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第3研究 会衆派教会とは何か―その信仰と社会的影響についての総合的研究― 研究代表者:森田 喜基(キリスト教文化センター)

 本研究は、同志社の創立者新島襄の信仰的バックグラウンドであり、また同志社設立の礎でもある会衆派教会(Congregational Church)について、その教派的特徴と社会的影響について様々な角度から検証し、解明することを目的としている。(1)会衆派教会の「多様性の受容」とその基底、(2)会衆派教会と改革派教会の合流問題における「自由」論争、双方の研究者による総合検証、(3)日本における会衆派教会と学校教育、(4)日本基督同胞教会と同志社、の4つの研究項目から総合的に検証する。これらはアメリカと日本における会衆派教会のその信仰と社会的影響についての輪郭を描くにあたり、これまで明らかとされていない部分に焦点を当てたものである。

2024年度

開催日時 第4回研究会・2024年7月23日 17時30分-19時30分
開催場所 同志社大学啓明館 共同研究室A/オンライン
テーマ カナダ合同教会の歴史とその礼拝・音楽
発表者 尾尻 早弥 氏
研究会内容  今回の研究会ではゲストスピーカーの尾尻早弥氏よりカナダ合同教会の歴史とその礼拝・音楽について発表が行われた。発表者はトロント大学エマニュエルカレッジ神学博士課程(礼拝学専攻)を修了している (PhD)。
 発表の前半では、まず会衆主義教会を含むカナダ合同教会の歴史が紹介され、19世紀後半に始まったカナダにおけるプロテスタント諸教派の宣教協力の試みから今日に至るまでの歴史的な流れが説明された。つぎにカナダにおける会衆派の歴史が紹介され、カナダにおける最初の会衆派の集会所である聖マタイ合同教会の歩みについて説明がなされた。そして、カナダ合同教会における会衆派の貢献として、エキュメニズムおよび会衆の独立性という現在の合同教会の性格と会衆派との関係が指摘され、現在のカナダ合同教会における会衆派的な特徴が紹介された。
 発表の後半ではカナダ合同教会の礼拝と音楽の実際について紹介がなされた。発表者の勤務していたトロントの教会の実例や礼拝作りのためのウェブサイトの紹介とともに、カナダ合同教会の礼拝の神学的特徴が説明された。最後にカナダにおける先住民問題の歴史が取り上げられ、それに対する教会の対応や先住民問題に関する賛美歌が紹介された。かつて先住民迫害に関与した過ちから、現在では多くの教派が先住民との和解のための活動を行っていることが説明された。
 発表後の質疑応答では、ケベック州などにおけるカナダ合同教会とカトリックとの関係やエキュメニカルな対話に関して活発に意見交換が行われた。
開催日時 第3回研究会・2024年6月17日 17時30分-19時00分
開催場所 同志社大学啓明館 共同研究室A/オンライン
テーマ 新島襄の死に対する各学校の反応
発表者 同志社英学校:藤田 和也 研究補助者
神戸女学院:森田 喜基 研究員
同志社女学校:山下 智子 研究員・神田 朋美 研究員
前橋英和女学校:古澤 健太郎 研究員
アメリカン・ボード:蘇 哲誠 研究員
研究会内容  発表者は各学校の記念誌等において、新島襄の死がどのように記述されているかを報告した。
 同志社英学校においては新島の死が重大な出来事として受け止められたことが『同志社百年史』の年表から確認された。また、新島の死が、小崎弘道による「同志社報告」においては神学館建設との関連から述べられていること、杉井六郎による記述においては明治後半期のキリスト教教育の受難との関連から述べられていることが報告された。
 同志社女学校の記念誌においては、新島の死に関する記載がほとんどないことが報告された。その一方で『追悼集――同志社人物誌7』においては新島の死を受けた同志社女学校の生徒の所感が述べられており、『新島先生葬儀記録』においては同志社女学校の生徒が新島の遺体に謁見したことが記録されていることが報告された。
 神戸女学院と前橋英和女学校の記念誌においては、新島の死に関する記述はほとんどみられなかったことが報告された。
 アメリカン・ボードの資料として、新島の死を受けてボードが送った電信や宣教師により記された伝記が紹介され、一宣教師の死としては他に類を見ない扱いを受けたことが報告された。
 最後に「アメリカン・ボードと私の学校」年表において扱う新島の死以外のトピックとして、山下研究員と神田研究員から岸和田伝道、自由民権運動、文部省訓令第12号および教育勅語が提案された。
開催日時 第2回研究会・2024年5月20日 17時30分-19時00分
開催場所 同志社大学啓明館 共同研究室A/オンライン
テーマ 「アメリカン・ボードと私の学校」年表を語る会
発表者 アメリカン・ボード:蘇 哲誠 研究員
同志社女学校:神田 朋美 研究員
梅花女学校:高田 太 研究員
同志社英学校・神戸女学院:藤田 和也 研究補助者
頌栄保姆伝習所・その他:森田 喜基 研究員
研究会内容  現在研究会において作成されている「アメリカン・ボードと私の学校」に関する事柄を中心として、研究課題について議論がなされた。
 まず年表各項目の執筆担当者より、年表の内容について報告がなされた。
 その後、年表に関するシンポジウム開催の可能性について検討されたほか、現時点での年表の問題点が指摘された。具体的には、1) 執筆担当者によって着眼点が異なっているため、年表作成の方針をあらかじめ決めておく必要があること、2) すでに各学校が校史を出版しているため、当研究会による年表の独自性が求められることの二点が、今後の課題として挙げられた。第一の課題に対しては、アメリカン・ボードおよび日本組合基督教会との関係や人的交流に着目したうえで、各学校が組織として成立していく過程を年表において扱うことが確認された。第二の課題に対しては、新島襄の死などの重要なトピックをあらかじめ選定し、それらの出来事に対する各学校の反応を調査することが了承された。
 また、年表で取り上げられている学校のうち、アメリカン・ボードではなくウーマンズ・ボードとの関係が深い学校の扱いについて今後検討することとなった。くわえて、キリスト教学校教育同盟や関係教会等の事柄も適宜年表に加える必要があることが確認された。
 最後に、新島襄の死に対する各学校の反応とその前後におけるボードとの関係を調査し、さらに新島襄の死以外の重要なトピックを選定することが、次回研究会までの課題として了承された。
開催日時 第1回研究会・2024年4月22日 17時30分-19時00分
開催場所 同志社大学啓明館 共同研究室A/オンライン
テーマ 初期アメリカン・ボードの教育宣教方針の概観(1832-1866)
―ルーファス・アンダーソンの理論と実践―
発表者 蘇 哲誠
研究会内容  まずルーファス・アンダーソン(Rufus Anderson, 1796-1880)に関する先行研究と生涯が紹介された。アンダーソンはアメリカン・ボードの「三大主義」と呼ばれる宣教方針を提唱した人物であり、米国プロテスタント宣教師のなかで最も重要な人物の一人として評価されていることが説明された。次に、19世紀前半におけるアメリカン・ボードの組織構造、アンダーソンの担ったCorrespondence Secretaryという役職の業務内容、およびアメリカン・ボードと教育宣教の歴史について説明がなされた。
 つぎにアンダーソンの教育宣教の理論が、塩野和夫氏による先行研究やアンダーソン自身による文書をもとに考察された。その理論とは三大主義に基づくものであり、ミッション・スクールによって信徒数を増やすことから始まり、次いで現地人の教会と牧師を育てるために宣教地に神学校を設立し、最終的にミッションの拡大を目指すというものであった。また、当時のアメリカン・ボードによる宣教の実践的な課題として財政赤字の問題があったことが指摘された。
  発表後には質疑応答が交わされ、新島襄による同志社設立の意図とアンダーソンの宣教理論との比較や、アンダーソンの植民地主義的/帝国主義的な思想について議論がなされた。

2023年度

開催日時 第7回研究会・ 2024年2月19日 17時30分-19時00分
開催場所 同志社大学啓明館 共同研究室A/オンライン
テーマ 神戸女学院とアメリカン・ボード
発表者 中野 敬一
研究会内容  中野研究員はまず神戸女学院の創立と発展におけるアメリカン・ボードとの関係の重要性を取り上げた。次にアメリカン・ボードの宣教師が神戸に派遣された後、宣教師にとって日本におけるミッション・スクールの必要性、および神戸女学院が成立するまでの経緯を論じ、神戸女学院歴代院長(校長)の経歴を紹介し、黎明期の神戸女学院におけるアメリカン・ボード宣教師の位置付けについて論じた。
 その教育目標は教師を養成できる高等教育機関であること、学校の経営管理はアメリカン・ボードの管理下に置かれるべきであること、「在米神戸女学院財団」という組織と神戸女学院の寄付金との関係といった神戸女学院の特徴、またキャンパス内の建築物が宣教師たちの名前が付けられていることから、同じくアメリカン・ボードによって設立された同志社や梅花女学校と異なる神戸女学院の特殊性と特徴が見られる、と今回の発表を結んだ。質疑応答では、アメリカン・ボードとその付属の女性団体であるウーマンズ・女性宣教師たちを中心に学校創りがなされた神戸と、京都の違いについて、議論がなされた。
開催日時 第6回研究会・ 2023年11月20日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学啓明館 共同研究室A/オンライン
テーマ 1880年代後期教会合同運動における会衆主義理解に関する考察-憲法草案および新島襄を中心に-
発表者 神田 朋美
研究会内容  1886年から1890年までの日本基督一致教会と日本組合基督教会の教会合同運動における教会憲法草案の変遷と、それに対する新島襄の指摘をめぐって、組合教会内で展開された合同推進派と反対派の主張を取り上げた。次に1885年5月15日発行の『日本基督教会憲法並細則付録』(以後、『原本』と称す)、1888年10月から11月の「新島襄の指摘」(以後、『新島指摘』と称す)、1889年3月作成の『日本聯合基督教会憲法並規則』(以後、『改稿』と称す)の3資料を詳細に比較し、「権限」、「監督」、「連合」などの出現数が多いキーワードの内容と変化を分析し、教会論に関して3資料の差異を考察した。最後に、特に『新島指摘』では新島襄の会衆主義理解はアメリカン・ボードのような協同体を志向していたと、資料を根拠に結んだ。
 質疑応答では、『原本』と『改稿』を起草したメンバーが、どのように会衆主義理解を持っていたかについて討論がなされた。次に、「監督」というキーワードをめぐって、その語源と訳語が日本の各教派において異なる職位として理解されているのではないか、という指摘がなされた。その上で「監督」に対する新島の理解に関して意見交換した。最後に長老主義と会衆主義に関して、新島襄がどのような理由に於て教会合同に対したかについて、議論され、この部分については、改めて今後資料を元に研究を深める必要性を今後の課題とした。
開催日時 第5回研究会・ 2023年8月17日-18日
開催場所 同志社びわこリトリートセンター
テーマと発表者
  1. アメリカン・ボードと梅花(2)
    高田 太(梅花女子大学准教授)
  2. 1840年代中国におけるアメリカン・ボードとミッションスクールの設立問題―ルーファス・アンダーソンとカントン伝道所の宣教師たちとの「論争」をめぐって―
    蘇 哲誠(同志社大学大学院後期課程)
  3. アメリカ合同教会と気候正義―気候変動政策に対する合意形成のプロセスとその神学的論拠―
    木谷 佳楠(同志社大学神学部准教授)
  4. 新型コロナウィルス感染拡大前後の教会の宣教の変化―会衆主義教会を中心として―
    関谷 直人(同志社大学神学部教授)
  5. 2つの旧組合教会に仕えて
    大垣 友行(日本基督教団神戸教会担任教師)
研究会内容 報告内容(1)は、高田太先生の前回発表内容の続き、沢山保羅の生涯を中心に、アメリカン・ボードと梅花女学校の繋がり、梅花の自給路線の挫折、およびその中に成瀬仁蔵の活躍と位置付けを討論した。

報告内容(2)は、1840年代中国におけるミッションスクールの設立問題、特にアメリカン・ボード本部が学校新設と拡大を禁止する問題で、アメリカン・ボード初期教育伝道の問題点とその影響を紹介した。

報告内容(3)は、アメリカ合同教会の成立過程、その社会的・神学的特徴、およびその現状と価値観を討論することで、環境・気候変動問題に対するアメリカのキリスト教の立場と意見を論じた。

報告内容(4)は、新型コロナウィルス感染症拡大前後の日本の教会、特に会衆主義の伝統に立つ教会の変化について、インタビュー記録をMAXQDAを用いてデータを抽出し、分析した結果が報告された。

講演内容(5)は大垣友行氏を講師に迎え、「2つの旧組合教会に仕えて」と題して、同志社教会と神戸教会の比較、両教会の今後の展望等が語られた。

一泊研究会ではこれまで積み重ねてきた「私の学校とアメリカン・ボード」の研究の成果報告について、議論がなされ、基礎研究となる年表やデータベースの作成について至急進めることとなった。
開催日時 第4回研究会・ 2023年7月24日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン
テーマ 松山東雲とアメリカン・ボード
発表者 水島 祥子(頌栄短期大学助教)
研究会内容 日本組合教会松山教会と松山女学校の成立から、四国における組合教会設立の背景と要因が解説された。その上で、松山教会の初代牧師二宮邦次郎の活動と信仰を分析し、松山教会の初期発展とその社会的影響について、検討した。またアメリカン・ボードとの関係をC・S・ジレットの教育活動を中心に、松山女学校の運営に関する教会の働きも見た。
研究会後半には帰国中の布施智子研究員からアメリカにおける日系人会衆派教会の現状と課題について報告がなされた。
開催日時 第3回研究会・ 2023年6月19日 17時30分~19時10分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン
テーマ 創設期の同志社女学校―同志社英学校との差異に注目して―
発表者 山下 智子
研究会内容  本発表において、山下氏は同志社と同志社女学校における新島襄やメリー・F・デントンなどの人物に対するそれぞれの理解を紹介し、創設期の両校における差異を明らかにした。その時期の英学校と女学校の歴史をめくってみると、女学校の起源はアメリカン・ボードよりもウーマンズ・ボードであることが分かる。ウーマンズ・ボードのアメリカでの成立と日本での働きは、男性の宣教師と異なる女性の宣教師の役割を提示したものであり、キリスト教の価値観を体現できる「ホーム」という概念による学校教育の展開に大きな役割を果たしたことがその特徴である。今後、ジェンダー・スタディーズの観点から創設期の同志社女学校を再考する必要性を指摘し、発表を結んだ。
 質疑応答では、「ホーム」としての女子教育において、アメリカの教育を受けた女性宣教師が求めた女性の自立と、当時の日本における教育観がどのように衝突し、また影響を及ぼしあったのかについて、同志社女学校創設当時の入学する学生の状況、女性宣教師の給与の問題、宣教師の結婚問題、また日本以外の地域においてのアメリカン・ボードの女子教育の状況との差異に関する問題等が議論された。また1850年代までの中国におけるアメリカン・ボードの宣教状況、特に宣教師の結婚問題、ミッションスクールの目的等が紹介され、それが1869年以降のアメリカン・ボードの日本宣教に影響を与えたかどうか、という点について今後の課題とした。
開催日時 第2回研究会・2023年5月15日 17時30分~19時10分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室B/オンライン
テーマ 植村海老名論争研究史試論-植村正久の発言に依拠しつつ-
発表者 三輪 地塩
研究会内容  発表者は、植村正久と海老名弾正の間で交わされた所謂「植村海老名論争」(以下「論争」と略す)の研究史において、特に「論争」に対する歴史的な記憶、また日本キリスト教史学においてどのように両者を取り上げてきたのか、また当該問題についての言及の変遷に関する問題点を提示し、議論を展開した。更に「論争」の経緯と影響をめぐって、この日本のキリスト教会、また神学に対する重要性を示した一方で、「論争」が日本組合基督教会の1901年以降の総会記録において一切触れられていないことから、組合教会の中では重要視されなかったではないか、と疑問を提起した。最後に、「論争」に対する評価を時系列で分析し、論調と叙述の変化から、言説が「論争」という出来事より、その「対立化」に焦点を当てる傾向があったことで、それは日本基督教会と日本組合基督教会の対立問題の一端として考えられるのではないか、と結んだ。
 質疑応答では、まず「論争」における自由主義神学に関する部分をめぐって、また「論争」から海老名と「ユニテニアン」と目されるようになったことや、アメリカン・ボードと日本組合教会の間における海老名の位置付け、それらの言説に関する文献の底本がどれに当たるのかについて議論が交わされた。最後に「論争」という出来事は「対立化」と思われているが、当事者二人にとっては、それとはニュアンスが違う可能性が高い点など、これまでとは異なる視点からの植村と海老名を取り上げることによって、明治期の日本のキリスト教会についての新たな一面が提示できるのでは、について一考する機会となった。
開催日時 第1回研究会・2023年4月17日 18時00分~19時40分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン
テーマ アメリカン・ボードと梅花(1)―創立者澤山保羅と宣教師の関わり、1870〜1881―
発表者 高田 太
研究会内容 高田研究員は、まず澤山保羅と新島襄の牧師としての性格について詳細に比較検証し、澤山の日本伝道は自給原則に基づき、アメリカン・ボードからの支援金を拒否することを通じて、伝道初期の「牧師」という概念が不安定であることと日本伝道における自給原則の問題を問題意識しつつ、発表を展開した。次に、先行研究を踏まえ、澤山研究の歴史と状況を提示。澤山の生涯を「留学まで(1852-1871)」、「留学期(1872-1876)」、「自給論の開花挫折(1877-1881)」という三期に分け、澤山とアメリカン・ボードの関係を示した。最後に、自給論をめぐって梅花女学校とアメリカン・ボードの間の問題点を提起
し、その詳細を次回の発表に預けた。その後質疑応答がなされた。

  • アメリカン・ボード内部の自給論に対する議論がどのような状況であったのか。
  • アメリカン・ボードは会衆派教会のみの団体では元々なかったので、自給論に対する姿勢が統一されていたのか。いなかったのか。

それを踏まえて自給論をめぐって、新島襄の場合を討論し、それによって伝道論に関して新島と澤山との差異が浮き彫りとなった。

2022年度

開催日時 第6回研究会・2023年1月16日 17時30分~19時00分
開催場所 Zoomによるオンライン研究会
テーマ バーナード・リーチと同志社―新島襄宛E. H. シャープ英文書簡を手掛かりに―
発表者 山下 智子
研究会内容  2023年最初の研究会は、同志社社史資料センター第一部門研究(新島研究)会の研究会にオンライン参加させていただく形で開催された。「バーナード・リーチと同志社―新島襄宛E. H. シャープ英文書簡を手掛かりに―」と題して、報告者は当研究会研究員の同志社女子大学山下智子氏。民藝運動にも関与した英国の陶芸家、バーナード・リーチを出発点として、リーチの祖父であるエドマンド・ハミルトン・シャープが遺した新島襄宛の3通の英文書簡の読解を通して、新島襄や同志社関係者とのつながりや、民藝運動に関わった柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司らと同志社との関係、そして、第10代・12代総長の湯浅八郎と民藝運動との関係などに光を当て、新島研究・同志社史研究に新しい観点をもたらすことが試みられた。その後、会場およびリモートの参加者との質疑応答が行われた。
開催日時 第5回研究会・2022年10月17日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学良心館 RY431教室 及びオンライン
テーマ ミニレクチャー 質的研究
発表者 平田祐太朗
研究会内容  第5回目の研究会となる10月研究会では、森田喜基研究代表者の司会のもと、鹿児島大学法文学部人文学科心理学コース准教授の平田祐太朗先生より、「質的研究 ミニレクチャー」と題して、主に質的研究と、その方法の一つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチ GTA(Grounded Theory Approach)について講演が行われた。これは歴史研究において文献研究、またはオーラル・ヒストリーをどのように分析するのかについて、研究会として新しい知見を得る目的で開催された。
 心理学という学問領域の内で、従来の厳密な科学的研究方法に対して見直しを行おうとする動向があることが紹介された。心理学研究の立場が多様化しており、その内の一つとして、質的研究というものが挙げられ、その方法の一つとして、GTAが紹介されることとなった。
 質的研究は、GTAだけを方法とするのではなく、エスノグラフィーやケーススタディ、あるいは現象学的研究などといった、他の臨床的な方法を組み合わせながら、いわば帰納的に、個々の事例に当たってモデルや理論を形成する立場ということが示された。
 とりわけGTAは、個々の事例から得られたデータをコード化し、それらを適切な仕方で相互に結びつけ、カテゴリーに分類するという手続きを重視する。得られたカテゴリーをさらに高次のカテゴリーに組み込む作業もあれば、カテゴリーのレベルから個々のコードのレベルにまで降りて、そのコーディング作業の妥当性を逐次検証するという作業も重視される。
 こうしてまとめられたデータを、論文化するにあたってどのように用い、また示さねばならないかということについても言及された。
 研究員からはオーラル・ヒストリーのインタビューにおいて如何にインタビュワーの主観を排することができるのか等質問がなされた。その中で普遍化されるべき歴史性と、その逆の特殊性の抽出に関しては、分析法が違うという整理がなされた。
 最後に今後の研究会、特に11月公開講演会と1月から3月に予定している「アメリカンボードと諸学校」研究についてガイダンスが行われた。
開催日時 第4回研究会・2022年8月25日 10時00分~15時00分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A 及びZoomによるオンライン
テーマ 会衆派教会の理念と現実
発表者 村上みか
研究会内容  8月研究会では、同志社大学神学部村上みか教授から「会衆派教会の理念と現実」と題して講演がなされた。内容は会衆派教会の歴史的な側面から説き起こされ、イングランド国教会の成立、会衆主義を含めたピューリタン運動の展開について詳細な説明がなされた。その後、会衆主義の特質と問題について、教会論の観点から説明が加えられた。特にカルヴァン以来の各個教会主義について焦点が当てられたが、そのことが現在の会衆主義教会の問題点、つまりは理念と現実の齟齬をも生み出していることに注意が促された。「自主独立」という理念から、様々な理由で教会同士の「交わり、協力」が必要になっている現実があるが、そうした矛盾をどのように捉え、乗り越えていくかという問題提起がなされた。講演後には質疑応答がなされた。午後、研究員の研究発表をもって閉会した。
開催日時 第3回研究会・2022年7月18日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A 及びZoomによるオンライン
テーマ 初期同志社における神学教育の実際―初代神学教場『三十番教室』を中心に―
発表者 布施智子
研究会内容  第3回目の研究会となる7月研究会では、まず三輪地塩氏の司会のもと布施智子氏から「初期同志社における神学教育の実際―初代神学教場『三十番教室』を中心に―」と題して、研究発表が行われた。
 同志社英学校の開校の経緯から説き起こし、神学を教授する場となった「三十番教室」の名称の由来について、新島襄直筆の「寄宿舎部屋割図」という資料を元に、先行研究を踏まえて解釈を示した。今後の課題としては、同志社の神学教育をより重層的に捉えるために、学外の資料にもあたる必要が示された。その後の質疑応答では、同志社英学校予科は「神学校」であったのかなど同志社の黎明期をどう捉えるかについての考察が深められた。
 引き続き今後の研究に関する5分間スピーチとして、木谷佳楠氏から「気候変動政策とアメリカ会衆派教会」、高田太氏から「梅花学園の創立者澤山保羅と新島との交流についての研究」、山下智子氏からは「湯浅初」研究についての現況が語られた。木谷氏はアメリカ社会における政治と信仰の関係について、南部バプテスト教会とアメリカ合同教会(UCC)、またフロアからの質問に応答してカトリック教会の動向について報告がなされた。高田氏からは梅花学園のルーツである日本基督教団浪花教会所蔵資料の今後について課題となっている旨の報告があった。山下氏からは明治期のクリスチャン同士のネットワーク、協働、連帯への関心についても報告がなされた。
 次回一日研究会について相談をした上、閉会した。
開催日時 第2回研究会・2022年6月20日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A 及びZoomによるオンライン
テーマ コロナ時代に見えた会衆派教会の可能性―聖餐式のあり方をめぐって
発表者 吉岡恵生
研究会内容  第3研究会の6月研究会は、日本基督教団高槻日吉台教会・吉岡恵生氏に「コロナ時代に見えた会衆派教会の可能性-聖餐式のあり方をめぐって」と題して発題がなされた。吉岡氏は日本クリスチャンアカデミーにおける共同研究会「コロナ後の教会の可能性」での研究成果等を踏まえ、コロナ禍におけるキリスト教会の現場での実践と、大学等研究機関における学究的探究・神学の間にあるギャップをまず指摘をした。特に「聖餐」の取り扱いについて「オンライン礼拝の経験が重なるほどに、聖餐に基づく共同体性が損なわれる」という「机上」からの懸念に対して、吉岡氏が牧師をする高槻日吉台教会での「物素を用いない」仕方で行われた「オンライン聖餐」が、信徒たちによって恵み深いものと受け止められていることが、いわば反証という形で示された。その上で、こうした現場での取り組みが各個教会の主体的な決断によってなされてきたというところに、他の教派との比較を踏まえて、各個教会主義に基づく会衆派教会の特徴が今日においても見ることができるのではないかとした。講演に対して、木谷佳楠氏よりコメントがあり、またフロアとの質疑応答がなされた。その取り組みを支持する意見があったが、同時に「信徒が良い、と受けとれば、何もかもが良しとされるのか」「会衆派教会における合意形成とは何か」というテーマにも言及があり、活発な議論がなされた。
 次いで、研究の方向性と進捗状況を「5分間スピーチ」として、中野敬一氏、三輪地塩氏、渡邊恵梨佳氏により述べられ、それぞれについても質疑応答が行われた。最後に、7月・8月の研究会の日程について確認・決定された。
開催日時 第1回研究会・2022年4月18日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学啓明館共同研究室A 及びZoomによるオンライン
テーマ 自己紹介と今後の研究活動についての相談
発表者 森田喜基
研究会内容  第21期第3部門研究会の発足後、最初の月例会であった今回は、まず本研究会の研究課題に対する説明がなされた。その内容としては新島襄の信仰的背景であり、その同志社設立の礎でもある会衆派教会(Congregational Church)について、その教派的特徴と社会的影響を解明するために、(1)会衆派教会の「多様性の受容」とその基底、(2)会衆派教会と改革派教会の合流問題における「自由」論争、双方の研究者による総合検証、(3)日本における会衆派教会と学校教育、(4)日本基督同胞教会と同志社、の4つの研究項目から総合的に検証すること。またこれらは日米の会衆派教会の輪郭を描くにあたり、明らかとされていない部分に焦点を当てたものである。
 次に今後の研究会の運営方針等の説明があり、引き続き各研究員の自己紹介と本研究会において上記の4つの研究項目にどのように各研究員が関わるのか等の紹介がなされた。
 その後意見交換を行い、研究員より、研究会や進め方について数多くの意見や質問が出され、6月及び7月研究会の持ち方と8月に一日研究会を実施することが決定された。