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第5研究 ソーシャル・イノベーション学構築に向けた総合的研究 研究代表者:今里 滋(政策学部)<2019, 2020年度>、武蔵 勝宏(政策学部)<2021年度>

遡ること2006年、応募者が所属する同志社大学大学院総合政策科学研究科にソーシャル・イノベーション研究コースが設立されて以来、当時は散見される程度であったソーシャル ・イノベーション(socialinnovation)という用語、概念、あるいは実践が内外で拡散している。しかし、ソーシャル・イノベーションの統一的・確定的定義は未定であり、ソーシャル・イノベーションが教育および研究の系としての学として成立可能なのかについても議論はほとんど見られない。本研究は、大学院での10年を超えるソーシャル・イノベーション教育・研究の蓄積を踏まえ、学としてのソーシャル・イノベーションの確立に向けた方法的基礎とはなんであるべきかを基本的問いとして措定し、その解を多角的に追究せんとするものである。そのために、①人類史を俯瞰したソーシャル・イノベーションの史的展開の考察、②現代における国内外のソーシャル・イノベーションやソーシャル・イノベーターに係る研究、教育、実践等の調査、および③ソーシャル・イノベーション研究コースの修士・博士論文の精査・分析を通じた市民的ソーシャル・イノベーション学の可能性の検討を行う。

2021年度

開催日時 第9回研究会・3月25日
テーマ ソーシャル・イノベーションとソーシャル・ビジネスに関する日韓共同ワークショップ
発表者 Suk-ki Kong
開催日時 第8回研究会・3月4日~3月6日 16時00分~19時00分
開催場所 沖永良部フィールドリサーチ&研究会
テーマ グリーン社会とソーシャル・イノベーション:2030年のライフスタイル調査
発表者 古本英次郎氏( oldie-village 代表/酔庵塾)ほか
研究会内容  これまでのグリーン社会とソーシャル・イノベーションに関する研究会および公開講演会によって導出した論点は、ローカルからイノベーションは起こせるのか、主体的にライフスタイルを変える環境は創造できるか、社会は一般に普及した概念と異なる価値を受容しうるのか、であった。沖永良部島に移住した石田秀輝氏(東北大学名誉教授)からの持続可能な社会に必要なライフスタイルの要素を沖永良部に見出したという知見から、「グリーン社会とソーシャル・イノベーション:2030年のライフスタイル調査」と題して、実際に沖永良部にてフィールドリサーチと研究会を実施した。

 現地研究会では、石田氏の講演とともに、各社会起業家たちより具体的な活動背景とその社会インパクトについて発表があった。あわせてそれぞれの現場を訪問し、具体的な日常的活動の様子を体験し議論を行うことができた。
 発表者/訪問先とその特徴は以下のとおりである。
(1)(一社)UP HOME WORKs 代表理事 竿智之氏/家族のつながりを契機としたビーチクリーンの活動が地域にひろがり、さらに、スケールアウトして島外に展開している。現在、マイクロプラスチックに対する啓発と事業に発展。
(2)合同会社 オトナキ 代表水嶋健氏/技能実習生が抱える問題を社会課題として明らかにし、ITによる解決策と自らの海外ネットワークを生かしたコミュニケーションツール開発による多文化共生の啓発事業を展開。
(3)株式会社 八光 グループホームかがやき 代表取締役 末川大喜氏/小規模多機能高齢者施設を地域の資源として再認識し、福祉と観光の掛合わせによる施設の職員、高齢者、観光客すべてにウインウインの関係を構築することに挑戦。
(4)カナメファーム(畜産業)代表 要秀人氏/先祖に縁のある地域に移住。地域の特産であるサトウキビの搾りかすを菌床にするキクラゲのさらに収穫後の廃菌床から発酵飼料を作るという、再資源化の循環を行うと共に、健康な牛を育てる。
(5)特定地域づくり事業協同組合 事務局長 金城真幸氏/全国でも先駆的なマルチワーク(季節毎の労働需要等に応じて複数の事業者の事業に従事)の構築。活用した制度は、特定地域づくり事業協同組合制度(根拠法:「人口減少に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」)。新たな働き方を求める需要の大きさや相当数の潜在的ニーズに比して供給側での課題等があり模索中。新たなライフ&ワークスタイルの可能性について話し合った。
(6)oldie-village 代表 古村英次郎氏/観光協会初代事務局長。他の奄美群島と異なり積極的に観光地としての地域おこしを展開してこなかったエラブにあって、地域の将来を考える人財育成を含めて独自の観光のあり方を模索展開してきた。その後独立し、地域の挑戦する人々をつなぐ役割を担う。
 このほか、現在も自然界にある素材のみで作成する芭蕉布の工房を訪れた。伝統技術を継承する第一人者の長谷川千代子氏から説明を受けた。

 本フィールドリサーチと研究会は酔庵塾(代表石田秀輝氏)の全面協力のもと実施することができた。沖永良部島には、挑戦する人々を受容するエコシステムが醸成されつつあること、それが有効に機能しうる地域の規模感と、継続かつ発展的学びの場の提供と小規模な実装の波及効果など、民間によるソーシャル・イノベーションの汎用性を見出すことができた。
開催日時 第7回研究会・12月17日 16時00分~19時00分
開催場所 同志社大学志高館2階289教室
テーマ バックキャストで考える持続可能な社会とは:都市部と農村の相違
発表者 講師:石田秀輝氏
対談・進行:松榮秀士氏、琵琶博之氏
研究会内容  気候変動問題の解決に向けて、世界共通の長期目標として、「2050年カーボンニュートラル」が掲げられています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることです。
 本研究会では、これまでも「グリーン社会とソーシャル・イノベーション」に焦点をあてた研究を行ってきました。今回は、令和3年度アカデミア賞を受賞された石田秀輝氏を講師に迎え、バックキャストで考える持続可能な社会についてお話をして頂きました。
 カーボンニュートラルには、「ライフスタイル」「再生可能エネルギー」「循環」のキーワードが重要であり、これらを実現する鍵となるのがバックキャスト思考法になります。バックキャスト思考とは、物事を現在の延長線上で考える(=フォーキャスト)のではなく、将来の姿から現在を見つめ、制約を肯定して考える思考法のことです。この思考法により、少しの不自由さや不便さを知恵や知識で補っていくことで、達成感、充実感、愛着感が生まれ、ワクワク、ドキドキ、心豊かになるとのことでした。
 現在のコロナ禍は、三密という制約の中で、個(個人や家族など)がその環境にあった独自で自由なライフスタイルを描き始めるのを後押しする可能性があるとのことでした。カーボンニュートラルの時代を見据え、制約の中にあっても心豊かに生きる持続可能な社会のあり方を研究するため、石田氏が実践研究のため移住した沖永良部島に実際に訪れてみる必要があるのではないかと思う研究会になりました。
開催日時 第6回研究会・2021年10月9日 19時~21時
開催場所 オンライン開催
テーマ よりよい社会のための仕組みを生み出し、変化を起こす(第2回)
発表者 三田 果菜
渕上 智信
研究会内容  本研究会は、総合政策学部ソーシャルイノベーション(以下、SI)の卒業生・在学生の実践や理論を紹介することを通じ、参加者とよりよい社会について対話することを目的として開催した。事前に60名の申込があり、当日の参加者は40名程度であった。参加動機の多くは「SIに興味がある」「よりよい社会の仕組みを考えてみたい」「ゲストの話が聞いてみたい」等であった。
 冒頭で、総合政策学部SIコースの在学生からSIの説明を行った後、発表者がそれぞれの実践内容と研究についてプレゼンテーションを行った。
 三田氏は、同志社大学SIコースに入学し研究に取り組んだ動機や、日本発のがん患者専用美容室の実践、利用者の反応や社会的意義などを発表した。渕上氏は、ご自身の持続可能な社会に向けた実践やそのような実践を行うことになったきっかけ、想いなどを発表した。
 参加者からは「就職氷河期世代で、専業主婦を長くしていた事もあり、自分達の手で、同じ思いを持つ仲間を増やし、安心して暮らせる老後を作っていきたいと考えている。まだ具体的な企画にはなっていないが、このような会で様々なお話を聞く、グループワークで話をする事で刺激をもらった」、「地域包括の職員という仕事柄、孤立に関心がある。昔ながらの隣近所の支え合いはこれからは難しいのではないかと考えている。現状を踏まえ、必要な事を考えあう対話の場、どんどんチャレンジしていける場が必要だと思った。」などの感想が寄せられた。  
 ゲストの発表の後、発表者は小グループに分かれ、発表者から与えられたテーマを元に自由に対話をする時間を持った。最後は、グラフィック・レコーディングによる全体のまとめや、SIコース教授からの挨拶で会を終了した。
以上。
開催日時 第5回研究会・2021年9月22日 19時~21時
開催場所 オンライン開催
テーマ よりよい社会のための仕組みを生み出し、変化を起こす(第1回)
発表者 浜崎 英子
村井 拓人
研究会内容  本研究会は、総合政策学部ソーシャルイノベーション(以下、SI)の卒業生・在学生の実践や理論を紹介することを通じ、参加者とよりよい社会について対話することを目的として開催した。120名の申込があり、当日の参加者は90名弱であった。参加動機の多くは「SIに興味がある」「よりよい社会の仕組みを考えてみたい」等であった。
 冒頭で、総合政策学部SIコースの在学生からSIの説明を行った後、発表者がそれぞれの実践内容と研究についてプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションの後、発表者は小グループに分かれ、発表者から与えられたテーマを元に自由に対話をする機会や、全体で対話内容をチャットで共有する時間を設けた。
 浜崎氏は、同志社大学SIコースに入学し研究に取り組んだ動機や、いけばなを活用し高齢者がまちづくりに参加することを可能にした「いけばな街道」の実践、その社会的意義、研究の成果などを発表した。参加者からは「参加者のチャット及び小グループでの議論から大きな気付きがあった。切り花販売事業(いわゆる花屋)における商材ロスの処分のプロセスに、環境負荷の意識や観念が薄いことに対する指摘があった。今後SIの視点を意識的に持ち事業活動に活かしてゆきたい」等の感想があった。
 村井氏は、同志社大学SIコースに入学し研究に取り組んだ動機や、アート思考の概要、アートを活用したまちづくりなどの実践事例、現在行っている研究内容などを発表した。参加者からは「まちづくりや繋がりづくりにも効果があるのは凄い。アートの可能性を感じた。」「生活に必要な要素としてのアートという考え方が浸透すると良い。」など多数の感想が寄せられた。  
 SI実践と研究の概要と魅力を伝えられた研究会であった。
以上。
開催日時 第4回研究会・2021年8月27日 15時30分~17時00分
開催場所 オンライン開催
テーマ ソーシャル・イノベーションとソーシャル・ビジネスに関する日韓共同ワークショップ
発表者 Ph.D. Joanne Cho,
Ph.D. Wonjee Cho,
今里 滋 名誉教授
研究会内容  本研究会においては、日韓のソーシャル・イノべーションのなかでも特にソーシャル・ビジネスに焦点を当てて、両国の事例報告を行い、それをもとに討論を行った。韓国側からは、第1に、漢江に於けるSectgangエコロジカル・パークの事例報告があった、社会的協同組合である漢江エコロジカル・パークによって運営される生態系を重視した公園は、ソウル市の中心にあって都市河川というべきところに、豊かな自然を創出している。この公園の経営に当たっては、多くの市民の参加があり、また企業による協賛が多数寄せられている。ソーシャル・ビジネスとして、多くの市民の利用、特に子供たちの教育的な利用においても、幅広く活用され盛況となっている。第2の事例は大韓民国の南部地域における社会的農業についての報告である。社会的農業は、ヨーロッパに起源を持つ活動であり、農村地帯にあって、社会サービスと農業との連携を推進して、双方の発展を促そうとするソーシャル・イノベーション型の社会企業である。地域に取り残されている様々な困難を抱えた人々に対して、高齢者であれ、障害者であれ、また子どもたちであれ、これらの人々に必要なケアや教育、あるいは治療を、農作業とともに提供しよというのである。Wanju地域における人々の心身の健康を回復せしめ、地域住民のネットワークを活性化して農村コミュニティの再生を目指そうとしている。第3の日本の事例では、衰退している農村地域において、有機農業や持続可能な農業の手法を導入するとともに、若者の新規就農を促進する学びと実践の場を設けたソーシャル・イノベーション型の事例の成果が報告された。新しい農業者が増え、耕作放棄地が減少して、若者人口が増えるなど、農村地帯の様相が大きく変わる事例となった。これら3つの報告をもとに、討論が行われた。ソーシャル・イノベーション型の新たな地域づくりの手法が共通して見いだされるとともに、それらをモデルとした活用方法の検討も進めることができた。
開催日時 第3回研究会・2021年7月22日 15時~17時
開催場所 オンライン開催
テーマ グリーン社会はコミュニティからデザインする
発表者 島谷 幸宏 氏
研究会内容  「グリーン社会とソーシャル・イノベーション」に焦点をあて継続して研究会を実施しています。今回は、都市部の河川の問題に着目しました。近年の豪雨災害の中でも河川の氾濫によって甚大な被害が生じています。その解決に分散型水管理や、グリーンインフラストラクチャーを提唱している島谷幸宏先生に講演いただきました。グリーンインフラは複数の専門領域を横断して話し合う必要があり、その連携の難しさと工夫、日本での展開の可能性に言及がありました。さらに、分散型水管理を「あまみず社会」と称して実装してきた経緯と有効性をお話いただきました。
 グリーン社会のデザインは、地域の歴史や文化が重要であり、「あまみず社会」と称したことで普及の可能性がみえてきたことがわかりました。そして、重層的な仕掛けによって住民参加を促すことができること、グリーン社会のデザインを暮らしの中で考えることの重要性が示されました。参加者との活発な質疑応答により、地域のローカルコミュニティにある多世代の共創によってグリーンインフラを推進しうることを共有することができました。
開催日時 第2回研究会・2021年6月17日 10時45分~14時15分
開催場所 オンライン開催
テーマ グリーン社会をデザインしよう~国際機関欧州中東6か国の経験から
発表者 待場智 雄 氏
研究会内容  「グリーン社会とソーシャル・イノベーション」に焦点をあて継続して研究会を実施しています。今回は、環境政策をリードする複数の国際機関にて活躍している待場智雄さんを講師にむかえました。
 待場さんは、英国では、NGOが政策アジェンダをリードするキャンペーンに、オランダでは環境政策のマルチ・ステークホルダーによる基準作りの先駆けとなる取り組みに参画し日本との懸け橋を担ってきました。その後は、環境政策の最前線となる国際機関やUAE政府など環境政策を遂行する現場を多様な立場でキャリアシフトしていきます。多くの学部生も参加する中、そのキャリア形成や海外でリーダーシップを発揮することについて質疑応答や意見交換が活発になされました。
 海外での活躍の契機は、新聞記者時代の初任地が福井であったことから原発に向き合ったこと、阪神淡路大震災時に被害者と報道する双方の立場にあって葛藤したことだったという話がありました。参加者からは、当事者として関わったことが自分事になる、であれば、コロナ下の経験が社会に目を向ける契機となればいい、オリンピックならぬグリーンピックを開催して社会の目をむけてはどうか、など多様な意見がでました。
 多くの挑戦と失敗を経験しうる社会づくり、政策にはネットワークとイノベーションが必要であること、そして、最後に日本はどうありたいかと問題提起をいただき締めくくりました。
 当日のグラフィックレコーディングはこちら をご覧ください。
開催日時 第1回研究会・2021年4月29日 14時00分~16時00分
開催場所 オンライン開催
テーマ "Everyday Politics and Social Innovation Towards Light Community"
発表者 Ph.D. Suk-ki Kong
研究会内容  本研究会においては、大韓民国におけるソーシャル・イノベーションの実践事例を通じて、新たな地域形成が可能となっていること、とりわけその基本的な条件として「ライト・コミュニティ」という概念を援用することでその特質を描き出すことができることなどの報告があった。韓国における非大都市圏域、つまり周辺地域における地域開発に関して、ソーシャル・イノベーション型の伝統文化の振興や、農業の復興、そして自然環境保全や再生可能エネルギーの活用を通じて、ライト(軽やか)なコミュニティが維持しやすい地域共同体として形成され、機能するさまが、近未来の姿として描き出された。これらのソーシャル・イノベーションの事例からは、新たな社会価値として、持続可能な地域づくり、地球温暖化防止などの観点から、地域社会の諸価値を大切に守りながら、同時にそれを持続可能なものとしていくための地域社会の社会経済的なイノベーティブな営みを地域住民自身が作り上げていくプロセスがダイナミックに描き出されることになった。そしてそれらは、閉鎖的で階統的なコミュニティではなく、常にソーシャル・イノベーションに開かれた民主的で軽やかなコミュニティとして、つまりは住民の時宜にあった当意即妙ともいうべき創意工夫がいきいきと実現しやすいものとして提示されている。このように、本研究会では、ソーシャル・イノベーション研究の新たな展望を開く報告であったこともあり、熱心に討論が展開された。

2020年度

開催日時 第5回研究会・2021年3月2日(火) 14時00分~16時30分
開催場所 オンライン開催
テーマ  グリーン社会にむけて自らが担うソーシャル・イノベーションを考える:エネルギー政策、ESG 経営、地域循環型農業
発表者 服部崇氏 (京都大学経済研究所先端政策分析研究センター特定教授)
金田晃一氏 ((株)NTTデータ総務部サステナビリティ担当シニア・スペシャリスト)
船橋慶延氏 (ジオファーム八幡平 代表)
研究会内容  近年、SDGs、ESG、グリーン政策、脱炭素など、未来にむけた環境への取り組みが国内外で活発になってきました。パリ協定が始動し、各国で「2050年のカーボンニュートラル実現」を表明しています。しかし、脱炭素社会を目指すには大きなソーシャル・イノベーションが求められます。政策を遂行するにあたって人々のライフスタイルに大きな影響を及ぼすことから本研究は、広く市民社会からの議論を喚起していきたいと考え講演会を開催しました。第一部は、マクロな視点から政策の整理、ミクロな視点から企業の潮流、そして、具体的に市民社会からの事例を踏まえて、現状を把握し論点を整理することを目指しました。
 まず、関連する政策を概観し、実現可能性を考慮してどこに問題点があるのかという解説がされました。また、これまで経済効率性を求めてきたもののグリーン社会の到来によってそれはどうなるのか、そして、エネルギーの需要面の議論は進むのかなど問題提起がありました。我々はどうすればいいのか、という参加者からの質問に対し、多様な選択肢がある時期であり、自らがどうありたいかを考えることが大事である、というやりとりなど活発な質疑応答が行われました。
 続いて、サステナビリティ部門の専門家として複数の企業をキャリアシフトしてきた講師からは、「社会価値」創出に10タイプのイノベーションがあると提示しました。中でも、企業同士が協働して社会貢献プログラムを推進する社会貢献イノベーションなど革新的なアプローチへの言及がありました。
 自然エネルギーを生かし、社会課題解決に取り組む事例として、企業組合八幡平地熱活用プロジェクトは、立ち上げの経緯、反響、課題を発表しました。日本の自然環境を考慮すると地熱を生かすこと、資源循環型であること、資源を大切にするアニミズムの文化をもつ日本からグリーン社会をリードするよう提案がありました。
 3人の講師の講演の後、第5部門の研究者を交えて討論を行いました。今回の事例は、イノベーションの要素である「新結合」をグリーン社会創出にも生かすこと、また、エネルギーイノベーションだけではなく、市民社会からのソーシャル・イノベーションが不可欠であることを再認識する講演会となりました。
開催日時 第4回研究会・2021年2月23日(祝) 13時00分~17時30分
開催場所 オンライン開催(Zoomウェビナー / YouTube Live)
テーマ 『創造的人口減少を可能にするまちづくり生態系』
~withコロナ時代における地域自律と人口分散の処方箋~
発表者 【ゲスト】
大南 信也(認定NPO法人グリーンバレー理事/徳島県神山町)
阿部 裕志(株式会社風と土と 代表取締役/島根県海士町)
小松 洋介(NPO法人アスヘノキボウ代表理事/宮城県女川町)
【コメンテーター】
今里 滋(同志社大学政策学部 教授/第5研究研究員)
新川 達郎(同志社大学政策学部 教授/第5研究研究員)
服部 篤子(同志社大学政策学部 教授/第5研究研究員)
大和田 順子(一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表)
【コーディネーター】
佐野 淳也(同志社大学政策学部 准教授/第5研究研究員)
研究会内容  withコロナ時代において、都市から地方への移住や転職、また地元での就職志向が高まっている。またオンライン教育やリモートでの働き方の普及は、人口減少する日本においても人口の地域分散を可能にし、都市と地方の格差を縮め、日本社会全体の持続可能性や幸福度を高める大きな好機となる可能性を秘めている。だが一方で、そうした好機を地域や自治体の側が充分活かしきれているとは言い難い状況がある。

 そこで本シンポジウムでは、地域の多様なプレイヤーが連携し、柔軟にアクションを協働で行い、地域にインパクトを連続的にもたらす体系を「地域イノベーション・エコシステム」(まちづくり生態系)と捉え、そのありかたや形成過程を、地域の最新の実践事例から考えた。徳島県神山町、島根県海士町、宮城県女川町、というきらりと光る3つの小さなまちのストーリーから、これからの日本や世界が人口減少時代を創造的にあゆんでいくヒントを探った。

 地域創生のトップランナーからの最新の現場報告は、どれも感動と知見に満ち溢れるものであった。参加者からは、「こんなに情熱が伝わってくるオンライン行事は初めてだったかもしれません」との感想が寄せられた。
 各地域からの現場報告の後に、出演者全員によるパネルトークを行った。「持続するまちづくりの条件は?」という参加者からの質問に対し、「そこに可能性と希望があり、未来にわくわくできるエネルギーがあること」と現場で活動する各パネリストが口を揃えて回答したのが印象的であった。

 本シンポジウムはオンライン(Zoomウェビナー / YouTube Live)で行い、当日リアルタイム参加者は合計約250名、さらにアーカイブ映像の視聴回数は630回に上った。参加者満足度も97%と高く、全国の研究者、自治体関係者やまちづくり実践者に多く参加いただき、大きな反響を呼んだシンポジウムであった。
*同志社大学「新型コロナウイルス感染症に関する緊急研究課題」採択事業 研究成果報告として実施

【公開資料】
1)シンポジウム報告書(A4カラー/120頁)
2)アーカイブ動画(日本ソーシャル・イノベーション学会YouTubeチャンネル)
3)当日講演資料
4)講演記録グラフィックレコード
5)参加者アンケート結果まとめ
開催日時 第3回研究会・2021年 2月14日(日) 16時00分~18時30分
開催場所 オンライン開催(Zoomウェビナー / YouTube Live)
テーマ デンマークとフィジーから考える幸せで持続可能な社会のつくりかた
発表者 【ゲスト】
ニールセン 北村 朋子 さん(デンマーク在住 共生ナビゲーター)
永崎 裕麻さん(在フィジー語学学校COLORS 校長)
【コーディネーター】
佐野 淳也(同志社大学政策学部 准教授/第5研究研究員)
研究内容 with/アフターコロナ時代の新しい社会づくりを考える上で、デンマークとフィジーという2つの国のありかたからそのヒントを探るために開催した。

高福祉国家であり、国連が発表する世界幸福度調査で毎年上位にランクインするデンマーク。南太平洋の島国であり、主観的幸福観調査で高い国民幸福度となっているフィジー。

それぞれの国に長年暮らし盛んな社会発信を行っている、ニールセン北村朋子さんと永崎裕麻さんのお二人よりオンラインにて現地からご講演いただき、さらに出演者全員で「デンマークとフィジーから考える幸せで持続可能な社会のつくりかた」についてパネルトークを行った。

優れた社会システムや政策を通して、安心社会を創り上げているデンマークと、伝統的な相互扶助によるコミュニティの支え合いを通して不安のない社会を維持しているフィジーという、対照的な2つの小国を通して、今後日本がどのように幸福度が高く、また持続可能な社会をつくっていけるのか、その社会システムと人々の価値観の両面から考察した。

デンマークとフィジーの共通点として、他者と共有する精神があること、そしてお金に依存しなくとも安心して生きていける基盤が社会にあるため、主観的幸福感が高いのでは?との意見がゲスト両名から出されたのが印象的であった。まず日本社会においては、まずは働きすぎをやめて心にゆとりを持つことと、過度な自己責任意識を捨てて、相互依存し合える人間関係を大事にすること重要との認識が共有された。

本セミナーはオンライン(ZOOMウェビナー / YouTube Live)で行い、当日リアルタイム参加者は合計約160名、さらにアーカイブ映像の視聴回数は累計560回に上った。参加者満足度も97%と高く、全国及び海外からも多く参加いただき、大きな反響を呼んだセミナーであった。

【公開資料】
1)アーカイブ動画
2)講演記録グラフィックレコード
3)参加者アンケート回答まとめ
開催日時 第2回研究会・2020年7月26日 14時00分~15時30分
開催場所 オンライン開催(ZOOM)
テーマ 「場づくりの危機にどう対処するのか」―withコロナ時代の新しい出会いの場、居場所づくりの在り方―
発表者 小辻寿規、狭間明日実
研究会内容  今回の研究会においては京都市今出川にあるバザールカフェのスタッフ狭間明日実さんをお招きし、コロナ禍において危機に直面した場(居場所)づくりの現状を様々な観点から検討した。
 バザールカフェは1998年の活動スタート以降、20年以上にわたり様々な人たちが、活動内容や立場を超えて自然に出会い、「共に生きる」ことのできる場を創出することを目的とし活動してこられた。結果、現在は国籍、年齢、病気、セクシャリティー等、関係なく全てを受け入れて包摂する場となった。
 コロナ禍においてはカフェ営業を休止(2020年4月10日〜6月24日)したものの、利用者たちが居場所を失わないよう入場者数を限定した形で場づくりを継続された。寄付もあったため、営業休止期間をなんとか乗り越えることはできたが、コロナ禍の影響を受けて経営状況が悪化しており、場づくりを継続するためには新たな取り組みを検討していく必要性があることなどをご共有いただいた。
 狭間さんの講演後のグループディスカッションにおいては、参加者自身の今の居場所やこれからどのように人々が寄り添いあうべきかが話し合われた。参加者からはオンラインが新しい居場所となってきたことや、オンラインとリアルをどのように融合していくかといった話題のほか、リアルな場においての感染症予防や場づくりにおいて利用料減による赤字をどのように克服していくべきか等について意見が出された。
開催日時 第1回研究会・2020年6月28日 14時00分~15時30分
開催場所 オンライン開催(ZOOM)
テーマ 見過ごされてきた社会的孤立をどう克服するのか~産後母親のつながり支援を通じて~
発表者 城間美貴・黒濱綾子・田中美賀子
研究会内容  本研究会では、嘱託研究員(社外)の森雄二郎(聖泉大学)をファシリテータとして、オンラインまちの赤ちゃん保健室・事務局の主要スタッフを話題提供者として、日頃から母親のサポートをしている専門家チームによる『オンラインまちの赤ちゃん保健室』の取組みの成果と課題を通して、これからのwithコロナ時代における新たな結びつきやつながり方について、参加者とともに議論し考察することを目的とした。その背景には、われわれの社会が“コロナ禍”という未曾有の事態に見舞われ、いたるところで「分断」が広がっていることがある。その結果、特に人と人との結びつきやつながりが失われ、社会から孤立する人々の存在が顕在化してきている。とくに、産前産後の母親はそうした孤立し分断されやすい傾向にある。日本ファミリーナビゲーター協会代表を務める田中美賀子は、LINEを利用した相談によって、むしろ匿名性や簡便性が高まり、もっとも必要とされるときに必要な助言を与えることができている経験を踏まえ、コロナ禍を逆手に取ったサポート機能向上の可能性を提示し、参加者の共感を得た。
 JICA海外協力隊(ガボン)として一時帰国中の城間からは、アフリカでの子育て支援の実態に関する興味深い報告もあった。
 保健師、助産師、看護師、ケアマネと幅広く活動し、現場の状況を熟知している黒濱からは、情報的な助言に加え、具体的・物質的な支援をコロナ禍という状況の中でどのように実質化していくのかについて問題提起があり、会場からも様々な質疑応答が出された。

2019年度

開催日時 第5回研究会・2020年2月29日 13時30分~17時30分
開催場所 福知山市新町商店街アーキテンポ
テーマ ローカルから社会を変える~ 事を起こす。人を育てる。地域を創る。
京都北部のソーシャル・イノベーション ~
発表者 今里滋・新川達郎・佐野淳也・関根千佳 他
研究会内容 【プログラム】
13:30〜13:40(10分:開会挨拶5分、進行紹介5分)
開会: 今里 滋 日本ソーシャル・イノベーション学会 共同代表理事

13:40〜14:20(40分:基調講演30分、意見交換10分)
第1部 基調講演
「人口8万人のまちの小さな公立大学の挑戦~福知山公立大学のソーシャル・イノベーション」
講師:富野 暉一郎 福知山公立大学副学長

14:30〜16:40(110分:報告20分×4人、パネルトーク30分)
第2部 現場からの報告とパネルトーク
「ローカルから起こすソーシャル・イノベーション」
コメンテーター:新川 達郎(同志社大学 教授)/コーディネーター:谷口 知弘(福知山公立大学 教授)
①「移住」から考える
講演者:平田 佳宏(田楽研究所副代表、あやべ市民新聞社 経営企画室長)
 「都会から地方への本格的な人の流れを創る~公民連携で加速する『移住立国』の実践」
②「商い」から考える
講演者:植野 由芙子(M.[株式会社サンプラザ万助]代表取締役社長)
 「女性が活躍する社会を創りたい〜福知山の一企業の挑戦が世界を変える」
③「アート×福祉」から考える
講演者:イシワタ マリ(山山アートセンター代表、美術家)
 「福祉とアートの掛け算で「老・病・死」と向き合う」
④「学生×地域」から考える
講演者:浅井 ゆうみ(福知山公立大学3回生、Xキャンプ与謝野2019代表)
「地域(=人)とつながる Xキャンプの実践〜守破離というパラダイム」

16:50〜17:30(40分)
第3部 ワークショップ
「ローカル(地域・地方・田舎)の価値と可能性を考える」
ファシリテーター:佐野 淳也(同志社大学 准教授)
開催日時 第4回研究会・2019年12月1日 10時45分~12時15分
開催場所 同志社大学志高館SK108
テーマ 同志社ソーシャル・イノベーションコースは
どのようにソーシャル・イノベーターを育成してきたか?
発表者 今里滋・新川達郎・佐野淳也 他
研究会内容  この研究会は一般公開のかたちで、約50名が参加して行われた。
 まず、佐野淳也准会員がソーシャル・イノベーション・コースの概要を説明し、その後、ソーシャル・イノベーション・コースの創設者である今里滋および新川達郎会員(総合政策科学研究科教授)が設立の動機、背景、経緯、カリキュラム設計において苦心した点を述べた。そして、質疑応答を終えたあと、両会員が、ソーシャル・イノベーション・コースの教育研究の特色と、指導方法における特異性について経験を振り返りながら、議論した。
 次に、ソーシャル・イノベーション・コースの修了生ないし現役の院生3名が、その研究内容と実績、ソーシャル・イノベーション・コースならではの学びと気づきの特徴を具体的にプレゼンテーションした。
 以上の発表を踏まえて、参加者が5グループに分かれて、ソーシャル・イノベーション教育の現代性や課題についてワークショップ形式で討議した。
 最後に、再度佐野淳也会員が全体のまとめを行い、研究会を閉じた。
開催日時 第3回研究会・2019年9月21日 13時30分~17時00分
開催場所 東京工業大学大岡山キャンパス西9号館7F
テーマ 教育と組織のイノベーション
発表者 上田 紀之 他 5名
研究会内容  今回の研究会は、日本ソーシャル・イノベーション学会夏季セミナーを兼ねるかたちで東京工業大学で開催した。東京工業大学で開催した理由の一つは、元本学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション・コース教員で、現在東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教授である中野民夫が、全国的にも注目度が高い大学・大学院改革を領導していることがあった。
 研究会はその趣旨を「教育を改革していくには、教育する組織自体が変わっていかなくてはならない」として、3部構成で進めた。第1部「東工大の教育改革とそれを支える組織変革」では、まず室田真男東工大教授が「大きな志を育てる」リベラルアーツ(=教養)教育の全体像を説明した。東工大では教養教育が学部の早い段階で完結するのではなく、博士課程まで必修化されて、深い専門性と広く大きな思考力・発想力を両立させるカリキュラム構成になっているのが特徴であることが理解できた。続いて、ティール組織の研究者としても知られる嘉村賢州リーダーシップ教育院特任准教授が教養教育と併行するリーダーシップ教育の目的と内容について語った。最後に、上田紀之リベラルアーツ研究教育院長から東工大における人材教育イノベーションの背景と展望について雄弁な語り口での言及があった。
 第2部「社会に関わり、社会を変える学校教育を目指して」では、溝上慎一桐蔭学園理事長と牧野篤東京大学大学院教育研究科教授がそれぞれの教育イノベーションの実践について講演した後、上田氏が加わり、関根千佳会員が司会をしてのパネルトークを行った。大学教育と地域社会のウェルネス向上を結びつける意欲的かつ先端的な取組が印象的であった。
 そして、第3部「参加者同士が対話で深めあうグループトーク」では約100名の参加者が4人一組で「えんたくん」という丸いボードを囲んで教育イノベーションやソーシャル・イノベーションについて熱心に討議した。
 最後に、新川達郎会員から、今回の研究会のまとめと、大学における教育イノベーションの課題や可能性についての問題提起があった。
開催日時 第2回研究会・2019年8月23日 13時00分~17時30分
開催場所 同志社大学志高館 SK288室
テーマ ソーシャル・イノベーションとソーシャル・ビジネスに関する日韓共同ワークショップ
発表者 Suk-Ki Kong 他 6名
研究会内容  「ソーシャル・イノベーションとソーシャル・ビジネスに関する日韓共同ワークショップ」
 本ワークショップは、2019年8月23日13時から17時30分まで同志社大学烏丸キャンパス志高館SK288室にて開催された。「プログラム」は2部構成であり、モデレーターはSuk-ki Kong(ソウル国立大学)と新川達郎(同志社大学)があたった。
 パート1.では、新川の司会進行のもとに韓国のソーシャル・イノベーションとコミュニティにおけるソーシャル・ビジネスについて、三つの報告があり、討論が行われた。「1.地域社会におけるソーシャル・イノベーションの強化:韓国のHeygroundに焦点を当てて」と題してSuk-Ki Kong(ソウル国立大学アジアセンター)報告、「2.地域社会におけるソーシャル・イノベーションと積極的な市民権の再考」と題してジンヒ・キム(韓国教育開発研究所)報告、「3.ソーシャル・ビジネスにエコロジーと人文科学の価値を加える:コモンズのための社会的協力「漢江」の取り組み」と題してジョアン・チョー(社会的協同組合漢江)報告があった。
 パート2.では日本のソーシャル・イノベーションとソーシャル・ビジネスについて京都と観光に焦点を当てた。Suk-ki Kongの司会進行により、「4.京都観光におけるソーシャル・ビジネスの現状と課題」と題して新川達郎(同志社大学)から、「5.京都市の伝統的町家における空き家と民泊の問題」と題して小林和子(同志社大学)から、「6.京都および日本におけるソーシャル・イノベーションとしての観光の課題」と題して丸山雅之(鹿児島国際大学、ハンヤン大学)から報告があった。
 日韓の市民セクターの現状や社会問題解決に向けての民間部門の活動について熱心な討論が行われた。10数名の参加でこじんまりとした研究集会となったが、当初予定を1時間近く延長して議論が展開され実り多い成果が得られ、今後もこうした議論を継続する必要を双方で認識できた。なお本セミナーはすべて英語で行われた。
開催日時 第1回 研究会・2019年5月18日 12時00分~17時00分
開催場所 同志社大学志高館 SK118室
テーマ ソーシャル・イノベーション研究の国際比較――「社会変革」の学問はどこまで進んでいるのか?
発表者 青尾 謙
研究会内容  今回の研究会は、日本ソーシャル・イノベーション学会春季セミナーを兼ねるかたち開催した。ただし、午後12時半から午後1時半までは、第5研究の研究員4名とゲスト講師の青尾謙氏の5名で、ソーシャル・イノベーション研究の国際的動向や国内での状況について意見交換を行った。
 公開セミナーには、北は群馬・高崎から南は奄美大島まで、全国各地から約60名の、ソーシャル・イノベーション分野の大学の研究者はもとより、地方自治体やソーシャルビジネス、まちづくりNPO、学生・院生など多彩な参加者が集まった。
 ゲストスピーカーの青尾謙氏(岡山大学)からは、日本・東アジア・欧州・米国といった世界各地のソーシャル・イノベーションの実践と政策、さらに研究の全体動向について概要説明があった。とくに欧州では、EUの資金により大規模なソーシャル・イノベーションの研究が国際的に行われており、英語文献の蓄積もかなり行われているとのことであった。一方、日本国内でも優れたソーシャル・イノベーションの実践や研究が行われているにも関わらず、英語での発信が弱いため、国際的に認知されていないのが今後の課題である、との点が印象的であった。
 また、こうした民間主導、もしくは公民連携型のソーシャル・イノベーション事業が増えた背景には、「福祉国家」モデルの限界があるとの指摘や、また政府によるソーシャル・イノベーション推進は、いわば国家の責任放棄としての「優しいネオリベラリズム」との批判もあるとの紹介があった。
 その後のディスカッションでは、日本では、単一事業/組織によってではなく、地域の様々なステークホルダーが連携/協働しての「エコシステム」型のソーシャル・イノベーション事例の実践や研究が盛んであり、その知見や成果の発信が今後の日本の役割ではないか、との議論がなされた。