このページの本文へ移動
ページの先頭です
以下、ナビゲーションになります
以下、本文になります

第10研究 日本における非常食に関する史的研究  研究代表者:川満 直樹(商学部)

 日本人は、長い間、災害とともに暮らし、災いと災いの間(災間)を生きてきた。にもかかわらず、いくつかの先行研究が指摘するように、日本での災害に関する歴史研究は十分に行われてきたとは言えない。ましてや非常時や災害時の食のあり方については、歴史研究としてまとめられた研究業績は多くないと言えるであろう。
 第10研究では、「社会のなかの非常食」という視点で考察を進める。これまでの災害史、食物史や災害食を含む非常食などの研究で、これまで分析の主軸として位置づけられてこなかった非常食を考察の中心に据え、それによって新たに現出する実態をそれぞれの時代あるいは社会と関連付けながら、これまで明らかにされてこなかった歴史像を描出する。なお、研究会は春学期の4月~7月と秋学期の10月~12月の年7回開催する予定である。

2026年度

開催日時 第3回研究会 2026年6月21日 10時30分~12時10分
開催場所 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「放談【僕の非常食】」
発表者 西田 東藏 氏 (学外講師)
研究会内容
 第10研究の6月研究会は、株式会社非常食研究所代表取締役社長の西田東藏氏をお招きし、講演会を開催した。以下で、講演内容の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 西田氏は、株式会社非常食研究所(2009年に同社名となる)の前身となる会社セックコーポレーションを1991年1月に設立し企業家として歩み始めた。同社では、西田氏自身が営業マンとして日本各地を飛び回った経験から発想を得た商品を開発し販売を行った。当時の経験を西田氏は次のように述べている。「出張時には商人宿に宿泊し、ほとんどの宿にはレストランがなく、夕食をとるのも大変であった。そこで思い付いたのが自販機で夜食を提供する」ことであった。そのアイディアをもとに誕生した商品が「HOT!ぐるべん」である。同商品の発売後に同社は「夜食王HOT!ぐるべん4」(1994年3月)、「非常備蓄食HOT!ぐるべん3」(同年6月)などを開発し販売した。
 その後、同社の商品は各方面で利用されることになる。抜粋し以下にいくつか紹介する。

・ 阪神淡路大震災(1995年):各品難所に約3万食の「非常備蓄食HOT!ぐるべん3」を提供。
・ 大阪府警にAPEC大阪会議の警備食として採用(1995年)。
・ 横浜市から乳児用の備蓄ミルクの開発の依頼を受け「YOKOHAMA愛のミルク」を開発(1996年)。 

 西田氏は、講演の後半で「非常食」という言葉にも言及した。氏によれば、「非常食という言葉を定義づけること難しい」とのこと。西田氏は、自身が考える「非常食」の定義を以下のように述べた。
 はじめに、西田氏は「非常時」という言葉から説明を始めた。「電気やガスなどのエネルギーが途絶した状態」、「道路や鉄道そして港湾施設などの交通網が破壊された状態」、「電話やメールそしてインターネットなどの通信が断絶あるいは断続した状態」、この三つが同時に起こった状況を氏は「非常事態」とよんだ。そして、西田氏は「非常事態」のときにとる食事を「非常食」と定義した。西田氏が考える「非常食」は、水や熱源などを使用せずに調理することができる「自己完結型食品」である。また、「非常食」に類似した食品、例えば「アルファー化米」や「保存食(カップラーメンなど)」などの食品を西田氏は「準非常食」とよんだ。
 西田氏の講演は第10研究にとって今後研究を進める上で多くの示唆を与えてくれるものであった。講演後、第10研究のメンバーから西田氏に対し、質問が多数あり活発な議論が行われた。
開催日時 第2回研究会 2026年5月17日 10時30分~11時50分
開催場所 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「災害食はなぜ「商品」ではなかったのか-三倉・乾パン・兵站から合理的配慮へ-」
発表者 立木 茂雄 先生 (学外講師)
研究会内容
 第10研究5月研究会は、同志社大学名誉教授の立木茂雄先生をお招きし講演会を開催した。以下で、立木先生の講演内容の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 立木先生は、これまでに『災害と復興の社会学(増補版)』(萌書房、2022年)や『誰一人取り残さない防災に向けて、福祉関係者が身につけるべきこと』(萌書房、2020年)などを出版されてきたことからも分かるように防災研究の第一人者である。
 立木先生の講演から大きく二点について学んだ。一つは日本における「救恤思想」についてであり、二つ目は日本における災害食の歴史的変遷についてである。
 一つ目について。「救恤」とは、一般的に貧しい人や災害や事故などで被害を受けた人に対して、生活に必要となるものを支給することである。日本でこのような考え方が始まったのは奈良時代ごろからで、穀物などの食料を備蓄するための倉庫が作られた、とのこと。時代により「義倉」、「常平倉」、「社倉」などのように呼ばれたが、その機能は先に述べたように穀物などを備蓄するためのものであった。紙幅の関係上割愛するが、講演ではそれらについて、そしてそれらに関連する事柄について詳細な説明がなされた。
 二つ目について。災害食の歴史的変遷について、それぞれの時代における災害食に対する考え方とその特徴について、①「奈良時代から江戸時代:貧民救済のための備蓄と配給」、②「明治から昭和初期:救恤は行政の重要な役割として継続され、炊き出しや現物配給が中心」、③「日ロ戦争から戦中・戦後:「標準人間モデル」を前提として栄養確保のための最低限の食事」、④「高度経済成長期以降:個別の嗜好・文化・健康状態を考慮しない標準仕様の食事」などの点から説明し、①~④に共通する考え方は「困っている人に対して効率よく、平等に、管理可能な形で食事を提供する」ことであると説明した。結果、これまでの災害食は被災者が選ぶものではなく配られるものであり、被災者の尊厳や生活の質が後回しにされてきたと、立木先生は述べた。
 紙幅の関係上、これ以上述べることはできないが、立木先生の講演は「非常食」をテーマとした第10研究にとって今後研究を進める上で多くの示唆を与えてくれるものであった。
 講演後、第10研究のメンバーから立木先生に対し、質問が多数あり活発な議論が行われた。
開催日時 第1回研究会 2026年4月19日 10時30分~12時10分
開催場所 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「保存食、伝統食、非常食」
発表者 宮嵜 慶一 氏 (学外講師)
研究会内容
 第22期人文研第10研究の2026年度第1回研究会は、4月19日に開催された。研究テーマは、昨年度に引き続き「日本における非常食に関する史的研究」である。
 4月研究会では、養肝漬宮崎屋株式会社代表取締役社長ならびに同社6代目店主の宮嵜慶一氏をお迎えし、「保存食、伝統食、非常食」をテーマに講演会を開催した。以下で、宮嵜氏の講演内容の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 養肝漬宮崎屋では、伊賀の地で「養肝漬」の製造販売を1865年(慶応元年)より行い現在至っている。養肝漬とは、材料として白瓜を使用し、白瓜の芯を抜き、その中に細かくきざんだ生姜や大根そしてきゅうりなどを詰め込み、宮崎屋で100年以上も前から使用している木桶に、たまり醤油で1年から2年ほど熟成させたものである。100年以上使用している木桶には、発酵に欠かすことができない菌が住み着いているという。そして、養肝漬という名前の由来は、「士の志気を養う、つまり肝っ玉を養う漬物」からきているという。
 宮嵜氏は、養肝漬の製造方法や養肝漬にまつわる話などを紹介した。例えば、1957年の第二次南極観測隊が養肝漬を保存がきく食料として持っていったことなどを紹介した。
 宮嵜氏は、「受け継いできた伝統を守りながらも作り方を変えるのではなく食べ方を変えるような取り組みを行っている」と述べた。その試みとして現在、「養肝漬ドレッシング」、「たまりしょうゆアイス」そして「くろ和っさん」などの商品を販売している。
 宮嵜氏の講演は、「非常食」をテーマとした第10研究にとって有益であり、今後研究を進める上で多くの示唆を与えてくれるものであった。
 講演後、第10研究のメンバーから宮嵜氏に対し、質問が多数あり活発な議論が行われた。

2025年度

開催日時 第7回研究会 2025年12月21日 11時30分~13時30分
開催場所 京都市市民防災センター(京都市南区)
テーマ 京都市市民防災センターでの見学および聞き取り調査
研究会内容
 第10研究では、10月と11月につづき、12月研究会でも防災関連施設での見学会および聞き取り調査を行った。
 前回までの「定例研究会活動概要報告書」でも述べたように、防災関連施設は日本ならびに各地域で起こった災害(地震他)の情報収集などを行っている。非常食や災害食は、災害時に使用する場合が多くあると思われ、防災関連施設での見学ならびに聞き取り調査は、我々の研究に大いに参考になる。
 12月研究会(見学会)は、京都市南区にある「京都市市民防災センター」で見学を行った。同センターは、地震や水害他を体験できるプログラムが多数用意されており、それらプログラムをとおして災害について学ぶことができる。同センターが発行しているパンフレットによれば、体験プログラムについて以下のように書かれている。
 「強風体験コーナー」では、風速32メートルの強風下における行動の困難性を体験する。「強地震体験コーナー」では、震度4~7程度の横揺れを体験し、地震発生時の心構えと日ごろの備えを学ぶ。「避難体験コーナー」では、ホテル火災をリアルに再現し、普段経験できない煙の中の避難行動を体験する。「水圧扉体験コーナー」では、浸水した際、ドアに水圧がかかり、どれだけ開けにくくなるのかを体験する、などである。
 第10研究のメンバーも上記のプログラムのいくつかを体験した。それ以外にも京都市での災害ならびに京都市が取り組んでいる災害時の備えなどを映像で学んだ。
 第10研究では、10月から12月まで防災関連施設での見学会を実施してきた。防災関連施設での見学から災害が起こった時に取らなければいけない行動などを学んだ。あわせて、水や食べ物を備蓄しておくことの大切さも改めて学んだ。次年度以降は、防災関連施設での見学から学んだことを基に、災害食を含む非常食を製造している企業にも注目し研究を行っていきたい。
開催日時 第6回研究会 2025年11月9日 11時30分~13時30分
開催場所 阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター(神戸市中央区)
テーマ 人と防災未来センターでの見学および聞き取り調査
研究会内容
 第10研究では、10月研究会(見学会)に続き11月研究会も防災関連施設での見学会および聞き取り調査を行った。10月の「定例研究会活動概要報告書」でも述べたように、防災関連施設は日本ならびに各地域で起こった災害(地震他)の情報収集などを行っている。それに加え、災害の教訓を多くの人に伝える活動も積極的に行っている。非常食や災害食は、災害時に使用する場合が多くあると思われ、防災関連施設での見学ならびに聞き取り調査は、我々の研究に参考になると思われる。
 11月研究会(見学会)は、神戸市中央区にある「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」で見学を行った。同センターのHPにセンターの理念および活動の内容が次のように記されている。「当センターは、震災の教訓を未来に生かし、安全・安心な社会の実現を目指しています。その理念のもと、6つの機能を通じた活動を展開しています。」6つの機能の一つに「展示」があり、一般の人々もセンターにて震災の追体験や防災・減災の体験をすることができる。また、阪神淡路大震災を忘れさせないために震災に関する多数の実物資料も展示されている。同センターの6つの機能については、センターHPを参照していただきたい。
 第10研究では、非常食や災害食に関して研究を行ってきた。同センターでの見学を「食」という点に引き寄せて述べるならば、10月見学会(あべのタスカル)でも学んだことであるが、災害が発生した直後の地域は混乱状態である。しかし、そのような状況にあっても人が生きていくためには、最低限の食料と水が必要である。
 人と防災未来センターでの見学からもあべのタスカルで学んだことと同様のことを学んだ。人と防災未来センターでの見学会実施は、10月に行った見学会同様に第10研究にとって意義のあるものであった。
開催日時 第5回研究会 2025年10月5日 10時30分~12時10分
開催場所 あべのタスカル(大阪市立阿倍野防災センター)
テーマ あべのタスカルでの見学および聞き取り調査
研究会内容
 第10研究では、春学期の研究会(4月、5月、6月、7月)で同研究の研究テーマである「非常食(災害食を含む)」に関する史的研究を進める上で重要となる先行研究のレビューを行った。先行研究のレビューについては、第10研究において、今後も継続的に行っていく予定である。
 第10研究の秋学期(10月、11月、12月)の活動は、主に防災関連施設での見学および聞き取り調査を予定している。防災関連施設は、これまで日本ならびに各地域で起こった災害(地震他)の情報収集などを行っており、それに加えて災害の教訓を多くの人に伝える活動も積極的に行っている。非常食や災害食は、災害時に使用する場合が多くあると思われ、防災関連施設での見学ならびに聞き取り調査は、第10研究の研究に大いに参考になると思われる。
 10月研究会(見学会)では、大阪市阿倍野区にある「あべのタスカル(大阪市立阿倍野防災センター)」で見学を行った。同施設は、体験型防災学習施設となっており、巨大地震の揺れ(震度7)の体験、津波からの避難や火災時の煙からの避難などを体験し、また自宅内における減災方法などを学んだ。
 災害時に備えておく必要がある食料やそれ以外の生活必需品などについても説明を受けた。食料に関しては、災害発生後、少なくとも3日間程度を各家庭(各自)で備えておく必要があること、そして情報収集などの方法などについても説明を受けた。
 どのような状況にあっても人間が生きていくためには、水と食料は最低限必要となる。それらをどのようにして備え、そしてそれを使用するのか。そのようなことも平常時から常に考えておくことが重要であることを改めて認識した。あべのタスカルでの見学会の実施は、第10研究にとって意義のあるものであった。
開催日時 第4回研究会 2025年7月20日 10時30分~12時10分
開催場所 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「災害食の枠組みと法制度」
発表者
名川拓男 氏 (嘱託(社外))
研究会内容
 第10研究7月研究会は、名川拓男氏が「災害食の枠組みと法制度」をテーマに研究報告を行った。以下で、名川氏の報告内容の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 前回の研究会の「活動概要報告書」でも記したが、春学期の研究会では、非常食に関する先行研究の収集とレビューを行っている。7月研究会での名川氏の報告もそれに沿うものであり、非常食に関する以下の4本の先行研究を取り上げ報告を行った。

・ 奥田和子(2013a)「災害時の食を考える(第5回)災害食の機能と備え:新たな枠組みと制度改革(1)」
 『食品工業』56 (21)。
・ 奥田和子(2013b)「災害時の食を考える(第6回)災害食の機能と備え:新たな枠組みと制度改革(2)」
 『食品工業』56 (22)。
・ 奥田和子(2013c)「災害時の食を考える(第7回)災害食の機能と備え:新たな枠組みと制度改革(3)」
 『食品工業』56 (23)。
・ 奥田和子(2013d)「災害時の食を考える(第8回)災害食の機能と備え:新たな枠組みと制度改革(4)」
 『食品工業』56 (24)。

 名川氏は、4本の先行研究のレビューを行ったあと、「近代、戦後そして現代における災害関連法を確認し、『法律上(計画や制度なども含む)での非常食』とは何か」を検討した。
 災害対策に関する法律での「食」に関する変遷について、氏は次のようにまとめた。近代では、中央集権的な性格をもち、現物支給が基本となり政府の議決等が必要であった。また、戦後では地方分権の影響により、都道府県の権限および判断が増加、地方公共団体とその住民に対し、食料や飲料水の備蓄を呼びかけている。そして、現代では、地域コミュニティや市民が個別の計画を行えるように制度を整備し、アレルギーに対応した食料をはじめとした被災者のニーズにも対応しようとしている。
 紙幅の関係上、これ以上書くことができないが、名川氏は法律との関連で「非常食」という言葉にも言及し、法律には「非常食」という言葉は、管見の限り確認することができなかった、と述べていた。
 研究報告後の質疑応答では、教室およびzoomでの参加者から名川氏に対し、質問や意見等が多数あり活発な議論が行われた。
開催日時 第3回研究会 2025年6月8日 10時30分~12時10分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「日本における非常食研究の展開:先行研究の多面的整理と課題」
発表者
木村多嘉子 氏 (兼担研究員)
研究会内容
 第10研究5月研究会は、木村多嘉子氏が「日本における非常食研究の展開:先行研究の多面的整理と課題」をテーマに研究報告を行った。以下で、木村氏の報告内容の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。
 第10研究は、本年度より「日本における非常食に関する史的研究」をテーマに研究を行うことになっている。第10研究にとって「非常食」をテーマに研究を行うのは初めてのことである。そのため本年度春学期の研究会では、主に非常食に関する先行研究の収集とレビューを行っている。木村氏もそれに沿い、非常食に関する先行研究のレビュー報告を行った。
 木村氏は、第10研究の研究目標を、非常食を史的観点から研究することにより「日本社会の制度・文化・政策の変容過程を捉える」ことと設定し、今回の氏の報告の意義を「今後の経済史研究において、『非常食』や『保存食』、さらには『災害食』といった領域で、どのような研究の展開が可能であるのかを考察すること」と述べた。以上の観点から、4つの先行研究をレビューし、それぞれの先行研究の研究に対する貢献と課題を紹介した。以下に、紙幅の関係上、2つの先行研究について述べる。

 守茂昭(2024)「関東大震災の被災復旧から見た災害食に対するニーズと被災時食料備蓄の新しい方向性」『日本災害食学会誌』11(1)について。
 同研究の研究上の貢献として、①関東大震災被害者が食料を確保する能動的主体であったという点に着目し、その行動の実態を再構成したこと。②「社会的循環備蓄」という新たな概念を提唱し、地域社会や企業、流通機構を含む広域的・循環的なシステムとして構築すべきであることに言及したこと、である。
 課題として、氏は次の2点をあげた。①被災者の生活実態や文化的背景に関する質的な検討が不足している点。②社会的循環備蓄の制度化に向けた具体的な検討が不足している点、である。

 坪山宜代(2024)「関東大震災時の食・栄養および栄養対策に関する研究:関東大震災100年を紐解く」『日本災害食学会誌』11(1)について。
 同研究の研究上の貢献として、氏は、関東大震災時の食・栄養とその後の制度形成に着目し、文献を既存の災害支援枠組みに分類したことをあげた。また、課題点として、①既存文献の整理と再分類にとどまり、新たな資料の提示や独自の理論的展開を欠いていたこと。②制度形成における政治的・社会的文脈の分析がなされていなかったこと、などをあげた。

 木村氏が取り上げ、レビューを行った4本の先行研究は、これから「非常食」をテーマに研究を行っていく第10研究にとって、研究を進めていく上で参考になるものであった。
 研究報告後の質疑応答では、教室およびzoomでの参加者から木村氏に対し、質問や意見等が多数あり活発な議論が行われた。
開催日時 第2回研究会 2025年5月11日 10時30分~12時10分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「非常食」文献レビュー
〜「非常の食」の分類も視野にいれながら〜
発表者
亀井大樹 氏 (嘱託(社外))
研究会内容
 第10研究5月研究会は、亀井大樹氏が「「非常食」文献レビュー〜「非常の食」の分類も視野にいれながら〜」をテーマに研究報告を行った。以下で、亀井氏の報告内容の概要を述べ「定例研究会活動概要報告」とする。亀井氏は、4月研究会で報告を行った名川氏同様に、第10研究の研究テーマである「非常食」に関する史的研究を進める上で重要となる先行研究のレビューを行った。
 亀井氏は、最初に1940年代後半から『日本農芸化学会誌』に掲載された「非常食糧」に関する一連の研究を紹介した。同研究の中心人物は、山藤一雄であり、山藤を中心に1949年から1951年の間に『日本農芸化学会誌』に15本以上の論文が掲載された。亀井氏は、「非常食糧」の研究が進められた背景に、戦後直後の食料難の時代に農村にある動植物の食糧化を検討すること、などがあったと説明した。
 次に、亀井氏は先行研究で述べられている「非常の食」の分類を紹介した。そこで重要なことは「非常」をどのようにとらえるかであり、氏は以下の点を中心に「非常」について詳細に説明を行った。
 非常(日常ではない状態):①自然災害(地震、台風、津波他)、②人災(戦争、事故他)、①と②以外に行刑、機内食、遠洋漁業、宇宙食他。
 また、亀井氏は現代的な観点から議論されているライフラインの復旧状況に応じた非常食(災害食)の適応期間を紹介した。氏は、複数の先行研究を紹介し説明したが、ここでは紙幅の関係上、別府茂・中沢孝(2012)「非常食から被災生活を支える災害食へ」『科学技術動向』3・4月号で紹介されていた区分を以下に紹介する。
 第1ステージ:災害直後、電気・ガス・水道のライフラインが断たれた状況であり、湯の利用や加熱調理なしに食べられる食品を、家庭・企業・事務所・避難所等に備蓄しておく必要がある。
 第2ステージ:電気の復旧などにより、湯を沸かすことができるようになった状態であり、湯を加えるか湯せんが必要な非常食/インスタント食品が利用可能となる。また、第2ステージでは、備蓄食料に加えて、外部からの救援食料なども利用される。
 第3ステージ:全てのライフラインが復旧し、調理設備も使用可能になると共に外部からの食料や食材の援助などにより、炊く・煮る・焼く・炒めるなどの調理が可能になった段階で食べられる食品に関しての制約はほぼなくなる。
 紙幅の関係上、この場で亀井氏が報告した内容の多く述べることは出来ないが、氏の今回の報告は「非常食」に関する研究を進めていく上で基礎となるものであった。
 研究報告後の質疑応答では、教室およびzoomでの参加者から亀井氏に対し、質問や意見等が多数あり活発な議論が行われた。
開催日時 第1回研究会 2025年4月20日 10時30分~12時10分
開催場所 同志社大学今出川校地 扶桑館F513教室、オンライン(zoom)
テーマ 「第22期人文研第10研究について」
「レビュー報告:「災害食」その役割と開発・流通を中心に」
発表者
川満直樹氏(兼担研究員)
名川拓男氏(嘱託(社外))
研究会内容
 第22期人文研第10研究の研究テーマは「日本における非常食に関する史的研究」である。
 さて、2025年度最初の第10研究4月研究会は、川満直樹氏が第10研究の研究概要を説明し、その後、名川拓男氏が研究報告を行った。
 川満氏は、「第22期人文研第10研究について」と題して、第10研究の研究の背景ならびに研究概要、そして進め方について説明を行った。川満氏は、「食事をとることは、人間が生きていくための最低条件である。震災の多い我が国では、非常食は社会と密接に結びつき現在に至っている」と述べ、「これまで等閑視されてきた非常食に関する史的研究を進めることにより、非常食が日本社会の中でどのように変化し、現在に至っているのかなどについて歴史的含意を明らかにしたい」と述べ、研究を行う意義を強調した。
 名川拓男氏は、「レビュー報告:「災害食」その役割と開発・流通を中心に」をテーマに研究報告を行った。名川氏は、非常食に関する史的研究を進める上で重要となる先行研究のレビューを行った。名川氏が取り上げた先行研究は、「災害食」関連の論文(4本)であった。
 紙幅の関係上、名川氏の報告内容は省略するが、先行研究をサマリーする形で「災害と災害食」、「非常食から災害食へ」、「災害食の役割」、「災害食の開発」、「災害食の流通」を中心に報告を行った。名川氏の報告から「非常食」と「災害食」の違いをどのように理解するのか。また「非常のとき」をどのように理解するのかなど、今後、災害食を含む非常食を史的に研究するにあたり重要な視点を得た。
 それぞれの報告終了後の質疑応答では、教室およびzoomでの参加者から質問や意見等が多数あり活発な議論が行われた。