯罪への国家関与、民主主義の尊重・保護といったテーマが重なる→国内もだが、国際社会の監視や関与アクターも複層的に。 |
開催日時 | 第5回研究会・2021年2月27日 14:00~17:00 |
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開催場所 | Zoom |
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発表者 |
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研究会内容 | 発表者1:山内熱人(同志社女子大学嘱託講師) 議題:「男たちはコンドームを嫌う?―メキシコ農村の事例より」 発表者は2006 年以降、メキシコ南東部のオアハカ州にある農村でフィールドワーク調査を続けてきた。調査開始当初は米国への出稼ぎ移民に関心を持ち、主に聞き取り調査をしていたが、調査を続ける中で彼らの開く共同体の祭りや宴会(フィエスタと呼ばれる)に興味が拡大し、そちらに軸足を置いた調査を続けている。しかし、これらの調査を続ける中でもう一つ興味を抱いてきたことが村で暮らす女性の生である。これはインフォーマントの中でより深く話を聞けた相手が女性であることが多く、彼女らの話を聞き続ける中で感じてきたことである。 この研究会での人権というテーマと私が研究してきたことはあまり密接ではないように思ったが、これまでの調査データの中で調査地女性の性生活が抑圧されている可能性があるという観点でもう少し調査を進めてみたいと考えている。具体的な話のとっかかりとしては、調査地における一般的な避妊方法はコンドームではなく、女性を対象とした避妊手術であるという話を聞いたことである。本日の発表ではこの話を紹介し、より一般的なデータと照らし合わせたうえで、さらなる調査の展望について考えてみたい。 発表者2:松久玲子(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員) 議題:「メキシコにおける有償家事労働とディーセントワーク―ILO189号条約の批准をめぐって」 家事労働をめぐる国際人権レジームと、そのラテンアメリカにおける批准状況は下記のとおりである。 メキシコにおける有償家事労働とディーセント・ワーク―ILO189号条約の批准をめぐって[PNG 412KB] |
開催日時 | 第4回研究会・2020年12月19日 14:00~17:00 |
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開催場所 | Zoom |
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研究会内容 | 発表者1:額田有美(国立民族学博物館) 議題:「 国際人権レジーム下におけるコスタリカのインディヘナ教育」 本研究の目的は、コスタリカのインディヘナ居住区で展開されている「インディヘナ教育(Educación Indígena)」の実態を明らかにすることである。 発表者は、2014年8月以降、プンタレナス県南部のインディヘナ居住区の1つカバグラにて慣習法裁判所(Tribunal de Derecho Consuetudinario)等についてのフィールドワークを断続的に行ってきた(e.g. Nukada 2020)。その間、「教育」に対する住民の関心が総じて高いこと、またその背景として2013年前後からの「インディヘナ教育」改革が関係しているらしいということに気が付いた。そこで、この改革がどの程度実効性を持ち、現在どの様な問題が残されているのか、またその問題の背景にはどのような要因があるのかを調査する。 発表者2:狐崎知己(専修大学) 議題「和平協定締結から24年、人権アプローチと生活改善アプローチによるグアテマラ先住民共同体の活動」 La Comisión Internacional Contra la Impunidad en Guatemala (CICIG) 1.背景 グアテマラ和平協定を構成する包括的人権協定の一環として、グアテマラ政府が国連に設置要請。国連事務総長とグアテマラ大統領が署名、議会の批准を受け、2007年に設立。2年ごとに延長可能。2019年解散。 2.目的 内戦時代の非公然情報機関及び非合法組織、国家に浸透して免責を享受する組織犯罪を解明し、刑事訴追する。これらの犯罪組織は、内戦時代を通じた政治目的の弾圧から内戦終結後は営利目的の組織犯罪に変身を遂げながら、国家の諸制度に浸透して免責を享受。 3.設置のタイミング(和平協定から10年後) 和平協定後も殺人件数が増加傾向。2007年には5400人という内戦時代の年間平均死者を上回る殺人件数に達するも、訴追率は2%に満たず。PARLACEN事件など象徴的事件が相次ぎ、グアテマラ司法制度の崩壊に国内外から懸念。 4.組織・活動形態
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開催日時 | 第3回研究会・2020年9月10日 15:00 |
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開催場所 | Zoom |
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発表者 |
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研究会内容 | 議題1:国際人権レジームの各国における状況:メキシコの事例(柴田修子) 0.国際人権レジームとは
Ⅰ.国際人権の基準 1)国連憲章
2)人権条約 一方、各国に対する法的義務づけには条約が必要⇒条約作りが進む 4)難民に関する国際基準
これに対し、地域独自の難民条約の採択の動き
☆議定書では難民の定義が維持されたため、侵略、外国による支配、内戦、人権侵害などによる難民は、難民の地位を得ることができない ⇒UNHCRは国際難民法ではなく、国連の斡旋に基づいてなし崩し的に拡大し「人道機関化」 Ⅱ.メキシコにおける移民/難民に関する法整備 1)政治亡命者に関する法整備
2)難民に関する枠組み作り
3)移民/難民に関する法整備 中米からの移民の流入、搾取、暴力等の問題が顕在化 ⇒メキシコへの移民に対する市民権がないことが批判される
議題2:「アルゼンチンにおける高齢者と子どもの人権」宇佐見耕一(同志社大学) Pautassi C. Laura [2013] “El trabajo de cuidar y el derecho al cuidado, ¿Círculos concéntricos de la política social? Revista Cátedra Paralera, No.10 育児に関する性別分業と労働市場における男女格差を問題としている。育児や教育には女性が圧倒的に時間を割いており、他方Decent workの政策目標にもかかわらず、雇用率や雇用の質に男女格差が存在する。育児は個人的責任ではなく社会の責任であり、国家は両性にフォーマルな雇用を保証する責任があるとする。 類似の研究に Borgeaud-Garciandía, Natacha [2020] “Entre desarrollo y fragmentaciones: estudios y panorama del cuidado remunerado en Argentina” Nadya Araujo Guimarães - Helena Hirata eds. El cuidado en América Latina : mirando los casos de Argentina, Brasil, Chile, Colombia y Uruguay, Ciudad Autónoma de Buenos Aires : Fundación Medifé Edita. Amadasi, Enrique y Cecilia Tinoboras, Condiciones de vida e integración social de las personas mayores : ¿diferentes formas de envejecer o desiguales oportunidades de lograr una vejez digna? 1a ed. - Ciudad Autónoma de Buenos Aires : Educa, 2015. Observatorio de la Deuda Social Argentina Barómetro de la deuda social con las personas mayores Pontificia Universidad Católica Argentina 独自の世帯調査による高齢者の置かれた状況調査プロジェクト 大ブエノスアイレス圏 2010-13年 年金受給率: 90.3%、所得下位25%層92.3% 上位25%層85.5% p.44 60-74歳87.0% 75歳以上97.9% p.45 Pochtar, Nora y Santiago Norberto Pszemiarower[2011] Personas adultas mayores y derechos humanos, 1a ed. - Buenos Aires : Ministerio de Justicia y Derechos Humanos de la Nación. Secretaría de Derechos Humanos . 高齢者の権利に関する国連レベル、ラテンアメリカレベルおよびアルゼンチンでの法制化。
年金・医療は充実 ケアが不足 公的年金制度→1994年一部民間積み立て方式(メネム政権)→2003年再国有化(キルチネル政権) 70歳以上を対象とした貧困層向け非拠出制老齢年金
子どもの貧困→子どものいる世帯の貧困
1999LEY 25179 Convención interamericana sobre tráfico internacional de menores adoptada en México, el 18/03/94 – Aprobación 2003年LEY 25763 Protocolo Relativo a la Venta de Niños, la Prostitución Infantil y la Utilización de los Niños en la Pornografía, adoptado por la Asamblea General de las Naciones Unidas en su sesión plenaria del 25/05/2000 -- Aprobación. 2005年Ley 26.061 LEY DE PROTECCION INTEGRAL DE LOS DERECHOS DE LAS NIÑAS,NIÑOS Y ADOLESCENTES 従来の家族保険は社会保険→フォーマルセクターを対象 子ども対象のベーシックインカム提起
――― 2009. Ingreso ciudadano para la niñez: reelaborando ideas para construir una sociedad más igualitaria. Buenos Aires: CIEPP 普遍的子供手当を肯定的に評価 Repetto, Fabián y Gala Díaz Langou 2010. El papel de asignación universal en la construcción de un sistema de protección social integral. Buenos Aires: CIPPEC Reppeto, Fabián, Gala Díaz Langou y Vanesa Marazzi 2009. ¿Hacia un sistema de protección social integral? El ingreso para la niñez es sólo la punta del ovillo. Buenos Aires: CIPPEC 普遍的子供手当を否定的に評価 Lo Vuolo, Rúben 2012. “The Argentine ‘Universal Child Allowance’: Not the Poor but the Unemployed and Informal Workers. ”In Citizen’s Income and Welfare Regime in Latin America: From Cash Transfers to Rights, edited by Rúben Lo Vuolo. Basingstoke: Palgrave Macmillan, 51-66. 普遍的子供手当月額2020年8月(1ドル77.50ペソ公式レート)(1ドル136ペソ闇レート) 非拠出制老齢年金のほうが普遍的子供手当よりはるかに高額 |
開催日時 | 第2回研究会・2020年6月19日 15:00 |
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開催場所 | Zoomによるネット会議 |
テーマ | 各メンバーの研究状況 |
発表者 | メンバー全員 |
研究会内容 |
次回研究会:9月10日(木)15:00 柴田・宇佐見発表 |
開催日時 | 第1回研究会・2020年5月17日 15:00~16:00 |
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開催場所 | Zoomによるネット会議 |
テーマ | 今年度の研究会の進め方について |
発表者 | 宇佐見耕一 |
研究会内容 | 本研究会の目的について宇佐見から趣旨説明があった。 今年度の研究の進め方に関し、基本的にネット会議とすることとした。各自の現地調査は、現状においては不可能であり、また現地からの研究者の招聘も可能性が低いとのことであった。 来年度後半に成果をまとめ、2022年度に出版を目指すことを確認した。 2022年度末にまとめの国際シンポジウムを開催することを確認した。 次回は6月19日か6月26日に開催の予定。 |
2019年度
開催日時 | 第6回研究会・2020年3月27日 14時00分~17時00分 |
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開催場所 | 同志社大学志向館 SK203教室 |
テーマ | メキシコにおける同性愛者の運動と権利の確立 |
発表者 | Marta Torres Falcón(UAM) |
研究会内容 |
メキシコでの最初の同性愛の認知を求める運動は、1970年代に始まった。1979年にゲイの最初のデモ行進があった。しかし、当初同性愛は犯罪とみなされ、当局からの抑圧があった。また、社会的に同性愛は、精神的疾患ともみなされていた。1980年代の同性愛者の目標は、犯罪性と精神疾患者とみなされることからの解放であった。この時代のどうせ愛車の運動は、左派勢力やフェミニズム運動との協力関係にあった。ところが、こうした同性愛者の運動は、HIVの広まりにより、新たな医療等や求める要求が加わった。 1990年代末にDFに左派政権が誕生し、同性愛者の議員が選出された。2006年には、連邦首都において同棲法(ley de sociedades de convivencia)が成立し、同性または異性間の同棲に法的根拠が与えられた。そこでは基本的生活財、相続および保護に関しての法的根拠である。メキシコでは婚姻に関する法律は州レベルであり、連邦首都に続いて二つの州が同様の法律が制定された。 2000年代になるとメキシコ首都圏の教会が、結婚は二人の市民的行為であると認めた。しかし、教会の主流派や右派には同性愛者に対しては、反対の態度を維持している。これに対して、メキシコ市で人権の観点、宗教の政治介入反対、憲法の差別禁止の観点から上記平等な同棲婚が立法化された。同棲法に関しては、合憲論争が起きた。最高裁は、家族の多様性を認め、全ての家族が保護されるべきであるとした。同性愛者は、異性愛者と同様の権利を得ることができるようになった。現在、多様性のなかにLGBTが登場している。現在では最高裁判決が、連邦レベルでの同棲に関する権利を保護している。 |
開催日時 | 第5回研究会・2020年2月14日 14時00分~17時00分 |
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開催場所 | 同志社大学志高館 SK203 |
テーマ | 「水資源動員とアンデス先住民―ティティカカ湖の湿地帯と海岸地域を結ぶ線」および「『国境を越えたラテンアメリカの女性たち』合評会」 |
発表者 | 村川淳氏(京都大学農学研究科研修員)および『国境を越えたラテンアメリカの女性たち』執筆者 |
研究会内容 |
第1部村川氏の「水資源動員とアンデス先住民―ティティカカ湖の湿地帯と海岸地域を結ぶ線」の発表においては、同市がペルー・アンデス地帯にあるプーノ市から海外部に向かう水資源を中心とした開発と、人的移動に関して解説した。ペルーでは、開発が遅れているアンデス地区開発のためのティティカカ湖の水利用を促進する計画があり、またアンデスから海岸部に至るルートでの水利用計画が長年練られてきた。ティティカカ湖の水利用計画では、同水系下流の湖の水利用方による渇水が問題となっている。また、海岸部へ至る水利計画はあるものの、それによる内陸部との交流が活発になったのかは不明であり、今後の研究課題である。 第2部の『国境を越えたラテンアメリカの女性たち』の合評会では、以下のような意見が出された。本書のメリットとしては、第一に移民の女性化が言説的に言われているが、本書ではそれを実証的に証明し、その問題点を明らかにした点。第二に南北間の移民研究が主流の中で、本書では南-南間の移民の実態と問題点を明らかにした点である。問題点としては、女性を焦点に当てて分析したことは本書のメリットであるが、共通した分析枠組みを提示し得なかった点がある。第二点は事例の分析に焦点を当てたために、全体像の把握に弱点が流転である。第三として、南-南間移動は南米南部の場合今までのイメージとは異なり、地域的な人権擁護レジームが存在している点をより強調すれば、本書のメリットをよりアピールできたという指摘である。 |
開催日時 | 第4回研究会・2019年12月21日 15時30分~18時00分 |
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開催場所 | 同志社大学至高館 202教室 |
テーマ | Presencia y participación política de las mujeres mexicanas en "la cuarta transformación"(「第四の変革」におけるメキシコ女性の政治参加とその存在) |
発表者 | Dra. Marta Torres Falcón |
研究会内容 | マルタ・トーレス教授により3時半から5時まで1時間半の講演が行われ、その後1時間を超える質疑と議論が行われ講演会を閉会した。参加者は10名だった。 メキシコでは、2018年に大統領選挙があり、「第4の変革」を掲げてオブラドール左派政権が誕生した。オブラドール大統領は、高齢者や障がいをもつ人々、若者への奨学金などの弱者を対象とした福祉政策を掲げて当選した。オブラドール政権の閣僚や議員のジェンダー比率を見ると、18人の大臣中女性大臣は7名、副大臣8名、委員会の女性委員長の割合は45%と高い割合を示している。しかし、これらの女性大臣たちが必ずしもそのキャリアに見合った地位を占めているとは言えない。議員に占める女性の割合は上院で48.2%、下院で49.2%に上っているが、州知事は2名に過ぎない。オブラドール政権の政策を見ると、弱者を対象とした政策としながらも、女性やシングルマザーなどが対象に含まれていないなど、ジェンダーの視点が欠如している点が指摘された。一方で、女性を対象とした暴力は、依然として続いており、「女性殺し(Femicidio)」ともいうべき状況が全国で拡大している。 講演の後、以下の質疑応答が行われた。ひとつはオブラドール政権の政治に関する質問で、オブラドール政権の政策の一つである「倫理的経済」とは何か、また汚職撲滅のための政策的な矛盾などが指摘された。もうひとつはメキシコのフェミニズム運動に関するもので、メキシコの政治における女性の顕在化、あるいは女性の進出と女性に対する暴力の増大との関係性についての議論が行われた。 |
開催日時 | 第3回研究会・2019年8月8日 17時30分~19時00分 |
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開催場所 | 同志社大学至高館 地下10教室 |
テーマ | テワンテペック地峡部 風力発電計画に対する抵抗運動 |
発表者 | Nisaguie Abril Flores Cruz |
研究会内容 | メキシコ南部に位置するオアハカ州のテワンテペック地峡は、メキシコ湾から太平洋に向けて強風が吹くことで知られ、世界有数の風力発電適地とされている。同地域では1994年に風力発電所が建設されて以降開発計画が進められ、2019年現在37の基地が存在している。風力発電所の建設をめぐっては、漁業で生計を立てる人々の生活が脅かされるとして反対の声も根強く、2007年に結成された「地峡部土地領域防衛先住民会議」(APIIDTT)を中心に反対運動が続けられている。本発表では、風力発電開発の実態と地元の人々に与える影響を中心とした報告が行われた。開発には三井商事や三菱商事など日本の企業も関わっており、日本と無関係ではない。発表では、地元に還元されない開発のあり方を見直す必要性が強調された。 |
開催日時 | 第2回研究会・2019年6月29日 14時00分~17時00分 |
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開催場所 | 同志社大学至高館 地下10教室 |
テーマ | ポスト新自由主義時代におけるラテンアメリカの人権レジーム:地域統合と各国での実践 |
発表者 | 坂口安紀、David Burbano González |
研究会内容 | 本日の研究会は第17研究会の第2回目の会合であった。本日は2名による研究発表が行われた。発表要旨は以下のとおり。 (1)「チャベス・マドゥロ両政権の権威主義化と人権問題」(坂口安紀(アジア経済研究所)) ベネズエラでは、2019年1月10日、昨年5月20日の大統領選挙で再選したマドゥーロ大統領が二期目の就任式を強行。但し、昨年の大統領選挙は、マドゥーロ政権が国内外の反発を押し切って日程を大幅に繰り上げて強行実施に踏み切った背景があり、米国をはじめ多くのEU諸国や近隣国はマドゥーロ大統領の就任に強く反発した。本発表では、2019年1月以降のベネズエラの政治情勢について時系列を追って説明があった後、国内政治経済の混乱により、海外への政治的亡命者が増加し、栄養失調や医療サービスの不在による死亡者が急増している現状についての説明があった。人権問題に関する調査については今後、本研究会での調査課題とされ、1980年代までのラテンアメリカ諸国における権威主義体制下による人権弾圧と現在のマドゥロ政権下の比較、違いなどについて論じる必要があると述べられた。 (2)「コロンビア周縁部における和平構築のための秩序形成」(David Burbano González (Javeriana大学、上智大学客員研究員)) 発表では、コロンビアにおける地域間格差および紛争後の人権状況改善の取り組みについて報告を行った。コロンビアは長年にわたりFARCやELNなどのゲリラ組織、準軍事組織による紛争が続いてきたことはよく知られている。2016年に政府とFARCの間で和平合意が結ばれたものの、紛争の解決にはまだ多くの課題が残されている。なかでも、農業生産性の高い地域やコカ栽培がおこなわれている地域など、戦略的に重要な地方では、ゲリラおよび準軍事組織の活動が続いているのが現状である。そうした中、各地域で和平・和解へ向けた取り組みも行われている。本発表では、犠牲者および加害者の母たちが手を取り合い和解の道を探る活動を行っているブエナベントゥラの事例や、伝統的な採貝産業を復興しようとするトゥマコの取り組みなどを紹介した。 |
開催日時 | 第1回 研究会・2019年5月11日 14時00分~17時00分 |
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開催場所 | 同志社大学志高館 地下10教室 |
テーマ | ポスト新自由主義時代におけるラテンアメリカの人権レジーム: 地域統合と各国での実践 |
発表者 | 宇佐見耕一、オラシオ・ダンテス |
研究会内容 | 1.本日の研究会は第17研究会の第1回目の会合であった。冒頭、代表者の宇佐見教授より、本研究会の概要、目的、今後の見通し等について以下のとおり説明があった。 (1)本研究会は、科基盤B、人文研第20期第17研究会、同志社大学ラテンアメリカ研究センターの活動に基づき構成される。本研究会の目的は、各国で制定された人権を保護する制度の特色、制度制定とその変容の要因、そしてその実効性に関して1990年代新自由主義政策実施以降の時期、特に反グローバル化言説が見られるようになった21世紀になってからの時期を対象に明らかにすることである。 (2)研究の対象地域はメキシコ、中米、アンデス諸国南米諸国とし、それぞれに各国における人権レジームの制度化の過程を政治学的に分析する研究者と、その過程のフィールド調査を基に人類学的・社会学的に分析する研究者を配置する。その上で、2000年代の反グローバル言説をも念頭に置いて、各国の人権保護の制度の特色、制度制定と変容の要因、およびその実効性を明らかにする。 (3)研究会のみならず、公開シンポジウムを開催したり、研究の成果をまとめた単行本の出版も目指す。なお、研究会はオープンであり、会員以外の方々の参加の参加も歓迎である。 2.次に、宇佐見教授およびオラシオ・ダンテス同志社大学嘱託講師による研究発表が行われた。要旨は以下のとおり。 (1)発表1「アルゼンチンにおける女性移民労働者の社会保障:国際人権レジームの観点から」(宇佐見耕一) 本研究の課題は、社会保障面における国際的な移民労働者に関する人権レジームと地域的な人権レジームが、どのようにアルゼンチン国内の社会保障制度に反映され、実際にその権利をどの程度まで行使できているのかという問題を女性民労働者に焦点を当てて公的文書の調査および質的調査により解明することである。 その結果、(a)彼・彼女らの社会保障に関する権利の状況は、居住権の有無により大きく異なり、その居住権は、キルチネル左派政権により移民に関する国際人権レジームが反映された新移民法と、それを実質的に移民に適用可能とさせる非合法移民の合法化を認める政令により大幅な前進が見られたこと、(b)しかし、居住権を得られなかった者は、国際人権レジームで謳われ、アルゼンチン国内においても制度化されている保護が得られていない状況にあることを明らかにした。 (2)発表2「メキシコ政権交代の背景」(オラシオ・ダンテス) 2018年メキシコにロペス・オブラドル新政権が誕生した。既存の政党政治を批判し、国民再生運動(MORENA)という新しい政党を率いた彼は、国民の80%以上の支持を受けて圧勝した。メキシコ市長時代から福祉政策の拡充に尽力してきた彼は、メキシコに歴史的な変革をもたらす存在として期待されている。本発表では、ロペス・オブラドル新政権が誕生した背景と新政権が打ち出している政策の展望を分析した。 ロペス・オブラドルが支持を受けた背景として、PRI(制度的革命党)やPAN(国民行動党)等の歴代政権が、麻薬カルテルに関し十分な対策を取れず治安が悪化したことに対し国民が批判的だったことが挙げられる。彼が打ち出している政策は、奨学金供与、基礎食品の価格統制などポピュリスティックなものであり、十分な予算が確保されていない中での実行は危険が伴うと予想される。 |