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第9研究 20世紀日朝関係史の総合的研究 研究代表者:板垣 竜太(社会学部)
2025年度
開催日時 | 第4回研究会 2025年7月30日 16時~18時30分 |
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開催場所 | 同志社大学 新町キャンパス 臨光館 R413 |
研究班 | 第1研究班 |
テーマ | 戦前同志社の朝鮮人留学生 |
発表者 |
太田 修 |
研究会内容 |
第9研究会の第1研究班は、科研費・基盤B「貫戦期日本の朝鮮人留学生の政治-文化史」(2024-27年度、研究代表:板垣竜太)と連動して実施するものである。第1研究班としては2025年度の第1回目の研究会となる。
今回は、『同志社百五十年史』第1巻に収録予定の「植民地・外国からの留学生」の準備を兼ねて、戦前期同志社の朝鮮人留学生について、現時点で明らかになっている知見を報告した。同志社には当時、大学、大学予科、高等商業学校、中学、女子専門学校、高等女学部などが存在していたが、本報告では大学・大学予科を中心とした状況についてまとめた。
まず留学生数を把握することの困難さを踏まえつつも、全国の動向との比較で同志社の朝鮮人留学生の特徴について論じた。そのうえで、最初の朝鮮人留学生、各学校で学び著名人となった人物、同志社を選んだ理由、同志社の教員となった人物、留学生会、朝鮮人学生による詩・評論・散文、衣食住、創氏改名、軍事教練、学生・教員間の関係、民族意識、官憲による取締り、戦時期の「志願兵」制度などの諸点から、朝鮮人留学生の実態について明らかにした。
参加者それぞれが知る他大学の事情や諸事例にもとづき、活発な討論がおこなわれた。
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開催日時 | 第3回研究会 2025年7月12日 10時~18時30分 |
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開催場所 | 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 1階会議室 |
研究班 | 第2研究班 |
テーマ | 日韓知の軌跡-冷戦と脱植民地主義をめぐる問い |
発表者 |
太田修、朴三憲、金仁洙、趙秀一、洪宗郁、戸邉秀明、沈正明 |
研究会内容 |
第2研究班「社会・文化領域における日韓諸関係」の第2回目の研究会として、公開ワークショップ「日韓知の軌跡-冷戦と脱植民地主義をめぐる問い」を開催した。今回のワークショップの趣旨は以下のとおりである。
「日韓国交正常化から60年、両地域を行き来する人とモノは増大してきた。それにともない、知の交流も、共同研究、雑誌、フォーラム、連帯運動などの場において、進展してきた。今回の公開ワークショップでは、1960年代後半から2000年代にかけての7つの事例を取り上げ、日韓の知が、東西冷戦と脱植民地主義をどのように考え、問うてきたのか、そこでなされた議論や問いが、今日の日本と朝鮮半島、さらには東アジア、世界において、いかなる意味を持つのかを、参加者とともに考えたい。」
【プログラム】
10:00 開会の挨拶
10:10-11:10 太田修「越境する在韓被爆者と日本の連帯運動-孫貴達の「密航」と厳粉連・林福順の「渡日治療」の試み-」
11:10-12:10 朴三憲「1970年代「朝鮮半島研究者」の韓国論-田中明を中心に-」
13:10-14:10 金仁洙「アジアの冷戦学術の磁場と1970~80年代における日韓知識人の交流」
14:10-15:10 趙秀一「在日知識人が構築した連帯の公論場『季刊 三千里』」
15:20-16:20 洪宗郁「脱植民的植民地研究の原点」
16:20-17:20 戸邉秀明「荒井信一の「植民地責任」に到る道-1990年代以降の東アジアにおける知的交流のなかで」
17:20-18:20 沈正明「ナショナリズム批判という文脈から見た日韓知識人の交流」
約40名の参加者があり、上記の報告について活発に議論が行われた。日本とコリアの知が、冷戦と植民地主義をどのように問うてきたか、それぞれの事例における議論や問いが、日本と朝鮮半島、さらには東アジア、世界において、いかなる意味を持つのかを、参加者とともに考えることができた。
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開催日時 | 第2回研究会 2025年6月13日 18時30分~20時30分 |
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開催場所 | 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 SK390 |
研究班 | 第3研究班 |
テーマ | 研究会の活動方針の確認 |
発表者 |
吉澤 文寿 |
研究会内容 |
第3研究班「朝鮮史分野における統合された植民地支配責任論」の第1回目の研究会として、研究会の趣旨、構成、活動計画、今後の予定について議論した。まず、吉澤から以下の通りに提案した。
・ この研究班は朝鮮史分野における統合された植民地支配責任論について、3年間でその基礎的な研究を行ない、報告書(冊子またはWeb形式など)にまとめることを目標とする。
・ この研究班では歴史教育の方法、すなわち高等学校の「歴史総合」や大学教育における実践を想定した教育内容および方法を検討する。参考事例として、最近の田野大輔・小野寺拓也『検証 ナチスは「よいこと」もしたのか?』(岩波書店、2023年)をめぐる小川幸司氏の問題提起と著者からの反応などが示された。
・ 科研費(基盤研究BまたはC)による採択を目指して、とくに①研究課題の学術的重要性、②研究方法の妥当性、③研究遂行能力および研究環境の適切性についてさらに調書の内容を検討する必要がある。
この提案に対して、出席者から様々な意見が示された。全体的に見ると、植民地支配における「暴力」に注目すること、外村大『和解をめぐる市民運動の取り組み―その意義と課題』(明石書店、2022年)などを先行研究として、この研究会の独自性を打ち出すことなどが示された。
これをうけて、吉澤から調書案を再検討し、次回(8月5日)14時より大阪産業大学梅田サテライトキャンパスにて、第2回の研究会を実施し、調書内容をさらに検討するとともに、今後の研究会の活動について具体的な計画を作成することとした。
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開催日時 | 第1回研究会 2025年6月13日 16時~18時 |
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開催場所 | 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 SK390 |
研究班 | 第2研究班 |
テーマ | 社会・文化領域における日韓諸関係 |
発表者 |
洪 里奈 |
研究会内容 |
第2研究班「社会・文化領域における日韓諸関係」の第1回目の研究会として、嘱託研究員の洪里奈さん(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程)による報告「女性たちの「帰国事業」-家族をめぐる葛藤と生存戦略」と、それに対する質疑が行われた。
洪里奈さんの報告は、「帰国事業」(1959年から1984年にかけて実施され、約9万3000人の在日朝鮮人が朝鮮民主主義人民共和国に渡った)にかかわった3人の元在日朝鮮人「帰国者」のライフヒストリーを分析し、彼女らの語りから見えてくる暮らしの工夫やこだわり、努力といった実践を、歴史や社会的事象の「空白」を埋めるものとしてとらえ、そうした実践がどのような意味を持つのか、また、彼女らをとりまく歴史や社会的状況が彼女らの人生にどのような影響を及ぼしたのかを考察しようとするものである。
洪里奈さんは、3人の女性の語りから浮かび上がってくるのは、「家族のための献身や家族を支える経済的・精神的活動が、単なる犠牲や抑圧的義務を超え、彼女たちが自身の人生を再定義し、自己を主体的に再構築するための重要な生存戦略であり、レジリエンスだった」と暫定的に整理した。
洪里奈さんの報告について、3人の女性の語りの内容だけではなく、話しぶりや身振り、言い淀み、沈黙など、言葉にならない彼女らの意思や感情についても叙述してはどうか、在日朝鮮人女性の歴史性や独自性から考える視点も必要ではないか、などについて活発な議論が行われた。
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