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第1研究 近代日本のキリスト教会形成 ~日本組合基督教会を中心に~ 研究代表者:森田 喜基(キリスト教文化 センター)

 本研究は、同志社設立の礎でもある会衆派教会の伝統の上に、日本に設立された日本組合基督教会(以下、組合教会)が、近代日本の形成にどのような影響を及ぼしたのかについて検証するものである。組合教会は「自治・自由」の教会であるが、その自由が影響・包括する範囲は、教会、またそれぞれの教役者(牧師)によって差異が存在し、特に国家との関係においては、かなりの振れ幅があった。それらの社会的影響について、ポストコロニアル理論やリベラル・ナショナリズムなど新たな視点を導入して再検証する。また日本基督教団大阪教会、浪花教会など組合教会史料の整理・データベース化及び分析にも取り組む。

2026年度

開催日時 第3回研究会 2026年6月19日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス啓明館 共同研究室A (Zoom併用)
テーマ 「ジョナサン・エドワーズの予型論と教育思想」
発表者
亀浦香蓮奈氏(国際基督教大学助手)
研究会内容
 本研究会では、亀浦香蓮奈氏をお招きし、「ジョナサン・エドワーズの予型論と教育思想」と題してご発表いただいた。
 ジョナサン・エドワーズ(1703-1758)は、植民地時代ニューイングランドを代表する牧師・神学者である。同時に、その生涯は教育実践とも深く結びついていた。エドワーズの教育実践や、その基礎にある神学思想を扱う先行研究は存在する。しかし、彼の教育思想と、その思想の根幹に位置する予型論との関係を正面から扱う研究は十分になされてこなかった。本発表の意義は、この点にある。
 発表ではまず、エドワーズの問題意識として、①アルミニウス主義、②理神論、③イギリスの植民地政策が挙げられた。とりわけ③について、エドワーズは先住民に教育を施さないイギリスの怠慢を批判した。そして、フレンチ・インディアン戦争前後の時代状況のなかで、先住民への教育の必要を説き、実践した。それはイギリスの利益を目的とするものではなく、神の国を地上に到来させることを目指す実践であった。
 1751年、エドワーズはストックブリッジの村落に赴任し、先住民教育に従事した。その際に用いられたのが、「親しみある方法」(familiar manner)と呼ばれる方法である。これは、子どもを学びの主体として位置づける対話型の教育法であった。そして、この教育法の根底には、エドワーズの予型論があった。
 エドワーズの予型論の特徴は、予型を旧約聖書の出来事や人物に限定せず、世界のさまざまな事物のなかにも見出した点にある。彼にとって、旧約聖書は予型的世界の一部に過ぎない。救済史という大きな歴史的構造のなかで、世界全体が予型的なものとして理解され、イエス・キリストによる救いの業の完成と関係づけられるのである。
 発表後の質疑応答では、「傾向」「傾向性」と訳される語の意味と、その英語表現について質問があった。これに対して、disposition の訳語であり、潜在的能力として理解できること、また、ある行為を選択する人間の性向を、可能態・現実態というアリストテレス的概念を援用しながら説明するものであることが示された。
 またエドワーズが教会内で犯罪を犯した者や、教会員同士の諍いをどのように理解し、対処していたのかについて質問があった。これに対して、エドワーズは非常に厳格に対処しており、それが教会員から反発を受ける一因ともなったことが説明された。代表的な事例として、1744年の悪書事件への対応が挙げられ、エドワーズが初期のピューリタンをモデルとして教会共同体を導こうとしていたことが指摘された。
 さらに予型論に関して、目的論的な発想がエドワーズの思想にあるのかという質問があった。これに対して、エドワーズの思想はまさに目的論的であり、『創造の目的』(End of Creation)に見られるように、創造の「終わり」は神の世界創造の目的であると同時に終末をも意味していることが説明された。歴史はその終点に向かって進んでいると、エドワーズは考えていたのである。
 その他、植民者としてのアイデンティティや地域的アイデンティティなどの外部的要素が、エドワーズの思想を規定した面もあるのではないかとの指摘があり、手稿研究を並行して進めることの重要性が提案された。神田氏からは、エドワーズの思想が後に廃れていった背景について、世俗化の影響があったのかという質問が出された。これに対しては、世俗化という大きな要因以上に、教会運営における個別具体的な事情が大きかった可能性が示された。
 本発表は、エドワーズの教育実践を、単なる教授法や宣教政策としてではなく、予型論、救済史理解、神の国の到来という神学的構想のなかに位置づけるものであった。発表後の質疑応答においても、神学思想、教会形成、植民地状況、先住民教育をめぐって活発な議論が交わされ、エドワーズ研究とキリスト教教育研究を架橋する視点が示された。
開催日時 第2回研究会 2026年5月18日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス啓明館 共同研究室A (Zoom併用)
テーマ 「齋藤寿雄のキリスト教と甘楽教会」
発表者
李 元重 研究員
研究会内容
 李元重研究員より、「齋藤寿雄のキリスト教と甘楽教会」をテーマに、研究成果、論文の仮構成、今後の課題について報告があった。本研究は、今年度の『キリスト教社会問題研究』への寄稿を目標として進められている。
 齋藤寿雄(1847-1938)は、医師、教育家、社会運動家、政治家として活動し、甘楽教会の設立にも大きな役割を果たした人物である。地域では長年「郷土の偉人」として紹介されてきたが、批判的・学術的な研究は十分になされていない。そのため、齋藤と地域社会との関係、また彼のキリスト教理解を視野に入れた研究の必要性が示された。
 齋藤は1880年、湯浅治郎の紹介により安中教会・海老名弾正の集会に参加し、1884年に受洗した。その後、甘楽第一基督教会の設立に関わり、さらに富岡製糸場前に新会堂を建設した。甘楽教会は農民の教会として始まったが、新会堂建設後には多様な階層へ信徒層を広げた。齋藤は教会の執事として、晩年まで教会の発展を支えた。
 一方で、齋藤と牧師との関係、齋藤自身のキリスト教理解、廃娼運動や富岡製糸場との関係については、なお未解明の点が多い。また、斎藤の活動には、近代日本における名望家、政治家、大日本帝国臣民としての限界も見られることが指摘された。
 質疑・意見交換では、明治期群馬における製糸業とキリスト教会の関係、ハリストス正教会など他教派との比較、甘楽教会の信徒構成の変化、齋藤が受けた教派的影響などについて質問・意見が出された。これに対して、現時点では史料上の制約があるものの、産業構造の変化、豪農層の影響、組合教会との関係、また教派を越えた社会活動との関わりを検討する必要があることが確認された。さらに、廃娼運動に関わったキリスト者が政治活動へ向かう傾向、富岡製糸場周辺の風紀維持と教会建設との関係、齋藤が政治を志した理由などについて意見交換がなされた。齋藤の出馬理由については現段階では明確ではないが、医療や教育の現場で解決できない課題を、政治を通して解決しようとした可能性が示された。
 田中正造との接点や、群馬県医学史・地域史における齋藤の位置づけについても質問があった。これについては、史料上確認できる範囲は限られているが、齋藤は田中正造のような天皇制批判には向かわず、むしろ近代日本の「臣民」としての枠組みの中で活動した人物として位置づけられる可能性が示された。また、群馬県医学史や県史には齋藤への言及があるものの、多くは「郷土の偉人」としての紹介にとどまり、批判的研究は今後の課題であることが確認された。
開催日時 第1回研究会 2026年4月20日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス啓明館 共同研究室A (Zoom併用)
テーマ 「梅花から見た成瀬仁蔵と彼の帰一協会、その時代」
発表者
髙田太研究員発表
論文「成瀬仁蔵が引用したM.C.ワイズ夫人の記事についてーーエバンストン滞在中の澤山保羅についての新資料――」について、問題意識の共有
研究会内容
高田論文「1873年の澤山保羅に関する一考察」(2023)と今回の論文の関係について。
澤山保羅はエバンストン滞在中(1872年)、ノースウェスタン大学予科からパブリック・スクールに転校したとされてきたが、その根拠は薄弱であった。しかしこの論文執筆を通して、当時の新聞記事から新史料が見出された。その新史料の紹介が、今回の論文である。

・ 成瀬仁蔵による澤山伝(1893年)は、澤山研究の基礎とされてきた。成瀬は澤山の学生時代に関する記述の中で、当時の新聞記事の一部を引用している。それは『パシフィック・アドボケイト』紙(EI紙)内の「ワイズ夫人」の証言であった。今回の新史料には、この証言も含まれている。そして、その分析から明確になったのは次の二点である。
 (1)成瀬はEI紙からの引用の時点で、澤山のパブリック・スクール通学の情報を省略していた。
 (2)成瀬は証言者「ワイアー夫人」の名前を誤って「ワイズ夫人」としていた。
・ 成瀬は梅花女学校校長を務めた後、1910年に日本女子大学校を創設、1912年に帰一協会を設立する。成瀬は晩年、キリスト教を捨てた(内村鑑三)と非難されることもあり、梅花の中でも評価が一定していない。こうした成瀬の変節の中には、明治の宗教状況の変化やキリスト教主義学校の立場の変化、またアンドーバー神学論争等様々な影響が現れているようにも思われる。

感想・意見・質問
・ 「なぜ内村は、成瀬を非難したのか。成瀬はアメリカ留学でキリスト教に失望したのだろうか」──失望させられたというよりも、北越学館事件やアンドーバー神学論争を通して、信仰や内面的な確信が重要であると考えるようになったのではないか。内村に関しては、北越学館事件の印象が悪かったからだろう。
・ 「成瀬が牧師を辞めたということが興味深い。いつのことなのか。国会図書館所蔵の組合教会便覧で確認できればいつ辞めたのかが確認できる。」
・ 「論文のタイトルについて。『M.C.ワイズ夫人』と括ってしまった方が、謎めいた人物として興味を惹く題になるのではないか」
・ 「Abstractの英文訂正の提案。成瀬による新聞記事の一部省略をomitと表現しているが、neglectとした方が良いと思う。その方が故意に無視したニュアンスが伝わりやすい」

2025年度

開催日時 第9回研究会 2026年3月2日 17時00分~18時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス クラーク記念館ラウンジ(Zoom併用)
テーマ 「中小規模の学校における本研究叢書刊行の意義」
発表者
相澤弘典氏 (頌栄保育学院 院長)
研究会内容
1.研究叢書刊行の報告と発題
 本研究会では、研究叢書『アメリカン・ボードと日本のキリスト教主義学校』の刊行を受け、その編集趣旨および意義について報告と発題がなされた。
 まず編集の趣旨として、アメリカン・ボードと関わりのあるキリスト教主義学校の歴史を、専門研究者のみならず一般読者にも広く理解してもらうことが目指された。そのため、厳密な学術性の担保とともに、読みやすさにも配慮した構成が採られたことが報告された。相澤氏は、中小規模の学校にとって、このようなネットワークの中で、それぞれの学校が成立している歴史を見つめなおす作業は、今日的状況において大変意義深いことであること、またアメリカン・ボードが抽象的概念ではなく具体的実体として理解されるようになったことを本研究の成果とし、今後は研究間の空白を埋める展開が期待されると述べた。全体構成に関しては、宣教師の呼称や役職の表記について統一が困難であったため、一定の多様性を残す形となった。また、宣教師の家族関係や各校の創立者に関する情報は備考欄に記載されている。年表については資料量が膨大であり、本叢書の枠内では十分に整理しきれなかった点が課題として共有された。 続いて、執筆者によるリフレクションが行われた。
 蘇研究員からは、キリスト教学校研究において「宣教師」という枠組みが強く、「アメリカン・ボード」という組織との関係が見えにくい側面があることが指摘された。その背景には、アメリカ側資料(書簡等)へのアクセスの困難さがあるとの見解が示された。
 中野研究員は、本研究が今後の発展的研究の出発点となり得ること、また従来当然視されてきた理解に修正を加える契機となる可能性を指摘した。
 神田研究員は、各校の相違点に関する新たな気づきが得られた点を評価し、教育史研究において辞典的に活用できるとの外部評価について紹介した。
  山下研究員は、限られた期間の中で本叢書が完成したことの意義を述べるとともに、各校の特色が可視化された点、そして今後の研究の足掛かりとなる成果であることを強調した。
 高田研究員は、全執筆者が共通の主題を扱ったことにより、叢書全体としての統一感が生まれた点を評価した。
 森田研究員は、特定校に関する記録的価値の高い寄稿の重要性を指摘するとともに、執筆者のプロフィールや写真を多く掲載した点が、読者にとって親しみやすい叢書となっていることを述べた。
 渡邊研究員は、アメリカン・ボードが日本のキリスト教教育に与えた影響が明確に示され、個別事例が有機的に結びつく研究となっている点を評価した。 また、編集に携わった小林研究員および後宮研究員からは、本叢書が学術的意義を有するだけでなく、アカデミックな領域外の読者に対してもアメリカン・ボード理解の手がかりを提供するものであること、さらに組合派が日本においてどのように会衆派として受容・展開されたかという点への関心が示された。あわせて、本研究の現代的意義として、アメリカにおける福音派の拡大との関連にも言及がなされた。

 2.今後の共同研究の可能性
 本研究会(第一研究)は残り2年間の活動期間を有しており、その成果として何らかの形で研究成果を公表する必要があることが共有された。 2026年度は原則として第3・第4月曜日に研究会を実施する予定であり、研究員による発表を積極的に求めていく方針が確認された。
開催日時 第8回研究会 2026年1月19日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス 啓明館 人文研共同研究室A (Zoom併用)
テーマ 日系アメリカ人教会におけるサンクチュアリ・ムーブメント
発表者
布施 智子
研究会内容
 サンクチュアリ・ムーブメントは、アメリカにおける移民排除の深刻化(ICEによる摘発・長期収容等)を背景に、教会が「隣人としての応答」を問われる中で展開してきた信仰に基づく運動である。1980年代の「オリジナル・サンクチュアリ・ムーブメント」は、国家が受け入れなかった難民を教会が受け止めた点に特徴があり、数百の宗教施設が参加した。
 2000年代以降の動きは、教会に限定されず、サンクチュアリ・シティ/ステイトの宣言や法廷同行、支援ネットワークの構築など、多層的・分散的な形で展開している。
 第二次トランプ政権下では、移民法執行の拡大により、学校・病院・教会といった場所においても不安や萎縮が広がり、移民の生活は一層不安定化している。
 日系アメリカ人教会においては、第二次世界大戦期の強制収容の記憶が、移民支援への倫理的判断を支えると同時に、恐れや慎重さも生み出している。
 サンフランシスコ・ベイエリアにあるシカモア組合教会では、実践の積み重ねの中でサンクチュアリに関与してきたが、宣言の是非をめぐる会衆投票は否決された。背景には、共感型・慎重型・実務型という複数の判断軸が存在する。
 サンクチュアリ・ムーブメントは、日系人の歴史的記憶と教会の信仰が交差する地点に位置づけられ、可視的/不可視的な関与の多様性が見られる。
開催日時 第7回研究会 2025年11月17日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学 大阪サテライト(ZOOM)
テーマ 日本組合基督教会資料調査について
発表者
森本 恵一
研究会内容
  開会の挨拶の後、本研究会の森本啓一嘱託研究員(大阪大学大学院博士後期課程在学中)より、本日の発表テーマ「日本組合キリスト教会資料の調査状況」について説明が行われた。ポイントは以下の通りである。

 大阪市史・大阪府史などでキリスト教の位置づけが欠落している問題。教会史料を二次資料ではなく一次資料で分析する必要が高まっている。特に一般信徒層の活動を示す資料の重要性が増している。 
 大阪教会、浪花教会、天満教会、島之内教会の各教会資料の現状が紹介され、今後の方向性として四教会連携による共同アーカイブを構築すべく、各教会及び神戸大学、同志社大学(当研究会)・梅花女子大学が関与し、関西地域の教会資料を「共有財産」として守り、信仰史・地域史・文化史への貢献を目指すことが報告された。
 本研究会としても学術的・実務的両面から連携していくことを確認した。
開催日時 第6回研究会 2025年10月20日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学今出川キャンパス啓明館 共同研究室A、Zoom併用
テーマ 研究叢書年表に関する相談会
研究会内容
■ 編集者打ち合わせ報告・今後の方針
 (1)各執筆者への確認事項
 •  赤字修正を入れた原稿をプリントアウトし、手書きで修正すること。
 •  長文になる修正については、パソコンで作成し別紙参照の形をとってもよい。
 •  前回未回答の箇所についても必ず回答すること。
 •  キリスト新聞社(以下、キリ新)が裏付けできなかった資料については、必ず資料のコピーをキリ新へ送付すること。

 (2)執筆要綱の確認「研究叢書原稿整理について(キリスト新聞社).pdf」をもとに確認。
 •  表記の統一細かな表記の違いについては、各論稿内で統一する。
 •  訳語・人名表記の統一
 •  訳語は統一が必要。特に corresponding- については、蘇氏の訳(「主事」)を基準とする。
 •  アメリカン・ボード宣教師等の人名カタカナ表記は人名表で統一する。
 【意見】
 •  各校の伝統的なカタカナ表記は論稿内ではあえて残し、注記または括弧内に巻末の人名リストに対応する表記を示してはどうか。(山下)
 •  主要人物で競合する例はほとんどないため、一般的な読みを採用してよい。また、基本的に各校の読みを尊重しているため、人名表での統一で問題ない。(高田)
 •  引用文の表記(古語→現代表記)キリ新としては、高田作成の凡例をもとに一律に置き換えることは判断が難しいとの見解。そのため、読みやすさを重視し、現代表記に改める方針とする。
 •  高田作成の凡例を参考に、各執筆者が置き換え作業を行う。

(3)年表の扱いについて
 •  年表はオンライン上にアップロードし、QRコードで参照する方式を検討。
 •  ただし、見せ方については引き続き検討中。
 •  適切な提示方法が見いだせない場合、今回の研究叢書の付録としない可能性も検討。
 【意見】
 •  年表作成に十分な労力を割くことが難しい状況であり、このまま掲載するのは責任上問題がある。

■ 決定事項
 •  年表は見送ることとする。
開催日時 第5回研究会 2025年9月22日 17時30分~19時00分
開催場所 オンライン開催(ZOOM)
テーマ 『新島襄の思想的基盤としての神学教育 
 ―アンドーヴァー神学校での教育とアメリカン・ボードの神学的影響を中心にー』
発表者
木谷 佳楠
研究会内容
  本発表において、報告者は「新島襄の思想的基盤としての神学教育」を主題に、新島襄が在籍したアンドーヴァー神学校の神学的系譜と教育実態を手がかりに研究の射程を示した。まず、新島自身の神学校在籍中の書簡は内容が岩倉使節団関連に偏り、神学的な内容が少なく、新島襄が神学校でどのような神学を学んだのかという情報については資料的制約があることが前提として示された。その一方で、近年は「神学校規則」「履修要項」など当時の資料のデジタル化によってアクセス可能となり、これまで情報が不足していた新島襄の神学校時代の詳細が補われ得ることを指摘した。

 研究の位置づけとして、当時の同校がアメリカ神学史の中でどの系列に属したのかを明確化しつつ、新島在学期に提供された神学教育の実際、新島卒業後に勃発した「アンドーヴァー神学論争」との連関を整理した。加えて、同校の「教授職信仰基準(Associate Creed)」や、結果として「アンドーヴァー神学論争」を巻き起こすことになった新しい神学的潮流によって、教授陣・監督委員会・理事会が鋭く対立し、それによって学生数の激減や神学校の弱体化を招いたという内部対立の社会的反響を概観した。

 アンドーヴァー神学校における神学的背景については、「教授職信仰基準」を基にカルヴァン主義とエドワーズ主義のニューイングランド神学両方の影響が色濃く見られることが紐解かれ、ユニテリアン派・ユニヴァーサリスト派・アルミニウス派などとの区別が明確に意識されていたことが指摘された。同校のカリキュラム面では、初年次に聖書学と、その基礎言語であるギリシャ語・ヘブライ語の学習が据えられていたが、新島は特別課程に籍を置いていたため英語聖書を中心に学修したことや、多国籍の留学生たち(トルコ、デンマーク、イギリス出身等)と学んでいたことなどが紹介された。2年次のエドワーズ・A・パーク教授による組織神学の授業では、同志社にとって重要なキーワードである「良心」や「自由」などについての項目があったことや、3年次には説教学演習など実践的な授業があったことなどが紹介された。

 以上を踏まえ、本発表は、新島襄が在籍した当時のアンドーヴァー神学校のカリキュラムの具体像、「教授職信仰基準」とアンドーヴァー神学論争の歴史的背景に関する新資料の所在を提示し、今後の課題として、アメリカン・ボードが新島の神学理解に及ぼした具体的影響の検証、ならびに「良心」や「自由」の概念における新島の神学的理解の追究を挙げて結ばれた。
開催日時 第4回研究会 2025年7月18日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス 啓明館 共同研究室A 、 Zoom併用
テーマ 『同志社における「キリスト教主義」の思想的特質 ―草創期修身教育の再検討を通してー』
発表者
布施智子 研究員 (シカモア組合教会信徒伝道者、神学研究科後期課程在学中)
『同志社とシカモア組合教会』
吉岡 恵生 氏 (日本キリスト教団高槻日吉台教会牧師、元シカモア組合教会牧師)
研究会内容
 布施研究員の報告では、同志社における「キリスト教主義」がどのように理念として形成され、初期においてどのように実践されたのかを、「修身学」という科目に着目して考察された。特に、アメリカの倫理観を基盤としつつ、日本において土着化されたキリスト教的倫理教育の実態が示された。
 使用された教材として、マーク・ホプキンス著『Lectures on Moral Science』を取り上げ、アメリカの高等教育の思想背景と、その導入が明治初期の日本教育との間にどのような違いや緊張を生じさせたかを中心課題とした。
 発表原稿は以下の通りである。

はじめに
第1章 「キリスト教主義」とは何か
第2章 草創期の同志社における聖書教授と修身科目
 2-1 「聖経」から「修身学」へ
 2-2 明治初期における修身学と教科書
 2-3 同志社におけるカリキュラムと修身学の教材
第3章 「道徳哲学」と「修身学」
 3-1 使用教科書:M・ホプキンス著『Lectures on Moral Science』
 3-2 神学から道徳哲学へ:アメリカの思想潮流と新島襄の経験
第4章 同志社における智徳論争
おわりに
________________________________________
コメント・質疑応答

■藤田研究員
ホプキンスの教科書の採用と智徳論争との関係性が明確でない。
→ 智徳論争の記述は当初の構成には含まれておらず、結果として後付けの印象となっている。
■高田研究員
智徳論争の具体的内容が不明瞭。智と徳とは何か、なぜ争われたのかを明示すべき。
カントの頭文字(イニシャル)は「I」であるべき。文体にぎこちなさがある。翻訳の見直しを推奨。
「聖書演習」の実態や、新島がリバイバルを本当に体験していなかったのか疑問が残る。
■蘇研究員
「キリスト教“主義”」という用語の再定義が必要。
「修身」という語の語源や導入経緯を明らかにすべき。
修身はキリスト教教育の隠れ蓑だったのか、それとも積極的拡張であったのか。
注釈が少ない部分が散見される。
■森本研究員
智徳論争に関わった人物の分析を通して、さらなる議論の深まりが期待される。
ホプキンスの教科書の使用期間についての正確な把握が求められる(1970〜80年代までは追えるが、それ以降は不明)。
修身という科目がいつまで同志社で行われていたのかについての調査が必要。

 引き続き吉岡恵生先生より、同志社と深い関わりを持つアメリカのシカモア組合教会(Sycamore Congregational Church)について、その歴史的背景と信仰的特質、そして同志社との精神的・人物的つながりについて解説された。
 シカモア組合教会は、初代牧師大久保真次郎を迎え、オークランド独立教会として創立された。会衆派(Congregational Church)の教会であり、日系人コミュニテーのランドマークであった。
 渡米中の海老名弾正が立ち寄り、説教をするなど、その黎明期より同志社との深い関係を築く。歴代牧師のほとんどは同志社出身であった。
 シカモア組合教会は、第二次世界大戦後には日系アメリカ人教会として「宗教と文化の交差点」としての特質を持ち続けている。吉岡先生ご自身もこの教会において牧会を経験され、その現場から見た信仰と教育の交差、また信徒の姿勢についての考察が共有された。
開催日時 第3回研究会 2025年6月23日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学大阪サテライトキャンパス セミナールーム、ZOOM併用
テーマ 「研究叢書の諸事項確認、進捗報告」
研究会内容
1. 進捗確認
  締切は変わらず、6月30日(月)。髙田先生にWordファイルで送信。
  写真を載せる場合はスペースを空けておき(図形・仮の画像の挿入)、基本的には本文だけにしておく。
  挿入する写真は、画像ファイルとして別途用意しておく。
  場合によっては、出版社から撮影しなおしを求められる可能性もある。
  校正はあとから行うため、ひとまず第一稿として送る。
  写真の掲載は資料のものを使う場合、煩雑な手続きを踏む必要がある(出版社に要確認)。
  図表番号や節の打ち方は同志社大学人文研の論文執筆要綱に沿って行う。
  再録するシンポジウムと質疑応答は14頁ほど。体裁を再度整える必要はある。

2. 進捗報告
  森田:体裁を整える必要はあるが、原稿は完成している。他校との関係も記載している。
  小見:ブックレットの蘇さん・神田さんの原稿から同志社とアメリカンボードのことについて引用している。
      各校との関係から神戸女子神学校の歴史を見直せた。
      特にアメリカンボードの男子部・女子部の対応の違いに気づくことができた。
      アメリカンボードが大切にしてきた「キリスト教教育」(伝道と教育)を再発見し、
      今日の教育・保育に関するものはアメリカンボードの遺産であると感じることができた。

3. 出版社との打ち合わせについて
  33字×27行、電子ブックはなし。

4. 年表について
  6月中にすべての入力を完了する。
  紙で出力した後で修正が加わる可能性がある。

5. その他共有事項
  ・森本恵一(大阪大学大学院 博士後期課程)さんの入会が承認された。
    大阪教会、天満教会、浪花教会、島之内教会の資料保存について担当される。
開催日時 第2回研究会 2025年5月19日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学大阪サテライトキャンパス セミナールーム、ZOOM併用
テーマ 「研究叢書、内容についての確認」
研究会内容
1. 進捗確認
  各自の進捗報告を共有し、率直な現状を確認。
  蘇さんがクラークの写真とレリーフの画像を時間と費用は掛かるものの申請できるとのこと。
  貴重な資料のため、是非確保する方向で依頼。

2. 論稿についての確認事項
 ◆執筆方針の再確認
 ・今回の出版物は、学術論文ではなく、一般向け読み物として構成する。
 ・新規性よりも、これまで散在していた各校の歴史・情報を一冊に編纂することに意味がある。
 ・各論文で新規性を担保するよりは、アメリカンボードや他校との関係を浮き彫りにすることにより、
   総合的な新規性を担保する。
 ・文献・史料には一定の裏付けを求めるが、アカデミックな厳密性よりは整合性と可読性を重視。
 ・90年代のことを中心に執筆してほしいが、学校によってはその時代について
   ほとんど書けることがない場合もある。そのため、最終的には各自の裁量に任せる。
 ◆訓令12号に関して
 ・キリスト教学校教育同盟の資料(百年史)を基に、当時の共通理解を再確認する。
 ・資料は後日共有予定。
 ・必要であれば各自可能な範囲で追加の資料も用意する。

3. 年表について
 ◆確認事項
 ・年表には各論稿で扱われる主要出来事を反映させる。
 ◆検討事項
 ・新島襄・同志社英学校・同志社女学校が別でまとめられているが、
   新島の年表は英学校・女学校ができるとそちらに載るため、新島として独立している必要があるか。
 ・表記ゆれをどの学校の表記に合わせるか(例:ラーネッド─同志社/ラーンド─頌栄)。
      いずれにしても各校の伝統に基づいた表記を注記で残す。
 ・宣教師の来日日は各学校にまとめるか、アメリカンボードにまとめるか。
 ・学校によっては名称の変遷があり(同志社英学校・女学校)その点を、どう統一するか。
 ・理想的な年表の体裁について。
 ・QRコード等でオンラインデータにアクセスできるようにするか。
  ⇒すべて出版社との打ち合わせで相談の上決定する。
開催日時 第1回研究会 2025年4月21日 17時30分~19時00分
開催場所 同志社大学大阪サテライトキャンパス セミナールーム、ZOOM併用
テーマ 研究叢書編集方針の確認と、内容についての懇談
発表者
高田 太  、森田 喜基
研究会内容
 21期第3研究の成果を同志社大学人文科学研究所研究叢書としてまとめるための最終確認を行った。


■文字数について
・総ページ数272頁(891文字/頁)
・一人当たり21頁(18711文字) 書く人によって多い少ないがあるため、調整をする。
・英語が入るため横書きとする。


■内容
・日本の学校とアメリカンボードについて
・公開講演会シンポジウム原稿14000文字分(写真含む)
・コラム4人分(計8頁)
・参考文献リスト
・年表(10頁) (体裁は出版社と研究代表者が相談)
・まえがき、あとがき、掲載者情報


■ その他詳細
・原稿6月末日が締め切り厳守 研究補助者まで
・原稿の内容について
・原稿内容については、人文研公開講演会の発題をベースにこれを膨らませて、学術的に整えるものとする
・専門性、学術性を高めるよりは、一般性、各学校の紹介の要素を重視する
・文体は常態(論文調)とする
・注の付け方、文献の記し方などについては、『キリスト教社会問題研究』の執筆要領に準ずるものとする
・注は各稿の最後につける(文末脚注)
・原稿とは別に巻末リストに掲載する文献情報を提供する・脚注ではなく、各論稿の後注とする
 (コラムも必要であれば、注を付ける)


書籍としての統一性については5月刊行予定の『ブックレット』の初稿を読んだうえで、それをもとに統一性を高める。
戦後以降の時代については原則触れない。 

■年表について
その後森田・小林で重複している部分等がないかをチェックする。
体裁については出版社と相談の上、決定する。
年表は現状、明治期(1912年)までとする。