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第12研究 植民地主義的暴力と排外主義の現在―歴史研究との対話を通した批判的研究  研究代表者:水谷 智(グローバル地域文化学部)

 

2026年度

開催日時 第4回研究会 2026年8月4日 16時00分~18時30分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK111
テーマ
英語論文原稿検討会
発表者 溝口 聡美
研究会内容
 2026年8月4日(火)、同志社大学志高館SK111教室において、第4回研究会「英語論文原稿検討会」が開催された。本研究会は、同志社大学人文科学研究所と「間-帝国史」研究センター(CTH)の共催により実施され、部門研究員の溝口聡美氏が、“Postimperial Silences: Family Rupture and Historical Disavowal across the Former Dutch and Japanese Empires”と題する英語論文草稿について報告を行った。当日は、トロント大学のベク・シジン氏(Paek Sijin)およびカリフォルニア大学バークレー校のイーサン・ゴン・トッコ氏(Ethan Geon Tokko)の両氏がゲスト・コメンテーターとして参加し、論文の内容や構成について国際的な視点から意見交換を行った。
 溝口氏の論文は、現在英語で執筆中の博士論文の一部となるものである。論文の内容は、旧オランダ領東インドと旧日本帝国という二つの帝国を横断する歴史的経験に着目し、戦争によって引き裂かれた家族の経験や、その記憶が各国においてどのように継承・忘却されてきたのかを考察するものである。また、インドネシア、日本、韓国、オランダにまたがる証言や事例を取り上げながら、家族史と植民地主義の歴史をトランスインペリアルな視点から捉え直す必要性を論じた。さらに、「Postimperial Silences」という概念を手がかりとして、帝国崩壊後の歴史認識や記憶の形成過程を分析するとともに、先行研究との差異や本研究の独自性についても説明が行われた。
 質疑応答では、論文全体の構成や理論的枠組み、先行研究との関係性を中心に活発な議論が交わされた。参加者からは、英語論文としては背景説明よりも研究の主張を前面に打ち出す構成が望ましいことや、先行研究レビューでは既存研究との違いをより明確に示す必要があるとの意見が寄せられた。また、「silence」を静的な概念としてではなく、「silencing」という歴史的・社会的な過程として捉えることで、論文全体の理論的軸をより鮮明にできるのではないかという提案もなされた。さらに、帝国間の歴史的関係や記憶の政治をどのように位置づけるか、国際誌への投稿を見据えた論文構成やタイトルの表現などについても具体的な助言が示され、予定時間を超えて活発な意見交換が続くなど、終始充実した研究会となった。

開催日時 第3回研究会 2026年7月30日 14時00分~18時00分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館 SK111
テーマ
出版に向けた研究会 第一回
発表者 友寄 元樹 、 溝口 聡美 、 大槻 和也
研究会内容
 2026年7月30日、人文科学研究所第12部門研究において、「出版に向けた研究会 第一回」を開催した。本研究会は14時から18時まで、同志社大学烏丸キャンパス志高館SK111において日本語で実施された。本研究会は、論集『今も続く植民地主義への抗い―歴史・記憶・実践をつなぐ―』(仮)の刊行に向けた共同研究の一環として開催され、水谷智氏、菊池恵介氏が司会を務めた。当日は、友寄元樹氏、溝口聡美氏、大槻和也氏が報告を行い、米川尚樹氏、トロント大学のベク・シジン(Paek Sijin)氏、カリフォルニア大学バークレー校のイーサン・ゴン・トッコ(Ethan Geon Tokko)氏がコメンテーターとして参加した。
 まず、友寄元樹氏は、「ニューカレドニア―民衆はなぜ蜂起したのか」と題し、2024年5月にニューカレドニアで発生した抗議行動を、植民地主義への抵抗という観点から再考する研究について報告した。植民地支配の歴史や独立運動、住民投票制度、選挙権問題を踏まえ、近年の出来事を植民地主義の継続性の中で位置づける構成が示された。討論では、「植民地主義への抵抗」と位置づける論理をより明確に提示することや、独立派の言説や史料を用いた論証の補強、さらにニューカレドニアの事例をフランス帝国の脱植民地化という広い歴史的文脈の中で位置づけることなどについて、多くの助言が寄せられた。
 続いて、溝口聡美氏は、「帝国の狭間の子どもたち―重なり合う沈黙からたどる植民地主義と残響―」と題し、日本占領下のオランダ領東インド(現インドネシア)において、日本帝国の男性と現地女性との間に生まれた子どもたちを対象に、植民地主義が生み出した複層的な権力関係と、その影響が現代まで継続していることについて報告した。討論では、植民地支配下における男女関係や朝鮮・台湾出身軍属の位置づけ、加害と被害の重層性、当事者の記憶と忘却の問題などについて活発な議論が交わされた。また、論集としての構成について、現代の事例から導入し、読者の関心を喚起する構成が望ましいことなど、具体的な助言が示された。
 最後に、大槻和也氏は、1968年の金嬉老(キム・ヒロ)事件を取り上げ、「テロ」と呼ばれる暴力を植民地主義と構造的暴力の観点から再検討する研究について報告した。事件を単なる犯罪としてではなく、在日朝鮮人に対する差別や植民地主義の継続との関係から捉え直し、国家や社会による暴力と抵抗との関係を考察した。討論では、テロ概念や暴力の正当性、ジェンダーの視点、植民地主義との歴史的連続性などについて意見交換が行われるとともに、本論集全体のテーマとの関連性をより明確に示すことや、個別事例を植民地主義の歴史的文脈の中で位置づけることの重要性が指摘された。
 研究会の最後には、今後も原稿の進捗状況に応じて継続的に研究会を開催するとともに、必要に応じて各章の執筆者によるオンラインでの意見交換を実施しながら、論集全体の完成度を高めていく方針が確認された。今後は、2027年夏頃を目途に第一稿を提出し、2027年秋から2028年初頭にかけて校正・修正を進める。その後、2028年春季休暇中に編集者と出版社による最終確認を行い、2028年3~4月頃の刊行を予定している。終始活発な質疑応答と意見交換が行われ、本研究会は盛会のうちに終了した。

開催日時 第2回研究会 2026年6月30日 15時30分~16時30分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館3Fラウンジ
テーマ 植民地主義と現代世界に関する国際共同研究のための打ち合わせ
研究会内容
 2026年6月30日、本部門研究会において、「植民地主義と現代世界に関する国際共同研究のための打ち合わせ」を開催した。本研究会は15時30分から16時30分まで、同志社大学烏丸キャンパス志高館3階ラウンジにおいて英語で実施された。今回は、トロント大学よりベク・シジン(Paek Sijin)氏およびキム・スミン(Kim Soomin)氏、カリフォルニア大学バークレー校よりイーサン・ゴン・トッコ(Ethan Geon Tokko)氏をゲストとして迎え、人文科学研究所第12研究の活動の一環として、植民地主義と現代世界に関する国際共同研究の可能性について意見交換を行った。なお、本研究会は報告者を設けず、共同研究の打ち合わせとして自由討論形式で実施された。
 研究会では、まず参加者がそれぞれの研究関心や現在取り組んでいる研究について紹介を行った。その後、研究代表者である水谷智より、本部門研究が進める「植民地主義と現代世界」に関する国際共同研究の趣旨および構想について説明がなされ、今後、海外の若手研究者と継続的に研究交流を重ねながら共同研究を発展させていきたいとの考えが示された。また、同志社大学を拠点として研究会やシンポジウム等を開催し、研究成果を広く発信していくことを視野に入れ、共同研究の進め方や研究発表の機会、将来的な共同企画の可能性について意見交換が行われた。参加者からも、それぞれの問題関心や研究経験を踏まえ、本テーマを軸とした共同研究の方向性や研究課題について積極的な意見が述べられた。
 討論では、植民地主義研究を一国史に限定することなく、地域や国家を越えた視点からいかに展開し得るかという点を中心に、多角的な議論が交わされた。また、国際共同研究を進めるうえでの研究方法や史料の共有、異なる研究環境に属する研究者が継続的に協働するための課題や可能性についても意見交換が行われた。終始自由闊達な雰囲気のもとで活発な討論が展開され、今後の共同研究に向けた相互理解を深める有意義な機会となるとともに、本部門研究を基盤とした国際共同研究をさらに発展させていくことへの期待が共有された。

開催日時 第1回研究会 2026年6月10日 17時00分~19時00分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館SK203 及び オンライン(ハイブリッド)
テーマ Transimperial Entanglements and the Politics of Comparison
発表者 発表者:水谷智(同志社大学、教授)
コメンテーター: Takashi Fujitani (professor emeritus, University of Toronto)
研究会内容
 2026年6月10日、本研究会において、同志社大学グローバル地域文化学部教授の水谷智氏による「Transimperial Entanglements and the Politics of Comparison」と題する講演が開催された。本講演は英語で行われ、同志社大学烏丸キャンパスSK203教室およびオンラインを併用したハイブリッド形式で実施された。本講演には、ゲスト・コメンテーターとしてトロント大学名誉教授のTakashi Fujitani氏を迎えた。また、本講演は同志社大学「間-帝国史」研究センター(Center for Transimperial History: CTH)と本部門研究会の共催により開催された。
 発表では、刊行予定の英語著作 Transimperial Trajectories: Colonialism and Anticolonialism across the British and Japanese Empires をもとに、植民地主義と反植民地主義を複数の帝国の相互関係のなかで捉えるトランスインペリアル・ヒストリーの理論的意義が論じられた。水谷氏は、従来の植民地研究やポストコロニアル研究が単一の帝国を分析単位としてきたことを指摘したうえで、歴史的主体が複数の帝国を横断的に認識し、相互参照を行っていた点に着目した。そして、「Dual Awareness」「Transimperial Entanglement」「Politics of Comparison」といった概念を用いながら、英日両帝国の協調・競争・抵抗の過程を分析し、比較そのものを歴史的主体による実践として捉える視角を提示した。これに対し、Takashi Fujitani氏は、「Politics of Comparison」や「multicentric」といった概念の意義について論じるとともに、帝国間の結びつきの形成過程やその非対称性、さらには普遍主義との関係などをめぐる論点を提示し、水谷氏との間で議論が交わされた。
 質疑応答では、日本の知識人がイギリス帝国をどのように認識し、参照していたのかという問題や、日本帝国を論じるうえで「模倣(mimicry)」をどのように位置づけるべきかという点について議論が交わされた。また、インドの民族主義者が朝鮮の植民地状況に関する情報をどのように認識していたのか、情報伝達や翻訳の役割をどのように考えるべきかといった問題も提起された。そのほかにも多くの質問や意見が寄せられ、活発な議論が展開された。最終的には時間の制約により終了となったが、講演は終始活発な議論のもとで締めくくられた。

2025年度

開催日時 第6回研究会 2026年3月16日(月) 15時00分~17時00分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館SK203
テーマ イギリスによる『インドからの搾取』を記録した植民地文書隠蔽工作(1945-1947年)に関する試論
発表者 佐藤尚平(早稲田大学文学学術院教授) 、 Navneet Pratap(デリー大学博士後期課程)
主催 人文科学研究所 部門研究 第12研究
「植民地主義的暴力と排外主義の現在ー歴史研究との対話通した批判的研究」
共催 科研費基盤研究C
「イギリス帝国の不都合な過去とは何だったのか?隠蔽された文書を用いた地域横断的研究」
(研究代表者:佐藤尚平課題番号21K00814)
研究会内容
 2026年3月16日、本研究会において、早稲田大学の佐藤尚平氏およびデリー大学のナヴニート・プラタープ氏(博士課程在籍中)をゲストとして迎え、「イギリスによる『インドからの搾取』を記録した植民地文書隠蔽工作(1945-1947年)に関する試論」と題する講演が開催された。本講演は英語で行われ、本研究会が主催し、科研費基盤研究C「イギリス帝国の不都合な過去とは何だったのか―隠蔽された文書を用いた地域横断的研究」が共催した。司会およびコメントは同志社大学の水谷智氏が務めた。
 発表では、脱植民地化の過程において実施された植民地文書の破棄および隠蔽に関する問題が取り上げられた。佐藤氏は博士課程在学中にイギリス国立公文書館において当該問題に関心を持ち、その後インドにおいてプラタープ氏と出会い、インド国立公文書館や首相図書館等で共同研究を進めてきた経緯が紹介された。本発表は、①インドにおける隠蔽工作の開始、②それに対する抗議とイギリス側の否認、③歴史の消去可能性、という三点を軸に構成された。第一に、いわゆる「オペレーション・レガシー」に代表される文書の移送・破棄・本国移送の一連の実践は、従来想定されていた1947年前後にとどまらず、1945年頃にまで遡る可能性が示され、その広がりと規模の大きさが明らかにされた。第二に、こうした隠蔽工作について一部のインド側指導者が把握し抗議を行っていたにもかかわらず、イギリス側はこれを否認しつつ文書の破棄を継続していた点が指摘された。第三に、たとえ一定の史料が破棄されたとしても、その後の研究の進展により歴史が完全に消去されるわけではないことが論じられた。さらに、文書の欠如という状況に対応する方法論として、「read without grain」という視点が提示され、史料が失われた状況における歴史叙述の可能性が論じられた。
 報告後の質疑応答では、「オペレーション・レガシー」を主導した主体に関する質問に対し、発表者は、それがトップダウン型というよりも、ボトムアップ型の実践として展開された可能性を指摘した。また、水谷氏によるコメントでは、本研究の方法論的意義や帝国研究における史料読解の在り方について補足的な見解が示され、発表者との間で議論が交わされた。さらに会場からも複数の質問が寄せられ、議論は活発に展開された。最終的には時間の制約により終了となったが、講演は終始活発な議論のもとで締めくくられた。

開催日時 第5回研究会 2026年2月21日(土) 15時00分~18時00分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館SK214
テーマ 公開講演会「生存戦略としての起業——フランス社会の複合的差別に抗するムスリム女性」
発表者 Hanane Karimi (Université de Strasbourg, France)
主催 グローバル地中海地域研究同志社拠点「多文化都市と共生の危機」研究班
共催 人文科学研究所 部門研究 第12研究 植民地主義的暴力と排外主義の現在
研究会内容
 今回は、ストラスブール大学のハナンヌ・カリミ先生をお招きし、フランス社会の複合的差別に抗するムスリム女性たちについて起業という視点から発表をしていただいた。今回は、フランス語(同時翻訳)で行われ、グローバル地中海地域研究同志社拠点「多文化都市と共生の危機」研究班(同志社大学都市共生研究センターMICCS)が主催し、本研究会が共催にて実施した。
 発表者は、フランスにおいて重層的な差別構造の下に置かれているイスラム女性たちに焦点を合わせ、いかにその状況を生き抜くのか、生存戦略としての起業を選択する歴史的過程について社会学的手法を用いて調査を行い、その概略を報告した。博士論文を基にした著書Les femmes musulmanes ne sont-elles pas des femmes?(『ムスリム女性は女ではないの?』未訳、Hors d’atteinte 2023)の内容にも触れながら、発表者が提唱する « La politique de la nouvelle laïcité »(「新しいライシテ政治」)について説明を行い、法律による「宗教シンボル」着用禁止が、公共空間から生活空間へと、日常のあらゆる次元に広がっている現状を取り上げた。とりわけ、ムスリム女性は、人種・階級・ジェンダー・宗教という複合的な差別の対象にあり失業者になるものが多い。そのように構造的な抑圧状況に抗う手段として起業が選択されていたことを明らかにした。自らが起業することで、宗教差別が合法化された労働市場に、雇用を創出できるのである。
 報告後の質疑応答では、女性起業家間のコワーキングの結果や他のマイノリティ女性の権利運動との接続、「新しいライシテ政治」の言説変化に関する質問があがった。また、データを収集した当時と現在の状況の移り変わりなどの追加の説明を求めるコメントがでた。講演会参加者によってさまざまな論点から質問が出され、会場全体で活発な議論が展開し、大盛況であった。

開催日時 第4回研究会 2026年1月29日(木) 16時00分~18時00分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス 志高館SK203 及び ZOOM(ハイブリッド)
テーマ 第一回 出版に向けた打ち合わせ会議
研究会内容
 今回の研究会では、本部門研究の成果としての書籍出版に向けて編集者をお招きし、研究会メンバーとの顔合わせ兼出版に向けた意見交換を実施した。まず、各々が出版に関する質問や意見を出し、その後には今後のスケジュールを確認した。
 主な質問内容は、出版の時期や書籍の具体的なテーマ、どのような構成にするかなどであった。今回の会議では、①一般読者向けの書籍、②自身の研究から現代の社会問題の根底にある植民地主義の問題を紐解く枠組みで取り組むことを確認した。出版に向けて、今後も定期的に会合を持ち、研究報告もより活発に行うことを共有した。

スケジュール(案)は次のとおり。
 2027年1月 企画書まとめて提出
 2027年1月 執筆依頼
 2028年3月 原稿締め切り
 *適宜、研究会を実施し進捗を共有する

開催日時 第3回研究会 2026年1月17日(土) 15時00分~17時00分
開催場所 同志社大学 今出川キャンパス 寧静館 N35(対面)
テーマ 書評シンポジウム「飯島真里子『コナコーヒーのグローバル・ヒストリー:太平洋空間の重層的移動史』を読む」
発表者
飯島真里子 (上智大学、教授)
コメンテーター
蘭 信三 (上智大学、名誉教授)
友寄元樹(同志社大学大学院、博士後期課程)
研究会内容
 今回は、上智大学の飯島真里子先生をお招きし、著書『コナコーヒーのグローバル・ヒストリー:太平洋空間の重層的移動史』(京都大学学術出版会、2025年)の合評会を開催した。まず、飯島先生が本書の内容紹介並びに研究背景、問題関心を報告した。その後には本研究会嘱託研究員(社外)の友寄元樹及び上智大学名誉教授の蘭信三先生がコメントを述べた。全てのプログラムは対面形式で実施し、コメンテーターの発表後は参加者を含めたディスカッションを行った。

 発表者は、ハワイ島コナ地区におけるコーヒー栽培について、その移入から現代に至るまでの歴史について太平洋を超えたグローバルな視点から取り上げている。とりわけ、コーヒーの産業化に焦点を合わせ、その導入過程など、これまでのハワイ地域研究が中心に据えていた製糖業とは異なる独自な視点から考察を進める。またコナコーヒー栽培における中心的な担い手であった日本人移民を単なるアジア系移民と捉えるのではなく、帝国の主体として検討し直すことで、コナにおける労働経験が19世紀前半の日本帝国「国産」コーヒーの誕生に結びつくことにも着目している。ハワイのコーヒー産業の歴史が日本の帝国史と結びつく、これら一連の出来事はグローバルな視点からヒトやモノの移動を捉えたからこそ可能になった結果である。本書は、植民地研究や移民研究など分野の垣根を超えた内容であり、広範な領域における歴史分野を批判的に考察する本研究会のテーマにも合致し、批判的植民地研究とも言えるだろう。

 報告後、ゲストコメンテーターの蘭先生は移民研究と関連付けながらコメントし、戦時中のコーヒー生産やコナの日本人のハワイにおける位置付けについての質問を行った。本研究会研究員の友寄は、自身の研究対象であるニューカレドニアの日本人移民史とハワイとの比較を行い、植民地研究や帝国史研究の視点からコメントした。また、フロアからも、コナの日系人の詳細や宗教と人種秩序の関係、またグローバル・ヒストリーの意義に関する確認や書籍執筆に至る背景についての質問などがあがった。さまざまな論点から質問が出され、登壇者だけでなく会場全体で活発な議論が展開された。

開催日時 第2回研究会 2025年6月26日(木) 17時00分~18時30分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 SK201 及び オンライン(ハイブリッド)
テーマ 「植民地間の連帯と批判をジェンダー化する:1905~1932年の植民地インドにおける朝鮮の女性化」
(Gendering Cross-Colonial Solidarity and Critique: Feminizing Korea in Colonial India, 1905-1932)
発表者
Aaron Peters  (Ambrose University, Canada)
コメンテーター
Takashi Fujitani  (professor emeritus, University of Toronto)
研究会内容
 今回は、アンブローズ大学のAaron Peters先生を招き、Gendering Cross-Colonial Solidarity and Critiqueについて研究報告をしていただき、議論を行った。研究報告後にはトロント大学名誉教授のTakashi Fujitani氏がコメントし、その後参加者を含めたディスカッションを実施した。全てのプログラムはハイブリッド形式(使用言語:英語)で行われ、同志社大学間帝国史研究センター(Center for Transimperial History: CTH)と本部門研究会の共催で開催に至った。

 発表者は、イギリス統治下のインドにおいて、民族主義者や作家の一部が、朝鮮の反植民地闘争と対峙する際に、ジェンダー化された言語を使用していた事実を取り上げた。とりわけ、ラビンドラナート・タゴールによる朝鮮に関する連帯の詩、特に「敗者の歌」(The Song of the Defeated)、およびオーロビンド・ゴーシュによる安重根の伊藤博文暗殺に対する批判に着目する。これらの例は、インド人が朝鮮独立運動を観察・解釈しつつ、自由と民族自決に関するインド自らのヴィジョンを明確に表現する中で、朝鮮と連帯する場合、あるいは批判する場合の双方において、男性を去勢する言語や女性化が顕著に表れていることを示していた。本報告では、植民地および反植民地主義の言説における性別、ジェンダー、年齢の戦略的使用について著述したアッシュ・ナンディーやシカタ・バナルジーなどの研究を援用しつつ、帝国を越えた植民地間の連帯や批判の表現において、植民地支配者のジェンダーに関する語彙を使用することの限界と落とし穴についても考察した。

 報告後には、ゲストコメンテーターのTakashi Fujitani氏から、汎アジア主義に対するヴィジョンやタゴールの位置付け、新渡戸稲造など日本人知識人の影響についてなどさまざまな質問やコメントが出された。また、フロアからも、インドと日本の反植民地主義フェミニストの連帯に関する質問やゴーシュのエピソードの共有などがあった。ゲストと参加者によって、さまざまな論点から活発な議論が展開された。

開催日時 第1回研究会 2025年6月19日(木) 17時00分~18時30分
開催場所 同志社大学 烏丸キャンパス志高館 SK201 及び オンライン(ハイブリッド)
テーマ Craniometric Entanglements: the Theft and Study of Ainu Remains in Europe and Japan
発表者
Michael Roellinghoff (the university of Hong Kong)
コメンテーター
Takashi Fujitani (professor emeritus, university of Toronto)
研究会内容
 今回は、香港大学のMichael Roellinghoff先生を招き、Craniometric Entanglementsのテーマで研究報告をしていただき、議論を行った。研究報告後にはトロント大学名誉教授のTakashi Fujitani氏がコメントし、その後参加者を含めたディスカッションを実施した。全てのプログラムはハイブリッド形式(使用言語:英語)で行われ、同志社大学間帝国史研究センター(Center for Transimperial History: CTH)と本部門研究会の共催で開催に至った。


 発表者は、1865年から1940年にかけてヨーロッパと日本で実施されたアイヌの遺骨に関する「頭蓋骨測定研究」(craniometric studies)の歴史を概観した。こうした研究は、1865年に函館のイギリス公使館員がアイヌの墓地からアイヌの頭蓋骨を略奪し、ロンドンに輸出する目的で開始された。ヨーロッパでは当時アイヌの頭蓋骨に大きな需要があったのである。当初、日本当局はこれらの盗掘に激しく非難したが、20世紀に入ると、ドイツやスイスにおいて影響を受けた日本人研究者が、ヨーロッパの研究者たちと共にアイヌの遺骨の盗掘と研究に積極的に関与するようになったという。本報告は、アイヌの人骨問題をグローバルなコンテクストから捉え直す試みであった。


 報告後には、ゲストコメンテーターのTakashi Fujitani氏から、遺骨返還がナショナルボーダーの認識を明確化する装置として利用されたのか、盗骨や墓地の盗掘はいつ頃まで実践され、何時ごろに終わったのかなどさまざまな質問やコメントが出された。また、フロアやオンラインからも、De-indigenizationの意味するものや入植に関する帝国間関係について質問やコメントがあがった。ゲストと参加者によって、対面/オンライン双方においてさまざまな論点から活発な議論が展開された。