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第9研究 20世紀日朝関係史の総合的研究  研究代表者:板垣 竜太(社会学部)

 

2025年度

開催日時 第9回研究会  2026年3月6日 14時00分~17時00分
開催場所 新潟国際情報大学新潟中央キャンパス
研究班 第3研究班
テーマ 研究会の方針の再確認
発表者
吉澤 文寿
研究会内容
 第9研究会第9回(第3研究班としては第3回)研究会として、吉澤から科研費(基盤研究B)申請が不採択に終わったことが報告された。来年度に向けた研究会の方針として、(1)植民地支配をめぐる諸問題の理解を助けるための一般書(大学教科書など)を作成する、(2)新潟/「日本海」に視点を当てた日朝関係史を研究するための研究プロジェクトを準備し、来年度の科研申請を目指すことを確認した。
 これに対して、以下のような議論が行なわれた。

(1) 一般書の作成について、参加者からの研究テーマが示された。そのうえで、以下の点が指摘された。
 ・ 類書が多い。読者が関心を持ちやすいテーマが良い。・「暴力」の問題を前面に出すより、日常から「平和」を考えるなどの接近法が良い。
 ・ 韓国・朝鮮への関心が高まっており、読者の「無知」を前提にするのではなく、ある程度の「知識」を前提とした方が良い。
 ・ 複数の著者による「通史」は書きづらい。
  → これらを踏まえて、特定の人物やモノから植民地主義を考察する文章を盛り込みながら、本の構成を検討することになった。
(2) 「新潟」「日本海」「朝鮮」「植民地」などのキーワードが示された。
 ・ 新潟では新聞資料をデジタル化したものが作成されているものの、「朝鮮」というワードではほとんど検索できない。
 ・ 新潟という地理的特性から、とくに朝鮮北部との関係が注目される。
 ・ (1)の一般書でも、朝鮮北部に関する記述を増やすのが良い。
  → これらを踏まえて、次回の会合で吉澤が科研調書案を作成することにした。


 次回研究会は2026年6月に同志社大学で開催する。板垣が「酒」に関する研究報告、吉澤が科研調書案を報告することにした。来年度の研究会は年3~4回程度開催することを確認した。

開催日時 第8回研究会 2026年3月3日 14時~18時
開催場所 韓国 民族問題研究所会議室
研究班 第2研究班
テーマ ・ 「1910년 한일조약을 어떻게 볼 것인가?」 (「1910年韓日条約をどのように考えるか?」)
・ 「한국인 ‘야스쿠니 합사' 피해자들의 투쟁 과정」 (「韓国人「靖国合祀」被害者の闘争過程」)
発表者
김창록(金昌禄) 、 野木香里
研究会内容
 第2研究班「社会・文化領域における日韓諸関係」の第3回目の研究会を開催した。今回はソウル在住の金昌禄(慶北大学校法科大学院教授)、野木香里(民族問題研究所研究員)に報告をお願いした。
――――――
・報告:金昌禄「1910년 한일조약을 어떻게 볼 것인가?」(「1910年韓日条約をどのように考えるか?」)
・報告:野木香里「한국인 ‘야스쿠니 합사' 피해자들의 투쟁 과정」(「韓国人「靖国合祀」被害者の闘争過程」)
――――――
 金昌禄報告では、2018年「大韓民国大法院強制動員被害判決」の核心が、「日本政府の韓半島に対する不法的な植民地支配」が「不法強占」であったことにあるとして、1910年「韓国併合条約」の歴史的・法学的検討が必要だとしたうえで、1910年条約の主体、脅迫、手続きについて検討した結果、「1910年の条約は脅迫と手続きの両面において「対等な立場から、また自由意思によって」「正当な手続きを経て締結」されたとは言えず、したがって当初から効力が認められないものだと言える、と結論された。
 野木報告では、韓国人「靖国合祀」問題に関連する従来の研究動向をふまえて、1980年代後半から軍人・軍属強制動員被害者と日韓市民によって展開された「記録探しの闘い」、「法廷闘争」、「東アジア市民連帯闘争」、「記憶をめぐる闘い」の過程が検討された。とりわけ「記憶をめぐる闘い」においては、強制動員被害者の遺族の証言集、ドキュメンタリー映画の制作・上映、「植民地歴史博物館」での企画展、日韓市民連帯運動の記録、強制動員アーカイブの構築などの取り組みが紹介され、今後、取り組みを継続していく上での課題が提示された。
 二つの報告について、それぞれ約1時間にわたって活発な議論がなされた。
 また、今回の研究会は、オンライン(Zoom)でも配信された。
 次回研究会は、2026年6月に同志社大学で開催することが確認された。
開催日時 第7回研究会 2026年2月19日 14時~17時30分
開催場所 同志社大学 新町キャンパス 臨光館R413 (Zoom併用)
研究班 第1研究班
テーマ (1) 日本留学期の尹東柱と宋夢奎
(2) 朝鮮奨学会資料をどう活用するか
発表者
水野直樹 、 板垣竜太
研究会内容
 第9研究会の第1研究班は、科研費・基盤B「貫戦期日本の朝鮮人留学生の政治-文化史」(2024-27年度、研究代表:板垣竜太)と連動して実施するものである。今回は2つの報告と討論をおこなった。
 【報告1】
報告者:水野直樹
タイトル:「日本留学期の尹東柱と宋夢奎に関する新たな資料―京都大学大学文書館所蔵資料を中心に―」
 尹東柱とそのいとこである宋夢奎については、これまでも不断に資料発掘がおこなわれてきた。報告者は、まず京都大学に所蔵されている文学部選科の入学願書綴、入学関係綴から、宋夢奎の出願と入学についての事実を明らかにするとともに、尹東柱が京都帝大を受けておらず(俗説では受けたと言われていた)、最初から立教大学に行くつもりだったと考えられることを立証した。また、朝鮮奨学会資料から尹東柱と宋夢奎やその関係者に関する記述も見つけ出し、既知の史料とも照らし合わせる作業をおこない、今後の共同研究のための一つの見本を示した。さらに公訴状などから逮捕後の2人の状況について新たな知見を得た。
 【報告2】
報告者:板垣竜太
タイトル:「朝鮮奨学会資料をどう活用するか」
 2025年度にデジタル化を終えた朝鮮奨学会資料について、その概要を報告した。そのうえで今後の資料分析の分担やスケジュールについて議論しながら調整した。
開催日時 第6回研究会  2025年11月28日 9時30分~17時30分 、 11月29日 9時30分~12時30分
開催場所 同志社大学烏丸キャンパス志高館1F 会議室
テーマ 史料研究国際コロキアム
「近現代における日本列島-朝鮮半島間の人の移動と定住に関わる史料の調査および研究」
発表者
板垣竜太、太田修、水野直樹、庵逧由香、森田智惠、金由地ほか
研究会内容
 国史編纂委員会と同志社大学コリア研究センターの共催学術イベントとして、史料研究国際コロキアム「近現代における日本列島-朝鮮半島間の人の移動と定住に関わる史料の調査および研究」を2 日間にわたって開催した。人文研・第9 部門研究会は3 つの研究班から構成されるが、今回はそれぞれの班から報告者が発表した。内容は次のとおりである(発表者中、*印をつけたのが部門研究会メンバー)。

1 日目:11 月28 日(金)
【午前】
〇 太田修*(同志社大学)「(基調講演)日韓会談文書情報公開アーカイブズについて」
〇 板垣竜太*(同志社大学)「朝鮮奨学会と朝鮮人留学生/在日朝鮮人をめぐる政治文化史」
〇 勝村誠(立命館大学)「ウトロ平和祈念館所蔵史料の調査および研究」

【午後】
〇 伊地知紀子(大阪公立大学)「大阪コリアタウン歴史資料館史料の調査および研究:御幸森小学校資料を中心に」
〇 金由地*(同志社大学)「グラウンドワーク(Groundwork):史料からみる指紋押捺拒否運動のローカルな諸相」
〇 森田智惠*(同志社大学)「日本の「キーセン観光」関連史料の調査および研究
〇 水野直樹*(京都大学名誉教授)「衡平運動関係史料の発掘・編纂をめぐって」

2 日目:11 月29 日(土)
【午前】
〇 庵逧由香*、イ・スンヒョン、嘉名侑希(立命館大学)「立命館大学国際平和ミュージアム「広瀬貞三資料」について」
〇 文一熊(国史編纂委員会)「在朝日本人社会の形成期における日本地域政治勢力の朝鮮政治への影響:甲午改革・独立協会運動期(1896-1899)熊本国権党系列の活動を中心に」
総合討論

開催日時 第5回研究会 2025年8月5日 14時~17時
開催場所 大阪産業大学梅田サテライトキャンパス
研究班 第3研究班
テーマ 研究会の方針の再確認(科研調書の検討)
発表者
吉澤 文寿
研究会内容
 第9研究会第5回(第3研究班としては第2回)研究会として、吉澤から科研費(基盤研究B)による採択を目指して、調書案が示された。調書は植民地支配責任論に歴史学として寄与するために植民地支配に由来する暴力の諸相を解明し、研究の統合を目指すものである。
 これに対して、以下のような議論が行なわれた。

・ キーワードとして示された「colonial violence」は「植民暴力」ではなく、「植民地的暴力」とするべきである。
・ 近年に至るまでの植民地主義に関する議論はレイシズム、記憶など、さまざまな方法論の潮流があるので、それらを統合するような研究を目指すべきである。
・ 歴史学で注目されているトラウマ論、ジェノサイド論、ポスト・ジェノサイド社会論などもこの研究会で検討する必要がある。
・ 「(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」の部分が弱い。3年間を通して、この研究会が目指すところを図式化して、分かりやすく示す必要がある。

 これをうけて、吉澤から調書案を再検討したうえで、メンバーに調書案を示し、さらに意見を募った上で、本務校である新潟国際情報大学から日本学術振興会に応募することを確認した。また、次回(3月6日)14時より新潟国際情報大学みずき野キャンパスにて、第3回の研究会を実施し、申請結果を確認した上で、今後の研究会の活動についてさらに具体的な計画を作成することとした。その際に、メンバーが各自で取り組むべき課題を準備し、研究会で持ち寄ることとした。
開催日時 第4回研究会 2025年7月30日 16時~18時30分
開催場所 同志社大学 新町キャンパス 臨光館 R413
研究班 第1研究班
テーマ 戦前同志社の朝鮮人留学生
発表者
太田 修
研究会内容
 第9研究会の第1研究班は、科研費・基盤B「貫戦期日本の朝鮮人留学生の政治-文化史」(2024-27年度、研究代表:板垣竜太)と連動して実施するものである。第1研究班としては2025年度の第1回目の研究会となる。
 今回は、『同志社百五十年史』第1巻に収録予定の「植民地・外国からの留学生」の準備を兼ねて、戦前期同志社の朝鮮人留学生について、現時点で明らかになっている知見を報告した。同志社には当時、大学、大学予科、高等商業学校、中学、女子専門学校、高等女学部などが存在していたが、本報告では大学・大学予科を中心とした状況についてまとめた。
 まず留学生数を把握することの困難さを踏まえつつも、全国の動向との比較で同志社の朝鮮人留学生の特徴について論じた。そのうえで、最初の朝鮮人留学生、各学校で学び著名人となった人物、同志社を選んだ理由、同志社の教員となった人物、留学生会、朝鮮人学生による詩・評論・散文、衣食住、創氏改名、軍事教練、学生・教員間の関係、民族意識、官憲による取締り、戦時期の「志願兵」制度などの諸点から、朝鮮人留学生の実態について明らかにした。
 参加者それぞれが知る他大学の事情や諸事例にもとづき、活発な討論がおこなわれた。
開催日時 第3回研究会 2025年7月12日 10時~18時30分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 1階会議室
研究班 第2研究班
テーマ 日韓知の軌跡-冷戦と脱植民地主義をめぐる問い
発表者
太田修、朴三憲、金仁洙、趙秀一、洪宗郁、戸邉秀明、沈正明
研究会内容
 第2研究班「社会・文化領域における日韓諸関係」の第2回目の研究会として、公開ワークショップ「日韓知の軌跡-冷戦と脱植民地主義をめぐる問い」を開催した。今回のワークショップの趣旨は以下のとおりである。
 「日韓国交正常化から60年、両地域を行き来する人とモノは増大してきた。それにともない、知の交流も、共同研究、雑誌、フォーラム、連帯運動などの場において、進展してきた。今回の公開ワークショップでは、1960年代後半から2000年代にかけての7つの事例を取り上げ、日韓の知が、東西冷戦と脱植民地主義をどのように考え、問うてきたのか、そこでなされた議論や問いが、今日の日本と朝鮮半島、さらには東アジア、世界において、いかなる意味を持つのかを、参加者とともに考えたい。」

【プログラム】
10:00       開会の挨拶
10:10-11:10 太田修「越境する在韓被爆者と日本の連帯運動-孫貴達の「密航」と厳粉連・林福順の「渡日治療」の試み-」
11:10-12:10 朴三憲「1970年代「朝鮮半島研究者」の韓国論-田中明を中心に-」
13:10-14:10 金仁洙「アジアの冷戦学術の磁場と1970~80年代における日韓知識人の交流」
14:10-15:10 趙秀一「在日知識人が構築した連帯の公論場『季刊 三千里』」
15:20-16:20 洪宗郁「脱植民的植民地研究の原点」
16:20-17:20 戸邉秀明「荒井信一の「植民地責任」に到る道-1990年代以降の東アジアにおける知的交流のなかで」
17:20-18:20 沈正明「ナショナリズム批判という文脈から見た日韓知識人の交流」

 約40名の参加者があり、上記の報告について活発に議論が行われた。日本とコリアの知が、冷戦と植民地主義をどのように問うてきたか、それぞれの事例における議論や問いが、日本と朝鮮半島、さらには東アジア、世界において、いかなる意味を持つのかを、参加者とともに考えることができた。
開催日時 第2回研究会 2025年6月13日 18時30分~20時30分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 SK390
研究班 第3研究班
テーマ 研究会の活動方針の確認
発表者
吉澤 文寿
研究会内容
 第3研究班「朝鮮史分野における統合された植民地支配責任論」の第1回目の研究会として、研究会の趣旨、構成、活動計画、今後の予定について議論した。まず、吉澤から以下の通りに提案した。

・ この研究班は朝鮮史分野における統合された植民地支配責任論について、3年間でその基礎的な研究を行ない、報告書(冊子またはWeb形式など)にまとめることを目標とする。
・ この研究班では歴史教育の方法、すなわち高等学校の「歴史総合」や大学教育における実践を想定した教育内容および方法を検討する。参考事例として、最近の田野大輔・小野寺拓也『検証 ナチスは「よいこと」もしたのか?』(岩波書店、2023年)をめぐる小川幸司氏の問題提起と著者からの反応などが示された。
・ 科研費(基盤研究BまたはC)による採択を目指して、とくに①研究課題の学術的重要性、②研究方法の妥当性、③研究遂行能力および研究環境の適切性についてさらに調書の内容を検討する必要がある。

 この提案に対して、出席者から様々な意見が示された。全体的に見ると、植民地支配における「暴力」に注目すること、外村大『和解をめぐる市民運動の取り組み―その意義と課題』(明石書店、2022年)などを先行研究として、この研究会の独自性を打ち出すことなどが示された。
 これをうけて、吉澤から調書案を再検討し、次回(8月5日)14時より大阪産業大学梅田サテライトキャンパスにて、第2回の研究会を実施し、調書内容をさらに検討するとともに、今後の研究会の活動について具体的な計画を作成することとした。
開催日時 第1回研究会 2025年6月13日 16時~18時
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 SK390
研究班 第2研究班
テーマ 社会・文化領域における日韓諸関係
発表者
洪 里奈
研究会内容
 第2研究班「社会・文化領域における日韓諸関係」の第1回目の研究会として、嘱託研究員の洪里奈さん(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程)による報告「女性たちの「帰国事業」-家族をめぐる葛藤と生存戦略」と、それに対する質疑が行われた。
 洪里奈さんの報告は、「帰国事業」(1959年から1984年にかけて実施され、約9万3000人の在日朝鮮人が朝鮮民主主義人民共和国に渡った)にかかわった3人の元在日朝鮮人「帰国者」のライフヒストリーを分析し、彼女らの語りから見えてくる暮らしの工夫やこだわり、努力といった実践を、歴史や社会的事象の「空白」を埋めるものとしてとらえ、そうした実践がどのような意味を持つのか、また、彼女らをとりまく歴史や社会的状況が彼女らの人生にどのような影響を及ぼしたのかを考察しようとするものである。
 洪里奈さんは、3人の女性の語りから浮かび上がってくるのは、「家族のための献身や家族を支える経済的・精神的活動が、単なる犠牲や抑圧的義務を超え、彼女たちが自身の人生を再定義し、自己を主体的に再構築するための重要な生存戦略であり、レジリエンスだった」と暫定的に整理した。
 洪里奈さんの報告について、3人の女性の語りの内容だけではなく、話しぶりや身振り、言い淀み、沈黙など、言葉にならない彼女らの意思や感情についても叙述してはどうか、在日朝鮮人女性の歴史性や独自性から考える視点も必要ではないか、などについて活発な議論が行われた。