以下、本文になります
第5研究 データサイエンスを用いた日本伝統文化の継承と変容の文理融合研究 代表者:福田 智子(文化情報学部)
本共同研究では、まず、平安・鎌倉期の和歌や物語が、文字情報はもとより、絵画を伴って享受されていく現象に着目し、文学や歴史学、芸術学・宗教学といった多角的な観点から学際的に研究することで、日本古典文学の枠を超えた、日本伝統文化の受容史を再構築することを目的とする。文化分野の共同研究者が、専門性を生かした研究を個々に行った上で、史料画像とそのメタデータを共有し、分野を超えて相互に関連性を見出していく。
また、デジタルヒューマニティーズ(DH/人文情報学)の観点から、新しい視点や知識を得るために、文字列解析の他、類似画像解析も視野に入れ、適切な情報科学技術を導入する。これは、文化分野の専門性の高い研究を支えるのみならず、情報共有をより円滑にし、融合研究の要となる。
2025年度
開催日時 | 第2回研究会 2025年9月5日 10時30分~17時00分 |
---|---|
開催場所 | 同志社大学 今出川校地 寧静館 4階会議室 |
テーマ | 夏の研究集会 第2日 |
発表者 |
南里 一郎 他 |
研究会内容 |
吉井勇『酒ほがひ』所収歌のその後 ―異同から見た抄本・覆刻版・選歌集― 南里 一郎(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員(社外)) 吉井勇の第一歌集『酒ほがひ』(明治43年1910)の歌は、1915年の抄本や1946年の覆刻版のほか、幾度も自撰歌集に収録される。それらの歌の歌句・歌順の異同を論じ、歌集に収録する際の方針に言及する。 吉井勇の味な歌 ―辻留・鶴屋八幡・谷崎潤一郎― 田坂 憲二(元慶應義塾大学教授) 吉井勇は、京阪の老舗から依頼されて歌を作ることが多かったが、それらの多くは『吉井勇全集』に未収である。今回は、辻留と鶴屋八幡に関するものを取り上げ、谷崎潤一郎との関わりにも言及する。 「古筆手鑑」の構成要素 ―銘と排列とを中心に― 瀧山 嵐(総合研究大学院大学博士後期課程) 古筆手鑑は、多種多様の時代・ジャンルの古筆切(※切断・分割された写本の断片)を貼り込んだメディアである。それら古筆切の排列方法と銘との分析を通して、古筆手鑑の学術資料としての特質につき検討する。 扇の文化 ―和歌と歌意絵と― 福田 智子(同志社大学文化情報学部教授) 天禄四年(973)円融院扇合の清原元輔歌の伝承のあり方を、室町末期から江戸初期にかけて流行したという「扇の草子」との関わりから検証するとともに、同志社大学文化情報学部所蔵「扇の草子断簡」を紹介する。 人文学系資料のデジタルアーカイブとその教育利用 大井 将生(同志社大学文化情報学部准教授) 学校教育における人文学系デジタルアーカイブの活用方法について、事例を基に議論する。具体的には、ジャパンサーチのキュレーション機能、異なる機関が一堂に会して資料を共創的に「教材化」する方法、資料のLinked Open Data化、「語り」のフロー化などについて述べる。 |
開催日時 | 第1回研究会 2025年9月4日 10時30分~17時30分 |
---|---|
開催場所 | 同志社大学 今出川校地 寧静館 4階会議室 |
テーマ | 夏の研究集会 第1日 |
発表者 |
末松 剛 他 |
研究会内容 |
近世即位式をめぐる装束指図と絵図の史料論
末松 剛(九州産業大学地域共創学部教授)
科研課題「即位式絵図の記録と伝承に関する史料学的研究」の成果をふまえ、新規に調査した装束指図と絵図を検討する。それぞれの記録史料としての有用性を判断するために、着目点と検討方法など、史料論として提示したい。
「ついで」に本筋を語る光源氏の話法 ―玉鬘の素性明かしと裳着の腰紐役を依頼する場面を視点として―
古瀨 雅義(安田女子大学文学部教授)
『源氏物語』「行幸」巻で、光源氏は内大臣に玉鬘の素性を打ち明け、父親として裳着の儀の腰紐役を依頼し、了解を得る。この微妙な話題は「ついで」を装って本筋が語られ、話が展開していくことに注目し、『源氏物語』の話法を考察する。
中間報告(その4)『鼻帰書』にみる東寺即位法の起源神話 ―伊勢神宮における秘説、図像と解釈―
石野 浩司(同志社大学宮廷文化研究センター研究員・同志社大学人文科学研究所嘱託研究員(社外)
中世神道書『鼻帰書』に記録された神宮相伝「辰狐法」(タスキカケ作法)について、その原像を延暦『外宮儀式帳』から読み解く。あわせて弥生神殿に遡及する神宮正殿建築の装飾意匠「御形」の中世的な展開「図像と解釈の言説世界」についても視野に入れて、神宮周辺の中世思想の形成を跡づける。
蘭奢待調査の経緯 ―奇気、杏仁―
矢野 環(埼玉大学名誉教授・同志社大学名誉教授)
秋の正倉院展には黄熟香(蘭奢待)が出展される。2023年9月からNHKの蘭奢待の企画に関与し、2つの放送(2023, 2025)と付帯する読売系の展覧会ができた。これらの原点と経過、また米田該典氏について述べる。
※動画公開 https://youtu.be/ClH0ulpP9Qs
近代国家の饗宴儀礼に上代由来の歌舞が再配置された様相について
高橋 美都(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員(社外))
宮廷儀礼(神楽以外の饗宴や年中行事)に上代歌舞復興を求める動きは、近世から近代国家形成期に間歇的に認められる。(明治)撰定譜(=伝統的書法の雅楽譜集)と儀礼での奏演記録断片などから概観報告を試みる。
|