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第2研究 留岡幸助関係資料からみた日本近代 研究代表者:関口 寛(人文科学研究所)
本研究会は、19世紀末から20世紀初頭にかけて社会事業の先駆者として活動した留岡幸助の資料を通じて、日本近代化に彼が果たした役割と、当該期に登場した新たな「救済」のあり方を検討することを目的とする。留岡が残した膨大な日記や手帳などを用い、彼の社会事業論の特徴や社会的逸脱者への視点、またそれに基づく政策の展開を具体的に分析することで、当時の社会事業が有していた特徴と、その過程で生じた社会的な境界やカテゴリー、統治の在り方を明らかにする。また、西洋との比較統治史の観点を取り入れ、日本における「包摂」と「排除」の問題を総合的かつ多角的に考察することを目指す。
2025年度
開催日時 | 第1回研究会 2025年4月27日 14時~17時15分 |
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開催場所 | 同志社大学今出川校地 啓明館 共同研究室A |
テーマ | • 研究員の顔合わせと今後の活動についての相談 • 本部門研究会発足に至るまでの留岡幸助研究の状況について |
発表者 |
関口 寛 室田 保夫 |
研究会内容 |
今回の研究会では、研究員の自己紹介、部門研究会の発足までの経緯についての報告、諸連絡がなされた。
本研究会は第22期より新たに発足した研究会であるため、最初にそれぞれの研究員から自己紹介と研究計画の概要等が述べられた。
次に、部門研究会の発足までの経緯にかんして、室田保夫氏、関口寛氏より報告がなされた。かつて1970−80年代にかけて同志社人文研で行われた留岡幸助研究会に参加していた室田保夫氏からは、当時の研究会の様子、史料収集、成果の刊行、その反響等についての報告がなされた。なお、この研究会の成果としては、『留岡幸助著作集』(全5巻)、『キリスト教社会問題研究』留岡幸助研究特集号(第28号、1980年1月)、『人道』復刻版(全18巻)等が刊行されており、この研究会によって収集された多くの史料も人文研に所蔵されている。室田氏の報告により、本研究会でも今後活用していくこととなる諸史料や先行研究の背景と課題が共有された。また、この報告は同志社人文研の歴史にかんしても興味深い証言を含むものであった。
関口寛氏からは、世界人権問題研究センター登録研究「留岡幸助日記研究会」でこれまでに進められてきた史料の収集、解析の経過について報告がなされた。この共同研究は、北海道家庭学校所蔵「留岡幸助日記浄書原稿」(321冊)の解析・目次作成を5年間かけて行ってきた。これらをつうじて従来知られていなかった史料の存在や日記の内容が判明し、新たな研究が可能となる状況が整えられてきた。
さらに続けて関口氏より第22期より新たに始まる本研究会の趣旨についても説明がなされ、①護教主義や外在的批判に陥ることなく現代的視点にもとづく歴史像を提示する、②従来十分に活用されなかった日記等の史料を用いる、③諸アクターの連関に注意し日本近代にかんする新たな視点を提示する、という3つの方針が共有された。
最後に、研究成果刊行にかんする計画や予算関係の諸連絡がなされた。参加者は15名であった。
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