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第17研究 市場志向マーケティングの新潮流 研究代表者:冨田 健司(商学部)
マーケティング研究において市場に目を向けることは重要であり、市場志向は企業に高いパフォーマンスをもたらすことや新製品開発の成功率を高めることが指摘されてきた。そして、市場志向を顧客志向、競争志向、職能横断的統合という3つの下位概念に分け、これらの諸変数がもたらす影響についての研究が蓄積されてきた。
これまでの先行研究はハイテク産業を調査対象としたものや、産業を分けない包括的な調査が多いため、先行研究で見出された結論が当てはまらない産業があると思われる。そこで、いくつかの産業を対象に、個々に詳細に調査することにより、これまでの先行研究で導出されたモデルを検討し、産業特性を見出すことを研究目的とする。
2025年度
開催日時 | 第1回研究会 2025年5月16日 17時~19時 |
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開催場所 | Zoom オンライン開催 |
テーマ | 市場志向マーケティングの新潮流とは |
発表者 |
山下・崔・横山・石田・柿沼・中村・川上・冨田 |
研究会内容 |
第17研究会において初回の研究会となるため、メンバー全員が各自、自分の研究概要・関心領域を発表した。そして、市場志向マーケティングの近年の研究を概観し、本研究会の研究の方向性を模索した。
マーケティングのメインストリームである流通研究を核に、さまざまな産業がメンバーの研究対象となっており、金融、医療、製薬、医療機器といった従来のマーケティングでは研究対象となりにくい産業を対象としている。これらの産業では売り手と買い手との間に情報の非対称性が大きく、情報の非対称性をどのように扱うかが企業戦略上の鍵となっていることなどを議論した。
また、近年の企業戦略では研究開発などの場面で、オープン・イノベーションが行われることも多い。従来のクローズド・イノベーションと比べて、オープン・イノベーションではエコシステムが重要となるため、周辺の企業とネットワークをいかにして構築していくか、また、いかに連携していくかが企業戦略上の課題となる。この関係構築はマーケティング視点からの議論が可能となる。オープン・イノベーションは従来、経営戦略論や経営組織論の枠組みで議論されることが多かったが、マーケティング領域での議論はまさに新潮流となる。
議論を重ねる中で、研究テーマだけでなく、研究における分析手法も多様化しているため、各自の分析手法についても確認した。分析手法は定性分析と定量分析とに分かれるが、メンバーの中には、定性分析におけるfsQCA(ファジィ集合を用いた質的比較分析)、定量分析における計量書誌学的手法を扱うメンバーがおり、これらはビジネス現象の因果関係を探る新しい分析手法であるため、次回の研究会で2つの分析手法について、あらためて討論することなった。
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