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第16研究 アメリカ文学におけるintersectionality, interdisciplinarity, intertextualityの諸相  研究代表者:白川 恵子(文学部)

 本研究は、アメリカ文学および文学研究の多義的特性を反映し、境界越境的・横断的な読みの提示を試みる。研究課題が示す通り、その際の理論的バックボーンとなる概念を、交差性、学際性、関テクスト性と措定している。植民地代から現代までの事象を分析対象として、アメリカ文学/文化/歴史を共時的かつ通時的に扱いながら、これら理論の単体援用を超えて、複合的に混交させつつ特定テクストを論じた場合、いかなる読みが新たに生まれるのかを考察し、共有するのが、本研究の目的である。個々のアイデンティティや社会的立ち位置の重層性、異なる複数学問領域の結節点、多様な媒体/テクスト間に見出せる意外な連関性を、文字通り交差させながら、個々の研究者が任意の対象を分析・解釈し、それをさらに包括していく行為は、従来の権威的主体によって階層化された構造に疑義を唱える異階層性の概念に基づき、テクストを再評価していくことにもなるだろう。

2025年度

開催日時 第1回研究会 2025年4月25日 18時30分~20時30分
開催場所 同志社大学今出川校地 徳照館2階 第2共同利用室 + Teams ハイブリッド開催
テーマ “affirmative fiction”としての奴隷叛乱物語
—研究の背景と事例から見る可能性の模索—
発表者
白川 恵子
研究会内容
 本発表において、報告者は、まず標題の報告に至る以前の研究過程が、本研究会が掲げるintertextuality, intersectionality, interdisciplinarity の諸概念とどのように関連しているのかを検討した。
 さらに、体制に対する転覆的抵抗精神の発露を、アメリカ独立革命期からアンテベラム期までの複数テクストの中に模索した取り組みについて紹介し、その後、奴隷叛乱事件の考察へと進捗した研究過程を示した。
 そして、報告者がここ数年間考察してきた初期アメリカにおける複数の奴隷叛乱(陰謀)事件の中から、特にサウス・カロライナの事例(1822)を取り上げつつ、公式報告文書(裁判記録)およびそれを分析・解釈するこんにちの歴史家による論考と小説等の文学的・文化的表象との間の接点を探った。
 また歴史テクストと文学テクストとの相互補完的解釈の可能性につき、“affirmative fiction”なる概念を想定して示した。
 さらに当該語はサウス・カロライナの事例を考察した先行研究がその論考内で言うところの”novelistic evidence”という概念に近似しているのではないかと指摘した。