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第5研究 伝統産業における事業・家族・制度・技術の継承に関する日・中・韓比較研究代表者:藤本 昌代(社会学部)

 本研究会は、日本、韓国、中国などの東アジア諸国において、伝統産業のみならず、いろいろな産業で現在、重要な問題になっている事業や家業の継承について、事業活動の背後にある文化的・制度的要素(宗教、家族、雇用制度、慣習、分業、職業等)や社会構造などの影響、アクター間の関係性など、複合的要素によって起こる現象を明らかにすることを目指している。従来、この問題に関してはビジネスの側面に焦点が当てられてきたが、その背後にある「家族」「社会的制度」「事業に関連する技術や技能、後継者(経営者や職人)の職業継続」なども大きく影響していると考えられる。そのため、本研究会では、この現象の分析に対して社会学、経営学、文化人類学などの学際的な研究者によって研究活動を行う。

2023年度

開催日時 第1回研究会・2023年8月9日 13時~17時
開催場所 同志社大学臨光館4階 社会調査実習室/オンライン併用
テーマ 広島県西条市酒造業・長崎県波佐見町窯業地域へのフィールドワーク
発表者 岩井洋
住原則也
藤本昌代・三井泉
池田梨恵子・郭文静
研究会内容  2023年度第1回研究会は、研究会メンバー4名が2023年3月に行ったフィールドワークの調査および学会発表について報告を行った。
 第1報告では、住原則也教授(天理大学国際学部)より2023年3月に行った広島県東広島市西条の酒造業のフィールドワークについて、6つの酒蔵への現地調査、同業者組合へのインタビュー、研究施設へのインタビューおよび見学の概要が報告された。報告においては、西条における酒造りの歴史や酒造組合が行う毎年10月に行われる酒まつりというイベント等が取り上げられた。
 第2報告では、池田梨恵子氏(同志社大学人文研究所嘱託研究員)・郭文静氏(同志社大学大学院社会学研究科博士課程)より、3月に長崎県東彼杵郡波佐見町での窯業のフィールドワークについて、2つの窯元へのインタビューおよび生産現場の見学、波佐見焼振興会・中尾山地域でのインタビューの概要が報告された。また、三井泉教授(園田学園女子大学経営学部)・藤本昌代教授(同志社大学社会学部)より、調査地域の現状や課題、今後の調査対象者や調査地に関してコメントがなされた。
 第3報告では、岩井洋教授(帝塚山大学全学教育開発センター)が「事業継承における『物語』の重要性」について報告を行った。会社の公式的な物語には経営者の意向に影響される傾向があることや、社員のなかにあるエピソードが公式の物語と整合しない場合もある。しかし、経営戦略論が示すようなシナリオではなく、必然と偶然の組み合わせから生まれる会社の物語のなかにこそ、その会社の独自性が表れるという意味において、物語は重要な意味を持つことが報告された。
 参加者は10名(うちオンラインでの参加は1名)であった。

2022年度

開催日時 第2回研究会・2022年11月27日 13時~16時
開催場所 同志社大学臨光館301号室
テーマ 経営人類学者、「社史」を書く―「社史」作成からみえる「継ぐ」ということ―
発表者 岩井洋
研究会内容 第2回研究会では、第105回公開講演会「経営人類学者、「社史」を書く―「社史」作成からみえる「継ぐ」ということ―」を会場とウェビナーとのハイブリッド方式で開催した。講師は研究会メンバーである岩井洋教授(帝塚山大学全学教育開発センター)、コメンテーターは同じく研究会メンバーの三井泉教授(園田学園女子大学経営学部)、司会は本学・藤本昌代(第5研究代表)が務めた。岩井教授は、経営人類学者として、オルファ株式会社の創業時の社会的情勢、成長に関わる技術的要素、制度的要素、家族的要素、社員との信頼関係醸成、仕事に向かう姿勢における創業者の信念など、複合的な観点から「オルファイズム」を分析し、「社史」にまとめた過程、結論を述べた。それに対して、三井泉教授から、オルファのアイデンティティ、オルファイズムに対するコメントがなされた。 参加者は会場とZoomとほぼ同数で合わせて70名程度であった。社史編纂経験者、社史に関心がある参加者から熱心な質問が寄せられた。
開催日時 第1回研究会・2022年8月12日 13時~17時
開催場所 同志社大学臨光館315号室
テーマ 老舗の跡継ぎ
発表者 山内雄気
研究会内容 第1回研究会では、商学部の山内雄気准教授による研究発表がなされた。発表の要旨は以下の通りである。
 本研究の目的は、老舗企業の事業承継者が果たす二面的な役割を理解することにある。老舗企業は、一般的に家業として100年を超えて事業を展開している。事業継続の観点からみると、老舗企業は同族による事業承継によって、老舗と名乗るための正統性を確保する必要がある。これに付随して、老舗企業は、自身の所属する業界を代表して、これまでの業界慣行を維持する立ち振る舞いを要求されるため、組織内的にも組織外的にも、経営方針を転換することが許容されにくい。他方で、老舗企業の事業承継者は、自身を取り巻く経営環境の経時的変化に対応し、新たな取り組みにも着手しなければ事業を継続させられない。このように、老舗の事業承継者は、老舗として業界に向き合いながら、それと同時に企業家的に新たな活動にも着手しなければならない。どのように、老舗の事業承継者の二面的なふるまいを理解すればよいのだろうか。本研究の基本的な問いはこの点に置かれている。この二面性を理解するために、本研究は、日本の清酒製造業界を事例に、Fligstein and McAdam(2011)の提唱するSAFs理論における戦略的行為に着目し、それぞれの行為を実装する領域ごとのパターンを類型化する。その結果、これまで十分に明らかになってこなかった、老舗の事業承継者の二面性を明らかにするとともに、SAFs理論の企業家像を補強することが可能となる。