第1研究 近代日本の社会事業の形成とキリスト教
      ―欧米思想の受容とその影響をめぐって―
研究代表者:木原 活信(社会学部)


2021年度


開催日時第3回研究会・2021年7月16日 14時30分~16時30分
開催場所オンライン(Zoom)
テーマ嶋田啓一郎と金徳俊の人物史セミナー
発表者金 範洙、秋山智久、横山譲、Daniel Lee、木原活信
研究会内容 日本と韓国の社会福祉研究において、とりわけキリスト教社会福祉研究において代表的研究者であった嶋田啓一郎(1909-2003)と金徳俊 (1919-1992)についての特別セミナー。このセミナーは、同志社大学客員教授として来日中の金範洙教授による企画(主催)であったが、人文研CSとしてもテーマがそのまま重なることもあって共同で参画することとなった。
 嶋田と金の二人は、同志社大学の社会福祉学科の草創期に同志社という場で出会い、学友としてまた師弟として、キリスト者として刺激しあった。
 発題者は、嶋田については、秋山智久(福祉哲学研究所所長)と横山穰(北星学園大学教授)が発題したが、両名とも、嶋田の直系のゼミ生であり、これまで知らされていなかった嶋田について詳細に報告がなされた。それによると、嶋田の思想の特徴としてのバルト神学的理解と社会福祉学研究における力動的統合論に意義についてであった。嶋田の生い立ち、病気のこと、晩年の孤独のことなど近親者を死別によりなくしたエピソードも紹介された。
 また金徳俊については、金範洙教授が、韓国側の資料と日本留学中の資料を織り交ぜて報告された。嶋田が療養中に日韓関係がよくない時代に「輸血で結ばれた義兄弟」というエピソードを紹介され、二人の人物史を研究のハイライトとしてとりあげた。コメンテーターとして、金徳俊の義理の息子にあたる Daniel B. LEE(Prof. Emer. Loyola University Chicago)から金の業績や息子としての個人的なエピソードも報告がなされた。また木原活信(CS研究会代表、同志社大学教授)から、同志社社会福祉史としての嶋田啓一郎、金徳俊の思想的位置づけとその思想の特徴について整理する報告がなされた。ファシリテーターとして二人について良く知っている黒木保博(同志社大学名誉教授)が担った。研究会のメンバー以外にも、同志社関係者、社会事業史学会関係者など日本、韓国から多くの参加者があった。


開催日時第2回研究会・2021年6月8日 13時00分~15時00分
開催場所オンライン(Zoom)
テーマ教会における居住支援活動の経営的かつ聖書的基礎
発表者戸根裕士
研究会内容 一般社団法人みのりサポートは教会と連携し、「教会の公共圏における責任とは何か」という問題意識を共有して居住支援活動を行っているが、その意義と実践について報告があった。
 居住支援活動とは、住宅を確保するのに特別な配慮が必要な方に寄り添って、一緒に住居を探すことからはじめ、入居してからもその方を見守り続ける支援事業である。例えば賃料未払いや隣人トラブルの怖れから、不動産会社は精神障害者に部屋を紹介したがらない。そこでみのりサポートは、不動産会社や大家の不安を和らげる支援策を講じ、どのような方でも住まいを確保できるようサポートする。そのような支援策の要点は、入居後も地域の福祉ネットワークから離れないよう配慮することである。入居先の新しい地域で、住宅確保のために配慮の必要な方が自発的に自分に必要な福祉の支援を用意するとは考えにくい。それゆえ、その方が孤独になり助けも請えない状態まで追い込まれないよう支え、新しい地域の支援者をまとめることが大事である。このような包括的な支援はみのりサポートだけでは担えない。特にその方との信頼関係を醸成する点で教会が居住支援活動に関与する意義があると考える。
 聖書にも出エジプト記の22章20節から、寄留者を労るように命じる神の言葉が記されている。詩篇62篇8節から神は信頼すべき「避けどころ」として喩えられ、神の前に心を注ぐことが語られる。このような文言を念頭に置くと教会が居住支援活動に関与し、積極的に住む環境の不安を伺い、どこにも表明できない弱音を慰めることで、孤独になりがちな当事者と信頼関係を作っていくことができる。そしてこの信頼関係は地域の福祉ネットワークを形成する基点となり得る。また教会はみのりサポートに事業拠点を提供することで賃料収入も見込める。その他にも牧師が活動に関心を示した場合、みのりサポートから給与を得つつ短時間でも働くことができるので生活の一助にもなる。
 報告の後に活発な質疑応答が展開された。


開催日時第1回研究会・2021年6月1日 13時00分~15時00分
開催場所オンライン(Zoom)
テーマ竹内愛二のケースワーク論にみる「科学」と「価値」の検証
―「社会的基督教」とのかかわりに見出す新たな「視角」から―
発表者今堀 美樹
研究会内容 日本におけるケースワークの祖述者として知られる竹内愛二は,研究者としての歩みを始めた時期に「社会的基督教」という宗教思想運動に身を投じ,運動の中心人物であった中島重の片腕とも称される働きをした。吉田久一は「竹内ケースワークの50年」を,「出発のころ」「戦争中のころ」「占領下のころ」「高度経済成長期から晩年のころ」の四段階に分類したが,「戦争中のころ」までの竹内ケースワーク論は,「社会的基督教」と深くかかわりつつ展開されたことになる。
 これまで多くの研究者たちによって,竹内ケースワーク論には多種多様な批判や評価がなされてきた。しかしそれらの多くは,竹内と「社会的基督教」とのかかわりを検証の視角には含めてはいない。そのため,竹内ケースワーク論は「科学的社会事業」という角度から研究された「技術論」であり,一定の知識と訓練により再現可能な「専門性・科学性」のみを追求していたかに評されてきた。
 本研究は,竹内ケースワーク論にみられる「科学」は,「社会的基督教」とのかかわりから獲得した「価値」との相互交流によって探求された,という仮説を立てる。第一部では『社会的基督教』誌等の資料や先行研究の検討により,竹内が「社会的基督教」とのかかわりから獲得した「価値」が何であったのかを明らかにする。そして,竹内ケースワーク論の「科学」が,その「価値」とどのように相互作用して探求されたのか検討する。第二部では,「占領期のころ」から「高度経済成長期のころ」の竹内ケースワーク論に焦点をあてる。また第三部では,「晩年のころ」に竹内が提唱したケースワークの実存主義的アプローチに焦点をあてる。本研究の目的は,これらの検証を通し日本におけるソーシャルワークの研究・実践・教育に,竹内ケースワーク論がいかなる影響を与えたのかについて,再検証することである。

2020年度


開催日時第4回研究会・2021年3月18日 18時00分~19時30分
開催場所オンライン(ZOOM)
テーマ今年度の振り返りと次年度へ向けて
発表者参加者全員による討論協議
研究会内容 年度末にあたり、今年度の活動の振り返りおよび、次年度に向けた打ち合わせを行った。議題は以下の通り。

【1】新しいメンバーの紹介
 二名の新規メンバーの紹介と挨拶を行った。

【2】来期の研究会の方法とスケジュール
 今年度の研究会はオンラインのみでの開催だったが、来期は対面も交えたハイブリッド形式に挑戦することが確認された。また、発表者の募集ならびに『キリスト教社会問題研究』への投稿に関する告知も行った。

【3】住谷日誌について
 「住谷悦治日誌」プロジェクトに関して今後の方針が示された。また、これまでプロジェクトに携わってきた研究会参加者より、日誌を読んでの感想などがシェアされた。これを受けて他の幾人かの研究会参加者からも「食指が動く」といった声が聞かれた。

【4】山室軍平の映画について
 来年度に、映画「地の塩 山室軍平」の上映会をウェビナー形式で行うという目標が確認された。

【5】各自の近況・研究動向
 最後に、比較的長時間を割いて、各自の近況と研究動向を報告し合った。「コロナ禍」におけるプライベートな経験を通した気づきから、研究の遂行状況に関する具体的な報告まで、広くキリスト教と社会問題に関する有益な意見交換の時となった。


開催日時第3回研究会・2020年11月17日 13時10分~15時00分
開催場所オンライン(ZOOM)
テーマ内村鑑三の天皇観について
発表者佐々木結
研究会内容 内村鑑三に関する佐々木氏の発表のキーワードは、「2つのJ」と「不敬事件」であった。内村はJapanへの忠誠を誓った愛国者であったが、他方においては、国家や社会に対する鋭い批判者という側面も持ちあわせており、「不敬」や「国賊」という批判を浴びていたことを指摘し、こうしたギャップをどのように理解するべきかと同氏は問うた。
 佐々木氏はまず、「不敬事件」について整理し、教育勅語奉読式において内村が最敬礼をしなかったのは、天皇の署名を拝むことが偶像崇拝に当たると考えたためであり、勅語に対してはその内容を肯定し、その精神の実践を重視していたこと、天皇と皇室に対しては尊敬と愛情を持っていたことを指摘した。続いて佐々木氏は、内村が天皇・皇室に言及している論考や書簡などを取り上げた。ここでは、明治国家がその国体論の根幹にすえた「天壌無窮の皇統」という考えを内村もまた受け入れていること、当時の政府や御用学者らが用いた「家族国家論」的な天皇観を内村もまた持っていたことなどが指摘された。
 以上のように内村の天皇観の特徴を明らかにした佐々木氏は、こうした天皇観が彼のキリスト教信仰とどのように関係づけられているのかということへと問いを進める。同氏によれば、両者の関係づけの特徴は、逆説的だが、キリスト教の信仰内容と天皇観とが直接に関係づけられていない点にあるという。内村の天皇観と信仰の間に矛盾があることは明白である。しかしその矛盾が調和されずに放置されたゆえに、信仰が天皇制の構造に取り込まれてしまうことから免れたという。多くのキリスト者が、「日本的なもの」とキリスト教の調和を図ることによって、キリスト教が愛国的な宗教であるとの証を試みたのとは異なり、内村はキリスト教を批難する形ばかりの愛国論者より、キリスト者である自分の方が日本人としてふさわしい生き方を体現していると考え、この点を強調することによって、キリスト教が国家に仕え得ることを証したということが佐々木氏の結論であった。
 また、発表の後には参加者から、国家と宗教の関係について西洋のキリスト教や現代のイスラームに関するものなど幅広いコメントがなされ、領域横断的で活発な討議が行われた。人文科学研究所の林葉子氏からは、内村に関して同研究所が所蔵する貴重資料の紹介等がなされた。


開催日時第2回研究会・2020年10月12日 18時20分~20時10分
開催場所オンライン (ZOOM)
テーマジョージ・ミュラーの来日をめぐる日本のキリスト教界の反応と社会福祉史への影響
発表者木原活信
研究会内容  まず、研究発表 (1) が行われ、続いて諸連絡 (2) がなされた。
(1)
 発表者の木原氏は、慈善事業家でありキリスト教伝道者でもあるジョージ・ミュラーについて、氏がこれまでに発表した論文を示しつつ、ミュラーの生涯と信仰的背景を紹介した後、標記のテーマの発表に入った。
 今回の発表において木原氏は、1886年から1887年にかけて来日したミュラーの足跡を実証的に明らかにした。具体的には、横浜、東京、京阪神の各地におけるミュラーの演説・説教の概要とその盛況ぶりを示し、当時の日本で既にミュラーはかなり受け入れられた著名人であったことを指摘した。
 また、同志社におけるミュラーの講演については、その概要を示すとともに、後に学農社より刊行された小冊子『ジョージ・ミューラル氏小伝幷演説 信仰の生涯 全』に付された新島襄の序文によって、新島からみたミュラー像を明らかにした。
 さらに、当時東京で活版工の労働者であった山室軍平がこの小冊子を通してミュラーから多大な感化を受け、このことが山室の将来ひいては日本の福祉界に影響を及ぼしたことも指摘された。また山室は、日本がすでにファシズム化しつつあった1935年にこの小冊子を復刻しているが、木原氏はこのことを示して、山室のミュラーに対する強い傾倒と、この講演内容が動乱の時代にある日本に対して重要な影響を与えると確信していたのではないかと述べた。
 最後に木原氏は、ミュラーの日本滞在について、日本の教会は教派の隔てなく彼を招き、ミュラー自身もまた教派性を嫌うオープン・ブラザレンの精神に基づいてこれを受けたこと、ミュラーの語る内容も、「セクト」の牧師としてではなく、1人のキリスト者として自らの経験に基づく信仰の生涯の祝福を聖書に照らして明らかにするという特徴があったことを述べ、発表をまとめた。また、ミュラーの40日間の日本滞在はミュラー自身の予想より遥かにに大きな成果をあげた、特に同志社での説教は小冊子を通して重要な影響を与え、日本の社会福祉界に重大な転機をもたらしたと木原氏は評価した。
(2)
 発表の後、いくつかの連絡がなされた。
  • 『キリスト教社会問題研究』がEBSCOhostのフルテキストデータベースに掲載されるようになったことで、この紀要が世界へ向けて発信するという性格を強く持つようになったことが確認された。
  • 現代ぷろだくしょんの映画「地の塩 山室軍平」がイギリスで開催された映画祭 (I Will Tell International Film Festival in London) で受賞したことが報告された。
  • 現在進行中である住谷悦治日記の翻刻作業に関して報告がなされた。


開催日時第1回研究会・2020年7月20日 18時20分~20時10分
開催場所オンライン (ZOOM)
テーマ中島重が主張した「新人格主義」の検証-エリクソンの発達論とロジャーズのパーソナリティ理論に照合させて-
発表者今堀美樹(大阪体育大学)
研究会内容 2020年度最初の研究会ということで、はじめに自己紹介と近況報告、次に今年度の活動の方針を確認した。また元同志社総長であり本研究会とも関わりの深い住谷悦治の日誌翻刻作業が、人文科学研究所の活動として開始されたことが林葉子氏より連絡された。

 続いて研究発表が行われた。発表者の今堀氏は、「社会的基督教」の運動を率いていた中島重が、戦争の大義名分とされた「東亜共同体」論に強い共感を示し、自ら積極的にこれと結びついたことを紹介した。そして、「東亜共同体」論への結びつきは「人格主義」から「新人格主義」への変容と連関があることを指摘した。
 今堀氏によれば、中島は「社会的基督教」運動を開始した当初から「人格主義」という概念を主張していたが、後期にいたって「新人格主義」へと変容したのだという。そしてこの「新人格主義」こそ、中島が「東亜共同体」論を展開する過程において中心に据えた概念であったということも指摘された。
 以上のような理解に基づき今堀氏は、中島の変容の経緯について検証するのだが、それはエリクソンの発達論とロジャーズのパーソナリティ理論に照合させるという独創的な方法によってなされた。たとえば、今堀氏は「アイデンティティ」という概念に対するエリクソンの発言に言及し、中島の限界を指摘する。また、ロジャーズのパーソナリティ理論がいうような成長を促す人としてのありようを、中島は戦時下において貫き通したという理解を今堀氏は示した。
 最後に、発表を踏まえたディスカッションがなされた。同志社においてこれまで研究され、蓄積されてきた戦時下のキリスト教への研究と今回の発表の関係について、また中島と海老名弾正の関わりになどについて議論が交わされた。

2019年度


開催日時第3回研究会・2019年10月8日 13時00分~16時00分
開催場所同志社礼拝堂
テーマキリスト教信仰に基づく女性支援の歴史 ―かにた婦人の村の半世紀―
発表者林葉子、天羽道子、横田千代子、木原活信、レギーネ ディート
研究会内容同志社大学の人文科学研究所主催第94回公開講演会「キリスト教信仰に基づく女性支援の歴史 ―かにた婦人の村の半世紀―」をキリスト教社会福祉の研究そのものでもあるので、CS第一班としての研究会として位置づけて、メンバーも合同してそれに参加した。研究会のメンバーである林葉子、木原活信もそれぞれ、主催側として司会者、報告者およびコメンテーターとして参画した。
 かにた婦人の村名誉村長の天羽道子さんが「「共に生きる」ということ― 『底点志向者イエス』に倣って―」と講演されたが、かにた婦人の村の形成過程を通して、深津牧師とともに「底点志向」の思想について説明された。傷ついた女性たちに生涯を捧げられた献身者の姿をまざまざと見せられ、文字通り、その歴史の証人としての彼女の人生を垣間見ることができた。
 横田千代子さん(婦人保護施設いずみ寮施設長)も、「「居場所を奪われた女性たち」―暴力・性暴力の被害を受けて―」というテーマで語られ、今後、改正予定の売春防止法について詳細を説明され、女性の人権について重要な指摘をされた。その後の討論会でも、犯罪法、刑法としての性格になりがちな売春防止法の問題について、被害者の視点の欠如、「買う」側の問題性、自立と保護の問題点、ドイツのそれとの比較から差異が明示され、その在り方をめぐって議論することができた。
 朝日新聞に広告を出したこともあって、多くの方々が来会され、アンケートにおいても概ね好評を得たと考えられる。研究会メンバーのみならず、聴衆一同、日本社会の闇に覆われた女性たちへの差別について、結果的にそれに加担してしまっている社会構造になっていないか猛省させられるものであった。
 「底点志向者イエス」に倣った新島襄の同志社において、また新島が説教した同志社礼拝堂において、この企画ができたこともよかった点であろう。


開催日時第2回研究会・2019年7月1日 18時00分~21時00分
開催場所同志社大学啓明館 共同研究室A
テーマ反戦の旗を掲げる近代日本キリスト教徒の諸相
発表者朱虹(上海大学)
研究会内容 まず研究会打ち合わせが行われ、その後上海大学からお招きした朱虹氏により発表をしていただいた。打ち合わせでは、今後の活動、とりわけ「同志社社会事業史」をテーマとした書籍を刊行するという目標と、「地の塩 山室軍平」の映画会を開催することなどが確認された。
 朱氏の発表は、反戦思想を持った人物であり、またいずれも何らかのかたちで同志社と関わりのある柏木義円、石川三四郎、矢内原忠雄の反戦思想の形成とその内実を比較・分析するものであった。特に三者が中国をどう捉えたかという視点はユニークであった。
 朱氏によれば、三人は共にキリスト教を信じるが、その反戦思想の次元はそれぞれ異なっているという。しかし、彼らとその反戦思想の特徴として共通点もあることが示された。第一にキリスト教思想を根底に持ちつつも社会主義や小国主義といった「+α」の思想も受容しているということ。第二に三者ともキリスト教界の中で主流ではかったということ。第三に反戦思想が首尾一貫していなかったということ。そして第四に思想的矛盾を抱えているということである。
 質疑応答においては、戦時下の同志社や社会事業家の「不抵抗」をどのように理解するかという問いが提起された。これについて参加者からは、ある社会事業家の「不抵抗」は、戦争に反対することよりも目の前に居る子どもにパンを食べさせることを重要視するという現実主義からであったという見解が述べられた。また同志社の場合、そもそも抵抗しようという論理すら存在していなかったのではないかという見解や学校の存続や徴兵免除を受け続けることで学生を守ろうとする現実主義が存在したのだというような見解が述べられた。これらの議論を通して、「抵抗」という概念をどのように捉えるか、従来の政治的抵抗という側面だけでない「抵抗」概念拡張の可能性が示された。


開催日時第1回研究会・2019年5月14日 9時00分~12時00分
開催場所同志社大学臨光館 412教室
テーマバングラディッシュにおける児童養護施設の創設の意義と背景
発表者Mrinal Ratna 師
村上渡 師
研究会内容 公開セミナーの形式で、関連分野の研究者、大学院生を交えて、研究会を以下のとおり開催した。世界最貧国の一つと言われているバングラディシュで、キリスト教社会福祉の理念に基づいて児童養護施設と学校を2016年に開設した創設者ムリナル師をお招きし、創設にいたる経緯、背景、その目的、理念、実践、そしてその課題などについて語っていただいた。特に、ムリナル師が掲げるsocial ministryという概念について、従来の社会福祉、キリスト教社会福祉との異同や差異について詳細を語っていただいた。ムリナル師の主張では、それは聖書由来のイエスの宣教そのものであり、その方法であるとする。つまり霊的救済のみならず、肉体的な支援が必然とされる「愛の実践」として結びつくとしていた。とりわけイスラム国家の文脈で、キリスト教主義にたつ福祉施設の在り方についても質問があり、議論することができた。

 かつて日本の明治期において欧米のキリスト教宣教師たちのミッションの影響によって社会福祉施設、とりわけ児童福祉施設が相次いで創設されていったことはCS研究会でも明らかにした通りである。そしてそれが今日の日本の社会福祉の礎となり、今日に至っていることは周知のところである。
 その歴史的検証を史資料によって裏付ける作業が重要であることは言うまでもない。しかし、それと同時に、かつての日本と同じようなミッションとその形式でキリスト教社会福祉のミッションに基づいて創設されている現代のバングラディッシュの事例から、改めてキリスト教社会福祉の意義についてこの研究会を通じて考察することができたことは、歴史研究のみならず現代的意義の探究の観点からも重要である。