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第8研究 グローバリゼーションとカウンター・メモリーの諸相――交差性に着目する地域横断的研究 研究代表者:石井 香江(グローバル地域文化学部)
本研究会は「カウンター・メモリー」という概念を共通の切り口として、記憶のあり方と、記憶する主体のジェンダー・セクシュアリティ・社会階層・エスニシティ・地域性とが、互いにどのように影響し合っているのか、時代・地域・ディシプリンを横断する対話を通じて、比較することを目的としている。具体的には、近現代のアフリカ、アジア、欧米をフィールドに、多様なディシプリン(歴史学・社会学・メディア研究・政治学・文化人類学・文学・アート)で取り組むメンバーが、歴史理論、モニュメント、メディアと戦争、現代社会、社会運動、文学表象、移住者とアートというテーマのチームに分かれつつ共同研究を進め、成果発信に向けて準備する。
2025年度
開催日時 | 第2回研究会 2025年6月28日 14時~18時30分 |
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開催場所 | 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 地下2教室 |
テーマ | 第1部: 研究報告 澤口右樹「イスラエルの軍隊・ジェンダー・記憶のポリティクス」 第2部: 書評会 アン・ツヴェッコヴィッチ『感情のアーカイヴ : トラウマ、セクシュアリティ、レズビアンの公的文化』花伝社、2024年を読む。 |
発表者 |
澤口 右樹 、 菅野 優香 、 赤枝 香奈子 、 石井 香江 |
研究会内容 | 今回は第2回目の研究会ということで、「カウンター・メモリー」の具体的事例に関する個別報告と、「カウンター・メモリー」とも不可分である「カウンター・アーカイヴ」の理解を深める本の書評会を、二部構成で行った。 第1部では澤口右樹さんから、「イスラエルの軍隊・ジェンダー・記憶のポリティクス」と題される研究報告がなされた。イスラエルの支配的記憶の構築過程とその担い手の変化の説明に続き、これに対して生まれた対抗記憶の内容をエスニシティとジェンダーを軸に比較され、対抗記憶と支配記憶の関係について重要な指摘をされた。 第2部では、アン・ツヴェッコヴィッチ『感情のアーカイヴ : トラウマ、セクシュアリティ、レズビアンの公的文化』(花伝社、2024年)の監訳者である菅野優香さんより、最初に本書の概要・ポイントや著者の紹介がなされ、これに引き続き赤枝香奈子さんより日本のセクシュアリティ研究の観点から本書に沿ったコメントがなされるとともに、ニューヨークのLesbian Herstory Archivesの紹介がなされた。さらに石井香江より「アーカイヴ再考」というタイトルで「カウンター・メモリー」と関連付けながら本書にコメントがなされ、ベルリンにある三つの「カウンター・アーカイヴズ」の歴史と現状についての紹介がなされた。 第1部・2部ともに、幅広く、活発な意見が交わされ、情報共有が行われた。ハイブリッド形式の開催で、海外からの4名を含む計10名が参加した。 |
開催日時 | 第1回研究会 2025年4月25日 17時~19時 |
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開催場所 | 同志社大学今出川校地 啓明館 共同研究室A |
テーマ | 「カウンター・メモリー」を軸に共同研究をするにあたって |
発表者 |
石井 香江 |
研究会内容 |
本研究会のメンバーは、研究・アートで取り組む時代や地域、アプローチの方法が異なるため、「カウンター・メモリー」という概念を軸に共同研究をするにあたり、初年度は各人のテーマと「カウンター・メモリー」の接点を見出し、相互に比較する作業を進めていく。
今回は第1回目の研究会ということで、研究会を運営していくにあたっての注意事項や、今後の報告者の紹介や合宿の相談、メンバーの自己紹介をすることからはじまった。これに引き続き、石井香江より先ず「カウンター・メモリー」という概念について基本的な理解を提示し、次にその具体例として「マルグレ・エル」(ナチ期にアルザス・ロレーヌ地方より強制的に労務動員された女性たちの自称)による戦後の証言、寄贈されたエゴ・ドキュメント、メディアや研究者による取り上げ方や議論の争点の概要について説明がなされた。「カウンター・メモリー」の提示の仕方、「マルグレ・エル」と他地域で労務動員された集団との比較の是非など、幅広く、活発な意見が交わされた。
ハイブリッド形式の開催で、海外からの3名を含む計12名が参加した。
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