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第4研究 伝統産業における事業・家族・制度・技術の継承に関する日・中・韓比較 研究代表者:藤本 昌代(社会学部)
本研究会は、日本、韓国、中国などの東アジア諸国において、伝統産業のみならず、いろいろな産業で現在、重要な問題になっている事業や家業の継承について、事業活動の背後にある文化的・制度的要素(宗教、家族、雇用制度、慣習、分業、職業等)や社会構造などの影響、アクター間の関係性など、複合的要素によって起こる現象を明らかにすることを目指している。従来、この問題に関してはビジネスの側面に焦点が当てられてきたが、その背後にある「家族」「社会的制度」「事業に関連する技術や技能、後継者(経営者や職人)の職業継続」なども大きく影響していると考えられる。そのため、本研究会では、この現象の分析に対して社会学、経営学、文化人類学などの学際的な研究者によって研究活動を行う。
2025年度
| 開催日時 | 第3回研究会 2026年3月2日 11時30分~17時30分 |
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| 開催場所 | 同志社大学 良心館326教室 |
| 発表者 | 山内 雄気(同志社大学) 岩井 洋 (帝塚山大学) 住原 則也(天理大学) 李 志満 (延世大学校経営大学) 洪 性奉 (摂南大学) 河口 充勇(帝塚山大学) 藤本 昌代(同志社大学) 三井 泉 (神戸大学) |
| 参加者 | 日置、中牧、出口、市川、三井、藤本、山内、洪、住原、上林、竇、岩井、奥野、竹内、河口、李、Jaewon Yoo、郭、池田、野村、江口 |
| 研究会内容 |
1. 当日の研究会の概要
午前は三井教授より次年度研究計画に関する概要説明が行われた。午後は人文研特集号掲載予定論文の概要報告が行われ、その後全体討論が行われた。2. 各報告の概要 第1報告は、山内雄気教授より「家業承継者の企業家活動」について、報告がなされた。本報告は、家業承継を「物語(ナラティブ)」として捉え直す試みである。従来研究が「保存か革新か」という二項対立や、資産移転・ガバナンスといった数値化可能な側面に偏ってきたことを指摘し、承継者を伝統と革新を統合する物語の編み手として位置づけた。SEW(ファミリービジネスの持つ感情的・社会的資産)も固定的なストックではなく、つくり直される動態的なものとして再解釈される。質疑応答では、物語の存在の普遍性や権力継承との関係、親子の類型化による分析可能性などが議論された。 第2報告は、岩井洋教授より、「事業体としての宗教組織の継承と存続―奈良春日大社式年造替の事例を中心として―」について報告された。春日大社の式年造替および「春日移し」の慣行に着目し、宗教組織を事業体として捉え、その継承メカニズムを分析した。20年ごとの造替は、単なる社殿の建て替えにとどまらず、宗教ネットワークや職人集団との関係を再生産する制度的装置として機能しており、宗教活動の継続とともに、宗教組織を中核とするソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の継承を可能にしていることが示された。とりわけ、地域社会におけるソーシャル・キャピタルの中核に位置することが、宗教組織の継承と存続にとって重要な意味をもつ点が明らかにされた。質疑応答では、宗教組織における経営的イノベーションについて議論された。 第3報告では、住原則也教授より、「台湾の伝統市場・屋台店舗の存続・発展のための経営」について、報告された。台湾の伝統市場の継承・維持について、政府・市場・店舗の連携構造を分析した研究である。台湾における伝統市場は、個々の店舗・市場の取り組みだけでなく、政府による認証制度や経営支援策よっても支えられている。また、現代の伝統市場は単なる安価な生活用品の販売所だかではなく、家族・個人の遊興施設や不景気の失業者の受け皿、子供や老人の過ごせる施設といった多機能的な社会空間へと変容していることも示された。質疑応答では、価格交渉や市場制度の歴史的背景、日本との比較可能性などが議論された。 第4報告では、李志満教授・洪性奉准教授より、「家族企業における知識経営と暗黙知の世代間継承―韓国民俗酒安東焼酎を事例に―」について、報告された。本研究では、韓国の安東焼酎を事例より、家族の事業承継において、従来提示されてきた企業経営・家族経営・財産経営という3類型に加えて、知識経営継承の類型が提示された。特に混乱期における企業のレジリエンスは形式知より暗黙知の技能活用によって効果的に発揮されることが論じられた。質疑応答では、家族に根付く知識とブランドに根付く知識の違い、復活の真正性をいかに評価するかが主な論点となった。 第5報告では、河口充勇教授より、「酒造業における事業承継と地域社会―今西酒造の事例―」について、報告された。本報告は、奈良・三輪の今西酒造を事例に、事業承継を契機とした経営革新と地元回帰による価値創造について分析した。1970年代半ば以降の酒造業界のパラダイムシフトを背景に、承継が危機克服と個性化戦略の推進に結びついた事例について示された。質疑応答では、先代の地域社会との関係性や個別事例の代表性について議論が行われた。 第6報告では、藤本昌代教授より、「伝統的酒造りにおける真正性と職業社会化―生酛技術を事例に―」について、報告がなされた。日本酒の生酛造りを行う酒蔵・杜氏・酒販店・関連業種を対象に、①酒造技術の変遷に影響を及ぼす社会的要因、②伝統的酒造りの技術の真正性、③酒造業の職人の職業社会化の3点について検討した研究である。生酛造りという製法は、近代化や制度的規制の中で一度は衰退したが、伝統的酒造りとして世界的に評価された日本酒の文化的「伝統」表象として価値を獲得してきた。一方で、酒造りにおける「真正性」とは固定的なものではなく、多元的に構築されるものであることも論じられた。質疑応答では、本事例において、調査対象者における真正性は手続きを守ることを倫理として体現する姿勢として理解されていることが確認された。また、科学的知見との緊張関係とそれに伴う職人への職業社会化への影響も議論された。 第7報告では、三井泉教授より、「『事業継承』の新たなモデル構築への試論」について、報告がなされた。本報告は、事業継承を継ぐ/継がれるという主体・客体にも転換が起こる点、事業継承を「生きられる場」の創造として捉える点を踏まえた理論的枠組みを提示した。質疑応答では、制度や権力、正当性・正統性との関係が議論の中心となり、新制度学派的視点やルールメーカーの存在などが指摘された。 3.全体討論 最後に、全体討論では、すべての報告に共通するテーマとして「伝統と革新」、「物語」、「真正性」、「知識経営」の4つのキーワードが上げられ、活発に議論がなされた。日中韓台比較の可能性や成功者バイアスの問題も指摘され、理論的枠組みの精緻化と比較研究の深化が今後の課題として共有された。 |
| 開催日時 | 第2回研究会 2026年2月25日 9時~12時30分 |
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| 開催場所 | 同志社大学今出川キャンパス良心館 RY305 |
| テーマ | 台湾・東海大学との交流企画「家族企業と事業承継」 |
| 発表者 | 陳介 玄 (台湾・東海大学) 三井 泉 (神戸大学) 藤本 昌代(同志社大学) 河口 充勇(帝塚山大学) |
| 参加者 | 三井泉 、 藤本昌代 、 河口充勇 、 洪性奉 、 竇少杰 、 陳介玄 、 台湾企業経営者29名 、 池田梨恵子 |
| 研究会内容 |
本研究会は、台湾・東海大学との学術交流企画として開催され、台湾の企業経営者を迎え、日本および台湾における家族企業の事業承継をテーマに報告と全体討論を行った。全体の通訳・司会を竇少杰特定准教授(京都大学)が努めた。
第1報告として、東海大学の陳介玄教授より「台湾の家族文化と資本との統合:財産はいかにして事業承継の品格になるか」と題する報告がなされた。報告では、家族企業の持続可能な発展には、単なる金銭的財産の蓄積ではなく、資本と文化の統合が不可欠であることが論じられた。資本は社会制度と文化に支えられた社会的産物であり、富の継承には後継者教育と家族価値観の形成が重要であると指摘された。慈善活動や社会貢献も家族文化の形成と結びつき、結果として企業の「品格」を高めると整理された。
第2報告として、三井泉教授より、東アジアにおける事業承継の学際的研究の枠組みと具体的事例が報告された。経営人類学的手法を用い、「継ぐ(世代間関係)」と「繋ぐ(社会的ネットワーク)」の両面から継承を捉える視点が提示された。宮城県の一ノ蔵酒造の事例では、経営理念の形成・明文化・伝播の過程を通じて、理念が企業の創造力の源泉となることが示された。
第3報告として、藤本昌代教授は、伝統的酒造技術の真正性と職人の職業社会化について報告した。近代化や制度的規制の中で一度は衰退した「生酛」造りが再評価される背景を分析し、真正性とは固定的なものではなく、多元的に構築されるものであることを論じた。また、杜氏を中心とする職人の職業社会化過程にも焦点を当てた。
第4報告として、河口充勇教授は、家業継承を企業経営・家族経営・財産経営の三側面から捉え、京都伏見の酒造業を事例に、地域社会との関係変容と世代交代を契機とした経営革新について報告した。1970年代以降の需要減少を背景とする業界の縮小と、その中で生じた質的転換や地元回帰の動きが示された。
質疑応答では、日本酒市場の縮小への酒造業者の対応や廃業企業の動向、熟成酒市場の形成などについて活発な議論が行われた。研究会後、台湾からの参加者および研究会のメンバーにて、京都市伏見区の酒蔵へのスタディツアーも行われた。
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| 開催日時 | 第1回研究会 2025年6月14日 17時~19時 |
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| 開催場所 | 中央大学 茗荷谷キャンパス |
| 発表者:テーマ | 三井泉:「About this project」 山内勇気:「家業を継承するとはなにか」 藤本昌代・池田梨恵子・郭文静:「伝統産業における技術に関わる事例報告」 池田梨恵子:「産地形成におけるデザイン・技法の多様性と同業者間での協働の役割:波佐見焼の継承事例から」 藤本昌代:「酒造業における杜氏の技術の『正統性』の多様性」 郭文静 :「酒造業における文化的事業による継続」 李志満・洪性奉:「Family Business in Korea: Reality and Challenge for Sustainability」 住原則也:「台湾のスモールビジネスの継続と『伝統市場』物理的・社会文化的環境の整備と経営」 |
| 研究会内容 |
6月14日のGBAS学会終了後、17時~19時に研究会を開催した。
今回の研究会では、各研究者による学会報告を踏まえ、経営理念や事業承継に関する議論が行われた。これに対して、廣山謙介先生からは歴史学の立場から、市川文彦先生からは日仏比較の国際研究の立場から、出口竜也先生からは観光学・地域経営学の立場から、それぞれ専門的なアドバイスや知見を提供され、研究を促進される有意義な交流の場となった。 |