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第13研究 近現代日本の文明論に関する思想史的研究  研究代表者:望月 詩史(法学部)

 本研究会は、近現代日本の文明論の展開を思想史的に描き出すことを目的とする。従来の日本の文明論を取り扱った研究は、個人、思想集団、メディアに焦点を当てた個別研究が中心であり、同時代の議論を比較する共時的なアプローチや近現代の文明論を時系列で検討する通時的なアプローチに基づく分析が不十分だった。一方の本研究も、特定の個人や集団という「点」に注目するものの、複数のそれらを有機的につなぎ合わせて「線」・「面」を再構成し、それによって日本の文明論の展開を思想史的に描き出すことを目指す。以上の問題意識に基づき、本研究では、①国際社会における日本の地位の変化とそれに伴う日本人の自己認識の変化、②文明を論じる人物の思想に注目する。そして、明治初期から昭和戦後期までの文明論が、どのような思想を背景に持っていたのかを歴史的に明らかにする。

2025年度

開催日時 第2回研究会 2025年6月27日 16時30分~18時30分
開催場所 啓明館2階共同研究室A+Zoom
テーマ 梅棹忠夫『文明の生態史観』の思想的インパクトを考える
発表者
田澤 晴子
研究会内容
 今月は、田澤晴子氏が「梅棹忠夫『文明の生態史観』の思想的インパクトを考える」をテーマに報告した。
 まず、報告の目的として、梅棹の「文明の生態史観」、「新文明世界地図―比較文明論へのさぐり」、「生態史観からみた日本」1957 年)を紹介し、その文明論がもった同時代の思想的インパクトについて論壇の人々の反応から考えたいと説明された。
 続いて、上記の3つの論説の内容が紹介された。その上で、「梅棹への評価・批判・論争」として、竹山道雄、加藤周一、柳田国男、竹内好、上山春平らの反応が取り上げられた。
 これらの反応を踏まえて、梅棹の文明論の思想史上のインパクトが、以下の5点に整理された。

① マルクス主義史学の一元的発展説を批判した多系遷移論
② 序列や価値的判断を否定したフラットな世界認識論
③ アジアとは異質で西欧と同質な日本論、しかし近代化論ではない
④ 戦前派知識人の「後進性」「政治志向」を批判する新世代知識人の登場
⑤ 自然科学分野の方法を適用した世界史構想(新たな歴史研究方法の開拓)

 そして、報告の結論として、「文明の生態史観」は一元的な発展段階史観を批判する契機となったが、結果的には「近代化」論に吸収され、日本とアジアの関係を断ち切ることになったと指摘された。

 以上の報告を踏まえ、参加者を交えて活発な議論が行われた。

開催日時 第1回研究会 2025年5月23日 16時30分~18時
開催場所 Zoom開催
テーマ 研究会の運営・スケジュールほか
発表者
望月 詩史
研究会内容
 今期最初の月例会であり、まず、研究代表者より、本研究会の研究課題・目的などの確認及び運営方針に関する説明が行われた。特に研究会予算の使用については、研究会の独自ルールを設定するため、その詳細について説明があった。また、月例会での配布資料をオンラインストレージで共有する旨のアナウンスもあった。続いて、今年度の開催スケジュールが報告された。
 次に、2点の議題について話し合った。第一に来月以降の月例会の内容(Ⅰ構想案の報告Ⅱゲストスピーカーの招聘Ⅲ関連文献の輪読)、第二に必要な人物のピックアップ及び担当者(研究会への追加参加者)の検討である。いずれも、今回の月例会で全てを決定する必要はないため、引き続き検討することで参加者の合意を得た。