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第14研究 日本保守主義の再検討:「守る」対象の二重構造をめぐって 研究代表者:望月 詩史(法学部)
本研究会の研究課題は「日本保守主義の再検討:「守る」対象の二重構造をめぐって」であり、日本保守主義が守ろうとしてきたものの本質を明らかにすることを目的とする。保守主義に対する研究アプローチとして一般的なのは、まずE・バークの思想を保守主義の基準とみなして、そこから保守主義の要素(例:漸進主義)を抽出し、次に個人の思想の中にこれらの要素がどれだけ見出せるのかを検討するものである。この有効性を部分的に認めつつ、本研究では「守る」対象に注目する。具体的には「守る」対象が「○○を守るために△△を守る」という二重構造を成していたと仮定する。この「○○」を「守る」本質と呼べば、それを「守る」手段として「△△」が位置付けられる。それでは日本保守主義にとって「守る」本質とは何であったのか、本研究を通じて明らかにしたい。
2024年度
開催日時 | 第6回研究会・2024年10月13日 13時~17時 |
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開催場所 | 良心館107 |
テーマ | 『発言者』とその時代―ポスト冷戦期における日本の保守主義再考― |
発表者 | 望月詩史・大園誠・井上祐子・織田健志・佐藤光・佐伯啓思・東谷暁 |
研究会内容 | 公開講演会「『発言者』とその時代―ポスト冷戦期における日本の保守主義再考―」を開催した。 第1部は、『発言者』関係者への聞き取り調査の概要と同誌創刊初期の記事を対象とする分析結果を発表した。望月詩史氏は、まず関係者への聞き取り調査の概要として主に創刊の経緯や編集などに関する内容を発表した。続いて経済論を対象とする記事分析の結果について、「規制緩和=善」と見なす当時の規制緩和論に対する批判論に焦点を当てて報告した。大園誠氏は、政治論を対象とした記事分析の結果を肯定的なテーマ(1.日本的「保守主義」⇔「リベラル」批判、2.日本の「歴史」と「伝統・文化」の擁護、3.「ナショナリズム」(国民性・国民経済))と否定的なテーマ(1.1990 年代の「政治改革」批判、2.1980 年代以降の「新自由主義」批判、3.1995 年からの「自社さ政権」批判、4.戦後日本の「アメリカニズム」批判、5.日本における「戦後民主主義」批判)に整理して報告した。井上祐子氏は、歴史認識論を対象とした記事分析の結果について、「Ⅰ『発言者』における歴史の意味」「Ⅱアジア太平洋戦争に関する首相の発言や国会決議に対する批判」「「Ⅲ戦後50年の総括と日本の進むべき道」に整理して報告した。 第2部は、コーディネーターを織田健志氏が務め、パネラーとして佐藤光氏(大阪市立大学名誉教授)、佐伯啓思氏(京都大学名誉教授、京都大学人と社会の未来研究院特任教授)、東谷暁氏(編集者、ジャーナリスト)を招いた。議論のテーマは多岐にわたったが、中心となったのは西部邁に関するものである。三者にとって西部の存在がいかに大きいものであったのかを再確認する機会となった。 質疑応答では参加者から多くの質問が出され、それを基にさらに活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第5回研究会・2024年8月24日 14時~16時30分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 新渡戸稲造の保守主義と自由主義 |
発表者 | 山本慎平 |
研究会内容 | 今回は、山本慎平氏が「新渡戸稲造の保守主義と自由主義」と題して報告した。報告の目的として、第一に、晩年の新渡戸稲造の思想と活動から彼の保守主義と自由主義の思想の特徴を明らかにすること、第二に、昭和初期におけるマルクス主義や軍国主義への向き合い方を通じて新渡戸の自由主義思想の意義と限界を明らかにすることの2点が挙げられた。続いて、先行研究が紹介された。 本論の構成は、以下の通りである。 1. 新渡戸における保守主義的思考 (1) 鶴見俊輔の指摘(2 ) 国体論(3) 地方(ぢかた)の研究 2. 新渡戸の自由主義論とマルクス主義批判 (1)講演「新自由主義」(2) マルクス主義批判 (3 ) 新自由主義 協会と雑誌「新自由主義」 3. 満州事変以後の新渡戸 (1)アメリカにおける新渡戸の満州擁護(2)日本における新渡戸の満州事変論 (3)国際連盟脱退と寛容としての自由主義の原則 本論を踏まえて、最後に、以下の4点が指摘された。第一に、新渡戸や鶴見祐輔が主張した新自由主義(New Liberalism)の可能性と限界。第二に、新渡戸はイギリス流の漸進的自由主義を評価し、彼の国体論はバークに影響を受けていた、その意味で彼の思想が日本における保守的自由主義の一つであること。第三に、満洲事変に対する新渡戸の言説に見られるように、彼には現実主義者としての性格が存在したこと。第四に、新渡戸が立場上より国家権力に近いところに位置しており、国家の当事者、責任ある立場として現実をどうにか改善させていこうとしていたこと。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第4回研究会・2024年7月19日 16時30分~19時30分 |
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開催場所 | 光塩館地下会議室+オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 戦後日本の「保守」と「リベラル」――林健太郎と丸山眞男をめぐって―― |
発表者 | 織田健志 |
研究会内容 | 今回は、織田健志氏が、「戦後日本の「保守」と「リベラル」――林健太郎と丸山眞男をめぐって――」と題して報告した。 まず初めに、「大衆社会」状況における「個」の自律性と「自由」の問題が思想課題として問われにくくなったのではないかと問題提起がなされた。その上で、例外だったのが、1950 年代の林健太郎と丸山眞男であった。 例えば、両者の「自由」観について、リベラル・デモクラシーの普遍性への確信と、他方で、現代アメリカにおけるファシズムの危険性や「大衆社会」状況への懸念という点で、共通の認識を持っていた。また、林が丸山のファシズム論を紹介・論評した文章では、丸山の「容共」的態度に言及するものの、その手法や基本認識は肯定的に評価していた。 本報告を通じて、両者が「「自由」は人間の秩序にとって何を意味するのか」という問いに正面から取り組んだ事実が明らかにされた。しかし、当時は「反共/容共」という政治的立場によって分断が生じており、「自由」の問題が思想の主要課題として問われにくくなっていた。その結果、思想としての「保守」(および「リベラル」)が成立しなかった。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第3回研究会・2024年6月22日 14時~16時30分 |
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開催場所 | 光塩館地下会議室+オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 保守的自由主義とは何か |
発表者 | 佐藤光 |
研究会内容 | 今回は、佐藤光氏をゲストスピーカーにお招きし、「保守的自由主義とは何か」と題して報告いただいた。 まず、「保守主義conservatism」あるいは「保守的自由主義conservative liberalism」の定義、それに続いて、以下に挙げるキーワードに即して、「保守的自由主義」の特徴が説明された。 ①時間意識:回帰する時間もしくは同時存在する時間。 ②自生的秩序:無数の人々の自由な活動の結果として自然に生み出され進化する自生的秩序を重視。 ③コモンロー(common law、慣習法)の支配の下における自由:自由は過去から伝えられてきた作法、ルール、法などの制約の下で実行。 ④伝統知、実践知、暗黙知 ⑤「常識」に基づいた経験主義 ⑥リアリズム、柔軟性、プラグマティズム ⑦バランス感覚と中庸の徳:極端から極端への振れを防ぎバランスを担保する「重心」が存在。これは各国各民族の文化的伝統と常識によって与えられる。 ⑧漸進的進歩あるいは保守的改革:現状の善い部分と悪い部分を慎重に弁別し、前者を保存し発展させ後者を排除して現状全体の改革を図る。 ⑨家族、地域、地方、中間集団 ⑩保守的自由主義にとっての国家:より上位の権威と権力、特に国家権力の必要性と重要性をはっきり認めるが、家族、地域、地方、中間集団ななどを抑圧することがあってはならない。 ⑪共和主義的要素:国家権力を適正に担い行使するためには、積極的な政治参加、積極的自由の行使を重視する古典的共和主義の復権を通して、消極的自由の優位性を説くハイエクやバーリンの自由主義(「消極的自由主義」)の弱点を補強することが必要。 ⑫「偏見」としての宗教。 ⑬国際関係の原則としての国際主義 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第2回研究会・2024年5月24日 16時30分~18時 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 次期(第22期)研究会テーマについて |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今回は、望月詩史氏が、「次期(第22期)研究会テーマについて」と題して報告した。 まず、テーマ案を提案し、それから、提案理由を3点挙げた(①過去・現在の研究会テーマ(戦後思想、保守主義)と接点を持つこと、②幕末から現代までを通観できること、③日本以外を専門とする研究者も参加できること)。続いて、研究目的、研究方法などについても説明した。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われ、最終的に、今回の提案内容は了承を得られた。 |
開催日時 | 第1回研究会・2024年4月26日 16時30分~18時30分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 竹山道雄は何を守ろうとしたのか |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今回は、望月詩史氏が、「竹山道雄は何を守ろうとしたのか」と題して報告した。 まず、竹山の思想について関心を持った理由が説明され、それから、彼の思想をめぐる主な評価が整理された。 続いて、竹山の単行本の「あとがき」を手掛かりにしつつ、彼の問題関心の変遷が整理された。それによると、「ドイツの悲劇」(ナチスの問題)に対する関心から始まり、その後は(主に進歩主義の)思考様式・思想体系に対する関心、人間心理に対する関心、現代の神話としてのイデオロギー(信仰の代用物としてのイデオロギー)に対する関心が同時期に見られ、それから晩年にかけてキリスト教に対する関心(全体主義の起源)が高まった。一方で、日本の歴史や文化については時期によって関心の度合いに差があるとはいえ、晩年まで持ち続けた。 次に、竹山の歴史観が説明された。彼の問題意識の中心に存在するのが「あの戦争はなぜ起こったのか」(林健太郎)であり、単純な歴史観(唯物史観)に懐疑的だった。また、ナチズムがなぜ誕生したのか、その特質はどの点にあるのかについて関心を抱いており、それをある状況における「特殊なもの」、あるいは「一時的」・「例外的」と位置付けることに否定的でもあった。さらに、彼の目にはマルクス主義が左の全体主義(ナチズムは右の全体主義)に映っており、左右の全体主義は「人間疎外」(マルクス主義が使う用法とは異なる)で共通するとみなした。そこでは人間が人間(個人)として尊重されないからである。 続いて、「ファナチズム」(狂信主義)の発生原因に関する竹山の見解が紹介された。彼は社会的ファナチズムの構造を①欲求不満②未来への信仰③権威を志向の3点に整理の上、ファナチズムの原因は、「この混沌たる世界に意味をあたえて、秩序づけて理解しようと欲する」人間の本性に根ざしており、さらに、他の生物が持っていない「表象力」をもっている点に見出せると指摘した。 最後に、竹山が「全体主義」や「狂信主義」から何を守ろうとしたのかという点について、人間(個人)の尊厳(→ヒューマニズム)と「自由」である可能性が高いと指摘しつつも、特に後者の中身については限定する必要があると説明された。また人間(個人)の尊厳と国民or民族の尊厳の関係性、ナショナルなものへの一貫した関心の評価については今後の検討課題とされた。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
2023年度
開催日時 | 第10回研究会・2024年2月23日 16時~18時 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 合同報告会の件、次年度公開講演会の件ほか |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今回は、研究代表者の望月詩史氏が、合同報告会の件、次年度公開講演会の件などについて報告した。 まず、合同発表会の開催を案内し、積極的な参加を呼び掛けた。 次に、現在応募中の公開講演会の企画について、一件申請したい旨の提案があり、具体的な内容が示された。一部、修正意見が出されたが、申請については参加者の了承を得た。 続いて、今期の研究成果をまとめる方針について提案があった。内容については、概ね賛同が得られた。最終的な方針の決定は、次年度を予定している。 最後に、次期部門研究会についての案内があり、応募する場合に検討すべき事項が挙げられた。この件については、継続審議となった。 |
開催日時 | 第9回研究会・2024年1月26日 17時~19時30分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 講和・「独立」期における津久井龍雄の言説分析―「異端の右翼」は何を保守したのか |
発表者 | 井上祐子 |
研究会内容 | 今回は、井上祐子氏が、「講和・「独立」期における津久井龍雄の言説分析―「異端の右翼」は何を保守したのか」と題して報告した。 まず、報告の課題として、講和・独立期(1951~53 年)における津久井の言説から、津久井の保守の側面の特徴を検討すること、右翼と保守の関係を考え、保守の思想を考える一つの材料にすること、以上の2点が挙げられた。それから、共同研究が設定する保守主義の二重構造(「○○を守るために△△を守る、○○を××から守る」)に当てはめるならば、津久井は、(1)日本国家・日本民族(の一体性)を守るために、天皇制・国体・家制度を守る、(2)日本国家・日本民族(の一体性)を守るために、日本の主体性(自主の精神)を守る(確立する?)、(3)日本国家・日本民族(の一体性)をそれを破壊・阻害しようとするものから守る、となるのではないかという見通しが示された。その上で、(3)について、破壊・阻害するものは時代によって変化しているとも指摘された(この点は本論で具体的に紹介された)。 以上の課題設定を踏まえて、本論では、1951年から53年の講和・独立期の言説が分析された。具体的には、講和と独立、憲法改正と再軍備に関する言説が取り上げられた。また関連して、天皇退位に対する津久井の見解も紹介されたが、併せて同時代の他の知識人の見解も紹介され、それによって彼の見解の独自性が浮かび上がった。 最後に、津久井が秩序の中心としての天皇制を維持しつつ、天皇制と民主主義との共存・調和を図ったり、天皇を中心とする民族の一体性・助け合い(「同胞相愛」)を尊んだりした点は、伝統を重視して漸進的な秩序ある進歩を望む保守主義と共通するが、一方で、日本国家・日本民族の進歩・発展に力点を置き、また社会的平等・国民生活の安定という社会主義的志向をもつ点は保守主義と相違するのではないかと指摘された。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第8回研究会・2023年11月23日 17時~19時 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 尾崎行雄の「明治」観と「大勢」観 |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今回は、望月詩史氏が、「尾崎行雄の「明治」観と「大勢」観」と題して報告した。報告の構成は、以下の通りである。 はじめに 1.明治維新の大精神 2.「世界の大勢」・「落伍者」 3.石橋湛山の事例 おわりに まず、前回の構想案の報告が確認された。続いて、尾崎行雄に関する先行研究が紹介され、比較対象として度々石橋湛山が取り上げられており、本報告でも石橋の「明治」観が尾崎のそれと比較検討された。 「1.明治維新の大精神」では、尾崎が明治10年代より「言論の自由」を主張する根拠として五箇条の御誓文に言及し、帝国憲法が施行されると明治維新や明治天皇への言及が増加するとの指摘があった。また、明治維新の大精神や明治天皇の偉業などの表現を用いて政治批判を展開するのは明治末以降であり、特に大正に入るとより強調されるとのことである。 「2.「世界の大勢」・「落伍者」」では、尾崎が「世界の大勢」を多用し、基本的にそれへの「順応」を説いていたが、それは「落伍者」に転落するという危機感と一体的なものだったと指摘された。 「3.石橋湛山の事例」では、石橋が「第二維新」を唱えたり、「維新」の意義を強調したりしていることが紹介され、また尾崎と同じく、五箇条の御誓文をデモクラシーの礎と位置付けていることも確認された。 最後に、尾崎には明治維新の理念を「守る」契機と同時に、「守る」ために「変える」契機も確認できると指摘された。一般的に保守主義は「守る」対象を「変える」もしくは「変わる」ことに対抗するが、尾崎の場合は、「守る」ために「変えない」「変わらない」ことを批判した点に特徴があるという。こうした「守る」意識が自覚的となったのは大正政変、憲政擁護運動頃ではないかと推測する。そして1910年代後半から20年代初頭にかけてこれが強く意識されていた可能性が高い。また「世界の大勢」に対する態度として、順応と逆行(抵抗)に加えて、改造も確認できるとした。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第7回研究会・2023年10月27日 17時~19時30分 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 田中耕太郎と「近代」―或るカトリック知識人の場合― |
発表者 | 樋口騰迪 |
研究会内容 | 今回は、樋口騰迪氏が、「田中耕太郎と「近代」―或るカトリック知識人の場合―」と題して報告した。 まず、「田中耕太郎」の規定の困難さとして、学者としての研究活動のみならず、文部大臣、貴族院議員・参議院議員、最高裁判所長官、国際司法裁判所判事という「実践」活動を展開した点が指摘された。 本論では、彼の「出発点」として、大正時代の留学や内村鑑三との決別、カトリックへの改宗が挙げられた。それから、『法と宗教と社会生活』(1927年)を取り上げて、国家や法は明らかに「必要悪」的なものとして認識されていること、国家への教会の優越を確認することで、教会(カトリック)権威にもとづくヨリ普遍的な国家の構想が後の『世界法の理論』へとつながってゆくことが明らかにされた。また、ここに見られるオプティミズムとペシミズムの人間観の相克について、結局のところ、田中のなかで解消されず、戦後現実政治にコミットしてゆくなかで、寧ろ強まる一方だったのではないかと指摘された。 『法と宗教と社会生活』(1927年)から『世界法の理論』(1932-34年)に至る過程で、「自然法」が「世界観的基礎」として最重要視され、それは以後田中に於いて一貫したものとなり、カトリシズム弁証と一体のものとして展開されることになったと指摘された。 田中にとっては、プロテスタンティズムもマルキシズムもファシズムも、固有のかつ普遍的な世界観的基礎に欠くがゆえに、等しく「思想的アナーキー」として批判の対象にされるべきものであった。そして、カトリシズムこそが、唯一その欠如した普遍的世界観的基礎=自然法を提示し得るのだという主張を終生展開した。 一方で、カトリシズムも、彼が対決姿勢を示した個人主義・啓蒙主義的近代も、日本では定立されたものではないので、戦後に自然法論を掲げて現実政治にコミットしてゆく田中は、「未だ来たらざる」普遍的近代=終末を待望し、その到来に向けて励む一個のキリスト者、また終末を待望する「保守主義者」として立ち上がってくるとも指摘された。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第6回研究会・2023年8月24日 14時~17時30分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 宇野重規『日本の保守とリベラル』合評会 |
発表者 | 宇野重規、織田健志、上田美和、城下賢一 |
研究会内容 | 今回は、宇野重規『日本の保守とリベラル』(中公選書、2023年)の合評会を現代日本思想史研究会との共催で開催した。評者は織田健志氏、上田美和氏、城下賢一氏の3名である。幸いにも、著者をお招きすることができた。 冒頭で、参加者の自己紹介、合評会の趣旨や開催経緯などに関する説明があり、続いて、織田氏、上田氏、城下氏の順に書評報告が行われた。 織田氏は、序章・第1・4・終章を取り上げた。そして、伊藤博文は伝統の「創造」の位置にあり「保守主義」と呼べるのかどうか、「保守流/傍流/」というパラダイムから中曽根康弘はどう位置づけられるのか、日本独自の「保守主義」の可能性を探求するに際してバークを範型とするのは果たして妥当なのかなどの論点を提示した。上田氏は、主に第2・3・5章を取り上げた。そして、これらの章の中心的なテーマであるリベラリズムに関連して、近代日本に存在したのか、また現代日本で定着しているのかという著者の問いに対する評者の見解を提示した。さらに、戦争時代のリベラリズムを一例に、リベラリズムとナショナリズムの関係についても問題を提起した。城下氏は、第6・7章を取り上げた。そして、吉田と岸の対立とその政治的後継者への継承という著者の見解に疑問を呈した。また、大平と中曽根の差異をどのように論証できるのか、さらに、安保・反戦・皇室など「保守」「リベラル」の問題を論じる上で重要とされる論点を除外しているのはなぜなのか、などと指摘した。 休憩を挟み、評者からのコメントに対する著者のリプライがあり、その後は参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第5回研究会・2023年7月29日 14時~17時 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 赤尾敏研究のための覚え書き―自伝からみた思想― |
発表者 | 岡佑哉 |
研究会内容 | 今回は、ゲストスピーカーとして岡佑哉氏を招き、「赤尾敏研究のための覚え書き―自伝からみた思想―」と題して報告いただいた。報告の構成は、以下の通りである。 はじめに 1.赤尾敏と戦前日本―左翼からの転向、右翼運動家へ― 2.赤尾敏と戦後日本―在野の「親米反共右翼」の典型として― おわりに―まとめと今後の課題― 最初にこれまでの研究(主に右翼運動)の問題意識、研究対象について説明があった。続いて、本報告で取り上げる赤尾敏の研究をこれまでに未着手であった戦後の右翼運動研究に取り組む契機としたい旨の説明がなされた。 本報告では、赤尾の自伝に依拠しつつ、報告の前半で戦前日本、後半で戦後日本における彼の思想と行動が取り上げられ、併せて論点も提示された。 本論を踏まえて、最後に赤尾の思想と行動が整理された。思想については、戦前・戦時の防共重視論、戦後の反共のための戦略的親米路線に見られるように、「反共主義」が一貫していると指摘された。行動(原理)については、在野という立場に固執していたこと、金権・利権を嫌悪していたこと、抗議という威嚇・脅迫的行為を肯定していたことが指摘された。今後の課題としては、史料状況の把握、研究史の中での位置づけが挙げられた。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第4回研究会・2023年7月9日 13時~17時 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 『発言者』に関する聞き取り調査 |
発表者 | 東谷暁 |
研究会内容 | 今回は、ゲストスピーカーとして東谷暁氏を招き、『発言者』に関する聞き取り調査を実施した。本調査は、過去に実施した3件の聞き取り調査に連なるものである。 聞き取り調査は、研究会が事前に用意した質問項目に沿って実施した。質問は以下の通り、3つのカテゴリーに分類した。 1.『発言者』に関する内容 2.ヒアリング対象者に関する内容 3.聞き取り調査に関する内容 なお「1」は、(1)創刊・編集長就任に関して(2)編集・発行に関して(3)主幹・常連執筆者に関して(4)まとめ、の4つに細分化した。 聞き取り調査に対して、東谷氏は、編集者を務めていた当時の貴重な資料も交えつつ、詳細に回答された。本調査を通じて、これまで公にされていない事実が数多く明らかとなった。今回の調査内容は、過去の聞き取り調査の内容と合わせて一つの資料として編集し、公開する予定である。 |
開催日時 | 第3回研究会・2023年7月8日 14時~17時 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 戦後日本保守政治家の群像 |
発表者 | 増田弘 |
研究会内容 | 今回は、ゲストスピーカーとして増田弘氏を招き、「戦後日本保守政治家の群像」と題して報告いただいた。本報告は、増田氏が編者となった『戦後日本保守政治家の群像』の内容を基に構成されている。 最初に、同書の問題意識として、戦後四分の三世紀を保守党・自民党が政権をほぼ独占したが、(1)なぜ保守党は政権を独占できたか。(2)保守政治とはどのような政治か。(3)保守党とはどのような政治家の集合体か。(4)保守政治の実績や成果への評価とは、の3点が挙げられた。 次に方法論として、戦後期の政治外交史上に顕著な実績を残した保守政治家24名を選抜したこと、A)縦軸(例:吉田茂と佐藤栄作)、B)横軸(例:松村謙三と重光葵)、C)対角軸(例:芦田均と鳩山一郎)のカップリングで比較検討を行ったこと、そして、戦後保守政治史を三段階に区分したことが挙げられた。続いて、同書の主要な論文の内容が紹介された。 最後に、まとめとして、以下の4点が挙げられた。 (1)保守政権優位の法則…柔軟な進取の気性(脱イデオロギー)、国民の利益・意向(コンセンサス)重視、幅広い人脈と穏健かつ漸進的思想 (2)五五年体制および小選挙区制の存続意義は希薄化。 (3)宏池会・自民党よりも安部派に連なる清和会・自民党に保守政治家の資質が問われる。 (4)保守統合した自民党の現状に疑問。この際「保守二党論」が論議される必要性あり。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第2回研究会・2023年5月26日 17時~19時40分 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 「日本」への問い――長谷川如是閑の「日本的性格」論再考 |
発表者 | 織田健志 |
研究会内容 | 今月は、織田健志氏が報告した。報告テーマは、「「日本」への問い――長谷川如是閑の「日本的性格」論再考」である。構成は以下の通りである。
本論では、以上の検討課題について順を追って検討された。本論で明らかとなった点を踏まえて、最後にまとめとして次の2点が挙げられた。第一に「封建文化」の両面性である。これは「封建文化」について、一方で克服すべき「封建的性格」とされながらも、他方で「型」の創出という観点から注目していたという両面性を指す。また「過去の文化性にあつた文化的優性」の継承も戦後の如是閑の「日本的性格」論に見られたと指摘された。第二に「文化的デモクラシー」の伝統が「戦後日本社会」への批判、とくにマルクス主義に代表される理念による変革論の否定となった点で、戦後の言論空間において如是閑の「日本的性格」論が「保守主義」的言説として機能したことである。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第1回研究会・2023年4月28日 17時~18時40分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 研究会の運営、検討課題などについて |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今月は、新年度最初の月例会であり、まず、本研究会の運営方針に関する説明が行われた。特に研究会予算の使用については、研究会の独自ルールを設けるため、その詳細について説明があった。 続いて、今年度開催スケジュール(4月28日時点)が報告された。今年度は複数のゲストスピーカーを予定しており、確定済、打診中の双方についてゲスト名と報告テーマ(仮)が紹介された。 続けて、検討中の企画及び検討事項について説明された。一点目が本研究会の研究テーマに関する図書の合評会の開催についてである。開催月、開催方式、スケジュールなどの案が提示された(なお本月例会終了後、合評会の開催が8月下旬に決定した)。 二点目が『発言者』元編集長への聞き取り調査である。実施日は調整中であるため、現段階では、ヒアリング事項について検討したい旨の説明があった(なお本月例会終了後、聞き取り調査の実施が7月上旬に決定した)。『発言者』関係者への聞き取り調査はこれまでに複数回実施しているため、その際にヒアリング事項を基に、適宜、加筆修正を加えたいという説明の後、事項のたたき台が提示された。 以上の提案を踏まえて、参加者より、検討課題について数多くの意見や質問が出された。 |
2022年度
開催日時 | 第7回研究会・2023年2月24日 17時~18時10分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 検討事項に関する意見交換 |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今月は共同研究の検討事項を整理した上で、それらについて参加者と意見交換を行った。 第一に、研究テーマに関連する書籍が刊行されたため、合評会を開催したらどうかという提案である。参加者の意見は、開催支持が多数を占めた。その上で、著者を対面もしくはオンラインでお招きすること、分担の工夫などについて意見や要望が出された。 第二に、研究テーマに関連する雑誌の分析や関係者への聞き取り調査の公表などについて冊子を作成することの提案である。参加者の意見は、作成支持が多数を占めた。その上で、聞き取り調査の内容について、雑誌研究にとって雑誌を編集するコンセプトや創刊の経緯などを是非知りたいので、現資料として引用しやすいように編集を工夫して欲しい旨の要望が出された。また、追加で聞き取り調査を実施してはどうかとの意見も出された。 第三に、次年度の2023年度の運営についてである。これについては、随時、意見や要望を受け付ける旨、アナウンスがなされた。参加者からは、ゲストスピーカーによる報告を検討してはどうかとの意見が出され、具体的に候補者も挙げられた。複数名の名前が挙げられたが、早速、その中の一名に連絡を取ることが決定した。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第6回研究会・2023年1月27日 17時~19時30分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 民主主義と平和主義への問いかけ――吉野作造の政治思想を手がかりに |
発表者 | 趙暁靚 |
研究会内容 | 今月は趙暁靚氏が「民主主義と平和主義への問いかけ――吉野作造の政治思想を手がかりに」と題して報告した。 まず、報告者の問題意識が、次の通り説明された。現在、民主主義の危機の時代という認識が蔓延し、また、東アジア地域では地政学的対立が発生しており、地域紛争に巻き込まれる危険な事態が迫っている。こうした時代状況を踏まえて、「民主主義」と「平和主義」の過去を辿り、それをあらためて問いかけることによって「民主主義」と「平和主義」に含まれるエネルギーを探り、さらにそれを未来に向かって生かす方法を検討することが求められる。そこで、本報告では、吉野作造の政治思想を手がかりに、近代日本における民主主義と平和主義の遺産を捉え直す。 報告の主な内容は、以下の通りである。 はじめに 1. 「民本主義」の構造 2. 「平和主義」の射程 終わりに 「終わり」では、本報告を通じて明らかとなった内容が整理された。民本主義については、「民衆による政治」というヨーロッパ近代の政治理念およびそれを支えた制度によって、立憲国家が観念され、その成立も展望されていた。平和主義については、ワシントン体制の安定化と東アジアにおける「民族自決」の声との亀裂により、吉野の平和論の射程が制約された。ただ、東アジアに見合う「平和論」の構築が私たちに課せられている現在、五・四運動期に知識人や若者たちの交流活動を推進し、日中間の相互理解に努めた吉野の政治思想を想起する意義がある。「止まる所を知る者にして初めてその進むべき途に本当の勇気を出し得る」と述べた吉野の卓見は、今日の私たちにとって示唆に富むものだからである。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第5回研究会・2022年10月29日 14時00分~17時00分 |
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開催場所 | 同志社大学良心館446/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 柳田と保守主義 |
発表者 | 川田稔 |
研究会内容 | 今月は、川田稔氏をゲストスピーカーとしてお招きし、「柳田と保守主義」についてご報告いただいた。報告の構成は、以下の通りである。 一、はじめに 二、共同体と氏神信仰 三、政治論・独立小農経営論・個人の自立論 四、柳田と丸山 五、おわりに 最初に、先行研究における柳田国男の思想的評価について、共同体(村落共同体)評価、氏神信仰評価から保守主義者とするものと、農政論・政治的民主化論・個人の自立論から近代化・民主化論者とするものに大別されるとした上で、両者をどのように統一的に捉えるかという問題意識が示された。 伝統評価の面と近代的な面の統一的理解について、一方でヨーロッパ近代(ドイツ農政学左派+欧米体験)と大正デモクラシーの影響が柳田の思想の近代的な面を形成し、他方で、デュルケームなどの近代批判の影響や彼自身による国家神道批判により伝統を評価するに至ったと指摘した。 柳田は、氏神信仰を人々の内面的倫理意識の源泉とみなしていたが、モダニゼーションの進行によりそれが消失していく中で、氏神信仰を積極的に評価するに至った。また、人々の自立を助け、個人の自立を促すものとしての共同体という理解を持ち合わせていたが、氏神信仰と同様に共同体もモダニゼーションの進行によって解体していく中で、村落共同体を積極的に評価するに至ったと指摘した。 こうした柳田の思想を保守主義として評価できるものの、その場合、伝統的な保守主義ではなく、デュルケームなどのヨーロッパの新しい学問の流れの影響を受けたリベラルな保守主義ともいうべき性質を持っていたと結論付けた。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第4回研究会・2022年9月23日 16時40分~18時50分 |
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開催場所 | オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 柳田国男における「保守」の思想について |
発表者 | 田澤晴子 |
研究会内容 | 今月は田澤晴子氏が「柳田国男における「保守」の思想について」と題して報告した。 まず、報告者の問題意識が説明された。それによると、報告者は1990 年代以降の柳田の思想研究(川田稔など)の影響を受けてきた。これらの研究は、柳田(民俗学)を「保守」と位置付ける研究(代表的なものが橋川文三の研究(1968))を批判し、柳田の保守イメージをくつがえす形で進められてきた。そこで本報告では、こうした研究状況を踏まえて、柳田国男あるいは民俗学を「保守」として研究する時期や方法について、「新保守主義」など戦後における概念の変遷も踏まえて検討する。 報告の主な内容は、以下の通りである。 1. 柳田国男研究における「保守」 (1)戦後社会のなかの民俗学像 (2)代日本研究における柳田国男・「民俗学」論 2. 「新保守主義」――積極的な「保守」思想 3. まとめ 「まとめ」では、「保守主義」研究の方法について言及があり、概念の流動性とそれに伴う評価の違い(「保守」思想に消極的意味or積極的意味を見いだす)やマルクス主義との関係性について報告者の見解が示された。最後に、今後は主に1930 年代の柳田の学問と活動に焦点を当てて研究を進める方針であることが説明された。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第3回研究会・2022年6月24日 16時40分~18時40分 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 戦前のリベラリズムから戦後の保守主義へ;津田左右吉の場合 |
発表者 | 出原政雄 |
研究会内容 | 今月は、出原政雄氏が構想案を報告した。本研究会では、津田左右吉を取り上げる予定であり、今回は「戦前のリベラリズムから戦後の保守主義へ;津田左右吉の場合」と題して報告された。 最初に、本報告の狙いが説明された。それによれば、問題関心が近現代日本の保守主義の歴史的展開に向けられており、その一つの流れとして、戦前の「オールド・リベラリスト」から戦後の保守主義者へという展開について、津田を素材にして若干の見通しを述べたいということである。 続いて、「「オールド・リベラリスト」=保守主義者」の図式が取り上げられた。そして、「オールド・リベラリスト」の呼称がいつ登場し、どのような意味をもっていたのかについて、幾つかの史料を紹介しながら説明された。 続いて、津田の略歴や学問研究を概観した上で、彼の思想をめぐる論点として、以下が取り上げられた。 天皇擁護論 民族・国家・国民-保守主義とナショナリズム マルクス主義・共産主義への態度 保守=大東亜戦争肯定論? 戦後思想の「転向」 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第2回研究会・2022年5月27日 16時40分~18時10分 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 構想案の報告 |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 | 今月より、研究会参加者が現時点の構想案を報告する。 報告を始める前に、「研究テーマ一覧(2022年5月27日時点)」が配布・共有された。テーマの重複や重要項目の欠落などについて、今後、適宜調整を図ることが確認された。またテーマを時代別や内容別に分類する必要があるのではないかとの意見も出された。次回の月例会までに分類作業を行い、その際に配布・共有することが確認された。 続いて、望月氏が構想案を報告した。テーマ案は「尾崎行雄―日本の立憲政治を守る―(仮)」であり、尾崎が「守る」ことに自覚的な人物だったことから、その内容を明らかにすることを目的とする。 この目的を達成するための方法が4点列挙された。その中で、「同時代の政治家との比較検討」として、田川大吉郎と犬養毅が挙げられた。また田川との関わりで、望月氏がこれまでに研究してきた石橋湛山も取り上げる可能性があるとのことである。 現在の見通しとして、以下の内容が示された。大正期以降の尾崎は「明治」を掲げて藩閥政治や制限選挙などを批判し、立憲政治の擁護論を展開したことから、ここでいう「明治」が手段としての「守る」の対象となるのではないか。具体的には、「明治大帝の遺業」(例:五箇条の御誓文・帝国憲法)である。それでは彼にとって「守る」本質は何か。現時点では「日本の立憲政治」と仮定している。 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。 |
開催日時 | 第1回研究会・2022年4月22日 16時40分~18時40分 |
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開催場所 | 同志社大学啓明館共同研究室A/オンライン(Zoom使用) |
テーマ | 研究会の運営、研究課題などについて |
発表者 | 望月詩史 |
研究会内容 |
今月は、第21期部門研究会が発足してから最初の月例会であり、まず、本研究会の運営方針に関する説明が行われた。特に研究会予算の使用については、研究会の独自ルールを設けるため、その詳細について説明があった。 次に、研究課題及び研究の進め方に関する説明と提案が行われた。本研究会の研究課題は「日本保守主義の再検討:「守る」対象の二重構造をめぐって」であり、本研究の目的は、日本保守主義が守ろうとしてきたものは何かを明らかにすることである。目的を達成するために、本研究は守る対象が「○○を守るために(□□から)△△を守る」という二重構造を成していたと仮定する。この場合、「○○」が守る本質であり、「△△」がそれを守る手段となる。「□□」は日本保守主義にとっての対抗思想である。以上の構造を解明することで、日本保守主義の特質を明らかにする。 本研究は上記の通り、守る対象の二重構造(「○○を守るために(□□から)△△を守る」)を仮定するが、場合によっては保守主義以外の思想を含む可能性がある。そこで、何らかの限定が必要であるとして、「日本(人)の○○を守るために(□□から)△△を守る」など、幾つかのパターンが提示された。 研究は原則として、個人を対象とすることとし、「保守論壇」については、一つの雑誌を複数人で担当する方式を採るのであれば、本共同研究から分離して、別に組織することを検討するが、一つの雑誌を一人が担当するは分離しない方針が示された。 以上の提案を踏まえて、参加者より、研究会課題や進め方について数多くの意見や質問が出された。 |